
日本を代表する外交の最前線で活躍する外務省職員。
国際社会での日本の存在感を高める重要な使命を担う一方で、「実際の年収はいくら?」「海外勤務の手当はどれぐらい?」と気になる方も多いでしょう。
本記事では、外務省職員の給与体系や年収の実態、海外勤務時に支給される手当やキャリアパスを詳しく解説します。
外務省を目指す方や公務員の待遇に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
カリスマ講師の授業・教材が
スマホ・PCでいつでも何度でも
【スタディング 公務員講座】
外務省の給与・平均年収
外務省専門職員や外務省職員(総合職・一般職)の給与には、国が定める「行政職俸給表(一)」が適用されます。
人事院の「令和6年国家公務員給与等実態調査の結果」によると、行政職俸給表(一)に該当する国家公務員の平均給与月額は約40万5,378円です。
この額をもとに賞与(年4.6カ月分)を加味して試算すると、平均年収は約673万円です。
職種や年齢により差はありますが、外務省職員もこの水準に準じた給与が支給されます。
次は、外務省職員の初任給や特徴的な手当について、具体的な数字で確認していきましょう。

国家公務員の平均年収は?初任給やボーナス、職種・経験別の年収…
国家公務員の平均年収はどのくらいなのでしょうか?令和6年のデータをもとに、国家公務員全体や行政職限定の平均年収、初任給やボーナス、役職別・経験年数別の収入な…
国家公務員の平均年収はどのくらいなのでしょうか?令和6年のデ…

国家公務員総合職の平均年収は?初任給や諸手当、昇給・昇格につ…
国家公務員総合職は、日本の行政機関の中核的業務を担う職種です。安定性と社会貢献を両立しつつ、キャリアパスに応じた収入が期待できます。この記事では、最新の人事…
国家公務員総合職は、日本の行政機関の中核的業務を担う職種です…
初任給
国家公務員である外務省職員の初任給は、採用される試験区分や学歴によって異なります。
令和7年度における外務省職員の主な区分の初任給例は、以下のとおりです。
試験区分 | 初任給例 |
---|---|
国家総合職(院卒者/本府省の場合) | 30万2,560円 |
国家総合職(大卒程度/本府省の場合) | 28万4,800円 |
国家一般職(大卒程度/本府省の場合) | 27万1,200円 |
外務省専門職員(大卒程度/東京都特別区の場合) | 26万4,000円 |
【参考】国家公務員の紹介|国家公務員試験採用情報NAVI
【参考】外務省専門職員採用試験案内
この表では出典の違いにより、外務省専門職員のみ東京都特別区で勤務する場合の初任給例となっており、本府省業務調整手当が含まれていません。
本府省勤務であると仮定し、本府省業務調整手当も含めて計算しなおすと、外務省専門職員の初任給は国家一般職と同額の27万1,200円となります。
その他にも国家公務員にはさまざまな手当があるため、実際の初任給はこれよりも高くなる可能性があります。
海外勤務する場合の手当
外務省職員が海外勤務となる場合、「在勤手当」が支給されます。
在勤手当とは、海外での生活に必要な経費を補助するために、現地の物価水準や為替相場などを考慮しつつ支給されるものです。
在勤手当には、「在勤基本手当」「住居手当」「配偶者手当」「子女教育手当」など、いくつかの種類があります。
在勤基本手当は赴任地、配属先、役職などにより大きく変動しますが、目安としては以下のとおりです。
赴任地・配属先 | 手当の目安 |
---|---|
アメリカ合衆国/大使館勤務 | 月額36万5,400円~131万円 |
フランス/大使館勤務 | 月額29万9,100円~95万円 |
コンゴ共和国/大使館勤務 | 月額58万200円~121万円 |
このように、外務省では職員の海外での生活を経済的に支える仕組みが整えられています。
外務省・その他公務員・民間企業の平均年収を比較
続いて、外務省とその他公務員、そして民間企業の平均年収を比較してみましょう。
それぞれの平均年収は、以下のとおりです。
職種 | 平均年収 | ||
---|---|---|---|
外務省職員(国家公務員/行政職俸給表(一)適用職員) | 約673万円 | ||
その他公務員(地方公務員) | 都道府県 | 約646万円 | |
政令指定都市 | 約646万円 | ||
市町村 | 約595万円 | ||
民間企業 | 約460万円 |
※平均年収は「平均給与月額12ヶ月分+ボーナス4.6ヶ月分」で算出
【参考】令和6年国家公務員給与等実態調査
【参考】令和5年分 民間給与実態統計調査|国税庁
この表からわかるように、外務省職員の平均年収は民間企業の平均年収を大きく上回っています。
また、地方公務員と比較しても同等の給与水準にあり、公務員という職業が全体的に安定した高水準の給与体系を持つことが伺えます。

地方公務員の年収ランキング!年収が高い・安い都道府県・政令市…
公務員を目指すにあたって気になる情報の1つが「年収」です。この記事では、地方公務員(一般行政職)の年収が高い自治体のランキングを「令和6年地方公務員給与実態…
公務員を目指すにあたって気になる情報の1つが「年収」です。こ…
外務省に入るには?
外務省に入るためには、希望する職種に応じた国家公務員試験に合格し、採用される必要があります。
- 外交政策を企画・立案する「総合職」
- 高い言語力と深い知見を武器に活躍する「専門職員」
- 多岐にわたる業務で組織運営を支える「一般職」
それぞれの採用ルートを見ていきましょう。
外務省で国家総合職として働くには
外務省で国家総合職として働くには、まず「国家総合職試験」に合格する必要があります。
国家総合職試験は、将来の幹部候補として高度な専門知識と資質を問われる、難易度の高い試験です。
試験に合格した後は、官庁訪問(複数回に及ぶ採用面接のようなもの)を経て採用内定を得ます。
その後、正式な手続きを経て国家公務員として正式に採用されます。
外務省専門職員になるには
外務省専門職員を目指す場合は、「外務省専門職員採用試験」に合格する必要があります。
官庁訪問は行なわれず、試験に合格することでそのまま内定・採用となりますので、比較的少ないプロセスで入省できるというメリットがあります。
外務省で国家一般職として働くには
外務省で国家一般職として働くには、まず「国家一般職試験」の第1次試験(筆記試験)を突破する必要があります。
その後に第2次試験(人物試験)と官庁訪問がほぼ同時期に実施され、これらの選考を経て最終合格と採用内定が決まります。
国家総合職と同様に、採用内定を得た後に正式な手続きを経て、国家公務員として働くことになります。

国家公務員試験の概要
国家公務員の志望度が高いという受験生の方に向けて、国家公務員試験の概要を紹介しましょう。国家公務員の職種にもさまざまありますから、まずは目指す試験を確認した…
国家公務員の志望度が高いという受験生の方に向けて、国家公務員…

公務員になるには?国家公務員・地方公務員を目指す基本情報まと…
公務員とは、国の機関や地方公共団体の職員として働く人のことです。警察官や消防官、公立学校の教員なども公務員に含まれます。民間企業での採用試験と同様に、公務員…
公務員とは、国の機関や地方公共団体の職員として働く人のことで…
外務省職員の仕事内容とは?
外務省職員の仕事は、外交の最前線から組織運営の裏側まで多岐にわたっており、それぞれの職員が自身の専門性や役割に応じた業務を担っています。
ここで、外務省職員の仕事内容を詳しく見ていきましょう。
政策の立案・国際交渉の準備を担う
政策の立案・国際交渉の準備など、日本の外交政策の根幹を担う業務に携わっているのは国家総合職です。
たとえば、本省(霞が関)で勤務する際には、外交政策の企画・立案、外交課題への対応調整、新たな国家安全保障戦略の策定などといった業務にあたります。
在外公館(大使館や領事館)に勤務する際には、現地政府との関係構築や折衝、政策の発信、文化交流、多国間会議への参加などを通じて、日本の外交目標達成に貢献します。
このように国内外を問わず活躍し、日本の顔として国際社会で外交官としての役割も果たすのが総合職の仕事です。
言語と地域の専門家として現場で活躍する
特定の言語や地域に関する深い専門知識を活かし、外交の現場で実務を担うのは、外務省専門職員です。
在外公館では高い語学力を武器に、外交官として相手国との交渉や情報収集、分析などの業務を行います。
また、本省では担当地域の専門家としての深い知見を活かし、外交政策の企画・立案に携わります。
変化を続ける国際社会の最前線で活躍する「外交のプロフェッショナル」です。
組織運営の中核を担う業務
円滑な組織運営のため、多岐にわたる事務業務を担当するのは、国家一般職です。
本省や在外公館といった国内外の勤務地において、文書管理、領事事務、通信事務、会計、施設管理などの業務を行ないます。
組織の裏側から職員の活動を支える、重要な役割を持つ仕事です。

国家公務員の職種とそれぞれの仕事内容をわかりやすく解説
国家公務員といっても、その職種は多岐にわたり、それぞれ異なる役割と使命を担っています。1府12省庁職員や国税専門官・労働基準監督官などの国家専門職など、さま…
国家公務員といっても、その職種は多岐にわたり、それぞれ異なる…
外務省が求める人材像
外務省では、多様な能力と高い志を持つ人材を求めています。
- 日本の代表としての責任感と使命感がある人
- 柔軟な思考力と課題解決力を持つ人
- 異文化や多様な価値観を尊重し協調できる人
- 語学力と専門性を活かして現場で取り組める人
グローバルな舞台で活躍するために重視される資質はどんなものなのか、詳しく見ていきましょう。
日本の代表としての責任感と使命感がある人
外務省職員は、日本の顔として世界と向き合います。
一つひとつの行動が国の評価に直結するため、「日本の代表である」という強い責任感と、「国益を守り国際社会に貢献したい」という高い使命感が不可欠です。
柔軟な思考力と課題解決力を持つ人
国際社会は常に変化し、予期せぬ事態や前例のない課題が頻繁に発生します。
こうした状況に対し、既成概念にとらわれず柔軟に物事を捉え、最適な解決策を自ら考え出し、行動に移す力が求められます。
異文化や多様な価値観を尊重し協調できる人
外交の現場では、異なる歴史や文化、多様な価値観を持つ人々との交流が日常的に発生します。
外務省職員には、こうした多様性を深く理解し、尊重する姿勢が不可欠です。
相互理解に基づいた協調性が、円滑な国際関係構築の鍵となるでしょう。
語学力と専門性を活かして現場で取り組める人
外務省職員、特に外務省専門職員には、高い語学力と専門性が求められます。
採用時点においては、官庁訪問の際にTOEFL又はIELTSのスコアを提出することが推奨されています。
「英語力のみによって採用の可否を決めることはない」とされているものの、採用基準の1つであることは間違いありません。
入省後は自身の研修言語を軸に、その言語が使われる国や地域の情勢、文化、歴史に対する知見を深めることで、複雑な外交ニーズに対し的確に対応する能力が養われます。
積極的に学んで成長を続けながら、専門性を活かして実務に取り組む姿勢が評価へと繋がっていくでしょう。
外務省職員のキャリアパス
外務省では、採用される職種によって異なるキャリアパスが用意されています。
いずれの職種も、国内外での幅広い経験を通じて、段階的にキャリアを築いていくことが可能です。
ここでは、具体的なキャリアパスの内容について見ていきましょう。
総合職職員のキャリアパス
総合職職員は、将来の幹部候補として、日本の外交政策の企画・立案の中枢を担うキャリアパスを歩みます。
採用後は本省で2年間実務を担当しつつ、自身の研修言語を学びます。
その後は3ヶ月の集中研修と2~3年の海外研修を経て在外公館での勤務となり、本省との異動も繰り返しながら国際的な視野と実務能力を養っていくこととなります。
将来的には課長補佐、課長、さらに能力次第では局長や大使といった要職へと昇進し、国内外でリーダーシップを発揮しながら活躍するようになるでしょう。
※研修言語とは、入省前に決定されるもので、総合職の場合は原則として英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、中国語、アラビア語の中から1つ選択されます。
外務省専門職員のキャリアパス
外務省専門職員は、特定の言語や地域、あるいは特定の専門分野のスペシャリストとしてキャリアを築きます。
まずは入省前に、希望や適性を考慮しつつ40数言語の中から研修言語が割り振られるのが特徴です。
入省後は本省にて1年間実務と語学研修を進めたのちに、3ヶ月の集中研修と2~3年におよぶ海外研修で語学力と専門性を徹底的に磨いていきます。
その後は在外公館での海外勤務と本省勤務をおおむね5~6年ごとに繰り返しながら、担当地域の専門家として深い知見を蓄積し、現場の最前線で外交実務を支える存在となります。
一般職職員のキャリアパス
一般職職員は、外務省の組織運営を支える多岐にわたる業務を担当し、幅広い経験を積むキャリアパスを進みます。
入省後は、まず本省で外交活動を円滑に進めるための基盤業務に携わりながら、英語研修を受講します。
その後は在外語学研修を経て在外公館への勤務となり、3~4年ほどのサイクルで本省と在外公館勤務を繰り返すようになります。
経験を積むことで、各分野のスペシャリストとして認定される専門官や、所長、参事官などの管理職への昇進を目指すことも可能です。
外務省職員についてよくある質問
ここからは、外務省職員についてのよくある質問にお答えしていきます。
「外交官はやめとけ」と言われる理由は?
「外交官はやめとけ」という声が聞かれる背景には、その仕事の厳しさがあります。
というのも、国際情勢とは常に変動するものであるため、政策の企画・立案や国際交渉においてはどうしても激務となりやすい側面があるのです。
在外公館勤務では、治安が不安定な地域や生活環境が厳しい地への転勤を経験することもあり、精神的・肉体的な負担が大きいと感じられることがあります。
しかし、こうした厳しさは、国の代表として国際貢献を果たす上で得られる比類ない達成感や大きなやりがいと、密接に結びついていると言えるでしょう。
外務省の年収に男女差はある?
外務省職員の平均年収について、統計上わずかな男女差が見られる場合があります。
しかし、給与が性別によって区別されるためではありません。
主な理由としては、扶養手当の受給者における男性職員の割合が高いことや、育児休業・育児短時間勤務などの利用者における女性職員の割合が高いことなどが平均値に反映されるためと考えられています。
外務省では、職務の級や実績に基づいて給与が決定され、仕事の割り振りにおいても性別による区別は一切ありません。
まとめ
本記事では、外務省職員の給与や平均年収のほか、仕事内容やキャリアパス、求められる人物像などについて解説しました。
- 外務省の総合職・専門職・一般職はいずれも行政職俸給表(一)が適用される
- 海外勤務の際には、「在勤手当」が支給される
- 外務省職員の年収は民間企業の平均を大きく上回る
- 日本の代表としての責任感と使命感、柔軟な思考力、異文化尊重の姿勢、語学力と専門性といった資質を持つ人物が求められる
- 国内外での幅広い経験を通じて専門性を深めながら、長期的に活躍できる明確なキャリアパスが用意されている
外務省職員は、日本の国益を国際社会で守り、世界との架け橋となるという大きな使命感を持って働くことができる、非常にやりがいのある仕事です。
もし外務省職員を目指したいとお考えであれば、公務員試験の専門知識や面接対策など、ポイントを押さえた効果的な学習が合格へのカギとなります。
独学で試験対策を進めるのが不安な方には、スキマ時間を有効活用しながら効率的に合格を目指せる「スタディング公務員講座」がおすすめです。
気になった方は、ぜひ無料講座をお試しください。