
公務員の退職金は定年退職か自己都合退職かで金額が大きく変わることをご存じですか。
定年まで勤めた場合は2,000万円を超える退職金を受け取れますが、自己都合退職では大幅に減額されてしまいます。
本記事では公務員の退職金について年齢別・勤続年数別の早見表や具体的なシミュレーション、民間企業との比較を詳しく解説します。
地方公務員や国家公務員を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
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公務員の退職金の金額
まず、国家公務員と地方公務員について各種調査から退職金の金額を紹介します。
▼【比較】定年退職の退職金
職種 | 平均支給額 |
---|---|
国家公務員 | 約2,147万円 |
地方公務員 | 約2,180万円 |
個別に詳しく見ていきましょう。
国家公務員の退職金
国家公務員の退職金の平均支給額は次のとおりです。
全職種 | 行政職(※1) | |
---|---|---|
すべての退職理由 | 約911万円 | 約1,020万円 |
定年退職 | 約2,147万円 | 約2,122万円 |
自己都合 | 約304万円 | 約317万円 |
※1:「行政職」は行政職俸給表(一)適用者
【参考】内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況(令和5年度)」
行政職の場合、すべての退職理由を平均すると1,000万円前後となりますが、定年退職の場合は約2,100万円程度まで金額が上がります。
全職種の平均額は、定年まで勤めた場合はどちらも平均2,000万円以上の退職金が支給されています。
なお、上記の金額は内閣官房の調査にもとづくものですが、実際の支給額は一人ひとりの状況によりさまざまです。
あくまでも参考程度に留めておいてください。
地方公務員の退職金
地方公務員の退職金の平均支給額は次のとおりです。
全職種 | 行政職(※) | |
---|---|---|
すべての退職理由(※2) | 約1,229万円 | 約1,423万円 |
定年退職(※3) | 約2,180万円 | 約2,198万円 |
自己都合 | 約242万円 | 約348万円 |
※2:退職手当を支給されなかった人は含まない
※3:「定年退職」は25年以上勤続後の定年退職等
【参考】令和5年地方公務員給与実態調査
行政職の場合、すべての退職理由を平均すると約1,400万円程度ですが、定年退職の場合は約2,200万円程度まで金額が上がります。
全職種よりも行政職のほうが高い金額ですが、定年まで勤めた場合はどちらも平均2,000万円以上の退職金が支給されています。
前述の国家公務員と比較すると、地方公務員のほうがやや高い平均額となっています。
なお、上記の金額は総務省の調査にもとづくものですが、実際の支給額は一人ひとりの状況によりさまざまです。
あくまでも参考程度に留めておいてください。
【年齢別】公務員の退職金早見表
公務員の退職金は年齢と勤続年数によって大きく変わります。
以下は国家公務員のデータを基にした年齢別の退職金の目安です。
地方公務員も国家公務員退職手当法に準じた制度となっているため、ほぼ同様の金額となります。
年齢 | すべての退職理由 | 定年退職 | 自己都合退職 |
---|---|---|---|
20歳未満 | 約8万円 | – | 約8万円 |
20〜24歳 | 約20万円 | – | 約20万円 |
25〜29歳 | 約50万円 | – | 約52万円 |
30〜34歳 | 約92万円 | – | 約107万円 |
35〜39歳 | 約173万円 | – | 約222万円 |
40〜44歳 | 約255万円 | – | 約386万円 |
45〜49歳 | 約608万円 | – | 約761万円 |
50〜54歳 | 約1,028万円 | – | 約1,087万円 |
55〜59歳 | 約1,779万円 | – | 約1,405万円 |
60歳以上 | 約1,841万円 | 約2,122万円 | 約201万円 |
【参考】内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況」令和6年12月
年齢が上がるにつれて退職金も増加しますが、これは勤続年数の増加によるものです。
特に50歳を超えると退職金の伸び率が大きくなる傾向があります。
自己都合退職の場合、定年退職と比べて支給率が低く設定されているため、同じ勤続年数でも受け取れる金額は少なくなります。
【経験年数別】公務員の退職金早見表
勤続年数は退職金額を決める重要な要素です。
以下は経験年数別の退職金額の目安を示した表です。
勤続年数 | すべての退職理由 | 定年退職 | 自己都合退職 |
---|---|---|---|
5年未満 | 約46万円 | 約143万円 | 約27万円 |
5〜9年 | 約120万円 | 約367万円 | 約85万円 |
10〜14年 | 約325万円 | 約675万円 | 約289万円 |
15〜19年 | 約585万円 | – | 約541万円 |
20〜24年 | 約1,122万円 | 約1,505万円 | 約899万円 |
25〜29年 | 約1,638万円 | – | 約1,335万円 |
30〜34年 | 約2,065万円 | 約2,075万円 | 約1,580万円 |
35〜39年 | 約2,220万円 | 約2,210万円 | 約1,809万円 |
40年以上 | 約2,198万円 | 約2,167万円 | 約1,980万円 |
【参考】内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況」令和6年12月
勤続年数が長くなるほど支給率が高くなるため、退職金額も大幅に増加します。
特に勤続20年を境に支給率の上昇幅が大きくなります。
自己都合退職の場合、勤続年数が短いほど退職金への影響が大きくなるため、転職を検討する際は勤続年数も重要な判断材料となります。
調整額についても勤続年数によって支給条件が異なるため、退職のタイミングは慎重に検討することが大切です。
公務員の退職金の計算方法
国家公務員の退職金は、以下の計算式で算出されます。
退職金 = 基本額(退職日の俸給月額 × 退職理由別・勤続期間別支給割合)+調整額
なお、地方公務員の退職金の計算方法もこれに準じた形となっています。
ここからは公務員の退職金の「基本額」と「調整額」の算出方法や、勤続年数に応じた退職金のシミュレーションについて解説していきます。
退職金の「基本額」の計算方法
国家公務員の退職金の基本額は、下記の計算式で算出されます。
退職日の俸給月額 × 退職理由別・勤続期間別支給割合
「退職理由別・勤続期間別支給割合」とは、国家公務員退職手当法にて決められている退職理由別・勤続期間別の支給率に調整率をかけたものです。
この割合は退職理由と勤続年数によって異なり、勤続年数が長いほど、また自己都合よりも定年退職のほうが率は高くなります。
例えば、同じ定年退職でも勤続年数25年の場合の支給割合は「33.270」程度ですが、勤続年数35年以上になると「47.709」まで高まります。
また、勤続年数が同じ25年の場合でも、自己都合退職の支給割合は「28.0395」であり、定年退職のほうが高くなっています。
退職金の「調整額」の計算方法
国家公務員の退職金の調整額とは在職期間中の貢献度に応じた加算額のことで、簡単に言えば役職に応じて上乗せされるものです。
例えば、対象となる職員が行政職で、俸給表の職務の級が「7級」の場合は、調整月額は5万4,150円と定められています。
調整月額の60カ月分の合計が調整額となるので、この場合は調整額として約325万円が支給されることになります。
なお、調整額はすべての退職者に支払われるわけではなく、例えば自己都合退職者で勤続年数が9年以下の人は支給されません。
退職金シミュレーション:勤続年数10年の場合
ここからは、勤続年数に応じてどれくらいの退職金が支給されるのか、シミュレーションしてみましょう。
例として宮城県の場合で計算してみます。
宮城県の退職手当=基本額(退職時の給料月額×勤務期間等に応じた支給率)+調整額
まず、一般行政職で「勤続年数10年」で自己都合退職した場合で計算していきます。なお、金額はあくまでシミュレーションで算出した額です。目安として考えてください。
▼退職時の給料月額
令和6年度の「宮城県の給与・定員管理等について」によると、一般行政職(大卒)で経験年数10年の平均給料月額は26万9,976円となっています。
▼勤務期間等に応じた支給率
宮城県の「退職手当支給率早見表」によると、勤続年数10年での自己都合退職は5.022です。
▼調整額
退職する人が仮に3級の主任主査とすると、調整額の区分は第9号で調整月額は2万1,700円です。
調整額は60カ月分の調整月額を合計した額ですが、勤続10~24年以下で自己都合退職の場合は「合計額の2分の1相当額」となるため、調整額は65万1,000円となります。
以上をふまえて、退職金は次のようになります。
(26万9,976円×5.022)+65万1,000円=約201万円
退職金シミュレーション:勤続年数20年の場合
続いて、宮城県の別のケースの退職金についてもシミュレーションしてみます。
一般行政職で「勤続年数20年」で自己都合退職した場合で計算していきます。
▼退職日の給料月額
令和6年度の「宮城県の給与・定員管理等について」によると、一般行政職(大卒)で経験年数20年の平均給料月額は35万9,418円となっています。
▼勤務期間等に応じた支給率
宮城県の「退職手当支給率早見表」によると、勤続年数20年での自己都合退職は19.6695です。
▼調整額
退職する人が仮に5級の総括課長補佐とすると、調整額の区分は第7号となるため調整月額は3万2,500円です。
調整額は60カ月分の調整月額を合計した額ですが、勤続10~24年以下で自己都合退職の場合は「合計額の2分の1相当額」となるため、調整額は97万5,000円となります。
以上をふまえて、退職金は次のようになります。
(35万9,418円×19.6695)+97万5,000円=約805万円
公務員の退職金は多い?民間企業と比較
公務員の退職金が民間企業と比べて多いのか少ないのか、最新の公的データを基に比較してみましょう。
▼退職金の平均額の比較
定年退職 | 自己都合退職 | |
---|---|---|
国家公務員 | 約2,147万円 | 約304万円 |
地方公務員 | 約2,180万円 | 約242万円 |
民間企業 | 約1,150万円 | 勤続年数により変動(勤続20年:約347万円) |
※自己都合退職は勤続年数約20年の場合
【参考】内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況(令和5年度)」
【参考】令和5年地方公務員給与実態調査
【参考】東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」大卒モデル退職金
定年退職で比較すると、公務員の退職金は民間企業を大幅に上回っており、公務員は民間企業の約1.9倍の水準です。
一方、自己都合退職金は勤続年数などの状況により大きく変動するため、単純な比較は困難です。
上記の公務員の自己都合退職金は全勤続年数の平均であるため、勤続年数によっては民間企業の方が高くなるケースも考えられます。
また、公務員の退職金は法律や条例に基づいて決められているため制度が安定している点も、民間企業との大きな違いといえるでしょう。
【Q&A】公務員の退職金に関するよくある質問
最後に、公務員の退職金に関するよくある質問について解説します。
- 公務員の退職金がなくなる?
- 公務員の定年延長で退職金はどうなる?
- 早期退職制度を利用すると退職金は増える?
- 退職金はいつからもらえる?
- 退職金に税金はかかる?
- 退職金がもらえないケースは?
1つずつ見ていきましょう。
公務員の退職金がなくなる?
国家公務員の退職金については、国家公務員退職手当法という法律で決められています。
また地方公務員の退職金も、地方自治法や各自治体ごとの条例などで支給について定められています。
このため、退職金が減少することはあっても、法改正などが実施されない限りなくなることはありません。
公務員の定年延長で退職金はどうなる?
公務員の退職手当の計算方法は「退職時の給料月額×支給率×調整率」です。そして職員の俸給月額(いわゆる基本給)は、60歳の誕生日を迎えた後の最初の4月1日から7割水準になります。
「基本給が7割になると、定年延長後の退職金も減ってしまうのではないか」と心配になるかもしれませんが、基本給が下がっても退職金は減りません。
減額前の基本給の最高額を考慮して退職手当の支給額を計算する「ピーク時特例」が適用されるからです。
簡単に説明すると、基本給が減る前と減った後の期間を別々に計算することで、60歳までの勤続年数が35年以上の人はマイナスの影響が出ないようになっています。
公務員の定年延長については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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早期退職制度を利用すると退職金は増える?
国家公務員が早期退職する場合、俸給月額の割り増しを受けることができます。これは国家公務員退職手当法に定められています。
内閣人事局が公開した令和4年の「退職手当の支給状況」で退職金の平均支給額を見ると、定年退職の場合は2,106万4,000円であるのに対し、早期退職の場合は平均額は2,540万7,000円です。
退職金の金額だけで見ると、早期退職のほうが2割程度高くなっています。
退職金はいつからもらえる?
公務員の退職金は、勤続年数1年から支給を受けられます。
国家公務員の退職金を算出する際の「国家公務員退職手当支給割合一覧」には、1年目から支給率「0.5022」の記載があります。
また、地方公務員の退職金を算出する際の支給率にも、1年目から支給率「0.6」の記載があります。
なお在職期間は、6カ月未満で切り捨て、6カ月以上の場合は切上げです。つまり、実際は入職から1年が経過していなくても、6カ月以上勤続していれば退職金が支給されます。
【参考】人事院「1 退職手当制度の概要」、総務省「地方公務員の退職手当制度について」
退職金に税金はかかる?
公務員の退職金には税金がかかります。また、退職金の税額は他の所得とは分けて計算します。
退職金を受け取るまでに「退職所得の受給に関する申告書」を提出すると、退職所得控除を受けることができ、退職金の額に応じた「課税退職所得金額」に対して課税されます(源泉徴収)。
申告書を提出しなかった場合は、退職所得控除が適用されず、退職金額に対し20.42%の税率で課税されます(源泉徴収)。
退職金がもらえないケースは?
公務員の退職金が支給されないケースについては、国家公務員退職手当法によって定められています。
以下に当てはまった場合は、退職金は支給されません。
- 職員が懲戒免職処分を受けた場合
- 職員が禁錮以上の刑に処せられたこと等により失職した場合
- 職員が同盟罷業を行ったこと等により退職させられた場合
まとめ
公務員の退職金について解説しました。
- 定年退職の退職金平均は国家公務員で約2,147万円、地方公務員で約2,180万円
- 自己都合退職の退職金平均額は国家公務員で約304万円、地方公務員で約242万円
- 自己都合退職は定年退職より大幅に減額される
- 勤続年数が長いほど退職金額が大幅に増加する
- 民間企業と比較すると定年退職時の公務員の退職金が約1.9倍の水準
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