無料お試し

公務員試験の作文・小論文とは?「教養論文試験」の概要と対策の進め方

公務員試験の筆記試験には「作文」や「小論文」と呼ばれるものが存在します。

どのような試験内容なのか、そしてどのように対策をすればよいのか、紹介していきましょう。

作文・小論文とは?

公務員試験には、文章を書いて解答するタイプの筆記試験が存在します。その中でも、「自分の考えを論述する」筆記試験があり、今回紹介する「作文試験」や「小論文試験」もその一種です。ちなみに、ここでは全てをひっくるめて「教養論文試験」と呼びますが、名前のバリエーションはさまざまで、決まっているわけではありません。

「教養論文試験」の問われ方には大きく2つあります。それが、①行政課題について自分の考えを論述するもの(いわゆる「政策系」の問題)と、②公務員として自身の適性をアピールするもの(いわゆる「自己PR系」の問題)です。

受験者数の多い試験の場合は「政策系」の問題が出題されることが多く、社会問題や行政課題についてどのように取り組めばよいか、自身の意見を論述する問題が出題されます。一方で、市役所などを中心に、面接で聞かれるような質問について、文章で論述する「自己PR系」の問題も出題されます。

この2つについては、以下のような呼称になることが多いです。なお、試験内容の詳細は原則として試験案内に記載されますから、必ず事前に確認するようにしてください。

政策系「論文試験」「一般論文試験」「小論文試験」など
自己PR系「作文試験」「論作文試験」など

ここでは、この2つのタイプについて、どのように対策をしていけばよいか、説明していきましょう。

どのような問題が出題されるのか?

対策の話に入る前に、そもそもどのような問題が出題されるのか、簡単に紹介しましょう。以下は代表的な試験種で過去に出題されたものです。まずは「政策系」の問題から見ていきましょう。

過去の出題例(政策系)

2022年度 特別区Ⅰ類(事務) 
2題中1題を選択すること。
1 特別区では、地方分権の進展や、児童相談所の設置に加え、新型コロナウイルス感染症対策により、前例のない課題やニーズが生まれ、区民が期待する役割も、かつてないほど複雑で高度なものとなっています。特別区がこれらの課題の解決に向けた取組を進めていくには、区民に最も身近な基礎自治体として、自立性の高い効率的な事務運営が重要です。このような状況を踏まえ、区民の生命や生活を守るための、限られた行政資源による区政運営について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
2 特別区では、人口の流動化、価値観やライフスタイルの多様化によって地域コミュニティのあり方に変化が生じています。また、外国人の増加も見込まれる中、様々な人が地域社会で生活する上で、地域コミュニティの役割はますます重要となっています。こうした中、行政には、年齢や国籍を問わず、多様な人々が地域コミュニティの活動に参加できるような仕組みづくりや、既存の活動を更に推進するための取組が求められています。このような状況を踏まえ、地域コミュニティの活性化について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

2022年度 国家一般職(大卒)
我が国は、2020年10月に、2050年までにカーボンニュートラル*を目指すことを宣言した。また、2021年4月には、2030年度の新たな目標として、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指し、さらに50%削減に向けて挑戦を続けるとの新たな方針を示した。なお、世界では、120以上の国と地域が2050年までのカーボンニュートラルの実現を表明している。
* カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること

上記に関して、以下の資料①、②を参考にしながら、次の⑴、⑵の問いに答えなさい。
⑴ カーボンニュートラルに関する取組が我が国にとって必要な理由を簡潔に述べなさい。
⑵ カーボンニュートラルを達成するために我が国が行うべき取組について、その課題を踏まえつつ、あなたの考えを具体的に述べなさい。

※資料は省略します。
資料①:日本のエネルギー起源CO2排出量とカーボンニュートラル達成イメージ
資料②:各種発電技術のライフサイクルCO2排出量の比較

「政策系」の過去問をいくつか紹介しました。「政策系」の問題は、事前にさまざまな前提情報やヒントが与えられたうえで、「行政としてどのように取り組めばよいか」を論じさせるものが多いです。

なかには、問題に資料を掲載したうえで、資料から課題を読み取らせる形式もあります。上記で例としてあげた国家一般職だけでなく、東京都Ⅰ類Bや横浜市なども、例年資料を添付して分析させる問題を出題しています。

続いて、「自己PR系」の問題も確認しましょう。

過去の出題例(自己PR系)

2022年度 裁判所一般職
あなたが考える「よい説明」について述べた上で、様々な場面に応じた「よい説明」を、具体例を挙げながら論じなさい。

2021年度 千葉県千葉市(事務・行政A)
様々なコミュニケーションツールの普及により、コミュニケーションが多様化しています。そこでコミュニケーションについて、あなたが思うことを述べなさい。また、多様化するコミュニケーションの中での行政運営について、あなたの考えを述べなさい。

2021年度 茨城県日立市(前期・一般事務)
あなたが描く10年後の日立市の姿と、そこに向けた行政の役割について、あなたの考えを論じなさい。

2022年度 警視庁警察官Ⅰ類(1回目)
これまであなたが人との関わりから学んだことについて触れ、今後それを警察官の仕事にどのように活かしていきたいか述べなさい。

「自己PR系」の教養論文を出題する試験も比較的多いです。やや特殊ですが、裁判所一般職は司法とは関係ない抽象的なテーマを挙げて、受験生の考え方を聞くような出題をしています。その他、市役所を中心に「自己PR系」の出題があり、警察・消防も同様の出題が多いといえます。

作文・小論文で注意すべき点

では、作文・小論文を書くうえで注意すべき点を挙げましょう。以下に挙げる内容は、「政策系」の問題でも「自己PR系」の問題でも変わらない鉄則です。

1.問いに答えることを常に意識する

点数が伸びない原因の大半はここにあると言っても過言ではないでしょう。問いに答えられていない答案は非常に多いです。最初は問題に合わせて論述しているのに、いつの間にか違う方向に話が進んでいて、最後だけ取り繕ったように問題に合わせた結論やまとめが書かれている…という答案は、なかなか点数が伸びません。

このような答案になってしまう原因は、だいたいが自分の書きやすい内容に寄せて書いてしまうからです。行き当たりばったりに書き進めていくと、だんだん問題文が何を聞いているのかを忘れてしまって、ついつい書きやすい方向に進んでしまうのですね。

あくまで問題文に答えるのが大前提です。したがって、問題で聞いていることを何度も繰り返し確認すること、そして問題に対して形式的に合わせるくらい徹底したほうがよいでしょう。例えば、問題の⑴が「課題を2点挙げよ」、⑵が「⑴で挙げた課題に対する取組みを挙げよ」というものであれば、⑴はしっかり「課題の1点目は…。課題の2点目は…。」のようにナンバリングをしましょう。⑵も「課題の1点目については…という取組みが挙げられる。…課題の2点目については…という取組みが挙げられる。」のように、形式をしっかり合わせてください。こうすることで、添削者はどの課題に対する論述なのかがわかりやすくなり、非常に読みやすい答案になります。

2.自分の考えを必ず入れる

これも守ってほしい要素です。先ほどの「問いに答えられていない」という話と似ていますが、「自分の考えを述べよ」と聞かれているのに、自分の考えがいっさい含まれていない答案も非常に多いです。

特に「政策系」の論文でよくありがちです。例えば、「取組みを述べよ」と聞かれているときに、「○○市では、□□という取組みを行なっており、これを取り入れるとよい」とだけ書かれているような答案ですね。これは自分の考えではなくて、○○市の考えです。どうしても教養論文を「行政課題や政策の知識を大量にインプットして吐き出すもの」だと思ってしまう受験生が一定数いるようです。

くれぐれも、教養論文で聞かれているのは知識以上に「自分なりにどう考えたか」です。自分の考えを聞いている以上は、当然のことですね。したがって、必ず自分の考えを含めるようにしてください。例えば、先ほどの例であれば、○○市の□□という取組みをなぜ取り入れるべきなのか、自分なりの理由づけを書くとよいでしょう。似たような課題を抱えている自治体だから取り入れるべきなのかもしれませんし、何かそこに理由があるはずです。これは是非明示するようにしましょう。

また、それ以外にも、自分なりに考えたひと工夫を挙げるのもよいと思います。○○市の□□という取組みをそのまま取り入れるのではなくて、さらにひと手間加えることで、よりその自治体の現状に即した効果的な取組みになるかもしれません。

私はよく上記のような「理由づけ」と「ひと工夫」をポイントに挙げるのですが、これらを含めることで「どのように課題に取り組むべきなのか、自分なりに頭を働かせて考えました」という姿勢を見せることができるのです。

3.字数制限を必ず守る

これも問題の要求に応えられていないという点では「問いに答えられていない」のと同じことですが、問題には字数制限が設定されています。試験種によって試験時間や字数制限はさまざまですが、だいたい60~90分程度の制限時間で、800~1,500字程度の字数制限になることが多いです。

そして、字数制限を満たさなかったために筆記試験が不合格になったケースを、多く見てきました。択一試験の点数は8割程度得点しており、教養論文試験では最低限の内容さえ書けていれば十分に合格できたはずなのですが、試験本番で緊張して書くことができず、字数が少なかったために不合格になった方もいました。書きすぎて不合格になるケースはほとんどいませんが、字数が足りずに不合格になるケースはよくあります。

字数制限に満たない程度にしか書けていない論文は、内容も薄い可能性が高いので、そもそも危険ではあるのですが、字数制限を満たしていない答案は、試験種によっては一発アウトになってしまいます。くれぐれも注意しましょう。

4.論文を書く際の形式的なルールを守る

「段落の最初は1字下げる」や「行頭に句読点が来たら、その句読点は前の行の文末に含める」など、論文の書き方にはルールが存在します。おそらく皆さんは小学生の頃に国語の授業で作文を書いた経験があるはずなので、そこでルールも習っているはずなのですが、作文や論文という形で文章を書く経験が少なくなってくると忘れてしまうでしょう。このようなルールはWordなどで文章を書いていると、通常は自動的に処理されるので、気にすることがなくなってしまうのかもしれません。

だいたいのルールの意図は、「読み手に読みやすくするため」です。段落の最初が1字空いていると、どこで段落が変わったのかが見やすくなりますし、行頭に句読点があると、見た目で明らかに違和感があるはずです。読み手の側になったとして読みやすくなっているのかどうか、くれぐれも気づけるようにしてほしいです。

5.誤字脱字のないようにする

実際に受験生が書いた教養論文の答案を数多く添削してきましたが、誤字脱字のいっさいない答案というのは、全体の1割もないと思います。漢字のミスだけでなく、「てにをは」がおかしいとか、「です・ます」調と「だ・である」調の混同があるとか、さまざま挙げればキリがありません。

あくまで教養論文の答案は「試験の解答」であり、それを採点する添削者がいます。添削者の立場からすれば、誤字脱字があるたびに読み進める流れがつっかえてしまい、内容面でも粗が目立つようになってきます。つっかえつっかえ必死に読んだ答案で、内容が素晴らしいものや高得点になるものはほぼ存在しません。誤字脱字をなくすだけでも、答案から受ける印象は大きく変わりますから、これも是非意識して正しい文章を書くようにしてください。

作文・小論文の書き方のコツ

ここでは簡単に、作文・小論文をどのような手順で書いていけばよいか、紹介しましょう。受験生によってさまざまな書き方がありますし、指導の仕方もさまざまです。ここで紹介する内容もあくまで参考にしていただいて、今後しっかり対策をしていただければと思います。

1.最初に必ず答案構成をする

先ほど、「問いに答えられていない答案が多い」という話をしました。これはやはり、行き当たりばったりで答案を書いていることが大きな理由ではないかと考えます。答案を書くことに集中していると、だんだん問題で聞かれている内容も忘れてきますし、なんとなく筆が乗ってどんどん問題から外れた内容になってしまうことが多いのですね。また、行き当たりばったりで書くと、最終的に字数が足りなくなって最後に字数稼ぎをするケースもあります。最後のまとめがやたらと長く、今までの内容をほとんどそのまま繰り返しているだけでまとめになっていない…という答案もよくあるケースです。

これを防ぐには、まず試験が開始したら答案構成をすることです。問題によっても異なりますが、よくある答案構成の流れは「序論→本論→結論」という流れですね。まずはこのような論文の型に当てはまるように、どのような内容にするか、思いつくままに書き出してみましょう。基本的には箇条書きで構いません。

そこから、実際にどのような内容で論述するかを考えていきます。例えば「政策系」の問題で、課題や取組みを挙げる場合は、2~3個程度でよいでしょう。少なすぎると内容が薄くなりますし、多すぎると書く分量が増えて内容がわかりにくくなる可能性があります。また、「自己PR系」でも同様です。今まで力を入れてきたことや、職員として活かせる要素を挙げすぎても、論じきれなくなってしまう可能性があります。書かなすぎるのも書きすぎるのもやはりよろしくないのです。

ちなみに、答案構成をして書き始めたら、そこから書く内容で迷ってはいけません。答案構成でせっかく流れを作ったのに、書いている途中でさらに考えてしまっては二度手間ですし、答案構成をしていた時間が無駄になってしまいます。考えるのは答案構成の段階で済ませて、あとは一気に書いていきましょう。

2.書いたら必ず全体を一読して内容を確認する

解答時間ギリギリまで書いていて読み直しができない…という受験生が多いのですが、これはかなりリスキーです。書いている内容もそうですが、誤字脱字などすぐに直せるようなところを直せないまま答案を提出することになってしまうかもしれません。必ず最後に答案の読み直しの時間を確保するようにしてください。論述のメインになっているところでミスが発覚してしまうと、修正しきれなくなってしまうかもしれませんが、少なくとも些細なミスによる減点は防ぐことができます。

3.知識面でも事前準備を怠らない

本試験の現場で、アドリブで全てを論述することもできてしまうのが教養論文試験ですが、やはりなるべくなら前提知識をインプットして余裕を持って書けるようにしたいです。

「政策系」の問題であれば、出題が予想されるテーマについて、背景事情、代表的な課題、それに対する現状の取組みなどをまとめておくと、非常に答案が書きやすくなると思います。前述したとおり、知識をそのまま書けば点数が伸びるわけではないので、くれぐれもそこを履き違えないように、あくまで考えるうえでの参考にしてくださいね。

「自己PR系」の問題であれば、何より「自分自身の経験がどう公務員として活かせるか」が聞かれるので、過去の具体的なエピソードをさかのぼって、どのようにアピールするかを考えておくことです。また、「自己PR系」といっても、過去のエピソードをただひたすら書けばそれでよいわけではなくて、その自治体や機関の職員としてどのような要素が求められるのかについても、考えておくようにしましょう。なんとなく「傾聴力」とか「寄り添う力」とか、それっぽい内容を挙げてしまいがちですが、それだけでは他の自治体や機関でも必要な能力になってしまいます。結果的にはもちろんそれでもよいのですが、自分なりにその志望先を考えたうえで、どのような能力が求められているのか「自発的に考える姿勢」を示していきたいところです。

とにかく書く練習を積むこと!

ここまでさまざま対策のポイントを述べてきましたが、結局は書く練習が何より大事です。やみくもに書いても意味がないですが、とはいえ実際に書いてみなければ、何が不足しているかもわかりません。そもそも最近文章を書く機会が少なくて、いざ書こうとするとなかなか書けなかった…ということに気づくかもしれません。

高評価が得られる答案は、本試験の添削者や試験対策の講師でなくても、どんな人が読んでもやはり「わかりやすい」「読みやすい」答案になっているものです。周囲の家族や友人に読んでもらうのもよいでしょう。いろんな人に読んでもらってフィードバックを得ることで、対策を進めてほしいと思います!