国家公務員の専門職とは?仕事内容や試験を解説

公務員には、ゼネラリストとしてさまざまな部署で広く経験を積む道もあれば、専門職として活躍する道もあります。

この記事では国家公務員の専門職試験でなれる専門職や、国家総合職試験・国家一般職試験などでなれる専門性の高い仕事について解説します。

専門職試験(大卒程度)でなれる専門職

専門職試験(大卒程度)を受験し合格することでなれる専門職の一例として、次のような仕事があります。

  • 矯正心理専門職
  • 法務教官
  • 財務専門官
  • 国税専門官
  • 労働基準監督官
  • 航空管制官

1つずつ見ていきましょう。

矯正心理専門職

矯正心理専門職は法務省の専門職員で、少年鑑別所や少年院、刑事施設(刑務所、少年刑務所、拘置所)などに勤務します。

心理学の専門的な知識や技術等を生かし、科学的な視点と人間的な視点の両方を持って非行や犯罪の原因を分析。対象者の立ち直りに向けた処遇指針の提示や、刑務所の改善指導プログラムの実施に携わっています。

  • 少年鑑別所:少年に対しての面接や心理検査。非行の原因分析、処遇の指針を明らかにする
  • 刑事施設:面接や心理検査。犯罪の原因分析、処遇の指針を明らかにする。受刑者の改善更生を図る
  • 少年院:少年の矯正教育の計画の策定や各種プログラムの実施などを行う

矯正心理専門職になるための試験は?

法務省専門職員(人間科学)採用試験矯正心理専門職区分>

【1次試験(筆記試験)】基礎能力試験と専門試験(択一、記述)です。専門試験は心理学領域からの出題数が非常に多くなっています。

【2次試験(人物試験)】個別面接で、心理臨床場面で必要になる判断力等についての質問が含まれるのが特徴です。

法務教官

法務教官は法務省の専門職員で、少年院や少年鑑別所などに勤務し、社会生活への適応や円滑な社会復帰を目指して教育や支援を行います。

高い倫理観と冷静な判断力、共感力などが求められる職業です。

少年院では健全なものの見方などを指導する生活指導、基礎学力をつける教科指導、職業生活を送るための職業指導を行い、関係各所と連携しながら、円滑な社会復帰を支えます。

少年鑑別所では、矯正心理専門職と協力しながら、少年との面接などを通して少年の問題性・改善可能性を探り、家庭裁判所の審判などに活用される資料を作成・提供します。

法務教官になるための試験は?

法務省専門職員(人間科学)採用試験<法務教官区分>

【1次試験(筆記試験)】基礎能力試験と専門試験(択一、記述)です。専門試験は、前項の矯正心理専門職が心理学の比重が高かったのと異なり、心理学・教育学・福祉・社会学の各分野から同数出題されます。

【2次試験(人物試験)】個別面接が行われます。

財務専門官

財務専門官は、地域に貢献する財政や金融のプロとして、全国の財務局などで勤務します。

財務省の総合出先機関として、また金融庁の事務委任を受けて、国有財産の有効活用、予算執行調査、地方公共団体への財政融資資金の貸付などの財政に関する業務と、地域金融機関の検査・監督、証券取引の監視等の金融に関する業務を担当しています。

その他財務省と金融庁の重要施策の広報、地域経済情勢の調査・分析、地域の意見・要望の本省庁への伝達等の業務も行っています。

財務専門官になるための試験は?

財務専門官採用試験

【1次試験(筆記試験)】基礎能力試験と財務専門官として必要な専門知識を見る専門試験(択一、記述)があります。専門択一試験は、憲法・行政法などの必須科目と、民法・商法などの選択科目があります。専門記述は選択解答の1題です。

【2次試験(人物試験)】個別面接が行われます。

国税専門官

国税専門官は、国税局や税務署で働く税のスペシャリストで、職種は3つに分かれています。

  • 国税調査官:納税者から適正な申告が行われているかを調査・検査し、申告に関する指導を行う
  • 国税徴収官:定められた期限までに納付されない税金を督促・滞納処分を行って税を徴収し、納税に関する指導を行う
  • 国税査察官:悪質な脱税者に対して、裁判官から許可を得て捜索・差し押さえ等の強制調査を行い、刑事罰を求めて告発する

なお、国税専門官は勤続年数に応じて税理士試験の科目免除等を受けることができます。

国税専門官になるための試験は?

国税専門官採用試験

試験の区分が法文系と理工・デジタル系に分かれていて、筆記試験の出題内容が異なります。

【1次試験(筆記試験)】基礎能力試験が共通で、専門試験の択一と記述は、法文系が民法・商法等の法律や会計学、経済学等を中心に、理工・デジタル系は基礎数学、情報数学、情報工学等を中心に出題されます。

【2次試験(人物試験)】個別面接が行われます。

また、採用後は各税務署配属前に約3カ月の専門官基礎研修を受けます。

労働基準監督官

労働基準監督官は、労働者の職業生活と健康や安全を守るのが使命です。厚生労働省本省や全国各地の労働局、労働基準監督署に勤務し、次の4つの業務を行います。

  • 監督指導業務:さまざまな職場に立ち入り、法令遵守に必要な指導などを行う
  • 司法警察業務:指導に従わないなど悪質な事案に対して、捜査を行い、検察庁に送検する
  • 安全衛生業務:建設工事の計画届の審査や、メンタルヘルス不調などの防止対策を行う
  • 労災補償業務:関係者からの聞き取りなどの調査をしたうえで、保険給付を行う

賃金不払い残業の防止や、過重労働による健康被害防止対策の推進などが期待されています。

労働基準監督官になるための試験は?

労働基準監督官採用試験

試験の区分が法文系と理工系に分かれていて、筆記試験の出題内容が異なります。

【1次試験(筆記試験)】基礎能力試験は両区分で共通です。専門試験の択一と記述は、法文系が労働法や就業構造などの労働事情を中心に、理工系は労働事情と工学事情、工学に関する数学や物理などの基礎を中心に出題されます。

【2次試験(人物試験)】個別面接が行われます。

航空管制官

航空管制官は、全国各地の航空交通管制部や空港に勤務し、航空機が安全な離着陸や航行ができるように指示を出し、情報を提供します。主な管制業務は次の3つです。

  • 飛行場管制業務:空港の管制塔から離着陸や航行の指示を出す
  • ターミナル・レーダー管制業務:空港から離陸した航空機を他の航空機と適切な距離を保ちながら上昇させ、飛行機の着陸順を決めて順番に並べる
  • 航空路管制業務:空港と空港間を飛行する航空機に指示を出し、国内機だけでなく外国からの通過機にも管制業務を提供

航空管制官になるための試験は?

航空管制官採用試験

他の試験でも行われる基礎能力試験や個別面接などの他に、独自の内容の試験も行われます。

航空管制官に必要な記憶力や空間把握能力を見る適性試験(筆記試験、シミュレーション試験)や、外国語試験として英語の聞き取りと択一、英会話、身体検査・身体測定が実施されます。

採用後は、航空保安大学校で約8カ月の基礎研修を受けた後、各地に配属されます。

その他の専門職

皇宮護衛官

皇宮警察本部に所属し、皇族の護衛と皇居などの警備を専門に行います。

皇族の護衛を担当する護衛部門、皇居や京都御所等を警備し、園遊会等の行事の際の警備に必要な企画・立案を担当する警備部門、円滑な活動を支える管理業務担当の警務部門に分かれます。

食品衛生監視員

輸入食品等の安全性を確保するため、全国の主な海・空港の検疫所で、食品衛生法に基づいて審査や検査を行います。

輸入食品の安全監視および指導、輸入食品等の理化学的・微生物学的試験検査、検疫感染症の国内への侵入防止の業務を担当します。

海上保安官

国民が安心して海を利用できるように、海上の安全と治安を守るため、海上の警察や消防などを担っています。

巡視船艇や航空機で警戒・監視する領海警備、海難発生時の迅速な救助、船舶の火災・転覆などの事故災害や津波・台風などの自然災害への対応、海上事故防止のための海上交通安全対策、環境保全の啓発など、職務内容は非常に多岐に渡ります。

総合職試験・一般職試験などでなれる専門性の高い仕事

ここまで見てきたような専門職ごとの試験で採用されるパターンだけではなく、国家公務員総合職試験・一般職試験などでなれる専門性の高い仕事もあります。

総合職試験などでなれる専門性の高い仕事 

外務省職員

外務省で働く職員で、特に海外の大使館など在外公館で働く人は外交官と呼ばれます。

日本の国益を守り、平和で安全な国際社会の発展に寄与するのが使命で、世界中の国・地域や国際機関との関係構築、安全保障、経済外交、国際協力など幅広い分野を担当します。

日本の本省では外交政策の企画・立案を担い、海外の在外公館では最前線で国際社会の中の日本と日本国民の利益追求のための業務を行います。

国家総合・一般職試験のほか、各言語のスペシャリストを採用する外務省専門職員採用試験があります。

このほか、採用は理系(技術系)区分に限られますが次のような仕事もあります。

自然保護官(レンジャー)

国立公園の保護地域の指定や管理、施設の整備、野生生物の保護、失われた自然の再生、環境調査など幅広い業務を担当する環境省の自然系職員です。

本省勤務は計画立案などが多く、全国各地の事務所等では最前線で自然環境保全に取り組みます。

特許審査官

さまざまな発明を守り、イノベーションを促す役割を担う特許庁に勤務し、出願された発明について特許法や審査基準に基づいて発明内容を理解し、過去の類似の技術がないか探し、特許性を判断します。

一般職試験でなれる専門性の高い仕事

一般職試験合格後、各省庁に採用されることで就くことができる専門性の高い仕事をご紹介します。

入国審査官

法務省の出入国在留管理庁所属で、日本を訪れる外国人の出入国審査や、日本人の出帰国の確認、外国人の在留資格審査を行い、難民認定業務も担当します。

日本の安全と国民生活を守りながら、国際交流の発展に貢献するのが使命です。

検察事務官

検察庁所属で、検察官を補佐し、犯罪の捜査から裁判、刑の執行までの一連の刑事手続に関する業務を行います。証拠書類作成、証拠品の受け入れや保存、事件の受理手続き、弁護人など訴訟関係者との連絡・調整など多岐に渡ります。

被害者保護や、総務・人事等の後方支援業務も担当します。

麻薬取締官

厚生労働省所属で、麻薬や覚醒剤、大麻などの薬物乱用を防ぐため、非合法に取引されている薬物の取り締まりや、医療用薬物の不正流通防止のため監視・監督等を行います。

薬物犯罪の捜査や、犯罪現場から押収された薬物の鑑定、各国捜査機関との情報交換のほか、薬物乱用防止の啓発活動も担当します。

まとめ

この記事では国家公務員の専門職について、仕事の内容や採用試験についてご紹介しました。

  • 国家公務員の専門職は、独自の採用試験を行っていることが多い
  • 筆記試験や適性試験などで、専門分野に関する能力を問われる場合も
  • 国家総合職や一般職試験の中にも専門性の高い職種がある

国家公務員は教養試験だけでなく専門試験が行われる場合が多く、その分出題範囲も広くなります。合格に必要な部分だけ効率的に学習できるスタディング 公務員講座で、スキマ時間も有効活用して合格を目指しませんか。