公務員の家賃補助(住居手当)の条件・金額
公務員の家賃補助(住居手当)とは、その名の通り公務員の住居にかかる家賃の一部を補助する手当のことです。
ただし支給の対象となるのは、賃貸の物件に住んでいる場合のみです。持ち家に住んでいる場合は、支給対象外となります。
なお国家公務員の住宅手当については、「人事院規則」によって定められています。地方公務員の住宅手当の条件や金額は、自治体ごとに定められています。
国家公務員の家賃補助の金額
国家公務員の家賃補助は、月額1万6,000円を超える家賃を支払っている職員に対し、月額2万8,000円を上限に支給されます。
なお、配偶者等が借家・借間に居住する単身赴任手当受給職員の場合は、月額1万4,000円を上限に支給されます。
地方公務員の家賃補助の金額
地方公務員の家賃補助の金額や支給の条件は、給与の額と同様に自治体によってさまざまです。
以下は、例として関東地方の自治体における家賃補助制度をピックアップしてまとめた表です。
多くの自治体は国の支給額や条件と同等に設定をしていますが、都内の市町村や横浜市など独自の基準や金額を設けている場合もあります。
自治体 | 住居手当の金額 | 支給条件 |
都内の市町村
(立川市・島しょ部を除く) |
月額1万5,000円 | 35歳未満 |
横浜市 | 月額1万9,600円 | 41歳未満 |
埼玉県 | 月額2万8,000円(上限) | 月額1万6,000円を超える家賃を支払っている |
千葉県 | 月額2万8,000円(上限) | 月額1万6,000円を超える家賃を支払っている |
【計算】自己負担が最小になるケースは?
家賃補助が受けられる場合、いくらくらいの家賃の家に住むと自己負担を最小にできるのでしょうか。
国家公務員の場合(月額1万6,000円を超える家賃を支払っている職員に対し、月額2万8,000円を上限に支給)で解説します。
まず、家賃補助の支給額の求め方は次のとおりです。
家賃 | 家賃補助 |
1万6,001円以上、2万7,000円以下 | 家賃の金額 − 1万6,000円 |
2万7,001円以上 | (家賃の金額 − 2万7,000円)÷ 2 + 1万1,000円 |
なお(家賃 − 2万7,000円)÷ 2 が1万7,000円を超える場合の家賃補助は、一律で2万8,000円です。
家賃補助の金額が計算できたら、家賃の自己負担率を計算します。計算式は次のとおりです。
(家賃の金額 – 家賃補助の金額) ÷ 家賃の総額
この式をもとに1,000円単位で計算をしていくと、家賃6万1,000円のときに自己負担率が最も低い結果となりました(自己負担率54.1%)。
家賃がこれ以上の金額になると、自己負担率も増える傾向にあります。
家賃補助をうまく活用したい場合は、なるべく6万1,000円以下の物件に住むとよいでしょう。
家賃補助を受け取れる年齢
国家公務員の場合、賃貸であれば定年まで家賃補助を受け取ることができます。
地方公務員の場合、いつまで家賃補助を受けられるかは自治体によってさまざまです。
国家公務員と同様に定年まで受け取れる自治体もあれば、前述した都内の市町村や横浜市のように年齢制限を設けている自治体もあります。
家賃補助の対象
国家公務員関係法令等で、家賃補助の対象とならない費用が定められています。
例えば、敷金、礼金、保証金、管理費、共益費、町内会費、駐車場代、水道光熱費といった費用は「家賃」補助には含まれないため、注意しましょう。
家賃補助(住居手当)のさまざまなパターン
ここまでは、公務員の家賃補助に関する概要をご紹介してきました。
ここからは、国家公務員における同棲や持ち家、単身赴任の場合など、さまざまなパターンにおける家賃補助について解説します。
同棲の場合
公務員が同棲をする場合、家賃補助を受け取ることは可能です。
ただし家賃補助がもらえるのは、同棲するカップルのうちどちらか1人のみです。
同棲をするのが「2人とも公務員」「1人は公務員でもう1人は会社員」のいずれのパターンでも世帯主1人しか申請できないため注意しましょう。
自分も配偶者も公務員の場合
結婚をしている夫婦で、自分も配偶者も公務員であるという場合も、前述の「同棲の場合」と同じです。
家賃補助が支給されるのは、その部屋の世帯主である1人のみとなります。夫婦の双方が公務員でも、2人分の家賃補助を受けることはできません。
2人分を申請して、家賃補助の二重取りになってしまわないように注意してください。
自分は公務員で配偶者は会社員の場合
自分が公務員で配偶者は民間企業の会社員である場合も、基本的に家賃補助は世帯主である1人しか受け取ることができません。
自分が所属する自治体か配偶者が働いている企業のいずれかに家賃補助を申請します。
公務員だけでなく、多くの企業でも家賃補助の二重取りは禁止されています。注意してください。
家族の持ち家に家賃を払って住んでいる場合
公務員が家族の持ち家に家賃を払って住んでいる場合、住居手当は支給されません。
国家公務員の持ち家に対する住居手当は2009年(平成21年)に廃止されました。
それにならって、総務省は地方自治体に対しても、同様の廃止を基本とした検討を助言しています。
シェアハウスに住む場合
シェアハウスに住む場合、複数人で同居をしていても生計は個々で立てることになります。
そのため、基本的には入居者の一人一人が世帯主になることが可能です。
世帯主として住民登録をすれば、一般の賃貸物件に住む場合と同じように家賃補助を受け取ることができると考えられます。
産休中・育休中の場合
公務員の場合、産休中も家賃補助が変わらず毎月支給されます。なお、産休中は毎月の給与も同額を受け取れます。
ただし、育休中は住居手当も給与も支給されませんので注意してください。
単身赴任の場合
公務員が単身赴任をして、配偶者は引き続き自宅に住む場合も、住宅手当を受け取ることは可能です。
公務員本人が単身赴任手当を受給している場合、本人が単身で住む住宅に対しても、配偶者等が住む住宅に対しても住宅手当が支給されます。
【Q&A】公務員の収入に関するよくある質問
ここまでは、公務員の家賃補助について説明してきました。
ここからは、公務員の収入に関するよくある質問について解説していきます。
公務員の平均年収は?
人事院の「令和5年国家公務員給与等実態調査の結果」によると、国家公務員の行政職俸給(一)適用職員(一般行政事務職員など)の平均給与月額は40万4,015円です。
これをもとに試算すると、全体の平均年収は約663万円となります。
総務省の「令和4年地方公務員給与実態調査」によると、全国(すべての地方公共団体)の地方公務員(一般行政職)の平均給与月額は40万1,372円です。
これをもとに試算すると、平均年収は約638万円となります。
【あわせて読みたい】公務員の年収・初任給・ボーナスは?年齢や勤務先による違いも解説
公務員には家賃補助以外にどんな手当がある?
公務員にはさまざまな手当があり、手当の種類や内容については法律で定められています。
国家公務員の場合は、次のような手当があります。
生活補助給的手当 | 扶養手当、住居手当、通勤手当、単身赴任手当など |
地域給的手当 | 地域手当、広域異動手当、特地勤務手当、寒冷地手当など |
職務の特殊性に基づく手当 | 俸給の特別調整額、管理職員特別勤務手当、特殊勤務手当など |
時間外勤務等に対して支給する手当 | 超過勤務手当、休日給、夜勤手当、宿日直手当など |
賞与等に相当する手当 | 期末手当、勤勉手当など |
【あわせて読みたい】公務員の主な福利厚生一覧!手当・休暇・割引などで私生活が充実(近日公開)
公務員は副業できる?
公務員の副業は原則として禁止ですが、内容によっては認められるものもあります。
また近年は、さまざまな自治体で部分的に副業を解禁する流れもみられるようになり、公務員の働き方はアップデートされています。
公務員の副業が禁止されている理由や、全国各地でさまざまな副業が解禁された事例、そして副業として認められる事例・認められない事例については、こちらの記事で解説します。
【あわせて読みたい】公務員でもできる副業とは?副業解禁の具体例も紹介(近日公開)
公務員はどんなふうに昇給する?
国家公務員の給料は、「俸給表」の「級」×「号俸」で支給額が決まります。これと同様の仕組みで、地方公務員の給料は「給料表」の「級」×「号給」で決まります。
給料が上がるタイミングは、年1回など定期的に号給が上昇するときで、地方公務員の場合はほとんどの自治体で「年1回、4号ずつ」上がるのが基本です。
また、主任から課長代理になるなど昇進して級が上昇するときにも昇給します。
【あわせて読みたい】公務員の昇給の仕組みは?上がる仕組みや金額を解説
まとめ
今回は、公務員の家賃補助について解説しました。
- 国家公務員の家賃補助は、月額2万8,000円を上限に支給される
- 地方公務員の家賃補助は、国家公務員に準じた制度のほか、自治体ごとの年齢制限や金額の上限が定められている場合もある。
- 家賃補助が受け取れるのは賃貸物件の場合のみで持ち家には支給されない
- 家賃補助を申請できるのは世帯主のみ。夫婦・カップルが2名とも申請することは不可
「スタディング 公務員試験講座」は、公務員を目指す方に役立つオンライン通信講座です。
学校や仕事で忙しい人でも短期間で効率的に公務員試験合格が目指せるカリキュラムを提供しています。
講座の内容は無料で体験できますので、ぜひチェックしてみてください。