公務員には通勤手当があります。「通勤手当が出る範囲内で、なるべく家賃が抑えられる場所に住みたい」という人も多く、うまく活用すれば家計の負担を軽減できるでしょう。
ただし、公務員が通勤手当の不正受給で懲戒処分を受けた事例は度々報道されています。ルールを理解し、正しく利用することが大切です。
この記事では、国家公務員・地方公務員の通勤手当や、実際にあった懲戒処分の事例について解説します。

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公務員の通勤手当とは?
公務員の通勤手当とは、公共交通機関や自動車などを使って通勤する公務員に支給される手当です。国家公務員、地方公務員の通勤手当について、支給要件や上限額などについて解説します。
国家公務員の通勤手当
国家公務員の通勤手当は、「一般職の職員の給与に関する法律(第十二条)」および「人事院規則(九―二四)」にて支給要件や上限額などが決められています。
まず、支給要件は下記の通りです。これらがすべて満たされる場合に通勤手当が支給されます。
- 通勤距離が片道2km以上である
- 通勤のために公共交通機関や自動車など(原付・自転車を含む)を使用している
- 通勤のために運賃・料金などが発生する場合に、それを負担している
支給上限額は月5万5,000円です。
公共交通機関を使用する場合、運賃、時間、距離などを考慮して最も安価かつ合理的と認められる通勤方法で計算されるため、基本的には6カ月定期券などの価格から計算することとなっています。
1カ月の上限額である5万5,000円でどれくらい遠方から通勤できるのか、試算してみましょう。東京メトロ「霞が関駅」を最寄り駅とする本府省勤務の場合、運賃が5万5,000円に近いのは茨城県「水戸駅」や群馬県「前橋駅」などになります(いずれも6カ月定期券の場合)。
なお、上記はあくまでイメージです。勤務時間や通勤にかかる時間も考慮すると、より職場に近いエリアに居住するほうが現実的でしょう。
また、自動車などを使用する場合は、通勤距離に応じて2,000〜3万1,600円が支給されます。
地方公務員の通勤手当
地方公務員の通勤手当については、各自治体ごとに条例などにより支給額が定められているため一概には言えませんが、概ね国家公務員と同程度の水準となっています。
例:神奈川県の通勤手当
神奈川県職員の通勤手当は、「支給要件」「ひと月あたりの支給上限額が5万5,000円」「交通用具の使用距離に応じた支給金額」などは国家公務員と同一です。
ただし、公共交通機関を使用する場合のひと月当たりの運賃相当額によっては、下記の計算式を当てはめます。
▼1カ月あたりの運賃相当額が4万5,000円超~4万5,600円未満の場合
4万5,000円+(1カ月あたりの運賃相当額-4万5,000円)÷2
1カ月あたりの運賃相当額が4万5,600円以上の場合
1カ月あたりの運賃相当額-300円
それぞれ、上記で出した金額に支給単位期間の月数を掛けたものが通勤手当として支給されます。
上記のように自治体により細かな違いがあるため、気になる方は採用を希望する自治体の条例などを確認してください。
【参考】神奈川県「令和5年度 神奈川県の給与・定員管理等について」
公務員が通勤手当の不正受給で懲戒処分となった事例
公務員の通勤手当は明確なルールによって支給されていますが、残念ながらそのルールが守られず不正受給となっていた事例が度々報道されています。
もちろん、不正受給が判明した職員は懲戒処分などのペナルティを受けることになります。
ここで、過去に実際にあった不正受給の事例を確認していきましょう。
【事例1】届出より近い場所から通勤した
大阪府の女性職員は、電車通勤するとして届け出ていたにもかかわらず、その区間よりも職場に近い友人宅からの通勤を8年間に渡って行っていました。
これにより通勤手当44万8,810円を不正受給し、減給6カ月(10分の1)という懲戒処分を受けました。
【参考】読売新聞オンライン「通勤手当を不正受給、職員3人を懲戒処分…職場に近い友人宅から通う・一部区間を徒歩や自転車で」
【事例2】電車通勤なのに徒歩・自転車も併用した
大阪府の職員2名は、電車通勤と申告したうえで一部区間を徒歩や自転車で通勤し、それぞれ5万9,947円と7,534円を不正に受給しました。
これにより1名は減給3カ月(10分の1)、もう1名は減給1カ月(10分の1)の懲戒処分となっています。
【参考】読売新聞オンライン「通勤手当を不正受給、職員3人を懲戒処分…職場に近い友人宅から通う・一部区間を徒歩や自転車で」
【事例3】住所変更の申請を行わなかった
宮城県の仙南消防本部の男性消防士は、アパート解約後に必要な申請手続きを行なわず、住居手当29万4,000円と通勤手当8万7,100円の計38万1,100円を不正受給しました。
これにより減給1カ月(10分の1)の懲戒処分を受け、その後依願退職しています。
このほかにも松山市の男性職員は、生活拠点を移した後の住所変更申請を怠り、住居手当72万8,000円と通勤手当16万7,400円の計89万5,400円を不正に受給したとして訓告処分となりました。
市は時効にかからない84万9,600円について返還を請求しました。
いずれのケースでも不正受給分を全額返還しています。
【参考】ミヤテレNEWS NNN「消防士が約38万円不正受給し懲戒処分 全額返還し依願退職<宮城>」
【参考】あいテレビ「松山市の男性職員が住居手当と通勤手当 計約90万円を過大受給」
【事例4】自転車通勤なのに徒歩で通勤した
神戸市の小学校に勤務する男性調理師は、自転車通勤をすると届け出ているにもかかわらず徒歩や妻の自家用車で通勤し、約3万円の通勤手当を不正受給。これにより戒告処分となりました。
【参考】神戸新聞NEXT「通勤手当3万円を不正受給 届け出と異なり、徒歩や妻の車で 神戸市が給食調理師を処分」
故意かどうかは関係なく、各種手当の不正受給は決して許される行為ではありません。
ルールをきちんと理解したうえで遵守し、変更手続きなどが必要になった際には迅速かつ正確に申請するように気を付けていきましょう。
【Q&A】公務員の給与・手当に関するよくある質問
最後に、公務員の給与・手当に関するよくある質問について解説していきます。
公務員のメリット・デメリットは?
公務員のメリットとして主に挙げられるものは下記のとおりです。
- 休暇が充実しており、民間企業よりも年間休日数が10日ほど多い
- 各種手当や祝金、年金制度など、福利厚生が充実している
- 平均年収が民間企業の平均よりも高額である
- 倒産やリストラのリスクが低く、安定している
- 国や自治体を動かすような仕事に携われるなど、公務員ならではのやりがいを感じられる
それに対して、デメリットには下記のような点が挙げられます。
- 住民からクレームを受けることがある
- 原則として、副業ができない
- 法律や前例に沿うよう求められるため、自由度高く動けない場合がある
どんな職業にもメリットとデメリットがあるものですが、働きやすさや安定性、やりがいなどさまざまな面において、公務員は非常に魅力的な職業といえるでしょう。

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公務員の年収は?
人事院の「令和5年国家公務員給与等実態調査の結果」によると、国家公務員でもっとも人数が多い行政職俸給(一)適用職員の平均給与月額は40万4,015円です。
また、ボーナス支給額は年間4.5ヶ月分とされています。
これらをもとに、平均年収を「平均給与月額12カ月分+賞与4.5カ月分」の計算式で試算すると、平均年収は約667万円となります。
まとめ
今回は、公務員の通勤手当について解説しました。
- 通勤手当を受給するには、支給要件を満たす必要がある
- 地方公務員の場合、自治体によって支給額などが異なるため確認が必要
- ルールを遵守することが大切であり、もしも不正受給した場合には懲戒処分の対象となる
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