国家公務員の試験内容は?総合職・一般職の試験日程や流れ、難易度を解説

国家公務員を目指すなら、まず試験内容を正しく理解することが大切です。

国家公務員試験は総合職・一般職・専門職など複数の区分があり、それぞれ試験科目や難易度が大きく異なります。

この記事では、各試験の具体的な内容、日程、採用までの流れ、効果的な対策をわかりやすくご紹介します。

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国家公務員試験は大別すると4種類

国家公務員の試験は、大きく分けると以下の4種類に分けられます。

  • 総合職試験
  • 一般職試験
  • 専門職試験
  • その他試験

総合職は国の政策の企画・立案などを行います。

一方、一般職は政策を現場で動かすのが仕事です。

皇宮護衛官や国税専門官などは専門職とされます。

その他に、民間企業などの経験者や、就職氷河期世代を採用する枠もあります。

ここでは、それぞれの試験について紹介します。

総合職試験

国家公務員総合職試験は、中央省庁において政策の企画立案などの中枢業務を担う、いわゆる「キャリア官僚」を採用する試験です。

将来的には幹部職員として国の重要な政策決定に関わることが期待されています。

試験区分は以下の3つです。

  • 院卒者試験
  • 大卒程度試験
  • 教養区分

総合職の試験は1次試験・2次試験が実施されます。

試験内容は、区分ごとに以下のとおりです。

【院卒者試験(法務区分を除く)】

試験試験種目
1次試験基礎能力試験(多肢選択式)専門試験(多肢選択式)
2次試験専門試験(記述式)政策課題討議試験人物試験(個別面接)

【院卒者試験(法務区分)】

試験試験種目
1次試験基礎能力試験(多肢選択式)
2次試験政策課題討議試験人物試験(個別面接)

【大卒程度試験】

試験試験種目
1次試験基礎能力試験(多肢選択式)専門試験(多肢選択式)
2次試験専門試験(記述式)政策論文試験人物試験(個別面接)

【教養区分試験】

試験試験種目
1次試験基礎能力試験(多肢選択式)総合論文試験
2次試験企画提案試験政策課題討議試験人物試験(個別面接)

TOFELやTOEIC、IELTS、実用英語技能検定といった外部の英語試験のスコアを提出すれば、総得点に加点できる区分もあります。

▼試験の流れ

試験から採用内定までの流れは次の通りです。

2025年度院卒者試験の場合
  1. インターネットによる受験申込
  2. 1次試験
  3. 1次試験合格発表
  4. 2次試験(筆記試験)
  5. 2次試験(政策課題討議・人物試験)
  6. 最終合格発表
  7. 官庁訪問
  8. 採用内定

「最終合格=採用」ではなく、官庁訪問し、希望する省庁の面接を受けることで内定が決まります。

▼試験日程

総合職試験の2025年度の日程は次の通りです。

受付期間2月3日9:00~2月25日(受信有効)
1次試験3月16日
1次試験合格者発表3月31日9:00
2次試験・筆記試験4月13日
2次試験・院卒者試験政策課題討議試験・人物試験5月7日~5月16日のうち、通知書で指定された日時
2次試験・大卒程度試験人物試験4月21日~5月16日のうち、通知書で指定された日時
最終合格者発表5月30日16:00

一般職試験

国家公務員一般職試験は、中央省庁において事務処理や窓口業務など、行政運営の基盤となる実務を担当する職員を採用する試験です。

総合職と比べて政策の企画立案よりも、決定された政策の実行や日常的な行政事務に従事することが主な業務となります。

一般職試験の試験区分は、主に以下の3つです。

  • 大卒程度試験
  • 高卒者試験
  • 社会人試験

一般職試験も総合職同様、1次試験と2次試験があります。

試験内容は区分ごとに以下のとおりです。

【大卒程度試験(行政区分)】

試験試験種目
1次試験基礎能力試験(多肢選択式)専門試験(多肢選択式)一般論文試験
2次試験人物試験(個別面接)

【大卒程度試験(教養区分)】

試験
試験種目
1次試験基礎能力試験(多肢選択式)課題対応能力試験(多肢選択式)一般教養論文試験
2次試験人物試験(個別面接)

【高卒者試験(事務、社会人経験など)】

試験試験種目
1次試験基礎能力試験(多肢選択式)適性試験(多肢選択式)作文試験専門試験(多肢選択式)
2次試験人物試験(個別面接)

▼試験の流れ

試験から採用内定までの流れは次の通りです。

大卒程度は2025年度、高卒者・社会人は2024年度の場合
  1. インターネットによる受験申込
  2. 1次試験
  3. 1次試験合格発表
  4. 大卒程度:官庁訪問
  5. 2次試験(人物試験)
  6. 最終合格発表
  7. 各省庁での採用面接を経て採用内定

総合職同様、大卒程度は官庁訪問、高卒者・社会人試験は省庁の面接を受けることで内定が決まります。

▼試験日程

一般職試験の2025年度の日程は次の通りです。

【大卒程度】

受付期間2月20日~3月24日(受信有効)
1次試験6月1日
1次試験合格者発表6月25日
2次試験7月9日~7月25日のうち、通知書で指定された日時
最終合格者発表8月12日

【高卒者・社会人経験】

受付期間6月13日~6月25日(受信有効)
1次試験9月7日
1次試験合格者発表10月9日
2次試験10月15日~10月24日のうち、通知書で指定された日時
最終合格者発表11月18日

専門職試験

国家公務員専門職試験は、特定の専門分野における高度な知識や技能を活かして業務を行う職員を採用する試験です。

国税専門官、労働基準監督官、財務専門官、航空管制官など、それぞれの分野で専門性を発揮し、国民生活に直結する重要な業務を担当します。

専門職試験も、総合職試験・一般職試験同様、1次試験と2次試験で構成されています。

 

総合職・一般職は官庁訪問を経て内定となりますが、専門職は、合格すれば希望した官庁で採用されます。

試験内容は職種ごとに異なるため、詳しくは人事院・国家公務員試験採用情報NAVIを確認していただいた方が良いでしょう。

多くの1次試験は、以下の試験種目になっています。

  • 基礎能力試験(多肢選択式)
  • 専門試験(多肢選択式)
  • 専門試験(記述式)

2次試験は人物試験(個別面接)のみの試験もあれば、職種によっては身体検査や身体測定が行われる場合もあります。

▼試験区分

専門職試験の採用区分は「大学卒業程度」と「高校卒業程度」に分けられます。

大卒程度の試験が実施されるのは、以下のとおりです。

  • 皇宮護衛官(大卒程度試験)
  • 財務専門官
  • 食品衛生監視員
  • 航空管制官
  • 法務省専門職員(人間科学)
  • 国税専門官
  • 労働基準監督官
  • 海上保安官

一方、高卒程度の試験が実施されるのは以下のとおりです。

  • 皇宮護衛官(高卒程度試験)
  • 刑務官
  • 入国警備官
  • 税務職員
  • 航空保安大学校学生
  • 気象大学校学生
  • 海上保安大学校学生
  • 海上保安学校
  • 同学校特別

▼試験の流れ

試験から採用内定までの一般的な流れは、次のとおりです。

  1. インターネットによる受験申込
  2. 1次試験
  3. 1次試験合格発表
  4. 2次試験
  5. 最終合格発表

試験によっては、最終合格者発表後に各省庁で面接をし、採用となります。

また、採用後に研修期間を設けているものもあります。

航空管制官と海上保安官は、それぞれ航空保安大学校、海上保安大学校での研修を修了しなければなりません。

▼試験日程

試験によって日程が異なるので、詳しくは人事院・国家公務員試験採用情報NAVIを確認してください。

1次試験は大卒程度が5月、高卒程度が主に9〜10月に実施されています。

その他の試験

その他の国家公務員試験として以下があります。

  • 経験者採用試験
  • 中途採用者選考試験(就職氷河期世代)
  • 障害者選考試験

いずれの試験も他と同じように、1次試験と2次試験があり、筆記による基礎能力試験と個別面接が課せられます。

経験者採用の場合は、これまでの勤務経験に関する論文試験があります。

 

区分によっては、政策課題討議や外国語試験もあるようです。

また、経験者試験のほとんどの区分は3次試験があり、再度個別面接が設けられています。

▼試験区分

それぞれの試験区分は次の通りです。

試験の種類
試験区分
経験者採用試験経験者採用試験(係長級/事務)
総務省経験者採用試験(係長級/事務)
国税庁経験者採用試験(国税調査官級)など
中途採用者選考試験職種と勤務地で区分される
障害者選考試験採用時の勤務地で区分される

▼試験の流れ

いずれの試験も、申し込みから採用までの流れは次の通りです。

  1. インターネットによる受験申込
  2. 1次試験
  3. 1次試験合格発表
  4. 2次試験
  5. (多くの経験者採用試験で3次試験)
  6. 最終合格発表

▼試験日程

試験区分によって日程が異なるため、詳しくは人事院・国家公務員試験採用情報NAVIを確認してください。

1次試験はこれまで、経験者採用試験が9月下旬、中途採用者選考試験が10月下旬、障害者採用者選考試験は9月中旬に実施されています。

国家公務員試験の内容

ここまで、国家公務員試験はいずれも1次試験・2次試験で構成されていることを説明しました。

では、試験はどのような内容となっているのでしょうか。

筆記試験が課せられる1次試験、人物試験となる2次試験について詳しく解説します。

1次試験

国家公務員の1次試験は、どの試験区分でも筆記試験が課せられます。

1次試験の内容は、主に以下のとおりです。

  • 基礎能力試験(多肢選択式)
  • 専門試験(多肢選択式)
  • 論文試験
  • 専門試験(記述式)

それぞれの出題内容について詳しく見ていきましょう。

▼基礎能力試験(多肢選択式)

基礎能力試験(多肢選択式)では、公務員として必要な基礎的な能力を問われます。

出題範囲は、主に高校までに学習する内容が対象となります。

内容は、一般知能分野(数的処理、文章理解)と一般知識分野(人文科学、自然科学、社会科学)の大きく二つに分けられます。

▼専門試験(多肢選択式)

専門試験(多肢選択式)では、試験区分に応じて必要な専門的知識について出題されます。

出題範囲は大学で学習する内容です。

多くの受験生が希望する事務職の区分であれば、法律系科目・経済系科目・行政系科目から出題されます。

▼論文試験

論文試験は主に、国家総合職の大卒程度試験や教養区分試験、国家一般職試験で出題されます。

行政課題や社会問題などについて、自分の考えを論じるという形式です。

「どのように取り組めばよいか」を尋ねる「政策系」の出題が多いようです。

文章による表現力や、課題に対する理解力などが問われます。

▼専門試験(記述式)

記述式の専門試験は、国家総合職の院卒者試験や大卒程度試験、専門職試験などで出題されます。

専門科目の知識について、文章で論述するという形式です。

基本的には専門択一試験の対策が前提です。

その延長線上で、知識を論理的に文章化できるように練習しましょう。

2次試験

国家公務員の2次試験は、どの試験でも人物試験が課せられます。

課せられるのは以下の2つのいずれか、もしくは両方です。

  • グループディスカッション(政策課題討議)
  • 個別面接

それぞれの試験内容について解説します。

▼グループディスカッション(政策課題討議)

主に総合職の院卒者試験、大卒程度試験・教養区分で課せられます。

特定のテーマについて受験生同士が討論して結果を導くもので、相対評価になるのが特徴です。

プレゼンテーション能力やコミュニケーション力などが問われます。

▼個別面接

個別面接は、どの試験でも必ず実施されます。

その名の通り、受験生が1人で深堀りされる面接です。

面接を通して、人柄や対人能力などを見られます。

試験区分によってはストレス耐性などもチェックされます。

英語試験

総合職の院卒者試験・大卒程度試験では、外部の英語試験のスコアが加算される制度があります。

対象となるのは、TOEFL、TOEIC、IELTS、実用英語技能検定での得点です。

最終合格者が決定した際、スコアに応じて、総得点に加点されます。

 

対象となるのは、試験年度の4月1日からさかのぼって、5年前の日以降(2025年度試験の場合、2020年4月1日以降)に受験したものです。

加算点は次の通りです。

  • 15点加算:TOEFL65以上80未満、TOEIC600以上730未満、IELTS5.5以上6.5未満
  • 25点加算:TOEFL80以上、TOEIC730以上、IELTS6.5以上、英検1級または準1級

国家公務員試験の難易度

公務員試験の中でも、国家公務員総合職が最も難易度が高いと言われています。

いわゆる「キャリア官僚」は公務員の中でもトップレベルの存在です。

出題される問題自体の難易度が極めて高いだけでなく、高学歴といわれる受験生が集まるため、レベルが高くなります。

以下の表は、2024年度の総合職(大卒・法律区分)と一般職(大卒・行政区分)の倍率です。

試験区分申込者数1次試験受験者数1次試験合格者数2次試験受験者最終合格者最終倍率
国家総合職(大卒・法律区分)7,3256,18570148529620.9
国家一般職(大卒・行政区分)20,72015,1238,7087,5906,0752.5

※最終倍率は1次試験受験者数÷最終合格者数で算出
※小数点以下第2位は四捨五入

【参考】国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験) 実施状況
【参考】国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)実施状況

国家公務員試験に合格するための対策

ここからは、国家公務員試験に合格するための対策について紹介します。

  • 遅くても1年前から勉強を始める
  • よく出る科目から優先して学習する
  • 過去問演習を重点的に行う

試験は出題範囲が広いため、計画的に学習を進める必要があります。

筆記試験から論文・面接までポイントを押さえて学習し、合格を手にしましょう。

遅くても1年前から勉強を始める

公務員試験に向けた勉強は、試験の1年前を目安にスタートさせる人が多いようです。

出題範囲が広く、合格するには1,000時間の勉強が必要と言われているためです。

必要な勉強時間は目指す職種のレベルによっても異なります。

 

総合職の場合、1,200〜1,500時間程度の勉強が必要とされています。

勉強計画は試験日から逆算し、平日と休日のバランスを考慮したスケジュールを立てることが合格のカギとなります。

よく出る科目から優先して学習する

前述の通り、1次試験では「数的処理」と「文章理解」が必ず出題されるので、最優先で対策が必要です。

数的処理は中学受験の算数のような内容で、中学校の数学までの知識があれば、解くことができます。

解法パターンをしっかり身に付けておきましょう。

 

文章理解はセンター試験・共通テストのレベルの現代文と英文が出題されます。

特に単語力を上げることが重要です。

2科目とも解法パターンなどのインプットは早めに済ませた上で、問題を解きながら出題形式に慣れましょう。

過去問演習を重点的に行う

筆記試験の対策にあたって必要不可欠となるのが過去問です。

本試験は過去問の数値やシチュエーションを変えただけの出題が多いためです。

国家公務員試験の過去問は、人事院のサイトから無料でダウンロードすることができますので、活用しましょう。

 

どのように出題されるのかを分析し、聞き方の定番を押さえることも大切です。

「定番の聞き方ではないから、難易度が高い問題だろう」という判断力を身に付けるためにも、過去問演習が必須となります。

面接・論文対策にも力を入れる

先に述べた通り、国家公務員試験でも2次試験は必ず面接があり、人物重視の傾向が強まっているように見られます。

また、区分によっては論文も課せられるので、どちらも対策に力を入れましょう。

ただ、面接・論文対策は独学で進めるのは難しいです。

 

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まとめ

今回は国家公務員試験の内容や採用までの流れ、難易度について紹介しました。

  • 国家公務員は総合職、一般職、専門職などの採用枠に分けられる
  • 総合職・一般職大卒程度試験は、官庁訪問をしなければ採用内定を得られない
  • いずれの試験も筆記試験の1次試験と、人物試験の2次試験で構成される
  • 国家総合職の難易度は公務員の中でも最も高く、倍率は20倍程度の区分もある
  • 合格には1,000時間の勉強が必要のため、1年前を目安に計画的に学習しよう

国家公務員試験には筆記試験のみならず、論文・面接の対策をしっかり進めて臨む必要があります。

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