
地方公務員になるには、各自治体が実施する採用試験に合格する必要があります。
試験区分は上級・中級・初級に分かれ、試験内容や日程は自治体ごとに異なります。
市町村職員や都道府県職員、公安系職員など職種もさまざまです。
受験資格や採用スケジュールを確認し、自分に合った職種を目指しましょう。
地方公務員になるには?
地方公務員になるには、各自治体が実施する採用試験に合格する必要があります。
試験区分は、主に以下の3つです。
- 上級(大卒程度)
- 中級(短大卒程度)
- 初級(高卒程度)
上級のことを「Ⅰ類」「Ⅰ種」「大卒程度」と呼ぶなど、自治体によって名称が異なる場合もあります
なお上級は、都道府県庁や政令指定都市(横浜市、大阪市など)の大卒程度区分の試験を指します。
政令指定都市以外の市町村(普通の市役所・町役場など)は、独自に「市役所試験」を実施しており、上級とは別の扱いになることが多いです。
近年は、SPIやSCOAのなどの採用テストを実施する自治体も増加しています。
試験内容は教養試験や専門試験、面接試験などで構成され、自治体によって異なるため、詳しくは各自治体のサイトや説明会などで確認しましょう。
合格後は各自治体の職員として、市民生活を支えるさまざまな業務に携わることができます。

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公務員とは、国の機関や地方公共団体の職員として働く人のことです。警察官や消防官、公立学校の教員なども公務員に含まれます。民間企業での採用試験と同様に、公務員…
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地方公務員の種類と試験概要
地方公務員の種類は、以下のとおりです。
- 市町村職員
- 都道府県職員
- 政令指定都市職員
- 東京特別区職員
- 公安系職員(警察官・消防官など)
それぞれ役割や業務内容、試験内容が異なるため、自分に合った職種を選ぶことが大切です。

地方公務員試験の概要
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市町村職員
市町村職員は、住民に最も身近な自治体で働く公務員です。
戸籍や住民票の管理、道路や公園の整備、ゴミ処理などの日常業務から、子育て支援、介護保険、国民健康保険の運営まで、住民の生活に直結する重要な業務を担当します。
地域の特性に合わせた取り組みも行い、住民の暮らしを直接支える役割を担っています。
▼試験概要
市町村の採用試験は主に教養試験と専門試験、論文試験が実施されます。
教養試験では、以下の科目が出題されるケースが多いです。
- 数的処理
- 文章理解
- 社会科学
- 人文科学
- 自然科学
- 時事問題 など
また、専門試験では、以下の科目が出題されます。
- 法律系
- 経済系
- 行政系
最近ではSPIやSCOAといった民間就職試験で導入されている基礎能力検査を取り入れる自治体も増えています。
人物試験は個別面接が中心ですが、集団面接やグループワークを実施する自治体もあります。
筆記試験を簡略化して人物重視の採用試験を行う傾向が強まっています。
▼受験資格
市町村職員の採用試験では、多くの場合、学歴そのものを要件とはしていませんが、「高卒程度」「大卒程度」などの区分で試験が分かれていることが一般的です。
そのため、「大卒程度」の区分であっても、必ずしも大学卒業が必要というわけではなく、該当する年齢や学力があれば受験できることが多いです。
ただし、自治体によっては特定の学歴や資格を要件とする職種もあるため、詳細は必ず各自治体の募集要項を確認しましょう。
▼試験日程
市町村職員の採用試験は大きく分けて1年で4回実施されており、おおまかな日程は以下のとおりです。
- A日程(6月中下旬)
- B日程(7月)
- C日程(9月)
- D日程(10月)
最近は上記の4つの分類がやや崩れている傾向にありますが、以前としてC日程で実施する自治体が多いのが現状です。
応募方法は各自治体のウェブサイトから申し込むことが一般的で、募集は試験の1〜2ヶ月前から始まります。
都道府県職員
都道府県職員は、広域の地方自治体で働く公務員です。
複数の市町村にまたがる広域的な業務や、市町村だけでは対応が難しい専門的・大規模な事業を担当します。
例えば、以下のような規模や性質において市町村の枠を超えた業務を担当しています。
- 小中学校教職員の採用や給与管理
- 大規模な河川・道路の管理
- 専門職員が必要な児童相談所の運営
- 産業誘致のための環境基盤整備 など
▼試験概要
都道府県の試験区分は「上級(大卒程度)」「中級(短大卒程度)」「初級(高卒程度)」「社会人」に分かれています。
都道府県の採用試験も、市役所の採用試験と同じように教養試験や専門試験、論文試験が課されるのが一般的です。
近年は、筆記試験が教養試験のみで受験できる自治体や、SPI・SCOAなどを利用している自治体も増えてきています。
多くの自治体では人物重視の傾向が強く、個別面接・集団面接・グループワークなどさまざまな形式で面接試験が行われています。
▼受験資格
地方上級の受験資格も多くの場合、学歴制限を設けず年齢制限のみとなっています。
年齢上限は30歳〜35歳前後に設定されていることが多く、一部自治体では学歴要件を課しているケースもあります。
大学を卒業していなくても受験できる自治体が多いので、詳しくは各自治体の募集要項をチェックしましょう。
▼試験日程
地方上級試験の多くは6月に実施されることが多く、3月・4月の早期選考を行う自治体も増えています。
例外として愛知県の行政Ⅰや行政Ⅱの採用試験は5月に行われるなど、独自日程で実施する自治体もあります。
応募は試験日の約1〜2ヶ月前から始まり、各自治体のウェブサイトから申し込めます。
政令指定都市職員
政令指定都市職員は、人口50万人以上の都市のうち政令で指定された、都道府県と同等の権限を持つ自治体で働く公務員です。
一般的な市町村と同様に住民サービスを実施する一方、政令によって都道府県の事務の一部が委譲されているため、より幅広い業務を担当します。
例えば、都道府県設置義務がある児童相談所の設置や国道・都道府県道の管理などです。
豊富な人口と強固な財政基盤を活かし、大規模な施策の実施も可能です。
▼試験概要
政令指定都市の試験区分は主に「上級(大卒程度)」「中級(短大卒程度)」「初級(高卒程度)」「社会人」に分かれています。
試験内容は都道府県とほぼ同様で、筆記試験は教養試験や専門試験、論文試験が実施されるケースが多いです。
ただし、近年は政令指定都市の採用試験でも、SPI試験が導入されるケースも増えつつあります。
人物試験は個別面接・集団面接・グループワークなどさまざまな形式で行われ、人物重視の傾向が強いです。
▼受験資格
政令指定都市の受験資格も、学歴制限を設けず年齢制限のみというケースが多いです。
年齢上限は地方上級と同様に30歳前後に設定されていることが多く、一部の政令指定都市では学歴要件を課している場合もあります。
各自治体の採用情報をよく確認して、自分が受験資格を満たしているか確認しましょう。
▼試験日程
政令指定都市の試験日程は自治体によってさまざまですが、多くは6月中旬に実施されています。
愛知県名古屋市は4月・6月・9月、大阪府堺市は5月・9月など、自治体によって試験の時期が異なる場合もあります。
応募は試験日の1〜2ヶ月前から始まり、各市のウェブサイトから申し込みができます。

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東京特別区職員
東京特別区職員は、東京23区(千代田区、新宿区、渋谷区など)で働く公務員です。
他道府県の市町村の職員と同じような役割で、住民に身近な行政サービスを提供します。
例えば、住民票や戸籍の管理、保育所や小中学校の運営、ごみ収集、道路や公園の整備、福祉サービスなど、区民の日常生活に直結する業務です。
東京都と役割分担しながら、東京という大都市の多様なニーズに応える重要な役割を果たしています。
▼試験概要
特別区の試験区分は主に「Ⅰ類(大卒程度)」「Ⅱ類(短大卒程度)」「Ⅲ類(高卒程度)」「経験者」に分かれています。
試験内容は教養試験と専門試験、論文試験です。
近年はSPIを導入した試験区分が登場し、専門職は専門試験と面接試験のみで受験できるなど、より多くの方が受験しやすい試験に変わってきています。
▼受験資格
特別区Ⅰ類の受験資格は、学歴不問で年齢が21歳以上31歳未満(4月1日現在)となっています。
大学を卒業していなくても受験可能です。
また、社会人や障害者を対象にした選考も実施されているので、幅広い層が挑戦できる試験となっています。
▼試験日程
特別区の試験には、春試験と秋試験があります。
春試験は例年4月に、春試験の中でも早期SPI枠は3月に、秋試験は9月に実施されることが多いです。
応募は試験日の約1ヶ月前から始まり、特別区人事委員会採用試験情報のウェブサイトから申し込みができます。
試験の詳細は毎年公表される採用案内で確認が必要です。
公安系公務員
公安系公務員には、警察官や消防官の他、刑務官や海上保安官、皇宮護衛官などが含まれます。
警察官は都道府県ごとの採用で、刑事課や交番勤務、交通警察、少年非行防止、犯罪予防、災害時の治安維持など幅広い業務を担当します。
消防官は基本的に市町村単位での採用で、火災現場での消火活動や人命救助、危険物排除、救急救命活動などの災害対策業務が主な任務です。
いずれも安全・安心を守る重要な役割を果たし、強い使命感と体力が求められます。
▼試験概要
公安系公務員の試験は教養試験、作文・論文試験、体力試験、面接試験で構成されています。
教養試験では数的処理・文章理解・社会科学・人文科学・自然科学・時事問題などが出題されますが、一般行政職と比べると問題数が少なめです。
特徴的なのは体力試験で、バーピーテストや腕立て伏せ、反復横跳び、上体起こし、握力などが課されます。
面接試験も重視され、使命感や人物適性が厳しくチェックされます。
▼受験資格
警察官・消防官の受験資格は、学歴不問で年齢制限があります。
Ⅰ類(大卒程度)は概ね35歳未満、Ⅲ類(高卒程度)は18歳以上30歳未満といった条件が一般的です。
「職務執行に重大な支障がないこと」といった身体条件が設けられていることもあるため、各自治体の採用要項で確認しましょう。
▼試験日程
警察官採用試験は年に2回実施され、第1回は4〜5月、第2回は9月に実施されることが一般的です。
消防官は市町村によって異なりますが、東京消防庁の場合は春(4〜5月)と秋(9〜10月)に実施されています。
応募は試験日の1〜2ヶ月前から始まり、都道府県警察本部や各自治体の消防本部のウェブサイトから申し込みができます。

警察官になるには?警察官の仕事や試験内容を紹介します!
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地方公務員の試験の難易度
地方公務員試験の難易度は、自治体や試験区分によって大きく異なります。
一般的に大都市圏の自治体や人気の高い自治体ほど倍率が高く、難易度も上がる傾向にあります。
地方公務員試験全体の倍率は5倍程度ですが、自治体によっては10倍を超えるケースもあります。
近年は筆記試験を簡略化し、民間企業のSPI試験などを導入して、人物重視の採用試験を実施する自治体が増えてきました。
単に知識を問うだけでなく、人物面や適性が重視される傾向が強まっています。
公務員の倍率は、以下の記事もあわせて参考にしてください。

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地方公務員の試験についてよくある質問
地方公務員を目指す方からよく寄せられる質問とその回答をご紹介します。
地方初級や地方上級の違いは?
地方上級は大卒程度、地方初級は高卒程度の学力が求められる試験区分です。
上級は政策立案など幅広い業務に携わることが多く、初級は窓口対応など住民に身近な仕事からスタートする傾向があります。
ただし、初級でも異動や経験を積むことで活躍の場を広げることができ、どちらの区分でも地域社会を支える重要な役割を担います。
地方公務員試験の過去問はどこで手に入る?
地方公務員試験の過去問は、各自治体のウェブサイトで公開されていることがあります。
例えば特別区の過去問は、特別区人事委員会採用試験情報のサイトで、教養問題や専門試験、論文試験の過去問を閲覧できます。
受験予定の自治体のウェブサイトで、過去問が公開されているかどうか確認してみましょう。
まとめ
地方公務員になる方法や地方公務員の種類をお伝えしました。
- 地方公務員になるには各自治体の採用試験に合格する必要がある
- 地方公務員は市町村職員、都道府県職員、政令指定都市職員などの種類がある
- 試験は主に教養試験、専門試験、論文試験、面接試験で構成される
- 最近は人物重視の試験が増え、SPI試験を導入する自治体も増えている
- 試験概要は自治体によって異なるため、志望先の採用情報を必ず確認しよう
地方公務員試験は準備が必要ですが、計画的に対策を進めれば合格の可能性は十分にあります。
スタディングの公務員講座では、地方公務員採用試験の対策もしっかりカバーしています。
スマートフォン1つで効率よく学習を進められ、面接・論文対策も行なっているので、一人で試験対策をするのが不安な方はぜひご活用ください。