公務員試験が英語だけを勉強すればよいテストであったならば、すべての時間を英語に費やすことができますが、英語は数多くある科目の中の1つです。しかし、ほんの一部というわけではなく、英語の点数が公務員試験の合否を左右するため、軽視することはできません。
でも安心してください。公務員試験の英語は100点を目指すテストではありません。確実に6割以上正解できるようになれば、他の教科に時間を回せます。そのために必要となるのが、効率的な対策です。
そこで今回は、「時間はないけど、失点もできない」「今ある力で最大限の成果を」という方のための対策法をお伝えします。
魔法はないけれど、手品はあります。試験のタネとシカケを知ることで、無駄に悩むことを減らすことができます。
この記事を書いた人 早川 幸治
スタディング TOEIC講座主任講師。株式会社ラーニングコネクションズ代表取締役。 |
公務員試験に限らず、テストで活用する知識やスキルは3つに分かれます。
1. 英語力(知識)
単語力や文法力などの知識です。本文の単語をまったく知らなければ、文法を知っていても理解することができません。また、単語をすべて知っていても文法がまったくわかなければ、正しく理解することはできないでしょう。そのため、理解の大前提となるのが英語力です。
2. 情報処理能力(スキル)
英語力だけあれば、素早く読めるわけではありません。たとえば・・・と、ここまで読むだけで「英語力だけでは素早く読めない例が続くんだな」と、今読んだ内容とこれから読む内容を関連させることができます。このように論理的に展開を理解することで、読むスピードが速くなります。知識としての英語力をスキルとして活用できるようになります。
3. 解答テクニック
正解を導くための技術です。公務員試験の問題傾向をとらえることで効率的な解答が可能です。英語力や情報処理能力が変わらなくても、解答技術を磨くことにより正解数を増やすことができます。魔法のように解く方法はありませんが、手品のようにタネとシカケを活用して解く方法はあります。
今回は、解答テクニックを中心に、解答を導くための情報処理能力の活用をお伝えします。記事を読んで終わりにせず、すぐに過去問で実践してください。過去問を活用することにより、傾向に合わせた対策が可能となります。
本文の理解が限定的であっても、正解を導き出す方法があります。それは、確認すべきポイントを限定することです。その方法は「本文を読んで選択肢を選ぶ」という取り組みではなく、「選択肢を読んで、本文と照らし合わせる」というやり方です。選択肢が主、本文が従という関係にして取り組むことで、選択肢の内容と合致しないものを消去することで、合致するものを本文からあぶり出すことができます。
問題タイプには、内容把握&主旨把握、空欄補充、文章整序とありますが、いずれのタイプに取り組む際も、解答の順番は以下の通りです。
1. 選択肢を確認する
↓
2. 本文を読む
↓
3. 選択肢と本文の内容を照合する
これらの知識やスキルを念頭に置きながら、ここからは実際の問題を参考にしながら解法を確認してきましょう。
まずは出題数の多い内容把握の問題を参考に解法を確認してみましょう。なお、主旨把握の場合も解法は同じです。
基本的に、選択肢①から⑤の順番と、本文に情報が登場する順番は同じです。そのため、選択肢①を読み、本文内容を確認し、正しそうであれば①を選ぶ。判断ができなかったり間違っていたりする場合は選択肢②を読み、本文のその先を読んで照合する、という流れです。
ここで大切なことは、傾向を知ったうえで選択肢を正確に読むことです。正解の選択肢は本文の内容がそのまま日本語に訳されている場合もありますが、要約されたり、言い換えられたりしていることもありますから注意してください。
また、正解を選ぶためにも、不正解の選択肢の傾向を知っておく必要があります。不正解の選択肢の特徴は4つあります。ここでは、それぞれ不正解ポイントを選択肢と英文を用いて確認しましょう。
金額や年代、人数や期間などの数字が異なっていることがあります。特にmillionやthousandなどの単位に注意が必要です。また、数字は正しくても内容が異なっている場合もあります。
【例】
選択肢:書籍の売り上げは、1年で100万部を突破した。
本文:The sale of the book exceeded 100 thousand copies in a year.
日本語訳:本の売り上げは1年で10万部を超えた。
不正解の理由:100 thousandは10万のこと。
出来事の前後関係が逆になっていることがあります。また、本文に「必要である」とあるものが、選択肢で「不必要である」と書かれていたり、本文に「難しい」とあるものが、選択肢で「易しい」のように書かれていたりする場合もあります。プラスやマイナスな内容には注意が必要です。
【例】
選択肢:顧客が製品の相違点について判断することは容易ではない。(=顧客は2つの製品の違いが分からない)
本文:It is not too much to say that customers can tell the difference between the two products without difficulty.
日本語訳:顧客は難なく2つの製品の違いがわかるというのは言い過ぎではない。(=顧客は2つの製品の違いが分かる)
不正解の理由:It is not too much to say(言い過ぎではない)の内容が、「違いがわかる」であるため、内容が矛盾している。
本文では、Aさんが動作や発言をしている内容が、選択肢ではBさんの動作や発言として書かれている場合があります。主語と動詞の関係をしっかりと把握することが大切です。
【例】
選択肢:ジャックはコインを拾うと、ポケットに入れた。
本文:Paul picked up Jack’s coin, and put it in his pocket.
日本語訳:ポールはジャックのコインを拾うと、ポケットに入れた。
不正解の理由:主語が異なっている。
選択肢の「必ず~である」や「まったく~ない」と断言しているものについて、本文では「することもある」や「~しない場合もある」のような書かれ方になっている場合があります。選択肢で「いつも」「必ず」「~ない」など断言している場合は、本文でも断言されているかどうかを確認してください。
【例】
選択肢:バスが通過するタイミングで信号は青になるため、いつでもスムーズな移動が可能となる。
本文:During the peak hours, as a bus approaches an intersection, the traffic light provides a green light to minimize delay.
日本語訳:ラッシュアワーの間、バスが交差点に近づくと、遅れを最小限に抑えるために信号が青になる。
不正解の理由:バスが通過するタイミングで青信号になるのは、「いつでも」ではなくDuring the peak hours(ラッシュアワーの間)である。
以上、内容把握問題における不正解の選択肢の特徴を4つご紹介しました。ぜひ、過去問を使って実践してみてください。また、すでに解いたことのある問題の選択肢をチェックすることで、不正解の選択肢の作られ方を確認することもオススメです。
空欄補充問題は、1つ~4つの語句を入れる問題です。基本的に、空欄がある文を読んだだけでは正解を選ぶことができないため、空欄がある文に加えて、その前後の文の内容を読み取ったうえで話の展開に合うものを選ぶ必要があります。
ここでは、空所が2つの場合を例に挙げて、解法を確認しましょう。
【例題】
本文
We have received your [ア] related to your trip to Italy. We can change your visiting locations and times without any extra charge. We will send a revised [イ]by the end of the week.
選択肢
1: [ア]payment [イ]schedule
2: [ア]request [イ]receipt
3: [ア]payment [イ]price
4: [ア]request [イ]schedule
5: [ア]e-mail [イ]price
明らかに1つ異なる選択肢がある場合、ほぼ正解になることはありません。上の選択肢の場合は5のアにだけe-mailが入っているため、除外することができます。残った1~4のうち「ア」または「イ」の単語を入れて読んでみて、どちらか1つがわかれば2択までに絞り込めます。
しかし、空欄がある文だけを読んで解けるものは少ないため、しっかりと話の展開を理解することが必要です。また、空欄が4つある場合であっても、意味を取りやすい箇所から空欄に入るものを特定することで、選択肢を絞りながら解答することが可能です。
「ア」を含む文だけでは、paymentもrequestも、さらにe-mailも入る可能性があります。続く文を読むと、「追加料金なしで訪問場所と時間を変更することができる」とあります。
つまり、「変更したい」という連絡を受けたことと判断でいるため、「ア」に入るのはrequestです。すると、「イ」には2のreceiptまたは4のscheduleの2択に絞り込めます。We will send…と送るものは「修正された〇〇」です。訪問場所と時間を変更するため、修正の対象となるものはscheduleです。正解は4の「ア:request」「イ:schedule」です。
実際の英文はもっと長いものが出題されますが、解法は同じです。4つの語句を入れる場合においても、確実にわかるところから絞り込んでいくことで効率的に消去していくことができます。
【解答】
本文
We have received your request related to your trip to Italy. We can change your visiting locations and times without any extra charge. We will send a revised schedule by the end of the week.
日本語訳
イタリアへの旅行に関連したリクエストを受け取りました。追加料金なしで、訪問場所と時間を変更することができます。週末までに修正したスケジュールをお送りします。
文章整序問題は、話の展開を正しい順番に並べ替えるものです。英文だけを読みながら並べ替えるとしたら、かなり高い読解力が必要です。そこで、まずは選択肢をヒントにします。
【例題】
ア:Hanna’s father is well-known actor Ryan Gonzales. It isn't surprising that he has had a strong influence on his daughter's career.
イ:Therefore, she is the perfect person for playing the role of a dancer.
ウ:Hanna Gonzales made her debut in the theatrical play, Cry for Joy.
エ:This is based on the true story of a young girl born to a poor family who is dedicated to her dream of becoming a world-famous dancer and supporting her family. Hanna plays the role.
オ:She started ballet at the age of three, and has won several awards ever since. She also always longed for acting.
出典:多聴多読マガジン 2020年4月号
【選択肢】
1:ウ→ア→エ→イ→オ
2:ウ→エ→ア→オ→イ
3:ア→オ→イ→ウ→エ
4:エ→ア→オ→ウ→イ
5:エ→ウ→オ→イ→ア
この選択肢から判断できることとして、「ア」「ウ」「エ」のいずれかから始まり、「イ」「オ」から始まることは絶対にありません。選択肢に1つしかない「ア」から始まることもほぼないと判断できます。
ですから、「ウ」「エ」から読んでみて、どちらが最初の文として適切かを確認します。この時点でわかれば、2択に絞れますが、なかなか判断が難しい場合もあるでしょう。その場合は、2文目以降でつながりそうなものを読み取ります。
たとえば、「イ」にあるTherefore(それゆえ)は、前の文と「原因と結果」の関係となる際に使われる副詞です。Thereforeの後ろの内容が「彼女はダンサーの役を演じるのに最適な人物である」です。
「オ」を読むと、「彼女は3歳でバレエを始め、それ以来いくつかの賞を取りました。さらに、演技をすることを心から望んでいた」とあります。バレエをしていて、演じることを願っていたという内容が「ダンサーの役を演じるのに最適な人物」とつながります。すると、「オ→イ」がつながります。
「オ→イ」とつながる選択肢は、「2: ウ→エ→ア→オ→イ」と「5: エ→ウ→オ→イ→ア」ですね。「ア→オ→イ」と「オ→イ→ア」のどちらが自然な流れかを確認してみましょう。
「ア」の内容は、Hannaのお父さんが有名な俳優で、娘のキャリアに強い影響を与えたことは驚かないことが書かれています。一見、先でも後でもどちらでもよさそうですね(苦笑)。こういう場合は深追いせず、冒頭が「ウ→エ」か「エ→ウ」かの確認に移りましょう。
「ウ」はHanna GonzalesがCry for Joyで演劇デビューしたことが書かれており、「エ」ではThis is based on the true story…と実話に基づく話であると書かれています。このThisがポイントです。「これ」とは前に述べたものを指すときに使われ、ここではCry for Joyという話を指しています。すると、「ウ→エ」が正しい順番となり、正解は2です。
「ウ→エ」の順番を先に特定できた場合は、2の「ウ→エ→ア→オ→イ」と3の「ア→オ→イ→ウ→エ」の他の語順を確認するほか、1の「ウ→ア→エ」のように間に「ア」が入らないかどうかを確認する流れとなります。
【日本語訳】
ア:Hanna’s father is well-known actor Ryan Gonzales. It isn't surprising that he has had a strong influence on his daughter's career.
イ:Therefore, she is the perfect person for playing the role of a dancer.
ウ:Hanna Gonzales made her debut in the theatrical play, Cry for Joy.
エ:This is based on the true story of a young girl born to a poor family who is dedicated to her dream of becoming a world-famous dancer and supporting her family. Hanna plays the role.
オ:She started ballet at the age of three, and has won several awards ever since. She also always longed for acting.
ア:ハナの父は有名俳優のライアン・ゴンザレスです。娘のキャリアに強い影響を与えたことは驚くにあたりません。
イ:だからこそ、ダンサーの役を演じるのに最適な人物です。
ウ:ハナ・ゴンザレスが Cry for Joyで演劇デビューをしました。
エ:これは、貧しい家に生まれた少女が、世界で有名なダンサーになり家族を支えるという夢のために尽くすという実話をもとにしています。ハナはその少女役を演じます。
オ:彼女は3歳でバレエを始め、それ以来いくつかの賞を取りました。さらに、演技をすることを心から望んでいました。
記事「公務員試験 英語(文章理解)の特徴と攻略法」(公務員試験の英語はこう解く!4.本文はこう読む!)でもご紹介しましたが、内容を理解しやすくするための方法がいくつかあります。ぜひ改めてそちらの記事をお読みいただくことで、解答力にプラスとなるはずです。
その中で、「1.文書と段落の構造を知る」「2. 主語と動詞を把握する「3.話の展開を把握する」「4.代名詞が指すものを把握する」の4つをご紹介しました。今回は、話の展開を理解するためのキーワードとして、3と4を具体的にお伝えします。
日本語においても、全文読まなくてもキーワードを参考にすることで、話の展開を理解することができます。たとえば、以下のような構成の文があるとします。
*****は大切です。しかし、*****。たとえば、*****。さらに、*****。だからこそ、*****。
*****の内容はわかりませんが、接続詞を読むことで、話がどのように展開しているかはわかります。「大切です」に対して、逆説の「しかし」を用いることで、反論を投げかけています。そして「たとえば」で具体例を伝え、「さらに」で内容を追加しています。最後に「だからこそ」で結論を述べています。
このように、キーワードを参考に話の展開を読み取ることができるのです。これは、空欄補充問題や文章整序問題の解答に役立つことはもちろんのこと、内容把握問題で正確に内容をつかむ際にも効果的です。
主に文の冒頭に置かれ、話の展開を把握することができます。
接続詞:Although(~にもかかわらず) / Even though(~にもかかわらず)/ But(しかし)
例:Although I ordered some books online, I haven’t received them yet.
(オンラインで本を注文したにもかかわらず、まだ受け取っていない)
副詞:However(しかし)
I ordered some books online. However,
I haven't received them yet.
(オンラインで本を注文した。しかし、まだ受け取っていない)
on the other hand(一方で)
例:Taking the highway costs some money. On the other hand, it is much faster to arrive at the destination.
(高速道路を使うことはお金がかかる。一方で、目的地にはずっと早く着く)
for example(たとえば) / especially(特に)
例:The smartphone is useful. For example, you can send e-mails or check websites wherever you are.
(スマホは役に立ちます。たとえば、あなたがどこにいてもメールを送ったり、ウェブサイトをチェックしたりできます)
therefore(それゆえ) / as a result(結果として)
例:I studied hard. As a result, I passed the test.
(私は一生懸命勉強した。結果として、テストに合格した)
also(また)/ additionally(さらに) / in addition(さらに)
例:Exercise is good for your health. Also, it reduces your stress.
(運動は健康によい。また、運動はストレスを減らす)
逆説や追加などを表す接続詞や副詞は、道路標識のように意味の方向を指し示してくれます。英文の内容が完全にわからなくても、これらを参考にポジティブな話をしているのか、ネガティブな話をしているのか、具体例を述べているのか、何かを比較しているのか、など大まかな内容をつかむことで、内容を推測することができるようになります。
代名詞とは、読んで字のごとく、名詞の代わりに使われるものです。「私(I / myなど)」「あなた(You / your など)」「私たち(We / ourなど)」以外については、すでに書かれている人物や事柄を指します。
Heとあれば、すでに1人の男性に言及されていますし、their ideasとあれば、すでに登場した複数の人物によるアイデアだとわかります。さらに、You need to think about it.とあれば、すでに読んだ内容のうち、itが指すものを関連付けて読む必要があります。
他にも、This(これ)やThese(これら)とあれば、すでに述べたことを指します。ここで言及されているものが何かを理解することが、内容の理解に役立ちます。
代名詞が何を指しているかを理解することで、前後関係を把握しやすくなります。特に文章整序問題を解答する際には、代名詞が順序を決めるヒントとなることがあります。
ここまでお読みいただきありがとうございます。「これが出たら4が正解!」など、「読まなくても解ける魔法」のような裏技はありませんが、公務員試験の傾向をつかみ、選択肢をしっかりと分析することにより、本文の情報が理解しやすくなります。
公務員試験の英語は、英語力が基準にはなりますが、まさに「英語という素材を活用した分析力&論理力のテスト」という側面の強さを感じていただけたと思います。あとは練習あるのみです。過去問を活用して、徹底的に攻略してください。皆様の公務員試験の合格を応援しております。