「公務員」といっても、さまざまな種類・さまざまな仕事があります。ここではそんな公務員の種類(職種)について紹介していきましょう。公務員を目指すうえで、公務員の仕事を知るきっかけにしていただければと思います。
国家公務員と地方公務員
公務員は所属する機関や自治体によって、大きく国家公務員と地方公務員に分けることができます。それぞれの特徴を挙げると、以下のようになります。
働く場所によって仕事の中身は多種多様ですが、スペシャリストとしての働き方なのか、ゼネラリストとしての働き方なのかが、大きく異なる点です。
国家公務員の場合は、いわゆる「専門家」として働くことになるため、基本的に特定の分野に特化した働き方になります。例えば、省庁職員であれば、省庁をまたいだ異動は原則ありません。厚生労働省の職員として採用されれば、ずっと厚生労働省の職員として働き続けることになります。
一方、地方公務員の場合は、さまざまな部署を定期的に異動することになるので、さまざまな分野で仕事をすることになります。いろいろな経験・キャリアを積んで、その自治体の中での「幹部候補生」になるわけです。
※YouTubeの「スタディング公務員チャンネル」でも公務員の種類について解説しています。ぜひチェックしてみてください。
また、以下の記事では国家公務員試験に関する概要を詳しく解説しています。
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国家公務員の職種とは
まずは国家公務員の仕事を紹介しましょう。どの仕事もスペシャリストとして、専門家的な働き方になります。
1.1府12省庁職員
国家公務員の職種として典型的なのが、1府12省庁の職員です。厚生労働省や経済産業省、文部科学省など、これらの省庁に所属して働く人たちですね。省庁の職員は大きく2つ、国家総合職と国家一般職に分かれます。
国家総合職はいわゆる「キャリア官僚」と呼ばれる人たちです。主に重要法案の作成に関わる業務や、政策の企画立案などを担当します。幹部候補生であるため、入省・入庁後の早い段階から責任のある役割を任されます。政策の企画・立案、法律案の作成、法律の適正な運用指導、予算編成事務、国会対応などが主な仕事になります。
2~3年の周期で全国転勤を前提にさまざまな部署や部局へ配属され、業務経験を積みながらスキルを磨き、やがて政府から重要な職務を与えられるようになるなど、いわば国家の命運を握るポジションといえるでしょう。
国家一般職はいわゆる「現場で働く精鋭部隊」です。中央官庁や出先機関で、その分野の政策立案をサポートする立場になります。政策の「企画」を担当するのが総合職なら、一般職はその企画内容を実現する「執行」の役目を担う存在です。
原則として総合職よりも異動の周期が長く、じっくり業務を行うことになります。幹部候補生である総合職に対して、一般職は中堅幹部候補生などと呼ばれたりします。
なお、国家一般職は「行政区分」や「技術系区分」に分かれており、行政区分はブロックごとの採用(北海道、東北、関東甲信越、東海北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄)、技術系区分は9つの技術区分(電気・電子・情報、機械、土木、建築、物理、化学、農学、農業農村工学、林学)での全国採用となっています。
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POINT 省庁をまたいだ異動がない「専門家」としての仕事!
1府12省庁の職員は、あくまで省庁ごとの採用になります。したがって、省庁をまたいで異動することがありません。その点でも、特定の分野に特化して仕事を行う「専門家」としての働き方といえます。
なお、省庁職員の働き方や採用試験制度については、人事院のホームページがありますので、是非そちらも目を通すとよいでしょう。
参考:人事院「国家公務員採用情報NAVI」
2.外務専門職
外務省の職員も国家公務員ですが、国家一般職では採用していません。外務省の場合は、「キャリア官僚」として国家総合職で採用されるか、もしくは外務省独自の試験である外務専門職として採用されるか、いずれかの方法があります。
外務専門職は、高い語学力と外交分野についての高度な知識を使って、日本の外交を支えるプロフェッショナルです。海外では世界の在外公館などで勤務し、各国政府との交渉や国内の政治・経済などに関する情報収集・分析などを行います。一方、日本国内では外務省本省に勤務し、外交政策の企画・立案を行います。
POINT 外務専門職試験は他の公務員試験と内容や形式がかなり異なる!
他の公務員試験と大きく異なる部分があるのが、外務専門職の試験です。専門科目として国際法が必須になっているため、国際法の対策が必要です。また、外国語和訳、和文外国語訳なども問われますので、語学力もなければいけません。特化した対策が必要といえるでしょう。
なお、外務専門職の働き方や採用試験制度については、外務省のホームページがありますので、是非そちらも目を通すとよいでしょう。
参考:外務省「外務省専門職員採用試験」
3.国家専門職
国家公務員には上記で紹介した外務専門職以外にも、「専門職」と呼ばれる仕事があります。ここでは代表的なものを3つ紹介しておきましょう。
⑴ 国税専門官
国税局や税務署において、国の財政基盤を支える国税にまつわる業務全般に従事するのが国税専門官です。税のスペシャリストとして、確定申告等の指導(国税調査官)、税金の督促や滞納処分・徴収(国税徴収官)、脱税者に対する捜索差押え(国税査察官)などの業務を行います。
⑵ 財務専門官
財務局・財務支局や沖縄総合事務局財務部において、財政・国有財産・金融等の施策の実施に従事するのが財務専門官です。財務省・金融庁と地方公共団体・企業などとの地域連携の推進も特徴的な業務です。
⑶ 労働基準監督官
労働基準監督署や都道府県労働局において、監督指導業務や安全衛生業務、司法警察業務、労災補償業務に従事するのが労働基準監督官です。経験を積んだ後、厚生労働省の本省で勤務するというキャリアプランも用意されています。
POINT 国家公務員だが「現場の仕事」がメインになるのが特徴!
国家専門職も国家公務員ですが、住民との距離が近く、「現場」で仕事をする割合が大きいのが特徴といえます。また、国家専門職いずれも1次試験が同日に実施され、基礎能力試験(教養択一試験)は同じ問題が出題されます。
なお、国家専門職それぞれの働き方や採用試験制度については、各機関のホームページがありますので、是非そちらも目を通すとよいでしょう。
参考:国税庁「国税専門官採用試験」
参考:財務省財務局「財務専門官の採用案内」
参考:厚生労働省「労働基準監督官採用試験」
4.裁判所一般職
司法に携わる国家公務員として、裁判所職員も挙げられます。大卒程度の裁判所職員の試験としては裁判所事務官と家庭裁判所調査官補がありますが、ここでは裁判所事務官を紹介しましょう。裁判所事務官の試験も、省庁職員と同様に裁判所総合職と裁判所一般職に分けられますが、仕事内容はほぼ変わりません。裁判所一般職は採用人数が圧倒的に多く、受験者も多いので、こちらを説明します。
採用されると、まずは裁判所事務官として裁判部門(裁判部)か司法行政部門(事務局)のいずれかに配属されます。多くの場合は裁判部の配属となり、書類作成などの事務作業が原則となります。事務局に配属されると、総務や人事など、民間企業と同様の業務などにも携わります。
POINT 昇任試験に合格すると、研修の後に裁判所書記官になることができる!
キャリアプランとして多くの裁判所事務官は裁判所書記官を目指すことになります。昇任試験(裁判所職員総合研修所入所試験)に合格し、その後の研修(裁判所書記官養成課程)を終えると、裁判所書記官として裁判に直接関わることができます。裁判手続に関する記録・調書の作成、公判期日の管理、裁判官の補助などの仕事も行うことがあります。
なお、裁判所職員の働き方や採用試験制度については、裁判所のホームページがありますので、是非そちらも目を通すとよいでしょう。
参考:裁判所「採用案内」
5.衆議院・参議院事務局職員
立法に携わる国家公務員としては、衆議院・参議院の事務局職員が挙げられます。衆議院・参議院はそれぞれ個別に採用試験を実施しています。
議会運営のサポート全般に携わる仕事です。会議運営部門では資料作成や政党間の調整など、調査部門では議案の審査や政策の施行状況の調査など、その他の総務部門では議長の秘書や庶務などを行います。
POINT 勤務地は原則として「国会議事堂」だけ!
原則として引っ越しを伴うような転勤がないのが特徴といえるでしょう。人事交流による地方勤務などがない限り、基本的に勤務地は国会議事堂やその周辺です。
なお、衆議院・参議院事務局職員の働き方や採用試験制度については、各機関のホームページがありますので、是非そちらも目を通すとよいでしょう。
参考:衆議院「衆議院事務局 採用情報」
参考:参議院「事務局職員の採用」
地方公務員の職種とは
続いて、地方公務員の仕事を紹介しましょう。まず、地方公務員は規模の違いによって大きく2つ、基礎自治体職員と広域自治体職員に分けることができます。以下のように、仕事のベクトルもやや異なります。
以上をふまえて、職種を簡単に紹介していきます。
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1.市町村職員(基礎自治体職員)
私たちが普段接することのある公務員は、基礎自治体職員であることが多いでしょう。生活に密着した行政サービス全般に携わっていきます。例えば、市役所窓口で住民票発行などの行政サービスの手続、市町村の運営する公民館やスポーツセンターなどの公共施設の管理、都市計画などのまちづくりに携わることもあります。
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2.都道府県職員(広域自治体職員)
広域自治体職員の場合、住民との距離はやや離れることになります。もちろん、配属先次第では出先機関等で住民と接する仕事も多くありますが、基本的には都道府県全体の方向性を決めていく仕事が多くなります。国との折衝や国と市町村間の調整を行うこともあり、大きな仕事に携わる機会が増えます。
※YouTube「スタディング公務員チャンネル」でも、県庁職員の仕事内容をご紹介しています。
https://youtube.com/watch?v=2wWGLE3HoDg%3Fenablejsapi%3D1%26origin%3Dhttps%253A%252F%252Fstudying.jp
3.政令指定都市職員(基礎自治体職員)
政令指定都市とは人口が50万人以上の大都市で、政令で指定された市のことをいいます。簡単にいうと、「規模が大きい自治体なので特別扱いされた市」というわけですね。2022年現在、以下の20の市が政令指定都市になっています。
札幌市・仙台市・さいたま市・千葉市・川崎市・横浜市・相模原市・新潟市・静岡市・浜松市・名古屋市・京都市・大阪市・堺市・神戸市・岡山市・広島市・北九州市・福岡市・熊本市 |
これらの政令指定都市は、一般的な市と同様に基礎自治体に分類されますが、規模が大きいため、通常は都道府県の権限であるものが、政令指定都市に委託されているものがあります。それによって、都道府県を介することなく、行政サービスを円滑に提供できるようになるわけですね。委託されている権限としては、福祉分野における児童相談所の設置権限、教育分野における教職員の任免権などが挙げられます。
したがって、政令指定都市職員は、基礎自治体の仕事のみならず、広域自治体の仕事にも携われるというのが特徴です。
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4.東京特別区職員(基礎自治体職員)
東京特別区とは、以下の東京23区のことをいいます。
千代田区・中央区・港区・新宿区・文京区・台東区・墨田区・江東区・品川区・目黒区・大田区・世田谷区・渋谷区・中野区・杉並区・豊島区・北区・荒川区・板橋区・練馬区・足立区・葛飾区・江戸川区 |
なぜ「特別区」という言い方をするかというと、もちろん特別ではない区が存在するからです。特別ではない区とは、前述した政令指定都市に置かれた「行政区」です。行政区は独立した自治体ではありません。区長は市役所職員の中から市長により選ばれており、区議会も存在しません。一方、「特別区」の区長は区民により選ばれ、区議会も存在します。民主主義的な基盤がある、独立した自治体なのですね。
東京特別区も基礎自治体に分類されますが、やはり特別扱いされています。先ほどの政令指定都市とは逆で、通常の市町村であれば持っている権限が特別区にはなく、東京都の権限になっているものがあります。例えば、上下水道の権限は、通常の市町村であれば水道局が存在しますが、特別区には存在せず、東京都水道局の権限です。また、消防の権限も、通常の市町村であれば消防局が置かれていますが、特別区にはなく、東京消防庁の管轄になっています。それ以外は基本的に一般的な市町村と同様の権限です。
ちなみに、区が共同で仕事を行うものを一部事務組合として設立したものとして、「特別区人事・厚生事務組合」「東京二十三区清掃一部事務組合」「特別区競馬組合」があります。これらの組合もこの試験で採用活動を行なっています。
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POINT 特別区は地方公務員の中でも最も規模が大きい試験!
特別区の試験は23区が合同で実施することもあって、地方公務員の中で例年最も規模が大きい試験になっています。特別区Ⅰ類であれば、採用人数は例年1,000人前後、年によっては申込者数が15,000人を超えることもあります。これを上回る規模の試験となると、国家公務員試験の国税専門官くらいでしょうか。
なお、特別区職員の働き方や採用試験制度については、特別区のホームページがありますので、是非そちらも目を通すとよいでしょう。
参考:特別区人事委員会 採用試験情報
※YouTube「スタディング公務員チャンネル」でも、地方公務員の仕事内容について解説しています。ぜひチェックしてみてください。