公務員の学校事務とは?年収・仕事内容・試験などを解説

公立学校で庶務、人事労務、会計などを担う学校事務は地方公務員です。教員、児童・生徒、保護者、業者、地域の人々など、さまざまな立場の人と関わりながら、円滑な学校運営を支えています。

公務員の学校事務として働くには、公務員試験に合格する必要があります。

この記事では、公務員の学校事務について、年収、仕事内容、試験内容などを解説します。

公務員の学校事務とは?

「学校事務」とは、さまざまな教育機関において、教育活動が円滑に進行できるように事務作業を行う仕事を指します。その中でも、公立学校で事務を担当するのは地方公務員です。

学校事務の年収

厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」によると、学校事務が属する職業分類(厚生労働省編職業分類の「他に分類されない総務等事務の職業」等)の平均年収は478.3万円です。

ただしこの分類には、公務員以外を含むすべての学校事務職員や、同じ職業分類に当てはまる別の職種も含まれています。

地方公務員の学校事務の給料は、各自治体の給料表に基づいて決まっています。地域によって異なるため一概には言えませんが、

他の職種の公務員と同じく「勤続年数が増えるにつれて給料も上がる傾向にある」という特徴があります。

志望する自治体の職員募集要項などを読んで確認するようにしましょう。

【参考】職業情報提供サイトjobtag「学校事務」

学校事務の仕事内容

学校事務の仕事内容は多岐にわたりますが、おおまかに次の4つの系統の業務があります。

  • 文書作成・発行業務
  • 施設および教材の管理
  • 窓口業務
  • 会計業務

それぞれの具体的な内容は、下記のとおりです。

文書作成・発行業務

書類や資料の作成、データ入力、ファイリング、各種証明書の発行、書類の郵送などを行います。いわゆる一般事務の業務内容です。

施設および教材の管理

施設の修繕、防災、衛生管理を担い、不具合があった際などには必要に応じて業者を手配します。また、教材の適切な保存・管理や在庫チェックを行ない、足りない場合には担当教員の指示のもとで発注をかけます。

窓口業務

学校窓口として、電話・メールなどの問い合わせ対応、生徒や保護者への対応などを担当します。高校や大学の場合は、奨学金の申請や就職活動支援など学生のサポート業務も行います。

会計業務

経理や会計として、学校の予算管理や教職員の給与計算、伝票処理などを行います。

小規模校では学校事務の業務範囲が広い傾向があり、上記以外にも教職員の採用手続や勤怠管理、学校HPの管理・運営など、人事や広報の役割まで任される場合もあります。

一般的に、学校の規模が小さいほど学校事務の職員数が少ない傾向です。1人当たりの担当範囲が広くなり、よりオールマイティな能力が求められることになります。

反対に、学校の規模が大きいほど学校事務の職員数は多くなるため、「学生課」「教務課」「経理課」といった部署が設置されるなど、分業化されやすい傾向にあります。

いずれにおいても、教育活動がスムーズに行われるために必要な事務業務であるため、学校事務は学校運営において重要な役割を担っていると言えるでしょう。

学校事務はホワイト?きつい?

次に、学校事務はホワイトな仕事であるのか、それともきつい仕事であるのか、といった「働きやすさ」について見ていきましょう。

学校事務の「ホワイト」なポイント
  • 残業がそれほど多くないため、ワークライフバランスを大切にしながら働くことができる
  • さまざまな業務に携わることで、事務職としてスキルアップできる
  • 教員・生徒・保護者から感謝される
学校事務の「きつい」ポイント
  • 保護者や地域住民からのクレームに対応しなければならない時がある
  • 学校によっては専門性の高い業務を任される場合がある
  • 公務員の学校事務は別の学校への異動があるため、その都度新しい環境に順応する必要がある

学校行事前や新年度の前は繁忙期となったり、学校の規模によっても異なったりするようですが、プライベートを圧迫するほど残業が多い職種ではないと言えます。

一方で、地方公務員である場合には定期的な異動があるため、同じ環境に腰を据えて10年、20年と働き続けることはできません。

自分自身が考える「理想の働き方」と照らし合わせながら、職業選択をするうえでの参考にしてみてください。

学校事務のやりがい・魅力は?

学校事務のやりがい・魅力にはどのようなものがあるのでしょうか。よく挙げられるものとしては、下記の2つがあります。

  • 児童・生徒の成長を間近で見ることができる
  • バックオフィスから教育現場の発展に貢献できる

学校事務は、児童・生徒と直接関わる機会は少ないですが、学校環境を整えることで子どもたちを支えています。教員とともに子どもたちの健やかな学校生活を願い、彼らの成長を間近で見られることが、学校事務としてのやりがいとなるでしょう。

また、学校事務は教員や学校全体も支えるポジションです。学校運営に関わるさまざまな業務を通じて、教育現場のさらなる発展に貢献できているという実感を得られる点も、魅力のひとつです。

公務員の学校事務員になるには?試験内容は?

公務員の学校事務員になるには、志望する自治体の採用試験に合格する必要があります。

ここからは、気になる試験内容や倍率について確認していきましょう。

東京都の学校事務になるには?

東京都を例に見ていきましょう。東京都の公務員として学校事務員になるには、東京都職員採用試験(行政区分)に合格したうえで、学校事務員として各学校に配属される必要があります。

試験にはいくつかの方式がありますが、ここでは受験者数が最も多いⅠ類B採用試験(一般方式)について解説します。

試験内容

1次試験教養試験(2時間10分)
5肢択一式40題知能分野:24題(必須)
知識分野:16題(必須)
論文試験(1時間30分)
1,000~1,500字程度の課題式
専門試験(2時間)
憲法、行政法、民法など指定の出題範囲:10題中3題(選択)
2次試験口述試験
人物についての個別面接

倍率

年度受験者数最終合格者数倍率
2024(令和6)1,413人932人1.5倍
2023(令和5)1,525人626人2.4倍
2022(令和4)1,677人540人3.1倍
2021(令和3)1,507人110人13.7倍

2021年度(令和3年度)のみ例外的に倍率が高いのは、申込者数や受験者数は前後の年度と大きく違わないものの、採用予定数(それに伴う最終合格者数)が大きく減らされたためです。

採用予定数は年によって大きく変動する可能性があるので、最新の情報を確認しましょう。

【参考】東京都「令和6年度 東京都職員Ⅰ類B採用試験案内(一般方式)」

【参考】東京都職員採用サイト「試験選考情報 試験選考実施状況」

大阪府の学校事務になるには?

大阪府では、府職員採用試験とは別に、学校事務員になるための採用試験(大阪府公立義務教育諸学校事務職員採用選考)が実施されています。試験内容は下記のとおりです。

試験内容

1次選考教養考査(1時間50分)
択一式45題
2次選考作文考査(1時間)
面接考査(個別面接)

倍率

年度受験者数最終合格者数倍率
2024(令和6)142人57人6.5倍
2023(令和5)128人39人3.3倍
2022(令和4)188人30人6.3倍

【参考】大阪府「令和7年度大阪府公立義務教育諸学校事務職員 採用選考受験案内」

【参考】大阪府「大阪府公立義務教育諸学校事務職員採用選考」

横浜市の学校事務になるには?

横浜市では、市職員採用試験(大卒程度)の試験区分の1つに「学校事務」があります。試験内容は下記のとおりです。

試験内容

1次試験教養試験(2時間30分)
択一式50問
2次試験論文試験(1時間)
750字以内の課題式
面接試験
個別面接

倍率

年度受験者数最終合格者数倍率
2024(令和6)56人11人5.1倍
2023(令和5)76人13人5.8倍
2022(令和4)81人23人3.5倍

【参考】横浜市「令和6年度横浜市職員(大学卒程度等)採用試験受験案内」

【参考】横浜市「大学卒程度等採用試験 実施状況・結果」

学校事務の志望動機はどう作る?

公務員の学校事務を目指すにあたって、用意しなければならないものの1つが志望動機です。

ここでは、相手に伝わりやすく、なおかつ説得力のある志望動機を作るためのポイントを紹介します。

  1. 「結論→過去→現在→未来」の形で、自分の持つエピソードや考えを整理していく
  2. 整理し終わったら自分の言葉で文章にまとめる

具体的には、「なぜ学校事務員になりたいのか」の問いに対して、まず「学校事務員になって何をしたいのか(=結論)」を答えます。

そして、興味を持ったきっかけ(=過去)、なぜ学校事務なのか(=現在)、どんな学校事務員になりたいか(=未来)といった順番で続けることで、相手にスムーズに理解してもらいやすい構成になるでしょう。

【Q&A】公務員試験のよくある質問

最後に、公務員試験についてのよくある質問に答えていきます。

公務員にはどんな仕事がある?

公務員には、大きく分けて「国家公務員」と「地方公務員」があります。それぞれの職種については下記のとおりです。

国家公務員地方公務員
行政府1府12省庁の職員財務専門官、国税専門官、労働基準監督官など都道府県行政事務、技術職、警察官、警察事務、学校事務、資格免許職など
司法府裁判所事務官など市区町村行政事務、技術職、消防官、資格免許職など
立法府衆議院事務局職員参議院事務局職員

公務員を目指すなら何からはじめればいい?

公務員を目指すと決めたなら、まず最初にやるべきことは下記の4点です。

  1. 第1志望や併願先を(ある程度)決める
  2. どのような対策が必要なのか、試験案内を確認する
  3. 勉強時間の確保・学習計画を立てる
  4. 学習ツールを選択する

公務員試験は出題科目が多く、勉強期間も長いため、いかに要領よく、継続して対策していけるかが重要です。

実現可能かつ緩すぎない学習計画と、効果的な学習ツールの選択が合格のカギとなります。

公務員試験の王道の勉強法とは?

「公務員試験の勉強をしたいけど、どんな風に進めればいいのか分からない」という方に向けて、王道の勉強法の3つのポイントをご紹介します。

  1. どんな試験でも出題数の多い科目から手を付ける
  2. 過去問をベースにした対策を心がける
  3. 「全体的に得点する」という意識を持つ

勉強の中心となってくるのは過去問演習です。

公務員試験は「問題文の数字やシチュエーションを少し変えただけ」といったレベルの過去問の焼き直しが非常に多いため、ある程度の出題パターンが頭に入っていれば非常に強力な武器になります。

繰り返し問題を解きながら、しっかりと分析していくと良いでしょう。

まとめ

今回は、公務員の学校事務について解説しました。

  • 学校事務は「ワークライフバランスを大切に働けたり、教員・生徒・保護者から感謝されたりといったやりがいがある
  • 公務員の学校事務の場合、給与や採用試験の区分などは自治体によってさまざま
  • 公務員の学校事務の採用試験では、主に教養試験、論文、面接が実施される

公務員試験は出題科目が多いため、合格は「メリハリをつけて要領よく学習できるか」にかかっています。スタディング 公務員講座ならスキマ時間で効率的に対策が可能です。学校事務の試験で課される教養試験、論文、面接をすべてカバーできます。ご興味のある方はぜひ無料体験をチェックしてみてください。