日本人の多くは日本語を母語として使用しています。
現代文の対策は英文と異なり、新たな外国語の習得は必要ありません。
日本語で書かれている文章を読み取るため、スタートのハードルはとても低いのです。
しかし、どのように勉強すれば良いのかがわからず、勘や雰囲気で選んでしまって正答率が上がらない人が多いのも事実です。
選択肢の記述該当箇所を本文から探すような方法では時間がかかる割に正解に辿り着きません。
公務員試験の文章理解ではどのような力が求められているかを正確につかみ、正しいアプローチの仕方を学びましょう!
公務員試験は主に教養択一試験、専門択一試験、論文試験、人物試験で構成されます。
文章理解は教養択一試験の中でも配点の高い知能系科目です。
【参考 現代文の配点割合】
|
現代文の出題数/全体の回答数(%) |
国家一般職 |
6/40(15%) |
特別区 |
5/40(12.5%) |
地方上級 |
3/40(7.5%) |
※変動する可能性もあるので、参考程度に踏まえてください。
知識系科目と異なり、知能系は一度できるようになってしまえば全てを正解することができます。
つまり、学習効率が高い科目です。
知能系科目で最も配点の割合が大きいのは数的処理ですが、数的処理は判断推理や空間把握など、分野が多岐に渡ります。
一方で文章理解は出題の仕方に違いはあるものの、習得すれば複数の問題を一気に得点できます。
文章理解とは、与えられた文章に対し、設問の要求に従い、理解力を測る試験です。
これが公務員試験において一定の配点で課せられているのは、この能力が公務員にとって重要であるからですね。
公務員は、文書を読み取る際に、何が一番重要なのかを瞬時に理解する能力が求められます。
文章整序なら、自らが文章を組み立てる力(論理力や話題のつなげ方)、空所補充では、文脈から推測しながら内容を構築する力が見られています。
これは文章理解に限りませんが、「公務員として必要な文章理解の能力って何だろう?」から逆算しましょう。
その科目で何が大切なのか、どのようなアプローチをすればいいのかが瞬時にわかります。
日常で本を読むように何となく感覚で読解していては、確実に正解に辿り着くことができません。
理解の理は「論理」「理性」の理です。
文章理解では論理的に文章を理解する能力が求められています。
また、「文章解釈」でも無いので、独自の視点で勝手に解釈してはいけません。
公務員が自らの感性で自由に文書を解釈してしまったら、組織としてミスが誘発されてしまいますね。
そこまで深い読みは求められていないのです。
だからと言って機械的に本文に書かれているかを照合する作業も間違っています。
確かに昔は、そのような照合の能力も必要だったかもしれません。
しかし今は、単に照らし合わせる作業ならば機械やAIに代替可能です。
現在の文章理解は本文中からイイタイコトを把握する主旨・要旨把握が中心となっています。
「機械的な照合」でもなく、「勝手な思い込み」でもなく、あくまで視点は本文・筆者に置きつつ、その筆者が最もイイタイコトは何なのかを読み取ります。
端的に言えば、相手の立場に立って考えることができるか、と言う能力が試されているのです。
文章理解は決して冷たい機械的作業ではありません。
筆者の熱い血潮がみなぎる対話なのです!
一概に現代文と言っても設問には様々な出題形式があります。
文章整序や空欄補充は分かりやすいのですが、主旨把握や要旨把握と内容合致は全く異なるため注意が必要です。
主旨把握問題では全ての選択肢の内容が本文中に書かれています。
もしも「本文に書いてあるものを選べ(内容合致)」であれば、全ての選択肢が正解になります。
しかし、主旨把握問題で問われているのは主旨です!
選択肢の中で、筆者が最もイイタイコトを答えることになります。
設問文の要求を正しく読み取らないと、思わぬ失点を生んでしまうかもしれません。
本文の文章を理解する前に、設問の要求をきちんと理解する癖をつけましょう。
文章は筆者から生まれます。
したがって、読み手本位では無く、書き手の視点から捉え直すことが近道です。
さて、筆者自身はどのような過程を経て、文章に至っているのでしょうか。
その流れをまとめると、
動機(前提となる背景)
↓
効果意思(伝えたい内容の確定)
↓
表示意思(使用する形式の確定)
↓
表示(文章そのもの)
となります。
文章は、意思伝達のための手段なので、筆者にとって最も伝えたいのは「効果意思」です。
しかし、多くの人は、「表示」そのものや表面的な「表示意思」領域ばかりに目が行ってしまい、結局、本質まで辿りつくことができていません。
「表示意思」とは、「効果意思」を伝えるための補充的な手段に過ぎないのです。
その表層的な殻に包まれた中身、すなわち、文の向こう側にいる筆者の「効果意思」こそが、文章の目的であり、最も重要な部分です。
本文に入る前に、まずは設問の要求をチェックします。
主旨?要旨?文整序?空欄補充?
読みながら解く訳ではありませんが、先に把握しておくことで安心して読解に専念できます。
さあ、設問の要求チェックしたら、いよいよ本文に入ります。
段落毎に重要な箇所に線を引きます。
一つの段落に「イイタイコト」は一つしかありません。
それを把握するようにして読んでください。
間違っても全ての情報を丁寧に読み取ろうとしてはいけません。
また、機械的な作業として探しても「イイタイコト」を理解することはできません。
文章の向こう側には、必ず筆者が存在します。
その筆者が何を伝えたいのかを探ってください。
筆者と言うと遠い存在のように感じますが、例えば、カフェであなたの親友が長々と何か話している場面を想像してください。
それを「要するに○○ってことが言いたいんだな」と察しながら聴いているようなイメージをすると、筆者がグッと近づきます。
その段落で何が言いたいかわかったら、すぐに次の段落へ行きます。
とりあえず、全体のことは考えずに、まずはその段落だけだと思って集中して読み取りましょう。
全段落のチェックが終わったら、線を引いたとこだけを見て、全体の流れをチェックします。
長い文章も、「イイタイコト」だけを見ると、ほんのわずかであることがわかります。
全体を通して、結局は同じ主張の繰り返しです。
出題される本文は、長い書籍の中からほんの一部が抜粋されます。
内容的にまとまった個所を切り取るため、イイタイコトが一貫しているのは当たり前なのです。
自分なりに設問の答えを考えてみます。
問題は全て選択式ですが、いきなり選択肢を比べてはいけません!
選択肢は巧みなダミーでいっぱいです。
現代文の問題は、「何となく」で選ぶと必ず間違えるように選択肢が作ってあります。
学習の際には、「どこが間違っているか」ではなく、出題者視点で「受験生に×肢を選ばせるための工夫」を探ってみると良いかもしれませんね。
※【選択肢の裏情報】出題者の立場になって考えてみる。
近年は、消去法で解く受験生が急増しています。
これを利用し、消去法で解くと×肢に誘導されるように選択肢を作っているのです。
○の肢=なるべく選ばせたくない=シンプルにあっさりとした書き方
×の肢=こちらを選ばせたい=正解っぽい錯覚を与える書き方
本文の論旨はわかっているため、解答のポイント(一番核となること)ぐらいはわかると思います。
選択肢を見る前に、必ず自分で答えを考えましょう。
自分で考えると言っても、完璧な解答を作る必要はありません。
それが曖昧のまま選択肢を見ると、必ず間違いに誘導されてしまうのです。
自分の考えた解答に一番近いものを選びます。
選べなくても2つぐらいに絞ることはできるはずです。
この時に初めて選択肢を比べます。
「文章を読むのが遅い」「遅い割に理解できない」「気がつくと文字を目で追っているだけになってしまっていて、何度も読み返してしまう」
多くの人が経験する悩みだと思います。
これらは、書かれた文字を全て認識しようとするために生ずる弊害です。
文章は情報伝達のための手段であり、文体はあくまで器に過ぎません。
書き手は頭の中にある「イイタイコト」を、言語と言うルールに載せて表現しているだけなのです。
よって、大切なのは文体ではなく、その向こう側にいる筆者の頭の中にある「イイタイコト」を共有することです。
ここでコペルニクス的転回です。
文体は単なるルールなので無視してしまいましょう。
文の中から、重要な語だけを認識し、それを自分の頭の中で、「自分で」つなげていきます。
文を飛び越えて、直接筆者の頭の中を構築する(外側から理解するのではなく、自分の内側から理解する)のです。
また、字面だけで無く、対になることを考えながら読むことで、読解効率が倍増します!
「本文+α思考」の例
本文が抽象的な内容→頭では具体的に考える「例えば、、、」
本文が具体的な内容→頭では抽象的に考える「つまり、、、」
本文がAの内容→頭ではBを考える(対比概念)
本文がAの内容→頭ではBを考える(対比概念)
本文が結果(目的)の内容→頭では原因(手段)を考える「どうして?」「どうやって?」
このように、補いながら読んでいくと素早く内容を把握できます。
次に、文を速読する場合、重きを置く重要語はどのように識別すれば良いのでしょうか。
日本語の漢字は表意文字であり、意味が込められています。
また、意味が深い漢字ほど画数が多く、密度が高くなっています。
逆に意味を持たない単なる機能だけの語(助詞・助動詞など)は、平仮名と言う、密度の低い文字で表されています。
日本語は、重要度と文字の密度が比例しているのです。
日本語を読むときは密度の高い文字(=漢字)だけを認識し、そのつながりは自分の頭で構築します。
こうすれば、かなり速いスピードで、しかも確実に内容を理解することができます。
自分の頭(内側)で構築するので、文字を追うだけの作業にはならないのです。
このように言うと、何か新しい読み方のように聞こえるかもしれません。
しかし、皆さんも普段新聞や雑誌など、「理解」しながら読めている時は、漢字だけを認識し、それを頭の中で自然と構築する「内側からの読解」をしているはずです。
試験で緊張すればするほど、読み方が不自然になり、頭に入ってきません。
「重要なところだけでいいんだ」とリラックスして読解してみましょう。
文章整序や空所補充についても触れていきます。
言葉とは、読み手に新しい情報を伝えるものです。
しかし、いきなり新しい情報を出しても相手に伝わらないため、「旧情報(読み手が知っている情報)→新情報」と言う順に提示します。
そして、その新情報aを次の文の冒頭で旧情報として受け、さらにそこから新情報bを提示する、と、次から次に情報をリレーしています。
文章整序では、この「情報リレー」に注目し、「文の後半の新情報が、その次の文の冒頭に旧情報として出現する」つなげ方をしていきます。
教育の国語の文章整序問題とは異なり、公務員試験の文章理解出題者は、国語の専門家ではありません。
従って、出題者の題材に無理があり、一部のつながり以外は特定できない、と言う問題が多いです。
これは、文章を全て並べ替えて完成させようとする完璧主義の人間には寧ろ解けない仕組みになっています(「完璧主義者の排除」傾向は公務員試験全体に共通しています)。
全体ではなく、すぐにつながるところをピンポイントで見つけ、2〜3程度つないだらその接続のある選択肢に絞っていきましょう!
「空所に何を言うかは、筆者の自由なので、そんなものが第三者にわかるはずがない!」と思うかもしれませんが、それは違います。
実は、情報伝達のために、守るべきルールがあり、そのルールに縛られて人は表現をしているのです。
協調の4原理(語用論)
1. 量の公理 - 求められているだけの情報を提供しなければいけない。
2. 質の公理 - 信じていないことや根拠のないことを言ってはいけない。
3. 関連性の公理 - 関係のないことを言ってはいけない。
4. 様式の公理 - 不明確な表現や曖昧なことを言ってはいけない。
この中で3の「関連性の公理」が空所補充の武器になります。
つまり、近くに必ず空所の説明があるはずです。
また、空所が複数ある場合、前から全ての空所を埋めようとする完璧主義はここでもNGです。
空所の中には、すぐに特定できる箇所と、特定が難しい箇所があります。
多くの問題は最初の空所は難度を高くして挫折しやすいように設計しています。
特定のできるところだけ先にチェックして、すぐに選択肢を絞りましょう。
学習の際にまず理解しておきたいのは、「知能科目は時間や量と得点は比例しない」と言う点です。
恐らく大学受験の際に、社会科目は勉強すればしただけ得点できるようになったのに対し、数学や現代文は勉強量と得点が一致せず、悩んだ経験のある方が多いと思います。
一方で、全く勉強をしていない友人が自分より高得点を取っていたこともあったはずです。
実は数学や現代文は勉強量と比例しない分、コツをつかめばあっという間に得点することが可能です。
得点につながらない自己満足作業の勉強はすぐに改め、短期間で高得点が取れる本質的学習をしていきましょう。
ここでは現代文の学習のポイントを簡潔に紹介します。
文章理解は知能系科目ですが、知能の養成には必ず「未知の問題」を使わなければなりません。
何故ならば、知能系科目は「未知の問題に対応できるか」を測っているからです。
一度解いたことがあり、解説を見た問題をやり直す人も多いでしょう。
前にやった時のことや、解説を完全に忘れていれば問題ありませんが、大抵は覚えていて、思い出して解いています。
これでは知能ではなく知識で解くことになるため、知能の力は一切上がりません。
「沢山勉強しているのに一向に解けるようにならない」と言う人は、自己満足の知識学習に陥っていないかを注意しましょう。
「新しい問題ばかりやっても復習しなければ身に付かないのでは?」と思う人もいるでしょう。
もちろん、学習したことを復習しなければ能力は上がりません。
しかし、同じ問題をやり直す学習は前述の通り効果がないのです。
よって、復習は「新しい問題」で実践します。
問題を解いた後に、「どうすれば正解を選べたか」「どこに気を付けるべきだったか」などをしっかりと吟味・分析します。
そして、その反省を踏まえて「復習として」新しい問題に挑むのです。
よく「反復学習」と言いますが、反復学習は猿回しの調教などで用いられる方法です。
同じ学習を繰り返しているうちにあっという間にAIに先を越されてしまいます。
科目の趣旨をしっかりと理解し、「未知の問題に対処する」と言う基本を忘れないようにしましょう。
自己満足の反復作業学習に陥ってしまったら不合格一直線です。
最後は、この記事の中でも再三再度お伝えしてきた「筆者」「出題者」との人との対話です。
文字の羅列から答えを導く機械的な学習と捉えたら、文章理解の学習に何の意義も感じられなくなり、ただただ退屈な拷問になってしまいます。
公務員は、住民のために働く仕事ですね。
それがいつの間にか事務遂行だけを見てしまい、やり甲斐を見失ってしまう人がいます。
「筆者」はどんな思いを伝えたいのか、「出題者」は何を求めているのか、を常に意識して学習してみましょう。
対話の中から試験と言う枠を超えた新しい世界が見えてくるかもしれません。