数的処理には「数的推理」「判断推理」「空間把握」「資料解釈」の4つの分野が存在します。これらの攻略法を分野ごとに紹介していきましょう。この記事では「資料解釈」の取り組み方を解説します。今後、「資料解釈」の勉強を進めていくうえで参考にしていただければ幸いです。
この記事を書いた人 橋口 武英 大学時代から教育分野に関心を持ち、個別指導塾や大手受験予備校において、小学生から高校生を対象に幅広く講義を行う。その後、予備校や専門学校で行政書士試験・ビジネス実務法務検定の対策などに携わったのち、大手資格試験予備校において公務員講座の講師となる。公務員試験対策全般のサポートを行う担任講師及び数的処理の講師として、校舎や学内講座のみならず、全国に動画配信される収録講師も担当。理系科目が苦手だった自身の経験を活かした講義は、「文系の受験生でもわかりやすい」として高い評価を得る。 |
資料解釈とは、「問題にさまざまな資料が示され、そこから確実にいえる選択肢を探す」という分野です。「解釈」という言い方をしますが、資料を分析して結論を出すようなものではありません。基本的には資料から読み取れる数値を計算することで、正しくいえる選択肢を探す問題ですね。他の3分野に比べると、毛色がかなり異なります。資料を正しく読み取って、選択肢を正しく読み取って、正しく計算ができれば必ず正解にたどり着けます。ですから、数的処理の4分野の中では最も安定して点数を取れる分野でしょう。
ただ、その一方で、非常に時間がかかります。おそらく初めて資料解釈に触れる方であれば、1問10分は余裕でかかると思ってください。解答に時間がかかる原因はいくつかあります。「見慣れないような読み取りにくい資料が出題される」こともありますし、「選択肢の言い回しがわかりにくい」こともあります。ただ、最も時間がかかる原因は、何より計算の手間だと思います。出てくる計算は、単純なものもありますが、だいたいは割合の計算になります。これが非常にややこしく、慣れないうちは間違えて計算してしまうことが多くなります。ここをいかに辛抱強くこなしていくかが大事でしょう。数的処理はどの分野も「慣れ」の側面が強いのですが、特に「慣れ」が求められるのが資料解釈だと思います。
では、資料解釈にはどんな出題テーマがあるのか、簡単に紹介しておきましょう。以下の分類は私見によるものです。
数値として代表的なのが、「実数」「構成比」「指数」「増加率」の4つです。これらを題材にした資料が大半を占めます。ただし、国家公務員系の試験になると難易度が上がります。単位量あたりの数値を題材にした資料が出題されたり、資料の形態が特殊なものになったり、資料が複数出題されたりします。特に近年の国家一般職で出題される資料解釈は、ほぼ全てが「複数の資料」になるため、難易度が上がりやすいですね。
どのテーマも、典型の検討手段や選択肢の言い回しの特徴、解法テクニックなどが存在しますから、それらを覚えて使えるように練習していく必要があります。
資料解釈の重要度はそこまで高くありません。数的推理や判断推理はもちろんのこと、空間把握よりも出題数が少ない試験が多数といえます。以下は教養択一試験(基礎能力試験)における出題数をまとめたものです。
東京都Ⅰ類Bや特別区Ⅰ類などは4問ずつ出題されますので、比較的出題数が多い試験です。しかし、特に特別区Ⅰ類は解答時間の兼ね合いもあるので、あまり時間をかけすぎると全体の点数に悪影響を及ぼす可能性があります。くれぐれも扱いに注意してほしいですね。
一方、地方上級や市役所であれば、原則1問しか出題されません。問題も単純で難易度も低いことが多いので、やはり基本問題を確実に得点する姿勢が重要といえるでしょう。
何より時間のかかる分野ですから、事前準備の必要性が非常に大きいと思ってください。まず資料を見たら、「何を示した資料で、その資料から読み取れることは何か」を判断できるようにする必要があります。また、選択肢についても、「何が聞かれていて、何をどう計算すればよいのか」を瞬時に読み取れるようにしなければいけません。これらを練習することで、解答時間を短縮し、素早く検討に移れるようにしてほしいのですね。
ですから、資料解釈も他の分野と同様、出題テーマや解法パターンを覚えること、解法パターンを使えるように繰り返し演習していくことが必要です。このあたりの話は「『数的処理』の攻略法」の記事でも説明していますから、そちらも是非確認してください。「選択肢を検討するテクニック」「時間短縮のコツ」が資料解釈の「解法パターン」に該当します。
『教養試験最重要科目!「数的処理」の攻略法』 |
基本問題が出題される試験であれば、事前準備はかなり効果が大きいです。例えば、東京都Ⅰ類Bで出題される4問は毎年同じテーマの資料で、しかも問題の順番も同じです。ですから、過去問をさかのぼって検討しておけば、落ち着いて短時間で処理できるようになります。特別区Ⅰ類も出題されるテーマは多少変動しますがほぼ同じです。
一方、国家公務員系の試験を中心とした難易度の高い問題は、ひねりを利かせることが多いですね。計算はほとんどいらない問題でも、読み取り方にクセがあるなど、一筋縄ではいかない問題が増えます。
資料解釈は、解答時間を食わせる目的で出題されていることが多いので、時間管理を間違えると危険なことになります。ですから、他の分野と同様、深追いしすぎには注意しましょう。結局は他の受験生も取れるような基本的な問題を確実に得点する姿勢が重要になるのです。
実際に過去問を解きながら、資料解釈で注意すべき点を解説していきましょう。資料解釈は選択肢ごとに聞いてくる内容が変わるので、まずは選択肢の言い回しに慣れることです。聞かれる内容によって、その後の検討の流れも決まってくるので、典型をしっかり押さえてくださいね。では、「『数的処理』の攻略法」の記事でも掲載しましたが、以下の問題を叩き台にしてみましょう。
2021年度・特別区経験者採用 次の表から確実にいえるのはどれか。
2.表中の各区分のうち、平成29年度における輸送機関別貨物輸送量の対前年度増加率が最も大きいのは、航空である。 3.平成30年度において、鉄道の貨物輸送量の対前年度減少率は、航空の貨物輸送量のそれより小さい。 4.表中の各年度とも、内航の貨物輸送量は、鉄道の貨物輸送量の9倍を下回っている。 5.平成27年度から平成30年度までの各年度における自動車の貨物輸送量の対前年度増加量の平均は、1億5,000万トンキロを下回っている。 (正解:5) |
資料解釈の問題でも、まず問題文を読んだ際に考えて欲しいことは以下の3点です。
⑴ 本問の出題テーマは何か?
⑵ その出題テーマにおける典型の解法パターンは何か?
⑶ 典型の解法パターンに乗せて解くことができるか?
どんなに他の分野と毛色が違っても、全てにおいて同じ思考回路で行きましょう。どんな問題も同じ思考過程で解く意識を持つことです。
まずは問題文を読んだら、出題テーマを確認しましょう。資料解釈で出題テーマがわからない、ということは基本的にありません。出題テーマが判別できないということは、「どう計算したらいいかわからない」というのとイコールですから、必ず判別できなければいけません。
本問は、「貨物輸送量」が直接書かれていますから、実数の資料です。これはすぐに判断できるようにしてください。実数の資料は実際の数値がそのまま書かれていますから、計算の仕方で困ることはほとんどないでしょう。しかし、細かい計算が要求されることがありますから、注意が必要です。 |
次に、出題テーマごとに典型の解法パターンがあるので、これを想起します。資料ごとによく選択肢で聞かれる内容、検討の流れがあるので、それを覚えてください。
実数の資料の問題であることがわかったので、典型の解法パターンを想起します。教え方によっても異なると思いますが、私であれば、以下のポイントを紹介します。 【実数の資料における典型の解法パターン】 ① 原則として概算(目安は上から4桁目を四捨五入)で検討する。ただし、問題によっては細かく計算しないと判断できないシビアな選択肢もあるので注意。 ② 対前年度増加率・対前年度減少率は、前年の量を基準にして「増えた量が何%か」「減った量が何%か」を検討する。 ③ 平均は「平均×個数=合計」で考える。 他にも解法パターンとして覚えておくべきものはたくさんありますが、本問で出てくるものとしては、このあたりを想起できればよいでしょう。 |
典型の解法パターンを思い浮かべたら、あとは解法パターンを使って問題を解いていきましょう。選択肢ごとに内容が変わるので、そのあたりもすぐに読み取って検討できるような時間短縮を考えていきましょう。
では解法パターンに合わせて解いてみます。以下の流れで検討していけばよいでしょう。簡潔に解説しますので、まだ勉強が進んでいない方は、以下の内容は気にしなくて構いません。大事なのは、解法パターンに乗せる意識と、それが実際に使えるという意識を明確に持つことです。 【STEP1 選択肢に簡単に目を通して、単純そうなものから検討する】 資料解釈においては、まず手間のかからない単純そうな選択肢から検討できるようにすることが大事です。少しでも時間短縮をするのであれば、「なるべく手間を省いて簡単な選択肢から検討して、それで正解の選択肢がわかったら、ためらうことなく次の問題に進む」というのがベストです。最初のうちは「他の選択肢が正解だったらどうしよう…」という不安がよぎってしまって大変ですが、可能な限り意識してください。 本問の選択肢をざっくりとみていくと、選択肢1は「減少量」、選択肢2は「増加率」、選択肢3は「減少率」、選択肢4は輸送量そのもの、選択肢5は「増加量の平均」を聞いています。手間のかからない楽な順番でいうと、4<1<2=3=5という感じでしょうか。選択肢4は数値をそのまま9倍するだけなので、かなり単純です。選択肢1も引き算すればわかります。選択肢2・3の増加率・減少率はちょっと計算が必要ですね。選択肢5の増加量の平均も、増加量だけではなく合計なので、やや手間がかかるでしょうか。そこで、4→1→2→3→5の順番で検討することにしましょう。 なお、この順番はあくまで一例ですから、他の順番でも構いません。ご自身の取り組みやすい流れで検討してください。 【STEP2 選択肢ごとに正誤を検討する】…解法パターン①②③ 選択肢4…× これはかなり単純な選択肢です。「鉄道の9倍よりも内航のほうが下回るか?」を聞いていますね。
一方、平成30年度は怪しそうなので、確認しましょう。鉄道は19,369ですから、上から4桁目を四捨五入して19,400で計算します。9倍すると19,400×9=174,600です。内航は179,089ですから、上回ってしまいます。したがって誤りです。 選択肢1…× 減少量ですから、差を引き算して求めましょう。やはり単純な選択肢です。平成26→27年度の減少量を求めて、「自動車の減少量は内航の減少量の2倍より小さいか?」を聞いています。
ここで、「3,000を2倍するとちょうど6,000になってしまって判断できないじゃないか!」と思われたでしょう。これがまさに特別区の問題という感じですね…実はこの選択肢は、正確に計算しないと判断できません。特別区はこのようなシビアな選択肢を作ってくることが多いので、こうなったら根気強く計算してください。 正確に計算すると、自動車の減少量は210,008-204,316=5,692です。一方、内航の減少量は183,120-180,381=2,739です。内航を2倍すると2,739×2=5,478ですから、自動車の減少量は内航の2倍より大きいですね。したがって、誤りです。 選択肢2…× 「対前年度増加率」を聞く選択肢です。非常に出題頻度が高いので、増加率の検討はしっかり慣れてくださいね。平成29年度の対前年度増加率なので、平成28→29年度でどれくらいの割合で増加したかを確認して、「最大が航空である」かどうかを聞いています。 まず、航空は1,057→1,066で、増加量は1,066-1,057=9です。この数値を見て、さすがに「これで増加率が最大というのは無理があるのでは…」と思ってほしいですね。1,057から9しか増えていません。1,057の1%は10.57ですから、1,057から9しか増加していないということは、増加率は1%(=10.57)にも満たないということです。 そこで、他に1%以上増えていそうなところを見つけて検証しましょう。例えば鉄道を検討します。鉄道は21,265→21,663で、増加量は21,663-21,265=398です(概算でも構いません)。21,265の1%は212.65ですから、21,265から398増加するということは、明らかに1%(=212.65)以上増加しています。増加率が最大なのは航空ではないので、これは誤りです。 選択肢3…× 「対前年度減少率」を聞く選択肢です。先ほどの増加率と逆に、「マイナスの増加率」を聞いていますね。平成30年度の対前年度減少率なので、平成29→30年度でどれくらいの割合で減少したかを確認して、「鉄道は航空より小さい」かどうかを聞くものになっています。 これはパッと見た感じではわかりにくいでしょう。減少率を確認してみます。まず、鉄道は21,663→19,369で、減少量は21,663-19,369=2,294です。21,663の10%は2,166.3ですから、21,663から2,294減るということは、減少率は10%(=2,166.3)を超えています。 一方、航空は1,066→977で、減少量は1,066-977=89です。1,066の10%は106.6ですから、1,066から89減るということは、減少率は10%(=106.6)まではいかないことになります。したがって、航空のほうが減少率は小さいので、これは誤りです。 選択肢5…○ 今までの選択肢は全て誤りですから、消去法で選択肢5が正解です。念のため検討してみましょう。 この選択肢は、平成27年度から平成30年度までの各年度における自動車の対前年度増加量を確認して、「それらの平均が1億5,000万トンを下回るか?」を聞くものです。 まず、単位を確認しておきましょう。この資料の単位は「100万トンキロ」なので、「1の位」に当たる部分が「100万トンキロの位」です。そのまま左にずらして「10の位」が「1,000万トンキロの位」、「100の位」が「1億トンキロの位」に当たります。ということは、1億5,000[万トンキロ]とは、150[100万トンキロ]になります。 また、この選択肢は4年の「平均」を聞いていますが、「平均」を聞かれたら「合計」で検討すると手間が省けることが多いでしょう。平均は「平均=合計÷個数」で求められますから、逆算して合計は「合計=平均×個数」で求められます。4年の「平均」が150になるということは、4年の「合計」が150×4=600になるということです。4年の増加量を合計すると600を下回るのかどうか、確認しましょう。 では、1年ごとの増加量を求めます。平成26→27年度は210,008→204,316で減っていますから、増加量はマイナスですね。204,316-210,008≒204,000-210,000=-6,000です。平成27→28年度は204,316→210,314で、増加量は210,314-204,316≒210,000-204,000=6,000です。平成28→29年度は210,314→210,829で、増加量は210,829-210,314≒211,000-210,000=1,000です。平成29→30年度は210,829→210,467でマイナスになりますね。210,467-210,829≒210,000-211,000=-1,000です。 よって、4年の増加量の合計は-6,000+6,000+1,000-1,000=0です。600を下回っているので、選択肢5が正解です。 |
上記の選択肢5解説では、選択肢の指示に合わせて1年ごとに増加量を確認しました。しかし、気づいた方もいるかもしれませんが、こんな面倒なことをする必要はありません。そもそも平成26年度から対前年度増加量を全て足した結果が平成30年度になっているわけですから、平成26→30年度の増加量を確認すれば済むのです。210,008→210,467で増加量は210,467-210,008=459ですから、600を下回っていますね。実際にはこれだけで済ませることができます。
このように、資料解釈では選択肢の記述の言い回しそのままに従うと逆に時間がかかってしまうようなケースもあります。「少しでも時間短縮できる部分はないか…」という視点を持ちつつ問題演習を進めるようにしてください。
資料解釈は資料に示される数値によって検討の流れが大きく変わります。それぞれの特徴を掴んで、典型の検討手段を押さえていきましょう。結局は「出題テーマの判別→典型の解法パターンの想起→解法パターンに乗せる」という流れの繰り返しが有効です。
資料解釈は安定させやすい分野ですから、できれば得点源にしてほしいところですね。ただし、時間配分の練習だけは必ず行ってください。本試験と同じ形式で過去問を1年分通して解くとか、予備校等で実施される模試を利用するなどして、時間管理のシミュレーションをする必要があると思います。
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