公務員の休職とは
公務員には、公務員の身分を保持したまま職務から一定期間離れることができる休職制度があります。
国家公務員は国家公務員法や人事院規則「職員の身分保障」で定められていて、地方公務員もこれに準じる形でそれぞれの自治体で決められています。
精神疾患などで休職する公務員が増えている
最近は、精神疾患などを抱えて休職する公務員が増加しています。
地方公務員の健康状況の調査によると、令和4年度(2022年度)における精神障害などの「精神および行動の障害」による長期病休者数は10万人あたり換算で2142.5人でした。
前年度より12.6%増加していて、10年前の1.8倍、15年前の2.1倍に上っています。
【画像引用】地方公務員安全衛生推進協会「【令和5年】地方公務員健康状況等の現況の概要(令和4年度の状況)」
また、「精神および行動の障害」の該当者が長期病休者数全体に占める割合は65.8%で、こちらも増加傾向です。
特に20代、30代で全年齢平均を上回っており、仕事量の増加や業務内容の複雑化で職場に余裕がないことが影響し、若手の育成に手が回っていない状態にあるようです。
病気以外にも休職するケースがある
メンタルヘルス関連をはじめとした「病気による休職(最大3年)」のほかにも、公務員の休職にはいくつか種類があります。
国家公務員法や人事院規則で定められているのは、以下の項目です。
- 刑事事件で起訴されたとき(起訴休職、休職期間は刑事裁判が終了するまで)
- 学校や研究所、病院などの公共的施設で調査、研究、指導したり、国の研究に関わる仕事に携わったり、公共的機関の設立などの業務に従事するとき(最長5年)
- 大きな災害にあって所在不明のとき(最長3年)
期間は必要に応じて任命権者が定めます。
上記の休職制度のほかに、長く仕事を休むものとして休業制度があります。
▼育児休業
公務員の育児休業は、子の3歳の誕生日前日までの期間で、同一の子につき2回まで取得可能です(配偶者の入院などの特別な事情がある場合はさらに追加可)。
生後57日までに男性が取得するものは「産後パパ育休」と呼ばれ、こちらも2回まで取得可能なので、合わせて男性の場合4回まで分けて取得することができます。
原則として1回まで延長が可能です。
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▼介護休暇
公務員の介護休暇は、日または時間単位(時間単位の場合1日4時間まで)で取得できます。
期間は通算6カ月まで(3回まで分割可能)。
要介護者の状況に応じて、短期介護休暇やフレックスタイム制と組み合わせることも可能です。
▼配偶者同行休業
公務員の配偶者同行休業は、外国で勤務等をする配偶者と生活を共にするための休業制度で、最大3年間の取得が可能です。
対象となる配偶者の外国滞在理由は、勤務(出張や社命の留学等も)、職業上の活動(事業経営など)、大学等での修学で、いずれも6カ月以上の継続が見込まれることが条件になっています。
原則として1回まで延長可能です。
▼自己啓発等休業
公務員の自己啓発等休業は、国内外の大学や大学院等で修学することや、青年海外協力隊などの国際貢献活動への参加のための休業で、最大3年間の取得が可能です。
職員としての在職期間が2年以上あることが条件になっています。
1回に限り延長可能です。
公務員の休職中の給料はどうなる?
休んでいる期間中に給料が出るか出ないかは、休職・休業によって異なります。
以下で項目別にご紹介します。
休職中の給料
▼起訴休職
職員が刑事事件に関して起訴されたとき、起訴された日から判決が出る日までの休職中は、基本給と地域手当、住宅手当などの各種手当を合わせた給料の最大60%が支払われます。
▼病気による休職
病気になった場合は、まず休職の前に病気休暇を取得することができます。
最大90日まで給料の100%が支給されます。
病気休暇取得後に復帰できなかった場合は病気休職に移行となり、休職後1年間は給料の80%が支払われます。
2年目以降は無給ですが、共済組合から傷病手当として給料の3分の2が通算1年6カ月支給されます。
また、その期間が経過した後も、傷病手当の付加金が6カ月間支給されるため、休職中の3年間に無収入になることはありません。
▼その他の休職
学校や研究所、病院などの公共的施設で調査、研究、指導したり、国の研究に関わる仕事に携わったり、公共的機関の設立などの業務に従事するときの休職や、大きな災害にあって所在不明のときの休職の場合、期間中の給料は最大70%が支給されます。
ちなみに、休職の原因となった病気やケガが、公務上のものや通勤中のものだった場合、休職中の給料は全額支給されます。
休業中の給料
▼育児休業
育児休業中は無給ですが、育児休業手当金が支給されます。
基本給と諸手当で算出される標準報酬という基準をもとに支給額が決まります。
- 育休開始〜180日目まで:標準報酬日額の67%
- 育休181日目〜365日目まで:標準報酬日額の50%
支給期間は、子が満1歳(夫婦で育休なら1歳2カ月)までとなっています。
また、育児休業中は共済組合の短期給付事業(医療保険)や長期給付事業(年金)のための共済掛金の支払いが免除されます。
▼介護休暇
介護休暇は、勤務しない時間の給料が減額されます。
1日単位の介護休暇を取得した場合は、共済組合から介護休業手当金が支給されます。
通算して66日まで、標準報酬の67%が支給されます(上限あり)。
共済掛金の免除はありません。
▼自己啓発休業・配偶者同行休業
両方の休業制度に共通して、休業中は無給です。
無給の休業中も共済掛金を払う必要があります。
退職手当への影響
公務員の退職手当の算出方法は以下の通りです。
退職金=基本額(退職日の基本給×退職理由別・勤続期間別支給割合)+調整額
休職・休業は勤続期間を数える際に影響があり、当該期間の2分の1あるいは全期間を除算することになります。
▼期間の2分の1を除算する
- 私傷病による休職
- 起訴休職
- 研究休職(公務に役立つと認められる場合は除外されない)
- 育児休業(子が1歳に達した日の属する月までの期間は3分の1)
▼全期間を除算する
- 自己啓発等休業(公務に役立つと認められる場合は2分の1)
- 配偶者同行休業
まとめ
この記事では、公務員の休職について、種類や可能な期間、給料がどうなるのかについてそれぞれご紹介しました。
- 公務員のメンタルヘルス起因の休職が増加中
- 有給の病気休暇や、最長3年の休職(1年は給料の80%が支給)など制度が充実
- 病気やけがによる休職のほか、起訴休職、研究休職などがある
- 育児休業、自己啓発等休業等の休業は無給だが、育児や介護関連は共済組合から手当金の支給あり
「病気やライフイベントがあっても、長く働き続けたい」という方にとって、公務員は有力な選択肢となるでしょう。
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