保育士は退職金がもらえる?公立・私立別にシミュレーション

保育士の退職金は勤務先や雇用形態によって大きく異なります。

保育園によって退職金制度が違い、勤務形態でも条件が異なるため、保育士として働けば退職金が必ずもらえるわけではありません。

この記事では、公立・私立保育園別の退職金制度や相場、計算方法を詳しく解説します。

これから保育士を目指している方やすでに保育士として働いている方は、ぜひ参考にしてください。

保育士は退職金がもらえる?

保育士の退職金は、勤務先や雇用形態によって大きく異なります。

公立と私立、正社員と非正規雇用では制度が違うため、退職金が必ずもらえるわけではありません。

条件をしっかり確認することが重要です。

退職金がもらえる条件

保育士の退職金支給条件は、公立と私立で大きく異なります。

公務員保育士の場合、地方公務員としての待遇が適用されるため、通常1年以上の勤務の方が退職金支給の対象です。

なお、6カ月以上1年未満勤務して退職した場合は、6カ月以上が切り上げられて1年と見なされ、1年が経過していなくても退職金が支給されます。

 

一方、私立保育園では就業規則や契約内容によって条件が変わります。

退職金制度がある保育園では、正社員として3年以上勤務していれば退職金が支給されるケースが多いようです。

退職金がもらえないケース

公立保育園でも、1年未満の勤務やパート勤務、会計年度任用職員などの場合は、基本的に退職金が支給されません。

短期間の勤務や非正規雇用では退職金の対象外となるためです。

私立保育園では、定められた勤務年数に満たない場合や、パート・契約社員などの非正規雇用の場合、退職金が支給されないケースが多いです。

 

また、保育園によっては、退職金制度自体がない場合もあります。

そのため、就職や転職の際には、雇用形態や勤務条件、退職金制度の有無を事前に確認することが重要です。

保育士の退職金の相場

保育士の退職金相場は、公立と私立で大きな差があります。

公務員保育士は、地方公務員と同等の高額な退職金が期待できますが、私立園では運営主体や園の方針によって金額に大きな差があります。

ここでは、保育士の退職金の相場の具体的な数字を見ていきましょう。

公務員保育士の退職金相場

公務員保育士の退職金は、基本的に地方公務員と同じ基準です。

実際に支給される退職金の金額は、勤続年数や給与月額、退職理由などによって異なります。

総務省の「令和6年地方公務員給与の実態」によると、退職手当を支給された職員(保育士含む)の1人当たり平均手当額は、約837万円です。

退職した理由ごとの退職金の支給額を見ると、自己都合の場合は、1人あたりの平均手当額が約255万円となっています。

 

一方で、25年以上勤務して定年退職した場合の1人あたりの平均手当額は、約2,235万円です。

ただし、上記の金額は総務省の調査に基づく数字ですが、あくまでも平均的な数値であり、実際の金額は自治体や個人の条件によって変動します。

私立保育士の退職金相場

私立保育園の退職金相場は、運営主体によって退職金制度の内容はさまざまです。

社会福祉法人が運営する園では、多くが退職手当共済制度に加入しています。

退職手当共済制度は、被共済職員期間と退職理由などの基準に基づいて退職金を計算するため、ある程度の一貫性があります。 

独立行政法人福祉医療機構の「退職手当金額早見表」を見ると、退職金の相場がよくわかるでしょう。

 一方、株式会社が運営する保育園では、退職手当共済制度に加入しているケースと独自の計算方法を採用しているケースがあります。

そのため、退職金の額は運営主体や保育園の状況などによって差があるのが現状です。

保育士の退職金の計算方法とシミュレーション

保育士の退職金の具体的な金額を知ることは、将来設計を立てる上で非常に重要です。

ここでは、公務員保育士・私立保育士の退職金のそれぞれの計算方法と、勤続年数別のシミュレーション結果を詳しく紹介します。

公務員保育士の退職金

公務員保育士の退職金は、地方公務員の退職金の計算方法に準じて、以下の計算式で算出されます。

退職金 = 基本額(退職日給料月額 × 退職理由別・勤続期間別支給率)+調整額

退職理由別・勤続期間別支給率は、勤務年数が長いほど、また、自己都合退職よりも定年退職の方が高い率が適用されます。

調整額は、在職中の役職や特別な功績などを考慮して加算される金額です。

責任ある立場で長く勤めた人ほど、より多くの退職金を受け取れるようになっています。

ここでは、給料月額を25万円と仮定し、自己都合退職の場合のシミュレーションを行います。

調整額は個人差が大きいため、ここでは基本額のみで計算します。

10年勤務した場合

計算式:月額25万円 × 支給率6.0 = 退職金150万円

15年勤務した場合

計算式:月額25万円 × 支給率12.4 = 退職金310万円

20年勤務した場合

計算式:月額25万円 × 支給率23.5 = 退職金587万5,000円

上記の金額に加えて調整額が上乗せされるため、実際の支給額はこれより多くなる可能性が高いです。

また、定年退職の場合は、さらに高い支給率が適用されます。

私立保育士の退職金

私立保育士の退職金計算方法は園によって異なりますが、ここでは、多くの社会福祉法人が加入している福祉医療機構の退職手当共済制度を例に挙げます。

退職手当共済制度では、勤続年数と退職時の給与に基づいて退職金が計算されます。

計算式は以下の通りです。

退職金 =計算基礎額 × 支給乗率

※計算基礎額は退職前6カ月の本俸月額の平均額に応じて設定

支給乗率は勤続年数によって決まり、長く勤めるほど退職金が増える仕組みです。

福祉医療機構の「退職手当金計算シミュレーション」を利用し、給料月額を25万円、退職理由を自己都合と仮定して、退職金の想定金額を計算しました。

  • 10年勤務した場合:130万5,000円
  • 15年勤務した場合:269万7,000円
  • 20年勤務した場合:511万1,250円

上記の金額は、あくまで一例であり、実際の金額は、園の方針や個人の条件によって変わる可能性があります。

また、株式会社が運営する保育園では、独自の退職金制度を設けていることがあるため、金額が大きく異なる場合もあります。

保育士の退職金が支給されるのはいつ?

保育士の退職金支給時期は、公立と私立で若干異なります。

公務員保育士の場合、退職手当条例により退職後1カ月以内に支給されるのが一般的です。

一方、私立保育園の場合は各園の就業規則によって定められていますが、多くは退職後1カ月から3カ月以内に支給されます。

 

ただし、園の財政状況や事務処理の都合により、この期間が前後する場合もあります。

退職金は高額になることが多いため、支給時期を事前に把握しておくことは重要です。

特に、退職後すぐに新しい生活を始める場合や、退職金を元手に何か始めようと考えている場合は、支給時期を確認しておくと、より適切な資金計画を立てられるでしょう。

保育士が退職金が支給される職場で働くには?

退職金が支給される職場で働くためには、就職・転職の際に求人内容をよく確認することが大切です。

退職金制度の有無は重要な待遇の一つなので、多くの求人情報に記載されています。

既に保育園で勤務している場合は、園の就業規則や自身の契約内容を確認してみましょう。退職金に関する規定が記載されているはずです。

不明な点があれば、園の管理職の方や人事担当者に直接問い合わせても良いでしょう。

まとめ

保育士の退職金は、勤務先によって状況はさまざまです。

  • 保育士の退職金は公立と私立で大きく異なる
  • 退職金の有無や金額は雇用形態や勤続年数に左右される
  • 公務員保育士の退職金は地方公務員と同等
  • 私立保育園の退職金は園によって異なる
  • 退職金制度の有無は就職・転職の際の重要な検討材料

保育士として安定したキャリアを築くためには、保育士の資格取得が欠かせません。

資格を取得し、より良い条件の職場で働くチャンスを広げていきましょう。

 

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