警察署は都道府県警察の組織であり、所属している警察官は、地方公務員に分類されます。したがって、警察官になるためには地方公務員試験に合格しなければなりません。ここでは、警察官の具体的な仕事内容や、警察官になる方法を説明しましょう。
警察官とは?
警察官は、主に犯罪の予防や捜査に関わり、住民の生命や安全な暮らしを守る仕事です。ただし、警察官にもさまざまな身分があります。国家機関である警察庁に所属する警察官であれば国家公務員となり、現場の仕事はほとんどありません。その他、天皇家の警備を主に行う皇宮護衛官なども国家公務員です。
一方で、都道府県警察に所属する警察官は地方公務員となり、巡回パトロールなどの地域警察や防犯対策などの生活安全警察のような「現場の仕事」に携わります。ここでは都道府県警察に所属する警察官を紹介していきましょう。代表的な仕事として、以下のような分野が存在します。
地域警察 | いわゆる巡回パトロールなどを行い、地域犯罪の発見や未然の防止に努めます。通称「おまわりさん」と呼ばれる人たちですね。交番勤務となり、道に迷った住民の道案内や、遺失物管理なども行います。 |
生活安全警察 | 一般的な防犯対策のみならず、子供や女性へのDV被害・ストーカー被害などに対する安全対策、高齢者へのひったくり被害などの対策など、犯罪が起こりにくい街づくりに貢献します。 |
刑事部 | 犯罪捜査や犯人逮捕に携わる仕事です。警察内の部署のひとつですが、刑事部内でも殺人や強盗などの強行犯を扱う「捜査第一課」、詐欺や脱税などのお金に関わる犯罪を扱う「捜査第二課」などに分かれます。 |
交通部 | 交通違反の取り締まりや交通事故が発生した際の処理などに携わります。白バイ隊員なども交通部の所属です。学校や地域で行われる交通安全教室にも関わります。 |
警備警察 | 要人の警備やイベントなどの警備、空港や港湾などの重要施設の警備に携わります。テロ行為やゲリラなどの制圧、災害発生時の救助活動なども行います。 |
総務・警務警察 | 一般的な警察の運営・管理に携わります。警察の広報や音楽隊の活動、予算の管理や人材育成などの人事、犯罪被害者の支援にも関わっていきます。 |
参考:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/140
警察官になるには?
では、警察官になる方法について説明しましょう。警察官は原則として都道府県の職員ですから、身分としては地方公務員になります。したがって、公務員試験を受けて合格しなければいけません。そこで、警察官採用試験がどのようなものか紹介します。
警察官採用試験は、原則として筆記試験や面接などの人物試験、体力検査で構成されています。試験によって内容は若干異なりますが、以下の流れが代表的なケースです。
採用試験ですので、まずは出願を行います。近年はインターネットで出願する試験も増加しています。
1次試験は筆記試験が課されます。筆記試験の形式としては、マークシート形式の択一試験と、文章を書く形式の論文試験があります。
2次試験以降に面接試験や身体検査・体力検査などが課されます。なお、身体検査・体力検査は1次試験から課されるところもあります。
最終合格すると、内定を得て採用されます。その後、警察学校へ入校して大卒であれば6か月、高卒であれば10か月程度の研修を受けたのち、警察署の下部組織である交番での勤務から警察官の仕事がスタートします。
POINT 採用試験はまず筆記試験をしっかり突破できるかがカギ!
採用試験の流れを確認して、まず覚悟しなければいけないのが、筆記試験をしっかり対策する、ということです。一般的な民間企業と異なり、警察官をはじめとした公務員試験は、筆記試験のボリュームが非常に大きくなります。まずは時間を取って筆記試験対策を行うことが重要です。
なお、警察官は原則として都道府県の職員として、都道府県警察の機関である警察署等で勤務することになりますが、前述したとおり、国家公務員の身分も存在します。なお、東京都については警視庁の職員となります。
警察官採用試験の内容は?
では、ここから警察官採用試験の中身について詳しく見ていきます。さまざまな自治体で採用試験が実施されますが、基本的には試験の内容に大きな違いはありません。
なお、ここでは原則として大卒レベルの試験(いわゆる「上級」や「Ⅰ類」と呼ばれる試験)を前提に説明しますが、高卒レベルの試験であっても、選考の大枠は変わりません。ぜひ参考にしてください。
ちなみに、受験資格については、おおむね国籍要件と年齢要件のみとなっています。ただし、一部の試験区分では学歴要件を設定している場合もあるので、注意してください。
警察官は「公権力の行使にあたる公務員」になるため、日本国籍を有していることが前提です。また、年齢要件については試験によって異なりますが、多くの試験種が30~35歳程度までの設定にしていることが多いといえます。
1.筆記試験の概要
どんな試験であっても、筆記試験ではまず択一試験と論文試験が実施されます。なお、その他に適性検査なども課されることがありますが、原則として対策は不要と考えてよいでしょう。
⑴ 択一試験
五肢択一式で、いわゆるマークシートの「教養択一試験」が出題されます。「教養」とは、高校までに勉強した内容+αが問われるものです。
高校までに勉強するような科目がラインナップに入っていることがわかると思います。文章理解は、センター試験レベルの現代文や英文の内容合致や趣旨把握などが出題されます。人文科学は世界史・日本史・地理などの「社会」が出題範囲になっており、自然科学は数学・物理・化学・生物・地学などの「理科」が出題範囲になります。社会科学の法律・経済・政治・社会などは、高校の政治経済と同程度のレベルから出題されています。
ここからさらに「+α」になるのが、数的処理や時事などの科目です。数的処理とは、数学的な知識を使って、問題を処理する科目です。簡単にいうと、中学受験の算数のような問題が出題されます。
このように、出題科目は非常に多岐にわたります。ただし、科目のラインナップが非常に多いため、基本的にはメリハリをつけながら対策を進めることになります。以下の出題数一覧を見てください。これが過去に実施された本試験の択一試験における、各科目の出題数です。ちなみに「道府県警察官(5月)」というのは、5月に実施される試験のことだと理解してもらえばよいでしょう。道府県の警察官の採用試験は、主に5月や7月に実施されることが多いといえます。
自治体によってさまざまな試験がありますが、どこも出題傾向はかなり似ています。基本的に出題数が多いのが、左側に列挙されている一般知能分野の数的処理と文章理解ですね。どんな試験であっても、この2科目で半分程度の出題数を占めることになります。
POINT 択一試験はまず数的処理と文章理解から対策!
出題される科目が非常に多いため、一見すると何から手をつければよいかわからなくなるかもしれません。しかし、警察官試験に限らず、公務員試験の教養択一試験で大きな比重を占めるのが、この数的処理と文章理解です。どちらも問題演習が非常に重要で、出題形式に慣れることが必要です。それなりに時間を割いて取り組むようにしましょう。
ちなみに、合格ラインは試験種によっても多少違いますが、概ね6~7割程度と考えておいてください。満点は必要ありませんから、なおさら数的処理と文章理解でなるべく点数を稼ぐこと、一方で一般知識分野の科目はそこそこにとどめておくことが重要なのです。
⑵ 論文試験
論述式の文章を書く試験です。出題される内容は試験によってやや異なりますが、基本的には社会問題や行政課題について「警察官としてどのように取り組むべきか」、自分の考えを書いていくことになります。その他、面接試験と同じように自己PRの要素を含んだ課題が出題されることもあります。
過去の出題例 2022年度・警視庁警察官Ⅰ類①これまであなたが人との関わりから学んだことについて触れ、今後それを警察官の仕事にどのように活かしていきたいか述べなさい。 |
対策方法としては、何より書く練習を積むことです。なかなか普段から文章を書く機会が少ない受験生も多いですから、書き慣れることが非常に重要です。あとは、現状の警察行政に関する前提知識も持っておく必要があるでしょう。警察にまつわるトピックなどを仕入れておくことも大切です。
2.面接試験の概要
面接試験は主に個別面接(受験生が1人で、内容が深掘りされる面接)がメインですが、自治体によっては集団面接(受験生が複数になる面接)や集団討論(受験生どうしで特定のテーマについて討論し、一定の結論を導くもの)などが実施されることもあります。
特に近年は人物試験が重視される傾向にあります。警察官は犯罪捜査や犯罪の発生防止に関わり、住民の生命や財産を守る重要な役目を担っていますから、ストレスにさらされやすい職業でもあります。ストレス耐性なども大きく評価の対象になりますので、「警察官としての適性」があることを伝えられるように、準備する必要があります。
3.身体検査・体力試験の概要
警察官として職務を遂行していくために、一定程度の体力があるかどうかも評価されます。身体検査として身長・体重制限がある試験種もあります。その他、視力や色覚、聴覚の基準を設けているところも多いので注意してください。一例として、警視庁警察官Ⅰ類の身体要件・体力検査の内容は以下のようになっています。
警察官採用試験はどれくらい合格できる?
おそらく多くの方が気になるのが「果たしてどれくらい合格できる試験なのか?」という点でしょう。以下は、2021年度の代表的な警察官採用試験の試験結果をまとめたものです。
試験種によって倍率にかなりばらつきがあることがわかるのではないかと思います。申込者数と採用人数の兼ね合いによって、年ごとに大きく変動することも多いので、採用予定数も必ず事前に確認するようにしてください。また、男女別にみると女性のほうが採用人数は少ないため、結果的に倍率が高くなりやすい傾向にあります。
なお、警察官試験は年に複数回実施されることも多いのですが、特に採用人数が多いのは、どの試験であってもだいたい1回目です。したがって、警察官の志望度が高いのであれば、1回目で合格できるように入念に準備していきましょう。
これから警察官を目指す方へ!
1.必ず試験の内容を確認すること!
ここまで、警察官採用試験について簡潔に紹介してきました。警察官の試験は、最初からモチベーションが高く、仕事の意義も理解して目指す受験生が多いのですが、そうはいっても「なかなか仕事のイメージが湧いていない」という方もいらっしゃるでしょう。しっかり仕事の中身を理解したうえで、試験内容を把握したうえで効率的に試験対策を進めてほしいと思います。
採用情報のホームページには、さまざまな仕事紹介の動画や説明の情報などが掲載されています。試験を目指していても「採用のホームページをほとんど見たことがありません…」という方もたまにいらっしゃいますが、非常にもったいないです。ホームページにしっかり目を通して、まずは試験の内容を確認するところから始めましょう。ちなみに、本試験の過去問は掲載していない自治体が大半ですが、「例題」として一部掲載されているところもあります。どのような試験が出題されるのか、イメージを持つようにしてください。
2.教養択一試験の対策から始めよう!
最初は必ず教養択一試験の対策に力を入れてください。もちろんゆくゆくは論文の対策もしていかなければいけませんが、何よりマークシートの試験のほうが点数は伸ばしやすいです。ここでそれなりに勉強を進めたうえで、少しずつ論文対策にも取り組めるようにしましょう。すでに前述したとおり、教養択一試験の中でも重要なカギを握るのが、数的処理と文章理解です。ここである程度の点数を稼ぐこと、そして他の科目で少しずつ点数を上乗せすることで、合格ラインを越えることができます。
3.何より諦めないこと!
これは警察官試験に限らず、公務員試験全般でいえることですが、くれぐれも諦めないことです。特に勉強初期の段階では、なかなか実力が付いている実感が湧かないと思います。問題演習をしても、特に数的処理はなかなか正解にたどり着けないことが多いはずです。しかし、これは過去の多くの合格者が経験してきたことです。それを根気強く乗り越えた先に、やっと点数が少しずつ安定してくるものなのですね。警察官は特に精神力が要求される仕事だと思いますが、筆記試験の対策も精神力が試されているのだと思って、取り組んでほしいです。
なお、試験対策のコツや勉強法については、スタディング公務員講座の記事で多数紹介していますので、是非そちらにも目を通して、しっかり覚悟を決めて取り組んでいただければと思います。
この記事を読んだ皆さんが、警察官試験を突破し、警察官としての未来を実現できることを祈っております!