国家公務員の職種とそれぞれの仕事内容をわかりやすく解説

国家公務員といっても、その職種は多岐にわたり、それぞれ異なる役割と使命を担っています。

1府12省庁職員や国税専門官・労働基準監督官などの国家専門職など、さまざまな選択肢があります。

国の行政を支える公務員として働くには、各種採用試験に合格し、官庁訪問を経て内定を得るプロセスがあります。

本記事では国家公務員の多様な職種とそれぞれの仕事内容をわかりやすく解説します。

国家公務員になるには?

国家公務員になるには、各国家公務員の採用試験に最終合格した後、官庁訪問で自分の勤務先を選んで内定を得るという流れになります。

国家一般職は毎年春に試験が実施され、国家総合職は春試験と秋試験(教養区分)が実施されます。

いずれかの採用試験を受験し、合格発表後に官庁訪問が始まります。

国家公務員になるための試験には、その他にも専門職試験や経験者採用試験があり、それぞれ受験資格や試験日が異なりますが、採用試験を受けて合格する必要がある点は同じです。

試験の種類によって内容や時期は異なるので、人事院のサイトなどで志望する職種の情報をよく確認し、計画的に準備することが大切です。

国家公務員の職種一覧

国家公務員には、行政・司法・立法の三権に対応する職種があります。

行政府1府12省庁職員、国税専門官、労働基準監督官、財務専門官など
司法府裁判所職員(事務官や書記官など)など
立法府国会図書館職員、衆議院・参議院事務局職員など

それぞれ求められる能力や仕事内容が異なり、自分の特性を活かせる職種を選ぶことが重要です。

1府12省庁職員

1府12省庁とは、内閣府と12の省庁から構成される行政機関のことです。

  • 内閣府
  • 総務省
  • 法務省
  • 外務省
  • 財務省
  • 文部科学省
  • 厚生労働省
  • 農林水産省
  • 経済産業省
  • 国土交通省
  • 環境省
  • 防衛省
  • デジタル庁

1府12省庁職員は「国家公務員総合職」と「国家公務員一般職」の2種類に分けられます。

国家公務員総合職はいわゆるキャリア官僚と呼ばれる職種で、国の政策の企画・立案などを行います。

基本的には霞ヶ関が勤務先ですが、地方の出先機関や海外の大使館などに転勤することもあります。

一方、国家公務員一般職は政策を現場で動かす仕事です。

中央省庁で勤務する場合もありますが、総合職に比べると地方勤務が多く、全国各地の法務局や労働局などで働くケースが多いです。

地域別のブロックごとに採用されるので、特定の地域で勤務できます。

国家専門職

国家公務員には、以下のようなさまざまな専門職があります。

  • 皇宮護衛官
  • 法務省専門職員
  • 財務専門官
  • 国税専門官
  • 食品衛生監視員
  • 労働基準監督官
  • 航空管制官
  • 海上保安官
  • 外務省専門職員
  • 防衛省専門職員 など

ここでは代表的な5つの職種を詳しく解説します。

▼国税専門官

国税専門官は税務署や国税局に勤務し、税金の調査・徴収・査察を担当します。

国税調査官として確定申告の指導、国税徴収官として滞納処分、国税査察官として脱税者への強制捜査などを行うのが仕事です。

国税専門官になるには、人事院が実施する「国税専門官採用試験(専門職試験)」に合格する必要があります。

大学卒業程度の学力が求められ、教養試験・専門試験・人物試験などを通じて総合的に評価されます。

採用後は税務大学校で研修を受け、税務の専門家として育成されます。

▼財務専門官

財務専門官は財務局や財務支局で働き、国の財政・金融行政を担う職種です。

国有財産の管理・売却、地域金融機関の検査、地方自治体の財政状況分析などを行い、地域経済と金融システムの安定化に貢献します。

経済や金融に関する専門知識を活かして、幅広い業務に携わります。

財務専門官になるには、「財務専門官採用試験(専門職試験)」に合格しなければなりません。

試験では、公務員として必要な基礎的な能力や財務専門官として必要な専門知識が問われます。

▼労働基準監督官

労働基準監督官は、労働基準監督署に勤務し、労働者の権利を守る「労働のスペシャリスト」です。

労働条件や安全衛生に関する法令に基づき、事業所への立入調査、労働災害の調査、法令違反の取締りを行います。

特別司法警察職員としての権限も持つ、労働行政の最前線で活躍する職種です。

労働基準監督官になるには、「労働基準監督官採用試験」に合格する必要があります。

法文系区分と理工系区分があり、希望する業務内容に応じて受験区分を選びます。

▼外務省専門職員

外務省専門職員は外交のプロフェッショナルとして、特定の言語・地域に精通したスペシャリストです。

高い語学力と国際感覚が求められ、外務省本省や海外の大使館・領事館で勤務します。

外交業務において重要なポジションで、国際問題に対する深い理解と専門知識を活かし、世界各国との連携を強化する役割を果たします。

外務省専門職員になるには、「外務省専門職員採用試験」に合格しなければなりません。

語学力(英語・中国語・フランス語など)や国際関係の知識が重視され、専門性が問われます。

▼防衛省専門職員

防衛省専門職員は、防衛省や自衛隊で安全保障に関する重要な業務を担う専門家です。

主に、英語・ロシア語・中国語・朝鮮語などの高度な語学力を活かして、諸外国との交渉や国際会議での通訳、海外資料の収集・分析を行います。

勤務先は防衛省本省や地方の防衛局、自衛隊の各部隊、研究機関などで、国際的な安全保障の問題に対応し、日本の平和と独立を守る役割を果たします。

防衛省専門職員になるには、「防衛省専門職員採用試験(語学職)」に合格しなければなりません。

公務員として必要な基礎的な能力に加えて、高度な語学スキルが求められます。

裁判所職員

裁判所職員は、司法府に所属する国家公務員です。

採用試験が実施されるのは、裁判所事務官と家庭裁判所調査官の2つで、目指す方が多いのは裁判所事務官の方です。

裁判所事務官は裁判の運営をサポートする事務や裁判記録の作成、裁判所の管理運営などを担当します。

裁判所事務官として一定期間働いた後に、裁判所職員総合研修所の入所試験に合格して1〜2年の研修を終了することで、裁判所書記官になれます。

裁判所書記官になれば、より専門的な仕事に就くことが可能です。

国会図書館職員

国立国会図書館職員は、立法府に属する公務員で、国立国会図書館に勤務します。

主な仕事内容は、以下のとおりです。

  • 国会議員の立法活動を支える調査業務
  • 本や資料の収集・整理・保存を行う司書業務
  • 図書館の運営を支える一般事務 など

日本最大の図書館として学術や文化の発展に寄与しつつ、国会の活動を知的側面から支える「知の拠点」として重要な役割を担っています。

勤務先は東京本館、関西館(京都)、国際子ども図書館(東京・上野)などがあり、独自の採用試験により総合職・一般職に分かれて採用されます。

衆議院事務局/参議院事務局

衆議院事務局・参議院事務局の職員は、国会の運営を裏方から支える立法府の公務員です。

主に以下の3つの部門に分かれて働きます。

  • 会議運営部門:議事進行や委員会運営を担当する
  • 調査部門:法案や政策の調査・分析を行う
  • 総務部門:議長・議員の秘書業務や庶務を担う

勤務地は基本的に国会議事堂やその周辺施設で、全国転勤はほとんどありません。

国政の最前線で働きながら、法律や政治の高度な知識や実務能力を身につけることができます。

採用は、衆議院・参議院それぞれが独自に行う試験によって行われ、総合職と一般職の区分があります。

衆議院法制局/参議院法制局

衆議院法制局と参議院法制局は、議員立法を専門に支援する立法府の機関です。

議員や委員会の依頼を受け、法律案や修正案の作成支援、法制度に関する調査・研究を行います。

2〜3年ごとに異動し、多様な立法分野を経験できるため、幅広い法的知識が身につきます。

国内外の大学院への留学制度もあり、専門性を高める機会も豊富です。

勤務地は国会周辺に限られ、転居を伴う異動はありません。

衆議院・参議院それぞれ独自の採用試験があります。

高卒でもなれる国家公務員の職種は?

高卒者にも国家公務員を目指せる道があります。

具体的には、以下の職種です。

  • 国家公務員一般職
  • 刑務官
  • 入国警備官
  • 税務職員 など

その他にも、総務省や農林水産省、国土交通省などは、技術的な知識を活用して業務に従事する技術系官職を募集しています。

採用試験は高卒の方も受験できますが、技術分野に関する学歴や実務経験が求められます。

国家公務員の平均年収

令和6年国家公務員給与等実態調査によると、国家公務員全体の平均給与月額は41万4,801円です。

平均給与月額を元に計算すると、「月額×12ヶ月+月額×4.5ヶ月分(ボーナス)」で、平均年収は約684万円となります。

国家総合職や国家一般職が該当する行政職俸給表(一)適用職員の平均給与月額は40万5,378円で、年収にすると約668万円です。

民間企業の平均年収(約460万円)と比較すると、安定した高水準の収入が得られることも国家公務員の魅力の一つといえます。

国家公務員と地方公務員の違い

国家公務員は、国の政府機関や中央政府の部署で働き、全国規模の業務に携わります。

一方で、地方公務員は都道府県や市区町村などの地域の行政機関で働き、地域に密着した業務を担当します。

採用試験も別で、国家公務員は人事院や各機関が、地方公務員は各自治体が実施します。

また、国家公務員は同じ機関でスペシャリストとして働くことが多いのに対し、地方公務員はさまざまな部署を異動するゼネラリストとして働きくことが中心です。

詳しくは、以下のページをご覧ください。

まとめ

国家公務員になる方法や職種を解説しました。

  • 国家公務員になるには各種採用試験に合格する必要がある
  • 合格者は官庁訪問を経て内定を得る
  • 国家公務員には1府12省庁職員、国家専門職、外務省専門職員など多様な職種がある
  • 国家公務員の平均年収は約684万円で、民間企業と比べて水準が高い
  • 高卒でも受験できる試験区分があり、社会人経験者向けの試験もある

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自分に合った職種を見つけて、理想のキャリアを実現しましょう。