公務員は民間より何かと「優遇されている」というイメージがあるかもしれませんが、実際はどうなのでしょうか?今回は、公務員のワークライフバランスについて考えてみます。
就業時間や有給・育休取得率を民間と比べてみると・・・
総務省の統計をもとに、公務員の就業時間や有給・産休・育休の取得率をみてみましょう。
就業時間
総務省の労働力調査(平成28年度)によると、地方公務員の月間就業時間は「男性:177.1時間」「女性:152.0時間」。ちなみに全産業平均をみてみると「男性180.1時間」「女性:135.7時間」です。1日あたりの平均就業時間は公務員男女が8.7時間、全産業平均が8.0時間です。
こうやってデータを比較すると、公務員は決して民間企業より働く時間が少なくないことが分かります。
男性の月間就業時間は官民でそれほど大差はありません。差があるのが女性で、公務員女性のほうが民間より15時間以上多く働いているようです。これは特別公務員のほうが忙しいというより、民間はパートタイマーが多いなど働き方の違いからくるものでしょう。
育休取得率
総務省統計の「育児休業等の取得状況」(平成28年度)によると、地方公務員の育児休業の取得者および取得率は以下のとおりです。
職員属性 | 男性職員 | 女性職員 |
---|---|---|
平成28年度に新に取得可能となった職員数 | 59,721人 | 40,361人 |
全体の取得者 | 1,734人 | 40,200人 |
取得率 | 0.02% | 99.6% |
民間企業の育休取得率に関しては、厚生労働省のデータで分かります。平成26年10月1日から平成27年9月30日までの1年間で、在職女性の育児休業取得者がいた事業所の割合は85.9%。同期間で男性育児休業取得者がいた事業所の割合は5.4%ということです。
調査方法が異なるため一概に比較はできないものの、いずれの場合も男性の取得率はまだまだ低いことが分かります。
有給取得率
これもまた総務省の統計(平成27年度)から公務員の年次有給休暇の使用状況をみてみましょう。
区分 | 都道府県 | 指定都市 | 市区町村 | 国 |
平均使用 |
11.5日 |
13.0日 |
10.0日 |
13.5日 |
ちなみに、民間企業の年次有給休暇使用日数は、8.8日。有給休暇に関しては、民間より公務員のほうが取得しやすい環境にあるようです。
公務員の年次有給休暇の使用状況は、直近5年間のデータをみても大きな変化はありません。国家公務員と地方公務員、あるいは指定都市と都道府県・市区町村である程度の差はあるものの、全般的に公務員の有給休暇消化率は安定しているようです。
| 内閣府や各自治体の取り組み
内閣府や各自治体の取り組み
上記のとおり男性公務員の育休取得率は、高いとはとてもいえません。そのような状況のなか、国や自治体はどのような取り組みを行っているのでしょうか?国の支援制度と地方の取り組みをご紹介しましょう。
国家公務員の育児支援制度
政府は、国家公務員の管理職や男性職員の産休・育休取得者を増やすべく、制度充実を図るとともにさまざまな啓発活動を行っています。男性職員が利用できる育児休暇制度のいくつかを以下で記します。
産休・育休期間 |
支援内容 |
出産~6歳 |
子の看護休暇 |
出産~3歳 |
育児休業 |
出産~6歳 |
育児短時間勤務 |
出産~6歳 |
育児時間 |
出産~3歳 |
超過勤務の免除 |
出産~6歳 |
超過勤務および深夜勤務の制限 |
政府は、2020年までに男性国家公務員の育児休業の取得率を13%まで引き上げることを目標としています。条件を満たす対象者には育児休業手当金を支給するなどして、男性公務員の育児休暇取得をバックアップしています。
地方自治体の取り組み
男性地方公務員の育児取得率を上げるためには、各自の意識向上や心掛けはもちろん、各自治体の取り組みも必要不可欠です。
総務省が発表した「男性地方公務員の育児休業取得率向上に向けて」では、地方自治体の取り組み状況を紹介しています。
<市区町村のこれまでの取り組み>
- 男性職員の育休などの取得率に関する目標設定
- 男性職員に対し育休取得を奨励
- 育休取得のための指導・研修の実施
- トップによる職員向けのメッセージ発信
- 育休取得による給与への影響を「見える化」
調査では、職員数の多い地方公共団体ほど、職員に対する働きかけや研修を実施する割合が高いということです。育児に対する意識が低い男性職員が多いことから、今後も地道な啓発活動が重視されます。
(出典・参考:リンク)
総務省:男性地方公務員の育児休業取得率向上に向けて(http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/jyuuten_houshin/sidai/pdf/jyu13-06-3.pdf)
厚生労働省:「平成28年度雇用均等基本調査」の結果概要(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-28r-07.pdf)
内閣官房:育児・介護との両立支援(https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/jinji_w4.html)
総務省:表6 育児休業等の取得状況(平成28年度)(http://www.soumu.go.jp/main_content/000523575.pdf)
総務省統計局:労働力調査 調査結果(http://www.stat.go.jp/data/roudou/2.html)