【令和6(2024)】地方公務員試験のトレンドは?
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令和6年(2024年)の地方公務員試験には、いくつかのトレンドがあります。
- 早期選考(春選考)が増加
- 民間の採用テストの導入、技術職における教養試験の廃止
- 職務基礎力試験(BEST)の導入
- 面接試験の変化(プレゼンテーション実施、回数の減少)
4つの項目を解説し、トレンドをふまえた狙い目の試験種を紹介します。
【トレンド1】早期選考(3・4月)が増加
令和6年(2024年)は、試験日程を早めて春に試験を行う自治体が増えました。
例えば地方上級では、従来型の試験(6月)に加えて3月・4月の早期選考も行われています。
早期選考では、従来型の「教養試験+専門試験」という筆記試験ではなく、民間企業志望者も受験しやすいようにSPIなどの民間採用テストが導入されていることが特徴です。
ただし、同じ自治体では早期試験と従来型試験のどちらかしか受験できないと制限されている場合があります。
一般的に従来型の試験の方が採用人数が多いことがほとんどなので、注意が必要です。
【トレンド2】民間の採用テスト導入・教養試験の廃止
トレンド1でも触れたとおり、民間の採用テストの導入や技術職における教養試験の廃止が進んでいます。
SPIなどの民間採用テストは、公務員試験に特化した対策をしていない人も挑戦しやすく、指定期間内であれば都合の良い日に受けられる場合が多いことも特徴です。
このため民間をメインに就職活動を進めている学生にも公務員受験を促す効果があり、教養試験からの切り替えが進んでいるのです。
技術職の場合は、専門試験は行う一方で教養試験や小論文を廃止する動きが年々強まっています。
【あわせて読みたい】SPIだけで受験可の公務員試験は?知っておきたい注意点と対策(近日公開)
【トレンド3】職務基礎力試験(BEST)の導入
一部の市役所の採用試験などでは、民間企業志望者などさまざまな受験者層に対応するために、日本人事試験研究センターの「教養試験Light」および「社会人基礎試験」というテストが活用されてきました。これらが令和6年(2024年)3月に終了し、4月からは新たに職務基礎力試験(BEST)が導入されています。
BESTは下記の2つのテストで構成されています。
- 職務能力試験(BEST−A):公的部門での職務遂行に必須な能力について。特別な準備は不要(60題60分)
- 職務適応性検査(BEST−P):公的職務への適応性について
【トレンド4】面接試験の変化
面接試験にも変化がみられ、毎年変わっていると言っても過言ではありません。
近年の傾向としては、プレゼンテーションの実施が増加している点が挙げられます。従来の面接との違いは表現力に重きをおいた対策をしなければならないということです。
求められる5つの力、論理性、発想力、説得力、明快さ、応答力を高める練習が必要になります。
また、面接の回数が減っているのも近年の傾向で、選考過程が短くなりつつあります。
トレンドをふまえて「狙い目の試験種」は?
トレンドをふまえて、公務員試験の中で「狙い目の試験種」を挙げるとすれば、特別区I類と東京都I類Bの試験の2つです。
近年の公務員試験は、筆記試験が簡易化されたり、受験者が集まらずに倍率・ボーダーが下がったりして、難易度が全体的に下がっています。
特別区I類と東京都I類Bの試験は、採用数を大幅に増やしていますが、反面応募者の伸びが採用数増加に追いついていないこともあり倍率が低下しているため、以前より合格のハードルが下がっています。
公務員の志望度が高い学生はチェックしておきたい試験です。
【あわせて読みたい】東京都で働く公務員に!都庁や特別区の採用について
地方公務員の「地方上級」とは?
ここからは、地方公務員で人気の試験種について見ていきましょう。まず地方上級の試験内容について解説します。
地方上級とは
地方上級とは、都道府県・政令指定都市・特別区で実施されている大学卒業程度の学力を要する試験の総称です。
あくまで一般的なレベル分けのために用いられている総称であり、自治体側が「地方上級」という名称の試験を行っているわけではありません。
地方上級に該当する試験は、「上級職」「I類」「I種」など自治体によって名称が異なります。
高卒レベルの「初級」、短大卒レベルの「中級」と同様、地方上級の「大学卒業程度」というレベル設定はあくまで試験レベルの目安であり、受験の(学歴)要件ではありません。
高卒の受験者が地方上級に合格するケースもあります。ただし、一部の自治体では学歴を受験の要件に設定しています。
上級の地方公務員になると、行政や地域振興へと積極的に貢献するポストに配置されます。
責任の大きさから、待遇面での優遇も少なくありません。出世のスピードも速いといわれています。
公務員を目指す大学生の間ではとりわけ人気の高い試験となります。
【試験日程】6月中旬に1次試験
地方上級は、例年6月中旬に1次試験があります。
東京都や大阪府、北海道など独自日程の自治体もありますが、ほとんどが同一日程であるため併願はできません。
トレンドの項目で述べたように、早期選考が3・4月に行われる自治体もありますが、従来型の試験も並行して実施されることが多いです。
ただし受験できるのは1回のみの場合がほとんどで、採用人数が多いのは6月開催の従来型の方です。
【試験内容】1次試験「教養択一」
まずは1次試験の教養択一についてです。
試験内容は、数的処理や文章理解などの「一般知能」、そして社会科学や人文科学などの「一般知識」です。
各科目の出題数によっていくつかの型に分かれ、一般知能と一般知識が合わせて必須で50問出題される「全国型」を基本に、問題数が少し異なる「関東型」などがあります。
範囲が広いので志望先の出題数をあらかじめ確認し、効率よく勉強を進めたいところです。
公務員試験では知能分野の出題比率が上昇傾向にありますが、他の公務員試験と比べ、知識分野の出題割合が少し高いのが特徴です。
【試験内容】1次試験「専門択一」
次は、同じく1次試験の専門択一についてです。
憲法や民法などの法律系、経済原論などの経済系、政治学や行政学などの行政系の問題が出題されます。
教養択一と同じく、各科目の出題数によっていくつかの型に分かれます。
「全国型」は40題が全問必須なので満遍なく得点できるようにしなければなりませんが、「関東型」では50題中40題を選択する形式なので、得意科目で勝負できるという利点があります。
【試験内容】1次試験「論文」
多くの自治体では1次試験で論文試験が実施されます。教養論文、小論文など名称はさまざまです。
各自治体の行政課題について、60分〜90分の間に1,000字前後で解答することが求められます。
論文を重視し、配点比率を高く設定している自治体では、たとえ教養択一が高得点でも論文が書けないと不合格になるので注意が必要です。
受験自治体の情報を収集し、現状分析・課題発見・解決策提示の準備が必須です。
地方公務員の「市役所」とは?
地方公務員のうち、次は市役所の試験についてみていきます。
【試験日程】多くの市役所試験は「C日程」
市役所の試験は、基本的には筆記試験の実施日によって大きく4つに分かれます。
▼主な市役所試験の日程
A日程(6月) | 県庁所在地など、比較的大きな市の試験が開催される |
B日程(7月) | |
C日程(9月) | 多くの市で試験が行われる |
D日程(10月) | あまり多くはない |
従来は上記のような日程に分かれていましたが、近年は公務員試験全体で試験日程が早期化する傾向があり、市役所試験においても試験日程を前倒ししたり、独自日程で試験を実施したりする自治体が出てきています。
志望する自治体が、昨年と同じ日程で試験を実施するとは限りません。前倒しに備えて志望先の情報収集は早くから行いましょう。
併願は、日程が重ならなければ可能ですが、C日程では多くの市役所の試験が重なっていますし、A日程では同日に地方上級の試験があるのでその併願はできません。
【試験内容】1次試験「教養択一」
1次試験となる筆記試験では、教養択一試験が行われます。
多くの自治体では、2018年から始まった新教養試験が採用されていて、特に従来の教養試験と共通性が高い「Standard-I・II(標準タイプ)」の試験が多くの市で選ばれています。この試験に合わせて対策をしましょう。
他の公務員試験に比べ、知能分野の出題割合がさほど高くなく、数的処理の難易度も低めです。
元々市役所の試験は、教養試験のみ(専門試験がない)場合が多く、他の公務員試験に比べて負担が軽いことが特徴でしたが、近年はこの傾向がさらに進んでいます。
SPIなどの民間採用テストの導入も増えていますし、トレンドの項目でご紹介したように職務基礎力試験(BEST)の導入が令和6年(2024年)から始まるなど、受験者を確保するために筆記試験のボリュームは減少傾向が続きます。
各自治体で試験内容の変更が相次いでいるので、志望先の試験情報に注意してください。
【試験内容】1次試験「論文」
1次試験では論文や作文が行われますが、難易度はあまり高くありません。
問いに対して的確に(脱線せずに)答える、自分なりの考えを必ず入れる、字数制限を守るなどの基本を意識し、論理的な文章を書ければOKです。
テーマは行政課題について自分の考えを述べる「政策系」と、自分の公務員への適性をアピールする「自己PR系」に分かれ、規模の大きな自治体では政策系、多くの市役所では自己PR系が出題されることが多いようです。
自治体の課題が何か、自分の長所はどこか、どういう部分が公務員に向いているのかという問いに答えることは、そのまま面接対策にもつながっていきます。
日頃から公務員として働くことを意識し、志望先の自治体の課題などについて情報を収集しておきましょう。
【試験内容】2次試験「面接(人物試験)」
2次試験は、人物試験があります。
人物試験には個人面接、集団面接、集団討論などがありますが、最近は集団面接が廃止され、プレゼンテーションが採用されることが増えてきました。
面接対策では、次の3つのポイントをおさえましょう。
- 事前に提出する面接カードの内容を工夫し、自分が聞いてほしいことに誘導する
- 面接評定票から、採点基準を考えて内容を作る
- 自らの体験を語り、分かりやすく説得力のある回答にする
以上をふまえ、定番の質問である「志望動機」「自己PR」「学生時代に力を入れたこと」を作成します。
注意点は、公務員になりたい理由と各職場で働きたい理由を分けて考えることで、なぜ他ではなくその自治体の採用試験を受けるのか、志望先ごとに理由が必要です。
何から始めればいいかわからない人は、まず募集要項を確認して自治体が求めている人物像を知りましょう。
現地に足を運んだり、説明会に参加したりして、情報収集を行ってみてください。
【Q&A】地方公務員に関するよくある質問
最後に、地方公務員に関するよくある質問を4つほど取り上げます。
- 地方上級と市役所、仕事内容の違いとは?
- 東京都・特別区の職員になるには?
- 地方公務員の技術職とは?
- 社会人が中途採用で公務員になるには?
1つずつ見ていきましょう。
地方上級と市役所、仕事内容の違いとは?
同じ地方公務員でも、地方上級と市役所では仕事内容が異なります。
地方自治体は規模によって「広域自治体(都道府県)」と「基礎自治体(市町村)」に分かれます。
地方上級は前者で働き、都道府県全体の方向性を決める大きな仕事に携わる機会が増えます。
一方、市役所職員は後者で働き、生活に密着した行政サービスを担う存在です。
このほか政令指定都市は、基礎自治体に含まれながらも都道府県から一部権限を移譲されているため、両方の仕事に携われるのが特徴です。
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【あわせて読みたい】市役所職員の仕事とは?一日の仕事内容の例
東京都・特別区の職員になるには?
東京都や特別区の職員になるには、それぞれ下記のような試験を受験することになります。
例年同日に実施されるので、併願はできません。
▼東京都I類B
「一般方式」では、筆記試験として教養択一、専門記述、論文試験が実施され、合格後に個別面接を経て最終合格となります。
このほか、SPIやプレゼンなどで受験できる「新方式」もあります。
▼特別区I類
筆記試験として教養択一、専門択一(事務区分の場合)、論文試験が実施されます。
合格後は個別面接を経て最終合格となる点は東京都と同じですが、どの区に採用されるかが決まる「区面接」も実施される点が特徴です。
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地方公務員の技術職とは?
公務員の技術職とは、理系公務員をまとめた総称です。
土木系、建築系、機械系、電気系、化学系などがあり、試験もそれぞれの区分に分かれていて、専門知識を問う試験が行われます。
採用後に幅広く配置される事務系職員と違い、大学などで学んだ知識を生かして特定の分野で仕事ができるのが魅力です。
どの区分の試験があるか・どの区分の採用数が多いかは、各自治体によって異なります。
【あわせて読みたい】公務員の技術職とは?種類・仕事内容・試験・年収を解説
社会人が中途採用で公務員になるには?
社会人経験者が公務員になるには、年齢要件を満たしていれば新卒と同様に一般枠での受験が可能です。
そのほか、中途採用の社会人経験者枠で受験することも可能です。
中途採用者に期待されるのは「即戦力」。民間企業での経験を公務員の業務に活用できる人が求められます。
応募の際に注意が必要なのは、直近○年以内に×年以上勤務などの職歴要件です。
筆記試験の難易度は高くないことが多いですが、採用数が少ないので倍率が高くなりがちです。
【あわせて読みたい】公務員の中途採用(経験者採用)の試験内容は?どんな人が合格する?
まとめ
この記事では、地方公務員の試験のトレンドや試験内容について解説しました。
- 地方公務員試験のトレンドは、早期試験、民間テスト採用、面接内容や回数の変化など
- 地方上級は筆記試験の負担の軽い早期試験と、採用数が多い従来型試験の2本立て
- 市役所では日程の前倒しが進み、筆記試験が更に簡易化の傾向に
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