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数的処理の攻略法③空間把握編

数的処理には「数的推理」「判断推理」「空間把握」「資料解釈」の4つの分野が存在します。これらの攻略法を分野ごとに紹介していきましょう。この記事では「空間把握」の取り組み方を解説します。今後、「空間把握」の勉強を進めていくうえで参考にしていただければ幸いです。

「空間把握」はどんな分野?

1.数的処理の中では最も不安定で、苦手にする人が続出する分野!

空間把握とは、端的にいうと、計量以外の図形の問題全般が出題される分野です。例えば、「立体図形を切り開いて展開図にしたとき、同じ展開図なのはどれか」、「立体図形を切断したとき、切断面の形として正しいのはどれか」、「図形を回転させたとき、図形に打たれた点Pが描く軌跡として正しいのはどれか」…などなど、「形」を答えさせるようなタイプの問題が多く登場する分野ですね。

私は長く数的処理の指導に携わっていますが、数的処理の中で最も多くの受験生がつまずく分野が空間把握です。後で実際の出題例を確認しますが、おそらく多くの受験生は、「これはもしかして頭の中で想像しないといけない問題では…」と思うことでしょう。そして、「頭の中で想像して解く分野」だと思った時点で、空間把握を得点源にするのは難しくなります。例えば、「頭の中で円がコロコロと回転していく様子」を想像してみましょう。もしくは、「立体図形を切り開いて展開図にする様子」でもよいでしょう。これらを正確に想像できる人はどれほどいるでしょうか。円に複雑な模様が描かれていたとしても、変わった形の立体図形であっても、「全部想像して回転も展開もできます!」という方がいれば得点源になるのかもしれません。しかし、それはもはや「センス」の問題であって、対策ではないですよね。極論をいえば、空間把握は全て正確に想像できるのであれば満点が取れるのです。しかしそれができないからこそ、どうやって点数を取っていくかが問題になるのです。いかに頭の中で想像しないで正解にたどり着くかが最大のポイントになります。

ただ、そうはいっても限界があると思います。個人的な意見としては、空間把握は試験対策的にあまり深入りしないほうが得策といえる分野です。いくら時間をかけてもなかなか点数が取れない、という受験生をたくさん見てきました。「無理しない」という作戦もあることを、頭の片隅に入れておいてください。

2.客観的な知識を使って、「明らかにおかしい選択肢」を切って、正解を見つける!

空間把握は前述のとおり、非常に不安定な分野です。そこで、いかに安定的に解くかを考えていく必要があるのですね。対策としては、客観的な視点で問題を解くために必要な知識を覚えましょう。つまり、「頭の中で想像しなくても、客観的に明らかにおかしい部分を見つけられるようにしてほしい」ということです。ですから、空間把握も結局は知識になります。数的推理では「中学数学の知識とそれらを使う典型の解法パターン」、判断推理では「条件のまとめ方に関する典型の解法パターン」を知識として紹介しました。空間把握で必要になるのは「明らかにおかしい選択肢を切るための典型の解法パターン」です。

また、空間把握では、問題の選択肢を最初に確認して消去法で解くのが原則になります。例えば、「この立体を展開図にすると、正しいのはどれか?」という問題があったとき、実際に立体を切り開いたり、展開図を組み立てたりすることはありません。それは明らかに頭の中での想像を最優先にしているからです。正しい問題との向き合い方は、選択肢5個の中から明らかにおかしい展開図を探して、消去していくことです。たまに「この展開図を組み立てるとどうなりますか?」のような質問を見かけることがあるのですが、これは質問自体が適切でないということを押さえておいてください。

そうはいっても、本試験で難易度の高い問題になると、どう考えても想像しないと解けないような問題が紛れ込むのですが…そのような問題は基本的に捨てるか後回しです。頭の中で想像するのは最後の手段にしなければいけません。頭の中でイメージして解くことほど不安定な解法はないのです

3.空間把握の代表的な出題テーマを把握しておこう!

では、空間把握にはどんな出題テーマがあるのか、簡単に紹介しておきましょう。以下の分類は私見によるものです。

重要なテーマはほぼ網羅できていると思います。どのテーマも、出題形式の定番があるので、普段の勉強では定番の「型」を確認することが重要です。解法パターンや選択肢の検討に必要な知識を覚えていきましょう。

ただし、出題テーマの中には、そもそもの問題が一定の「想像」を前提とするものがあります。例えば「回転体」の問題は、「平面図形を回転したときに、どのような立体ができるか?」という聞き方をします。しかし、そもそも現実世界で平面図形を回転させても、立体はできるはずがありません。要は「残像がどのような形なのか?」を聞いているのですね。このように、問題自体が「想像」を要求してくる出題テーマの対策は、最低限にとどめるのがベターです。そもそも回転体は出題頻度が高くないので、そのあたりもふまえながら勉強を進めるのがよいでしょう。

4.空間把握は出題数が極端に多いわけでもないので、対策に時間を取りすぎないこと!

数的推理や判断推理と比べると、空間把握の出題数はそこまで多くはありません。以下は教養択一試験(基礎能力試験)における出題数をまとめたものです。

試験種によってやや出題数の開きはありますが、出題数の多い試験を受験するからといって、あまり左右されすぎないようにしましょう。他の受験生も得点できそうな簡単な問題を確保していく意識で取り組んでください。
ちなみに、試験案内に出題科目が明示されている試験種で、「空間把握」と書かれていないことがよくあります。その場合は 「判断推理」の中に非言語分野として含まれていることが通常ですので、書かれていないから1問も出題されないわけではありません。


「空間把握」はどうやって対策していくのか?

1.空間把握は「選択肢を切るために必要な知識」を覚えて基本レベルの問題を解く!

ここまで説明してきたもうおわかりかと思いますが、空間把握で必要なのはやはり知識です。「いかに頭の中で想像することを避けて、知識で勝負できるか」がポイントといっても過言ではありません。いろいろな出題テーマがありますが、まずは頻出のテーマや出題形式について、選択肢を絞るためにどのような知識が必要なのかを確認してください。それを覚えたうえで、問題に合わせて使えるようにしていく練習が必要です。

空間把握も他の分野と同様、出題テーマや解法パターンを覚えること、解法パターンを使えるように繰り返し練習していくことが大事です。このあたりの話は「『数的処理』の攻略法」の記事でも説明していますから、そちらも是非確認してください。いわば、「選択肢を切るための知識」が空間把握の「解法パターン」に該当するわけです。

『教養試験最重要科目!「数的処理」の攻略法』

ただ注意してほしいのが、ありとあらゆる知識をインプットすることには限界がある点です。定番の出題形式であれば、そのまま解けばよいのですが、もちろん空間把握もひねりは出てきます。特に国家公務員系の試験は難易度が高いので、空間把握もやはり難易度を上げてきます。

例えば、折り紙の問題の基本の解法パターンは「折り目と線対称に作図して、最初の状態までさかのぼって戻していくこと」です。しかし、その折り紙を折っていく際に、鶴を折って袋を開いて潰すという過程が出てきたらどうしますかね…これは実際に2020年度の国家一般職(大卒)で出題された例です。これは定番から外れた明らかな「ひねり」ですし、折り目の把握も非常に困難になります。ここまで事前に準備するというのは無理でしょう。そして、事前に準備する必要もありません。受験生の多くが解けないため、差がつかないからです。

数的推理や判断推理であれば、ある程度点数を確保する戦略も考えてよいと思いますが、空間把握で点数を確保するという戦略は、もともと空間把握能力のセンスに長けている受験生を除いて、まずあり得ないと思ってください。そもそも空間把握はどんな試験であっても、よほど定番の問題でもない限り、正答率は低く推移します。できなくてもあまり痛手にならない分野なのです。基本的なレベルの問題を取れるようにする意識で、それ以上の難易度が高い問題には固執することのないように気をつけてください

2.過去問を使って、実際に「勉強の進め方」を紹介しましょう!

実際に過去問を解きながら、空間把握で注意すべき点を解説していきましょう。判断推理と同様ですが、空間把握も「よく使われるパターンに落とし込んでいく」心構えで検討してください。かっちりした明確な「解法パターン」というよりは、「考え方の指針」に近いかもしれません。では、以下の問題を叩き台にしてみます。

2018年度・特別区経験者採用

次の図のような5枚の型紙のうち、4枚の型紙を透き間なく、かつ、重ねることなく並べて正方形を作るとき、使わない型紙はどれか。ただし、型紙は回転させてもよいが、裏返さないものとする。



(正解:3)

空間把握の問題も、まず問題文を読んだ際に考えて欲しいことは以下の3点です。

⑴ 本問の出題テーマは何か?

⑵ その出題テーマにおける典型の解法パターンは何か?

⑶ 典型の解法パターンに乗せて解くことができるか?


これは数的処理全てにおいて同じことですね。どんな問題も同じ思考過程で解く意識を持つことです。

⑴ 何の出題テーマなのかを判断する

まずは問題文を読んだら、出題テーマを確認しましょう。空間把握は、過去に出題例が全くないような難問でもない限り、出題テーマ自体はわかりやすいと思います。出題テーマがわかっても、典型の解法パターンで解けないケースもよくありますが…ただ、どちらにしても問題の特徴を把握することは大前提ですから、出題テーマの判別は必ず行ってください。

本問は、小さい正方形が集まったパーツを組み合わせて大きい正方形を作る、というものです。この出題形式は平面パズルと考えてよいでしょう。平面パズルの定番は、「ジグソーパズルのようなパーツを組み合わせて、大きい正方形を作る」という流れが多くなります。そして、「不要なパーツを選ばせる」というのが典型の聞き方です。

⑵ 出題テーマに合わせて典型の解法パターンを想起する

次に、出題テーマごとに典型の解法パターンがあるので、これを想起します。空間把握の場合は、典型の「選択肢の絞り方」や「考え方の指針」です。これもやはり典型を押さえてください。典型で解ける問題であれば、他の受験生も解ける可能性が高くなります。一方で、典型から外れる問題になると、正答率が下がりやすくなります。典型を知っていることで、解くべきか後回しにすべきかの判断もできるのです。

平面パズルの問題であることがわかったので、典型の解法パターンを想起します。教え方によっても異なると思いますが、私であれば、以下のポイントを紹介します。

【平面パズルにおける典型の解法パターン】
① まずは面積や長さなどの、客観的な「数値」に着目して選択肢を絞る。
② 絞り切れないときは、なるべく組み立て方のパターンが少ないパーツ(特徴的な形など)から、組み立て方を考える。

このあたりを想起できればよいでしょう。

⑶ 典型の解法パターンに乗せて解く

典型の解法パターンを思い浮かべたら、あとは解法パターンを使って問題を解いていきましょう。ただ、空間把握は典型の解法パターンが通用しないこともよくあります。くれぐれも無理は禁物です。典型で解けるのであれば、解答時間の許す限り得点していきたいところですね。

では解法パターンに合わせて解いてみます。以下の流れで検討していけばよいでしょう。簡潔に解説しますので、まだ勉強が進んでいない方は、以下の内容は気にしなくて構いません。大事なのは、解法パターンに乗せる意識と、それが実際に使えるという意識を明確に持つことです。

【STEP1 5枚のパーツと作る正方形の面積を確認する】…解法パターン①

この手の平面パズルが出てくると、まず組み立てようとする方がいますが、基本的に組み立てるのはなるべく避けたいです。ケアレスミスの可能性が高くなりますし、ある程度の指針がないと、どれくらい解答に時間がかかるか、目安が立てられないからです。

そこで、まずは面積や長さに着目して、選択肢を絞ることにしましょう。選択肢にある5枚のパーツの面積を確認します。小さい正方形が何個で構成されているかをチェックすると、選択肢1は4個、選択肢2は3個、選択肢3は5個、選択肢4は5個、選択肢5は4個でできていることがわかりますね。

また、大きい正方形を作るためには、パーツを構成する小さい正方形は合計で何個必要になるでしょうか。これは実際に描いて確認するとよいでしょう。以下のように、小さい正方形は1個、4個、9個、16個、25個…あれば、大きい正方形ができます。つまり、小さい正方形はn2必要なのですね。


では、本問のパーツ4枚で大きい正方形を作るのであれば、小さい正方形は何個必要でしょうか

まず、5枚のパーツを構成する小さい正方形は合計で4+3+5+5+4=21[個]です。ということは、必要な小さい正方形が1個、4個、9個だけだと小さすぎて、パーツ4枚ではオーバーしてしまいます。逆に25個だと大きすぎてパーツ5枚でも足りません。ということは、大きい正方形は小さい正方形16個で構成されるはずだと推測できます。



ということは、5枚のパーツを構成する合計21個の正方形のうち、21-16=5[個]が不要なのですね。したがって、この段階で不要なパーツは選択肢3か4のどちらかだと判断できます。組み立てるまでもなく、2択まで絞ることができました。

【STEP2 条件からさらに埋められるところを探す】…解法パターン②

客観的な「数値」だけでは正解を1個に絞れないようです。そこで、実際に組み立ててみましょう

まず、選択肢3か4が不要ということは、選択肢1、2、5のパーツは必ず使うということです。この3枚から検討しましょう。また、なるべく組み立てるパターンの少なそうなパーツから考えたほうが手間は省けます。選択肢1、2、5の中でいうと、選択肢5のパーツがいいと思います。縦長の形なので、組み立てるパターンの絞り込みがしやすそうですね。

では、選択肢5の組み立て方を考えてみましょう。そのままの向きで左上から順に右にずらして入れてみると、以下の3通りがあります。



左上であればよいのですが、中央と右上は以下のようなグレーで示した箇所に、他のパーツではどうやっても埋められない空きスペースができてしまいます。



続いて、左下から順に右にずらして入れてみましょう。これも以下の3通りがあります。



しかし、これは3通り全て、以下のようなグレーで示した箇所に、他のパーツで埋められない空きスペースができます。



したがって、選択肢5の組み立て方としては、左上に入れるしかありません。このとき、「選択肢5のパーツを回転させたらもっと他のパターンがあり得るのでは?」と思うかもしれませんが、上記で全て検討できています。上記の6通りをぐるぐる回転させれば、選択肢5のパーツを回転したパターンも全て網羅されていることがわかると思います。一見気づきにくいので注意してください。

では、続いて選択肢1や2を組み立てていきましょう。なるべく狭いところから攻めるとパターンを絞りやすいので、左下の狭い隙間から考えてみましょう。ここに入れるものとしては、選択肢1、2のどちらも考えられそうですね。
なお、選択肢4も回転して入れられそうに見えますが、入れてみると他のパーツで埋められない空きスペースが出てきてしまいます(図は割愛しますので、気になれば実際に試してみましょう)。したがって、ここは選択肢1と2の2通りがあり得そうです。以下のような組み立て方になるでしょう。



では、左下に選択肢1のパーツを入れた場合、他のパーツをどう埋めるか考えましょう。また狭い隙間が現れましたので、隙間を中心に考えるとよいでしょう。残りのパーツも少ないですし、残りの空きスペースも狭くなってきましたので、いろいろ組み立て方を試してみてください。

そうすると、選択肢2のパーツを右上に入れると、残ったスペースに選択肢4を180°回転させて入れることができます。以下のようになりますね。これで完成しますので、不要なパーツは選択肢3です。3が正解です。



ちなみに、左下に選択肢2のパーツを入れた場合も、念のため確認してみましょう。
これも狭い隙間があるので、そこを中心に考えます。以下のように選択肢1や4が入る可能性がありますが、他のパーツでは、残りの空きスペースは埋められそうにありません。したがって、左下が選択肢2のパーツというのはあり得ないと判断できます。

上記の流れ以外にも、解き方は考えられます。不要なパーツの候補である選択肢3や4から検討するという流れもあり得るでしょう。どちらにしても、まずは「面積の観点から、不要なのは選択肢3か4のどちらかしかない」という明らかなヒントを使うことですね。そこから先は地道に検討することになります。空間把握の問題は、このように「まずは一気に絞って、限られた残りで検討する」という流れがよく出てきます。絞り込み方から身につけるようにしてください。

上記で取り上げた問題と類似の問題を、1問だけ紹介しておきましょう。上記の問題よりは難易度が上がっていることがわかるでしょうか。

2019年度・特別区Ⅰ類

次の図のような、小さな正方形を縦に4個、横に6個並べてつくった長方形がある。今、小さな正方形を6個並べてつくった1~5の5枚の型紙のうち、4枚を用いてこの長方形をつくるとき、使わない型紙はどれか。ただし、型紙は裏返して使わないものとする。


(正解:5)

同じく平面パズルの問題ですが、選択肢のパーツはいずれも面積が同じなので、面積から絞り込みができない設定になっています。これもいくつか解法パターンは考えられますが、余裕があれば挑戦してみるとよいでしょう。


「空間把握」は点数が上がりにくい分野なので、無理をしないこと!

空間把握にも、前述のような典型の解法パターンがあります。したがって、「出題テーマの判別典型の解法パターンの想起→解法パターンに乗せる」という流れを繰り返すことが有効です。しかし、「問題特有のひねり」が解法パターンを上回ってくるケースもありますし、想像力を要求する問題も一定数存在します。ですから、くれぐれも無理をしないことです。

空間把握は非常に不安定な分野ですので、基本的な問題を解く練習を繰り返して、典型で点数を確保する戦略がおすすめです。