公務員試験の「全落ち」の割合は?
公務員試験を受けてすべて不合格だった人は何人か、というデータはありません。
そこで、「全落ち」する可能性はどれくらいあるか、公務員試験はどれくらいの難易度かという視点でみてみましょう。
公務員試験の倍率
公務員試験の倍率は、全体的に低下傾向にあります。
国家一般職(行政区分)の場合、実質倍率(1次試験受験者数/最終合格者数)は、次のとおりです。
- 令和5年度(2023年度):2.5倍
- 令和4年度(2022年度):2.9倍
- 令和3年度(2021年度):3.1倍
地方公務員の倍率(受験者数/合格者数)は、次のとおりです。
- 令和4年度(2022年度):5.2倍
- 令和3年度(2021年度):5.8倍
- 令和2年度(2020年度):5.9倍
また、地方公務員の中でも人気の高い東京都の採用試験(I類B、行政区分)も、年によって変動はありますが、令和5年度(2023年度)の倍率(受験者数/最終合格者数)は一般方式2.4倍、専門試験のない新方式で1.9倍でした。
このように、公務員試験は受験者数の減少と合格者数の増加により、倍率はゆるやかに下がっています。
ポイントを間違わずに対策すれば全落ちのリスクは高くはありません。
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公務員試験の難易度
公務員試験の難易度は、筆記試験の難易度だけでなく倍率なども関わってきますが、総合的にみた5段階の難易度は次のとおりです。
難易度1:警察官、消防官、社会人経験者(キャリア採用)、市役所
難易度2:特別区I類、東京都I類B
難易度3:地方上級(都道府県、政令指定都市)
難易度4:国家一般職(大卒)、国家専門職、裁判所一般職(大卒)
難易度5:国家総合職(大卒・院卒)
筆記試験対策という点でみれば、次のような傾向があるといえます。
- 教養試験のみ、または民間テストの「SPI3」などを採用している試験は難易度が比較的低い
- 教養試験に加えて専門試験もある国家公務員試験などは難易度が高い
地方公務員試験の標準的なレベルは「特別区I類」です。
特別区I類の問題を解けるようになることが、試験勉強を進めるうえでの1つの目安になります。
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公務員試験に「全落ち」したらどうなる?
受験した公務員試験に全落ちしてしまったら、その後はどうなるでしょうか。
留年して再挑戦する、大学院に進学するなどいろいろな選択肢がありますが、ここでは「民間企業への就職活動に切り替える」、そして「公務員浪人を考える」という2つのパターンをご紹介します。
全落ち後に民間企業に就職できる?
公務員試験に全落ちした後、民間企業への就職は可能でしょうか。
試験が落ち着く10月以降で考えると、民間企業の秋採用や通年採用に応募することになります。
最近では政府が企業に通年採用を導入するよう要請しており、通年採用を行う企業も少しずつ増えていますが、それでも春採用に比べて秋採用や通年採用は募集数がかなり少ないのが現状です。
残された少ない時間で効率的に就職活動ができるよう、就職エージェントを利用する人もいるようです。
最初から民間企業への切り替えも見据えて、公務員試験の早期日程を探すのも1つの方法です。
最近では特に地方公務員試験で、従来試験の代わりに民間採用テストの「SPI3」などを取り入れたり、一斉試験をやめてテストセンターで希望日に受験できる方式で実施したりと、民間志望の人も公務員にチャレンジできるように試験を変更している自治体が増えています。
その場合、2〜4月に早期試験を行うことで民間の採用スケジュールと並行できるように日程が設定されている場合が多いようです。
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「公務員浪人」はアリ?
試験に全落ちしても、翌年再挑戦する「公務員浪人」というのも選択肢の1つでしょう。
ただ、注意が必要なのは、「筆記試験は合格するものの、2次試験以降の人物試験(面接)でなかなか合格できない」パターンで、公務員浪人に多いと言えます。
ここでは、人物試験に失敗しやすい3つのタイプをご紹介します。
▼なんとなく公務員志望
まず挙げられるのが、「安定してそう」「親に言われたから」といった理由で公務員を目指す人です。
なんとなく公務員志望という人は、面接での志望動機が弱くなりがちです。
「なぜ浪人してまで公務員なのか」「公務員になって何がしたいのか」を日々考え、志望動機や将来のビジョンなどを明確にする必要があります。
▼勉強よりバイトや遊びを優先
浪人中にまだ時間があると油断したり、アルバイトに追われたりして勉強時間が不足する人がいます。
これでは筆記試験も突破できず、不合格が続いてしまいます。
最初に学習計画を立て、「朝起きたら◯分勉強」のようなルールを決めて、毎日の勉強を習慣化しましょう。
▼頑固で独りよがり
頑固で人の意見を聞かない人は、国民や住民に奉仕する公務員に向いていないと判断され、面接で苦戦する傾向にあります。
面接指導を行ってくれるところを探して、自分がどう見えているか客観的なアドバイスをもらって改善しましょう。
【あわせて読みたい】キャリア・カウンセラーが見てきた公務員浪人の現実。失敗する人・成功する人の特徴
公務員試験に「全落ち」しないためには?
公務員試験全落ちの場合どうするかを見てきましたが、もちろんそうならないのが一番です。
ここからは、全落ちせず試験に合格するために必要な対策を考えます。
キャリアカウンセラーが見た「成功する人」の特徴は?
たくさんの公務員志望者を見てきたキャリアカウンセラーが挙げる、公務員試験に「成功する人」の特徴をご紹介します。
▼素直でPDCAサイクルを回せる人
P(Plan:計画)→D(Do:実行)→C(Check:測定・評価)→A(Action:対策・改善)のサイクルを回せる、つまり素直に自分の誤りを認めて、人の助言に耳を傾け、自分に何が足りないかを分析・改善できる力が重要です。
▼毎日計画的に勉強を習慣化できる人
公務員試験対策には、ある程度の勉強時間の確保が必須で、不合格者は単純に勉強時間が足りていない場合も多いです。
学習計画をしっかり立て、スキマ時間も活用して毎日勉強時間を確保し、主体性を持って学習を進める力が必要になります。
▼公務員になって何をしたいかが明確な人
公務員になってやりたいことが明確な人は、志望する自治体について知るためにアルバイトやボランティアをしたり、行政課題を探るために情報を集めたりと、公務員になった後につながる行動を起こします。
なぜ公務員になりたいかが明確であれば、試験勉強のモチベーションも保つことができ、面接でも説得力ある志望動機を答えられます。
【あわせて読みたい】キャリア・カウンセラーが見てきた公務員浪人の現実。失敗する人・成功する人の特徴
筆記試験の勉強法
まずは筆記試験ですが、実はどんな試験でも、勉強法はほぼ同じです。
▼出題数の多い科目から始める
公務員試験は、科目数が多く出題範囲が広いため、すべてカバーするのは時間的に不可能です。
教養試験であれば数的処理や文章理解など出題数が多い科目を確認して、それらを中心に始めましょう。
▼過去問をベースにした対策を
試験問題は、過去問の数値や設定を変えただけの「焼き直し」パターンが非常に多くなっています。
過去問を解きながら、よく出題されるテーマ、よく出題される形式を分析します。
▼「全体的に得点する」意識を持つ
基本的には出題数の多い科目を中心に、となりますが、他の科目も広く浅く取り組みましょう。
出題数の多い科目がうまくいかなかった時に、少しでも点数を取れる可能性を残しておくことも重要です。
公務員試験の勉強法は、こちらの記事で詳しく解説しています。
【あわせて読みたい】公務員試験の王道の「勉強法」を紹介!
人物試験の対策
人物試験には、必ず実施される個別面接のほかに、集団面接や集団討論などがあります。
面接対策は、以下の3つを押さえましょう。
- 事前に提出する「面接カード」をもとに質問されることが多いため、答えやすい内容に導けるように書く
- 面接官が見るべきポイントがまとめられた面接評定票が用いられるため、評定票から逆算して面接カードに書く内容を決める
- 「志望動機」「自己PR」「学生時代に力を入れたこと」などの定番の質問から、「なぜそう考えたのか」「なぜその行動に出たのか」など深掘りされる傾向に。公務員に合っているかを見られているので、簡潔で分かりやすく、説得力ある回答が必要
評価時に重視されるポイントは、積極性、社会性、信頼感、経験学習力、自己統制力、コミュニケーション力です。
公務員試験の人物試験対策は、こちらの記事で詳しく解説しています。
【あわせて読みたい】【公務員・人物試験】面接対策のポイントや回答のNG例を解説
公務員試験の併願
公務員試験は、年齢制限などの条件を満たしていれば併願が可能です。
受験料も無料で、日程が重ならない限りいくつでも受けられます。
「地元の県庁と市役所」や「希望する職種がある試験種を可能な限り」など、併願のパターンもさまざま。
職種や試験区分が同じであれば、試験内容も似ていて試験対策がしやすい面があります。
併願する際の注意点は、何といっても試験日程です。
1次試験が別日でも、2次試験以降が重なる可能性もあるので、日程の重複がないかを慎重にチェックしましょう。
公務員試験の併願については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【あわせて読みたい】公務員試験の併願パターンはいくつでもOK!でも、気を付けたい落とし穴も
公務員試験と民間の併願
公務員と民間で迷っている場合、併願も十分可能です。
なぜなら、近年の公務員試験は教養のみで受験できる試験が増加中で、民間の採用テスト対策は教養試験の勉強で大半がカバーできるからです。
一方で、専門試験が行われる国家公務員試験のほとんどは、併願が難しいと言えます。
なお、公務員試験の面接で、民間企業と併願をしていることを自分から話す必要はありません。
ただし面接官に併願しているかどうかを聞かれた場合は、正直に答えましょう。
公務員と民間の併願については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【あわせて読みたい】民間併願したほうが公務員になれる!?対策・スケジュールを解説
まとめ
この記事では、公務員試験に全落ちしないための対策をみてきました。
- 公務員試験の倍率は低下傾向で、全落ちのリスクは高くない
- もし全落ちしたら、秋以降の民間採用に挑戦するか、公務員浪人の選択肢もあり
- 試験合格のために、公務員になってやりたいことを明確にし、勉強を習慣化してコツコツ取り組もう
- 公務員試験の併願、民間企業との併願も積極的に検討しよう
もちろん全落ちしないのが一番です。
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