公務員の地域手当の支給地域・金額は?見直しに関する情報も解説

公務員の給与に含まれる手当の1つに「地域手当」があります。どんな条件でいくらぐらい支給されるのでしょうか。

また地域手当に関しては、令和6年(2024年)の人事院勧告で大幅な見直しが実施されました。最新情報もチェックしておきたいところです。

この記事では、公務員の地域手当について解説します。

公務員の地域手当とは?

公務員の地域手当とは、都市部など民間企業の賃金水準が高い地域に勤務する職員に支給される手当です。地方と都市部の間で生じる差を補填する目的で支給されています。

それでは、実際の支給額や条件などについて見ていきましょう。

地域手当の主な支給地域・支給金額の一覧

国家公務員の地域手当は、次の計算式によって算出されます。

(俸給+俸給の特別調整額+専門スタッフ職調整手当+扶養手当)の月額×支給割合

この計算式の中にある「支給割合」については、下記の級地区分において3〜20%の間で7段階に分けられています。

国家公務員の地域手当の支給地域・支給割合

級地主な支給地域支給割合
1級地東京都特別区20%
2級地大阪市、横浜市 など16%
3級地さいたま市、千葉市、名古屋市 など15%
4級地神戸市 など12%
5級地水戸市、大津市、京都市、奈良市、広島市、福岡市 など10%
6級地仙台市、宇都宮市、甲府市、岐阜市、静岡市、津市、和歌山市、高松市 など6%
7級地札幌市、前橋市、新潟市、富山市、金沢市、福井市、長野市、岡山市、徳島市、長崎市 など3%

たとえば、月給40万円で東京都特別区内に勤務(支給割合20%)する場合、40万円×20%で8万円の地域手当が支給されることになります。

このような支給地域・支給割合ですが、令和6年(2024年)8月に出された人事院勧告において大幅に見直され、級地区分もシンプル化されました。具体的には下記の表のとおりです。

令和6年(2024年)の人事院勧告による見直し後

級地主な支給地域支給割合
都道府県で指定中核的な市で個別に指定
1級地東京都特別区20%
2級地東京都横浜市、大阪市など16%
3級地神奈川県、大阪府さいたま市、千葉市など12%
4級地愛知県、京都府仙台市、静岡市など8%
5級地茨城県、栃木県、埼玉県など札幌市、岡山市など4%

【参考】人事院「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み(令和6年8月)」

これまでの支給割合は市単位で設定されていましたが、今後は都道府県単位を基本とし、県庁所在地などの中核的な市については各地の民間賃金を反映した割合が別途設定されることになります。

地域手当は退職金や残業代に影響する?

次に、地域手当は退職金や残業代に影響するのかを確認しておきましょう。

退職金

国家公務員の退職金は、下記の式で計算されます。

基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続期間別支給割合)+調整額

この計算式には地域手当は含まれません

残業代(超過勤務手当)

国家公務員の残業代は、下記の式で計算されます。

勤務1時間当たりの給与額 × 支給割合 × 勤務時間数

この計算式の中にある「勤務1時間当たりの給与額」については、下記の式で算出されます。

俸給の月額(手当等も含む)×12カ月 ÷ (1週間当たりの勤務時間 × 52週間)

つまり、地域手当が残業代の支給額に影響を与えることになります。

地域手当が出るのは居住地?勤務地?

地域手当は、主に民間賃金の高い地域に勤務する職員に支給されるため、計算をする際に基準となるのは勤務地です。

自宅がある地域の級地区分が高かったとしても、地域手当の計算をするうえでは関係がありませんので注意してください。

地域手当の「異動保障」とは?

国家公務員の地域手当には、異動による急激な給与の減少が起こらないようにするための措置として「異動保障」があります。

異動保障の支給条件は、地域手当が支給される地域に6か月を超えて勤務した職員が、支給割合がより低い、あるいは支給されない地域等に異動することです。

【画像引用】人事院「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み(令和6年8月)」

令和6年(2024年)の人事院勧告において、異動保障の見直しが実施されました。

異動保障の対象期間は、従来の2年から「3年」に延長されました。

異動後の地域手当の支給割合は、1年目は異動前と同じ、2年目は異動前の80%、3年目は異動前の60%となります。そして4年目からは異動先の級地区分に応じた支給割合が適用されます。

公務員の地域手当は見直される?おかしい?

公務員の地域手当は、「勤務地による経済格差を無くすため」という明確な理由をもって支給されていますが、制度については定期的な見直しが行われています。

また、一部では「不合理である」「不公平である」といった声もあるようです。

令和6年(2024年)の地域手当の見直し

公務員の地域手当は、人事院規則(9-49第16条)で「十年ごとに見直すのを例とする」と定められています。

直近では令和6年(2024年)に見直され、下記のような内容が盛り込まれました。

  • 支給地域を市単位から都道府県単位に変更する
  • 級地区分を7区分から5区分に再編し、支給割合が激変する場合は緩和措置を講じる
  • 今後は級地区分の見直しの間隔を10年よりも短縮する
  • 異動保障の期間を延長する

【参考】人事院「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み(令和6年8月)」

地域手当をめぐり国を提訴する事例も

2024年7月2日、津地方裁判所の裁判官が公務員の地域手当に関する訴えを起こしました。

地域手当の支給率が勤務地によって異なる点を問題視したもので、「転勤後に実質的に給与が減額されたのは裁判官の報酬の減額を禁じた憲法に違反している」として、国に対し減額分約240万円の支給を求めて提訴しています。

地域手当の支給率は、東京都特別区と級地区分に該当しない地域との間で、最大20%の差があり、収入に与える影響は少なくありません。

現役の裁判官が国を相手に違憲訴訟を起こすことが非常に珍しいという点でも、注目されている裁判です。

【参考】時事ドットコム「『転勤で地域手当減額は違憲』 津地裁裁判官が国提訴―名古屋地裁」

【Q&A】公務員に関するよくある質問

最後に、公務員に関するよくある質問について解説していきます。

公務員の年収やボーナスはどれくらい?

人事院の「令和5年国家公務員給与等実態調査の結果」によると、国家公務員の各職種でもっとも人数が多い行政職俸給(一)適用職員の平均給与月額は40万4,015円です。

これをもとに年収を試算すると、平均年収は約666万円となります。

(平均給与月額の12カ月分に、年間4.5カ月分の賞与を足して算出した金額です)

また、年間の賞与(ボーナス)平均は約182万円です。

公務員でも副業できる?

公務員は、国家と国民のために働く「奉仕者」としての使命を担っている職業であり、信用・職務専念・守秘義務の観点から原則として副業は禁止されています。

ただし、家業の手伝いや小規模農業、不動産賃貸、講演・執筆活動、株式・FX・仮想通貨投資などにおいては、一定の条件を満たしていれば例外的に公務員でも副業が認められるケースもあります。

公務員として採用された後に副業を始める場合には、職務を全うすることを念頭に置いたうえで、勤務先に相談し、ルールの範囲内でできる副業に取り組むようにしましょう。

まとめ

今回は、公務員の地域手当について解説しました。

  • 地域手当の支給割合は勤務地によって異なり、最も高いのは東京都特別区の20%
  • 地域手当は退職金には影響しないが、残業代には影響する
  • 異動による急激な給与減少に対応するために、異動保障の制度がある

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