【国家公務員】英語を使う職種となり方
国家公務員で英語を使う職種というと、真っ先にイメージされるのが外交官(外務省の職員)かもしれません。
しかし、英語が生かせる職種はそれだけではなく、他にもたくさんあります。
外務省専門職員(外交官)
▼仕事内容
英語を使用する国家公務員と聞くと、まず挙がるのが諸外国との関係が深い外務省の職員ではないでしょうか。
外務省の役割は、平和で安全な国際社会を維持し、日本国民が豊かで安全な生活ができるよう、国益を守るために外交活動に取り組むことです。
外務省には国家総合職と国家一般職のほかに、外務省専門職員(外交官)がいます。
各言語のスペシャリストとして働き、海外勤務の期間も総合職より長く、英語担当者であれば日常的に英語を使って仕事をする環境に身を置きます。
▼なるには
国家公務員採用試験ではなく、外務省が独自に行っている専門職員採用試験を受験する必要があります。
試験には外国語の筆記試験と面接が含まれます。
▼試験日程
1次試験 | 6月 | 基礎能力試験(マークシート式)
専門試験(記述式)必須:国際法、選択:憲法または経済学 時事論文試験 外国語試験(記述式) |
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2次試験 | 7月 | 外国語試験(面接)
人物試験(面接2回、グループ討議) 身体検査 |
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最終合格発表 | 8月 |
入国審査官
▼仕事内容
入国審査官は、入国管理局に勤務する職員です。
日本を訪れる外国人に対して出入国の管理をしていて、パスポートのチェックをしたり、犯罪歴がないか確認したりします。
国内にいる外国人の在留資格調査なども行っています。
最近では、外国人の国内受入環境の整備も新たな業務として加わりました。
日頃から外国人と接する機会が多く、英語力を生かせる仕事です。
▼なるには
入国審査官には、入国審査官試験のような独自の試験は設けられていません。
国家一般職試験を受験し、最終合格した人の中から入国管理局の面接を経て採用されます。
最初は法務省の法務事務官としてスタートしますが、勤務経験を重ねると入国審査官になれます。
▼試験日程(国家一般職大卒程度)
1次試験 | 6月 | 基礎能力試験(マークシート式)
専門試験(マークシート式) 一般論文試験 |
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2次試験 | 7月 | 人物試験 | |
最終合格発表 | 8月 |
※1次試験終了後、2次試験と並行して官庁訪問開始
【参考】人事院「国家公務員採用試験 一般職試験(大卒程度試験)受験案内」(2024年度)
防衛省専門職員
▼仕事内容
防衛省専門職員は、国際的な防衛行政に関する政策立案、情報収集・分析、通訳・翻訳、在日米軍との折衝など、様々な業務に携わる防衛のスペシャリストです。
国際社会の安定と平和を目指し、安定した安全保障体制を構築するため、日本での勤務を基本としながら、世界各国との積極的な防衛協力・交流を行います。
安全保障に関する深い知識と、グローバルな視野、高い語学力が求められる職種です。
▼なるには
防衛省専門職員採用試験を受験します。
最終合格後に、防衛省本省内部部局、陸海空自衛隊、情報本部、地方防衛局など各機関の採用面談が行われます。
年度によって採用言語が異なるので、注意が必要です。
▼試験日程
1次試験 | 5月 | 基礎能力試験(マークシート式)
専門試験(記述式)各言語 論文試験 |
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2次試験 | 7月上旬 | 口述試験
身体検査 |
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最終合格発表 | 7月下旬 | 最終合格発表後、採用面談開始 |
【参考】防衛省「2024年度 防衛省専門職員採用試験 -大学卒業程度- 受験案内」
航空管制官
▼仕事内容
航空管制官は、航空機を安全に誘導するのが任務で、パイロットと通信し、離着陸の順位付けや許可、経路などの指示を行います。
日本の空港を離発着する航空機だけでなく、外国からの通過機にも同様に管制業務を提供していて、パイロットとは英語でやり取りします。
国土交通省航空局の所属で、全国の空港の管制塔や航空交通管制部に配属されます。
24時間管制業務が提供される主要空港などでは、早番・遅番・夜勤などを組み合わせた勤務形態をとっています。
▼なるには
航空管制官採用試験が実施されます。
筆記試験、人物試験、身体検査の順に第3次試験まで行われます。
合格後は航空保安大学校で8カ月間の研修をうけ、技能試験に合格して初めて航空管制官に任命されます。
▼試験日程
1次試験 | 5月 | 基礎能力試験(マークシート式)
適性試験1部(マークシート式) 外国語試験(筆記、聞き取り) |
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2次試験 | 7月 | 外国語試験(面接)
人物試験 |
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3次試験 | 8月 | 適性試験2部
身体検査、身体測定 |
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最終合格発表 | 10月 |
【参考】国土交通省 航空保安大学校「2024年度募集案内 航空管制官採用試験 ―大学卒業程度―」
税関職員
▼仕事内容
財務省所属の税関職員の仕事は、空港や港湾で薬物や銃器、偽ブランド品などの違法な物品の密輸出入を防止し、適正・公正に関税を徴収することです。
また、手続きを迅速に行うことで、貿易の円滑化に貢献しています。
国際機関や各国の税関と協力しながら業務を行うため、海外の情報収集・分析、国際会議への出席、技術協力のための海外税関への専門家派遣など、語学力を駆使する場面も多くあります。
▼なるには
独自の採用試験はなく、国家一般職試験を受験します。
最終合格後に、各税関(函館、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、門司、長崎、沖縄)の面接を経て採用されます。
▼試験日程(国家一般職大卒程度)
1次試験 | 6月 | 基礎能力試験(マークシート式)
専門試験(マークシート式) 一般論文試験 |
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2次試験 | 7月 | 人物試験 | |
最終合格発表 | 8月 | 最終合格発表後、採用面接開始 |
※1次試験終了後、2次試験と並行して官庁訪問開始
【参考】人事院「国家公務員採用試験 一般職試験(大卒程度試験)受験案内」(2024年度)
【地方公務員】英語を使う職種となり方
近年では外国人観光客や在日外国人が増加傾向で、それに伴い地方公務員も語学力を求められる業務が増えてきました。
ここでは地方公務員の中の、英語を使う職種となり方を紹介します。
自治体の一般行政職(事務職)
▼仕事内容
各自治体の中で、外国人観光客誘致を推進する観光課や、姉妹都市・友好都市との交流や国際協力事業を実施する国際交流課など、海外との交流や海外への情報発信などを担当する部署では、英語などの語学力を活かせる業務に従事できます。
外国人が多い地域では、窓口業務での各種情報の案内や困りごとの相談など、外国語でのやり取りが必要になる場面も増えています。
▼なるには
地方公務員試験である各都道府県採用試験や、各市町村採用試験で、一般事務に携わる「行政」や「事務」の区分を受験します。
多種多様な部署・業務があるため、観光課などを希望してもすぐに配属されるとは限りません。面接試験の時に業務への情熱をアピールし、採用後も語学力を磨いてチャンスに備えましょう。
▼試験日程例(埼玉県上級試験 一般行政)
1次試験 | 6月 | 教養試験(マークシート式)
専門試験(マークシート式) |
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2次試験 | 7〜8月 | 論文試験
人物試験(個別面接) |
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最終合格発表 | 8月 |
【参考】埼玉県「令和5年度 埼玉県職員採用上級試験等 受験案内」
国際捜査官(警察官)
▼仕事内容
国際捜査官は、外国人による犯罪の捜査や、反対に犯罪被害者になり得る外国人の保護等を行う警察官です。
外国籍の犯罪者に対する取り調べや、外国人コミュニティーからの情報収集、外国捜査機関との連携など、語学力だけでなく、外国の法制度・文化・習慣などへの理解が求められる仕事です。
訪日外国人や在日外国人の増加に伴い、その重要さが増しています。
▼なるには
一般的には警察官の中から語学にすぐれた人材が選ばれる場合が多く、まずは各都道府県の警察官採用試験を受けることになります。
中には、特別捜査官として国際捜査官採用試験を個別に行うところもありますが、採用言語は年度ごとに異なるのでしっかり確認しましょう。
一例として、埼玉県警察の場合は下記Webページで仕事内容やなり方について確認できます。
【参考】埼玉県警察「令和5年度警察官採用試験日程・採用予定人員・受験資格・試験内容等」(当該年度は英語採用なし)
警察の通訳職
▼仕事内容
警察の中には、警察業務における様々な言語の通訳や翻訳を行う通訳職もあります。
先ほどの国際捜査官が通訳の業務を兼ねるケースのほか、各都道府県警察によっては通訳や翻訳の専門職を設けていることも。
警察官と外国人の間でお互いに誤解なく意思疎通ができるよう、外国人からの110番通報の対応や、外国人が交番を訪れた際の電話通訳、操作や取り調べでの通訳や、証拠品の翻訳などの業務を行います。
▼なるには
各都道府県警察の採用試験に通訳・翻訳の専門職枠がある場合は、その試験を受験します。
独自の採用試験がない場合は、国際捜査官と同じく一般の警察官として採用されたあと、語学や外国の知識などを磨いて配属を目指します。
▼試験日程例(神奈川県警、試験区分:通訳職【英語】)
1次試験 | 9月 | 専門考査(英語、記述式) | |
2次試験 | 10月下旬〜11月上旬 | 実技考査(通訳の会話能力実証、英語)
人物考査 |
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最終合格発表 | 12月 |
【参考】神奈川県警察「採用案内」>「技術・専門職員等採用選考」>「通訳職(英語)」
【その他】英語を使う職種となり方
これまで出てきた国家公務員や地方公務員の他にも、みなし公務員(公務員)や公的機関でも英語を使って働く道があります。
国公大学職員
▼仕事内容
国立大学は2004年に国立大学法人に移行したため、国立大学職員は正確にいうと公務員ではありません。
ただ、給与などが公務員に準じて定められている「みなし公務員(準公務員)」にあたります。
大学運営や学生支援に携わる仕事で、特に留学生を担当する部署では日常的に留学生とコミュニケーションを取るため、英語でのスムーズなやり取りができることが求められます。
▼なるには
国立大学法人等職員統一採用試験があり、全国を7地区に分けて行われます。
希望する大学がある地区を1つだけ受験可能で、複数の地区の併願はできません。
試験は教養試験と面接のみなので、他の公務員試験より負担が少なく人気ですが、採用数は少なく高倍率になることがほとんどです。
▼試験日程
第1次試験 | 7月上旬 | 教養試験
(採用希望地区に関係なく、受験しやすい地区で受験可能) |
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第2次試験 | 7月下旬以降 | 採用希望地区内の各大学で面接考査等 | |
最終合格発表 | 随時 | 各国立大学法人等から随時通知 |
【参考】関東甲信越地区 国立大学法人等職員採用試験「令和5年度 採用までの流れ」
国際公務員
▼仕事内容
国際公務員とは、国連や国連児童基金(UNICEF)などの下部組織、世界保健機関(WHO)などの専門機関などに所属する職員のことです。
中立の立場で国際社会の平和と安全を維持し、国際協力を通じて国家間の問題を解決するために働きます。
専門職と一般職があり、専門職は教育や開発など各機関の業務に直接携わる業務と、総務や広報などサポートする業務に分かれます。
一般職は、専門職の指示の下で一般事務を担当します。
▼なるには
欠員が出た際に行われる公募に応募します(一般職は基本的に現地採用)。
採用基準は非常に高く、英語またはフランス語で職務が遂行可能なことや、修士号以上の学位、専門分野での勤務経験といった能力が求められます。
空席公募の他には、外務省が行っているJPO(Junior Professional Officer)派遣制度や、国連事務局ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)があります。
- JPO:35歳以下が対象。国際機関へ派遣(原則2年)。その後、正規採用への道も。
- YPP:32歳以下が対象。書類審査、筆記試験、面接を経て、合格者は名簿(3年間有効)に掲載。ポストの空き状況に応じて名簿掲載者の中から選考を実施。
【参考】外務省 国際機関人事センター「国連事務局ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)」
在日大使館・領事館の職員
▼仕事内容
公務員には当たりませんが、語学力が求められる公的な職場として、日本にある外国の大使館・領事館があります。
各国の大使館は、自国の代表として日本政府と交渉したり、自国民の保護を行うのが仕事です。
また、2国間の友好関係の発展に努めています。
各国大使館の現地職員として、秘書や通訳、ドライバー、配車係、テレフォンオペレーター、警備などさまざまな業務で大使館を支えます。
▼なるには
欠員が出たタイミングで募集がかかるので、常に最新の情報をチェックする必要があります。募集数はあまり多くありません。
各国の求人に直接応募するほか、転職エージェントを通して応募する方法があります。
即戦力として働くことが求められるので、応募条件として該当職種でのある程度の経験が必須になります。
また、採用時点で流暢な会話能力、書類作成能力など高い語学力が求められます。
まとめ
この記事では、英語を使う国家公務員・地方公務員の仕事について解説しました。
- 英語力を活かせるのは、国際的な業務や外国人とのやり取りが頻繁にある部署
- 専門試験があるパターンと、他の職種と区別なく試験を受けた後に希望や適性に応じて配置されるパターンがある
- 専門試験がある場合は、年度によって採用言語が異なるので注意が必要
訪日客や在日外国人の増加傾向が続いている中、直接語学専門職として採用を行っていない職種でも、今後ますます英語を使う機会が増えそうです。英語力を生かす道として公務員を目指してみたい方は、スキマ時間で合格を目指せるオンライン通信講座「スタディング 公務員講座」をぜひチェックしてみてください。