論文の解答例は
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公務員試験の論文とは?
まずは、公務員試験の論文試験について解説します。
論文試験とはどのような試験で、またどのような試験種で出題されるのでしょうか。
公務員試験の受験を検討している方や、文章を書くことに苦手意識がある方は参考にしてください。
論文試験とは
論文試験は、答案として文章の記述が求められる試験で、大きく分けて次の2種類があります。
- 行政課題への意見を求められる試験(いわゆる政策系)
- 公務員としての適性をアピールする試験(いわゆる自己PR系)
この記事では、主に政策系の論文試験について解説をします。
特に地方上級などの受験者が数多い試験では、政策系の問題がよく出題される傾向です。
政策系の問題では社会問題や行政課題がテーマとして出題され、どのような対策がとれると考えるか、長文での記述が求められます。
一方で、自己PR系の問題は市役所などでよく出題される傾向です。
なお、政策系は「論文試験」「一般論文試験」「小論文試験」、自己PR系は「作文試験」「論作文試験」などといった呼称の試験で実施されることが多くあります。
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論文がある試験種は?
論文試験は、一部の国家専門職などを除いてほとんどの公務員試験で出題されます。
どの試験でも配点は高いため「論文試験は捨てて、ほかの試験の点数だけで合格する」というのは非常に難しく、公務員を目指している人にとって対策は必須だと言えるでしょう。
実施形式は自治体によって異なりますが、おおむね60分から90分程度の時間で、800字から1,000字前後を書かせる試験が一般的です。
▼論文試験が課される試験種の例(令和6年・大卒程度)
試験種 | 時期 | 内容 |
国家総合職 | 2次試験 | 政策論文試験 |
国家一般職 | 1次試験 | 一般論文試験 |
外務省専門職員 | 1次試験 | 時事論文試験 |
裁判所総合職
裁判所一般職 |
2次試験 | 小論文 |
東京都Ⅰ類B(行政・一般方式) | 1次試験 | 課題式論文 |
特別区職員Ⅰ類(春試験) | 1次試験 | 課題式論文 |
神奈川県Ⅰ種、秋季Ⅰ種(行政) | 2次試験 | 論文試験 |
横浜市(事務) | 2次試験 | 課題式論文 |
▼論文試験が課されない試験種の例(令和6年・大卒程度)
- 国税専門官
- 財務専門官
- 労働基準監督官
- 東京都Ⅰ類B(行政・新方式)
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【2024年出題予想】公務員試験の論文の書き方・解答例
それでは、論文の書き方や解答例について解説していきましょう。
スタディング公務員講座の寺本康之講師が令和6年(2024)の出題されやすいテーマとして選んだ「外国人との共生」に関する論文で解説します。
▼問題文
現在、わが国では外国人労働者の受け入れが進み、今後ますます在留外国人が増加することが見込まれている。このような背景を踏まえ、
外国人との共生社会を築いていくために課題となることをまとめ、それに対する取組みについて、あなたの考えを述べなさい。
思いついたことをそのまま書いていくだけでは、評価される答案にはなりません。
まずは問題をしっかり読んで、「何を聞かれているのか」を理解することが重要です。
その上で、「何をどの順番で書くか」という構成を作って、それに沿って実際の論文を書いていきましょう。
導入部分
(現状・現況、課題、問題提起)
↓
取り組み
(トピックごとに整理、盛り込みすぎない)
↓
まとめ
それでは、「外国人との共生」をテーマに論文の構成を作っていきましょう。
論文の書き方・解答例【1】導入部分
論文の導入では、まず現状・現況に触れ、次に課題を述べます。
【現状・現況】
現在、日本の人口は減少傾向にあるが、在留外国人は増加傾向にある。
近時、特定技能の在留資格が拡充されたことで、外国人労働者の大幅 な増加が見込まれている。
在留外国人数の増加は、日本が現在直面している雇用の人材不足を解消し、
労働の新しい担い手となることを期待できる反面、新たな課題も生み出す。
【課題】
外国人の労働環境の整備
長時間労働や残業代の不払いなど、
外国人に対する不当な待遇が顕在化している。
外国人の生活面の支援の充実
特に言葉や文化の壁は、
孤立を生み、異文化理解を阻害する大きな要因となる。
上記の「人材不足を解消し、 労働の新しい担い手となることを期待できる」というように、プラスの面を提示した上で課題の話に流すとスムーズです。
なお課題が2つある場合は、取り組みも2つ程度にしておくとよいでしょう。
そして、問題提起です。
【問題提起】
上記の課題を解決するための具体的な解決策とは何か。
問題提起は、基本的には問題文に書かれています。
ポイントは問題文をしっかり読んで、なるべく同じ言葉を使うことです。
今回の問題文では、「課題」とそれに対する取り組み、が求められていますが、例えば「課題」を「問題」と変えてしまったりすると、答案の内容もずれてしまう可能性があります。
細部まで気を使いましょう。
論文の書き方・解答例【2】取り組み(1)
続いて、課題に対する取り組みについて述べていきます。
今回は「労働環境の整備」と「生活面の支援」の2つのトピックに分けて述べていきます。
まず労働環境についてです。
【外国人の労働環境の整備】
<対受入れ企業>
外国人と日本人の不当な賃金格差を是正するとともに、
社会保険加入の徹底を呼びかけていくべき。
違反があった場合における監督指導の強化も行っていく。
労働環境の整備に意欲的に取り組む企業に対しては、
優良企業として認定し、表彰する取組みも効果的。
<対外国人労働者>
日本の雇用慣行や法制度を周知する取組みが必要。
自己の権利を知ってもらうことで、
「自分の身は自分で守る」 という自助の意識の向上につながる。
労働に関する疑問、 悩みを気軽に相談できる行政窓口を設け、 周知する。
被害実態を把握するためにアンケートを行うのもあり。
「労働環境の整備」の中でも、さらに「対受け入れ企業」と「対外国人労働者」に分けています。
一気に述べようとせず、1つずつわかりやすく書いていくことが重要です。
文章の流れをスムーズにするには、「ムチ(是正や監督指導など)」を提示したあとに「アメ(優良企業認定など)」を書くというテクニックも使えます。
論文の書き方・解答例【3】取り組み(2)
続いて、取り組みの2つ目のトピック、「生活面の支援」についてです。
【外国人の生活面の支援】
<言葉の壁を解消する取組み>
日本語教育の機会を提供する。
日本語セミナーを無料で開催し、外国人の日本語習得を後押し
(外国人散在地域においては、ICTを活用した教室の展開が有効か)。
行政からの情報を多言語で提供。 災害情報や犯罪情報、
暮らしの情報などを外国人に対して確実に届ける必要がある。
<文化の壁を解消する取組み>
食や音楽、スポーツなどを通じて互いの国のことを学び合う機会を設ける。
地域のルールを周知し、 住民どうしのトラブルを未然に防ぐ。
町内会・自治会参加の呼びかけ=新たな共助の担い手として期待できるため。
「生活面の支援」においても、「言葉の壁」と「文化の壁」と分けて書いています。
これらの他にも「心の壁」や「宗教の壁」などへの取り組みも考えられますが、あれこれ盛り込もうとすると論旨がずれてしまう可能性があるため、2つ程度にしておくのが確実です。
論文の書き方・解答例【4】まとめ
最後に、まとめを書きます。
【まとめ】
共生社会の実現は今後ますます重要になってくる。
日本人と外国人が分け隔てなく生活できる環境が整っていることが大切。
行政、 地域、 企業は一体となって、 共生社会の環境づくりを進めていく必要がある。
まとめは、ここまでに書いてきた内容の総括となります。
今回のテーマ(外国人との共生)の場合は、行政だけで共生社会を作るのは難しいため、「地域住民や地元企業を巻き込んで進めていく必要がある」のように締めるとまとまりがよくなります。
公務員試験の論文の勉強方法
公務員試験の論文における書き方がわかったところで、次に論文試験の勉強方法について解説します。
- (1)構成を書く練習をする
- (2)実際に答案を書く
- (3)過去問5年分の構成を書く
1つずつ見ていきましょう。
(1)構成を書く練習をする
まずは、構成を書く練習が必要です。
主要なテーマ10〜15個程度に対して、構成を書いてみましょう。
できれば受験先の自治体について調べながら書いていくと、同時にインプットも兼ねた勉強ができます。
(2)実際に答案を書く
次に、実際の答案を書いてみましょう。
1回目で完璧な答案が書ける人はほとんどいません。
多くは2回目で修正をして、3回目である程度精度の高い答案が書けるようになります。
そのため、本番までに1つのテーマにつき合計3回は答案を書くようにしてみてください。
また書いた答案は、可能な限りスクールの講師などからの添削を受けるようにしましょう。
模試を何度も受ける必要はありませんが、他人からの添削を受けると直すべきポイントが客観的にわかります。
なお、論文試験の答案はすべてが精読されるわけではなく、事前に仕分けをされます。
字が汚い、文章構成が読みにくい、文法の間違いが多いなどといった答案は、仕分けの段階で振り落とされてしまうかもしれません。
仕分けで振り落とされないためには、読みやすい字で、平易かつ明快な文章表現ができるようになっておく必要があります。
加点される答案を書くには、的確なキーワードや具体的な数値を盛り込むことが重要です。
また減点を防ぐには、誤字脱字をしない、文字数などの制約条件を守る、ですます調・である調を混在させない、一文を長くしない、テーマに沿った内容を確実に書く、といったことに注意しましょう。
(3)過去問5年分の構成を書く
次に、5年分の過去問の構成を書いてみましょう。
論文試験は、直近で傾向が変わっている可能性があります。
そのため、過去問は何年も前までさかのぼって対策する必要はありません。
基本的には、令和に入ってからの過去問を対策しておけばよいでしょう。
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【2024年出題予想】今年出そうなテーマTOP5とは?
ここからは、2024年(令和6年)の公務員試験の論文試験で出題されそうなテーマTOP5について解説します。
昨年、都庁と特別区の論文出題予想を100%的中させたスタディング 公務員講座の福田翔太講師が、過去10年間分の公務員試験(国家一般職、都庁・特別区、裁判所、地方上級)を分析し、出題されそうなテーマをピックアップしました。
- (1)観光政策(地域活性化)
- (2)人口減少問題(少子化・高齢化)
- (3)情報化・デジタル化
- (4)災害対策
- (5)環境問題(地球温暖化)
1つずつ見ていきましょう。
(1)観光政策(地域活性化)
令和6年(2024年)は、アフターコロナで外国人観光客が増加傾向にあります。
今後は国策としても、観光政策に注力していくでしょう。
観光政策は、令和5年(2023年)も市役所や県庁などでよく出題されていました。
令和6年は都庁や特別区、国家一般職で出題される可能性が高いと予想されます。
対策としては、地方公務員であれば地元の観光スポットなどについて書けるように把握しておくことが重要です。
特に外国人観光客を対象とした政策について出題される可能性が高いため、どのような誘客の施策があるか、具体的に考えておきましょう。
(2)人口減少問題(少子化・高齢化)
人口減少問題は日本の最重要課題であり、地方自治体でも解決すべき課題です。
都庁、特別区、市役所、県庁で出題される可能性が高いでしょう。
なお国家一般職では平成30年(2018年)に出題されたため、国家公務員試験でも出題される可能性はあります。
対策としては、統計データなどを見て現状の数値を覚えておきましょう。
また実際の試験では問題をよく読んで、テーマをしっかり把握しましょう(少子化対策なのか、高齢化対策なのか、少子高齢化対策なのか)。
少子化について聞かれているのに高齢化について論述すると、ずれた答案になってしまいます。
少子高齢化について聞かれている場合は、両方に触れた答案を書く必要があります。
(3)情報化・デジタル化
情報化は令和5年(2023年)にもよく出題されたテーマで、観光政策と同じくらい狙われやすいでしょう。
令和6年(2024年)は都庁、県庁、市役所、国家一般職で出題される可能性が高いと言えます。
ITやデジタルは年々進化しています。
対策としては、時事や社会科学の観点から最新情報を収集しておくとよいでしょう。
また、IT技術をどうやって住民のために役立てるのかについても考えておきましょう。
(4)災害対策
災害対策は、令和2年(2020年)に都庁と特別区で出題されています。
引き続き都庁や特別区では狙われやすいテーマのため、受験を検討している人は対策が必須と言えるでしょう。
災害対策について、まず考えるべきは備えについてです。
地域住民に対する物資の備え、緊急時における情報の伝達手段、避難経路などについて考えておくとよいでしょう。
(5)環境問題(地球温暖化)
環境問題も、さまざまな自治体で狙われやすいテーマです。
特に特別区、国家一般職、都庁、地方上級では出題される可能性が高いと言えるでしょう。
現在も東京都ではヒートアイランド現象などが課題となっているため、対策が求められています。
例えば農作物への影響など、地球温暖化によってどのような問題が起きてしまうのか、一般的な事例でよいので整理して理解しておきましょう。
また自治体によっては独自の環境問題対策を実施している場合もあるため、調べて把握しておくとよいでしょう。
その他の狙われやすいテーマと試験種別の注意点
ここまでの出題予想はあくまで予想であり、上記5つのテーマだけを考えておけば確実に合格できるというわけではありません。
狙われやすいテーマとしては次のようなものもあるため、対策しておくとよいでしょう。
- 住みやすい街づくり
- 治安対策、テロ対策
- アフターコロナ、感染症対策
- 労働人材不足(外国人労働者)、シェアリングエコノミー
- ワークライフバランス、テレワーク、働き方改革
- 女性の活躍推進
- 地方創生
試験種別の注意点
自治体や職種によっては特殊なテーマが出題されることもあるため、それに沿った対策が必要となります。
次のような試験種は特殊なテーマにも気をつけましょう。
▼国家一般職
超直近の時事が論文テーマとして狙われるため、直前まで時事問題のチェックが必要となります。
▼裁判所一般職
「あなたの考えるチームワークとは」などといった作文のようなテーマが出題されます。
▼東京都庁や横浜市などの自治体
配布される資料をもとにした見解の記述が求められるため、一般的な論文対策だけではなく特殊な練習が必要となります。
令和6年(2024年)出題予想は
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【Q&A】公務員試験に関するよくある質問
最後に、公務員試験に関するよくある質問に対して解答していきます。
公務員試験の勉強時間は?
公務員試験合格に必要な勉強時間は、1,000時間程度と言われています。
例えば勉強する期間を一年間とすると、1カ月あたりの勉強時間は83時間が必要となります。
さらにこれを30日で割ると、1日平均2時間45分のペースで勉強を続けると一年で1,000時間となります。
勉強時間を積み上げていくには、机に向かう時間だけでなく、通勤・通学中や出先での休憩中などスキマ時間の活用が重要です。
【あわせて読みたい】公務員試験の勉強時間は1,000時間!合格者と不合格者の違いは?
公務員試験の王道の勉強法とは?
公務員試験の「王道」と言える勉強は、次の3点を押さえることが重要です。
- どんな試験でも出題数の多い科目から手をつける
- 過去問をベースにした対策を心がける
- 「全体的に得点する」という意識を持つ
詳しくはこちらの記事で解説しています。
【あわせて読みたい】公務員試験の王道の「勉強法」を紹介!
公務員試験の人物試験対策は?
面接などの人物試験は、次のポイントを押さえておきましょう。
▼事前に提出する面接カード
公務員の面接では、事前に提出した面接カードの内容をもとに質問されます。
やりとりがスムーズに進みそうな内容を書きましょう。
▼面接評定票から採点基準を把握する
公務員試験の面接には、面接官が見るポイントをマニュアル化した面接評定票があります。
面接カードの内容は、面接評定票から逆算して考えましょう。
▼体験について考える
最近の面接では、実体験をもとにした自己PRや志望動機から「なぜそう思ったのか」などを深掘りされがちです。
説得力のある回答ができるように話を整理しておきましょう。
詳しくはこちらの記事で解説しています。
【あわせて読みたい】【公務員・人物試験】面接対策のポイントや回答のNG例を解説
まとめ
今回は、公務員試験の論文試験について解説しました。
- 論文は、いきなり書くのではなく「構成を考える」ことが重要
- 論文の構成は、導入部分(現状・現況、課題、問題提起)→取り組み→まとめ
- 令和6年(2024年)に出題されそうなテーマは観光政策、人口現象問題、情報化、災害対策など
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