公務員への転職を考える理由として、民間に比べ残業なく定時で帰れるのではないか、と考える人も少なくありません。確かに定時で帰宅できる部署もありますが、ほとんどの公務員が長時間残業・休日返上で国民・住民のために働いているのが現状です。
これまで以上に社会の多様化したニーズに応えるため、様々な国・自治体の法律・制度が変化の激しい中で、国民・住民に対する細やかな対応が求められている社会情勢にあります。
その一方で、公務員の定数削減が行われており、公務員の数は年々減少傾向にあります。つまり”業務は増える一方で働く人数は減っている”という状況で、一人当たりの業務量は増えています。
また、日中の業務時間中は窓口対応・来客対応に追われ、自分の仕事は終業後もしくは休日返上でやらなくてはなりません。
では、それだけ大変な仕事なのに、なぜ続けられているのでしょうか。それは、やはり「社会を良くしたい」、「人のために尽くしたい」という使命感を満たすことでどんなに残業をしても、休日返上でも日夜頑張っていけるわけです。公務員の給料は、皆さんが支払う税金で成り立っているわけですから、その自覚を持って常に国民・住民への感謝の気持ちを持った謙虚さと奉仕の精神に満ち溢れた人物こそ公務員として求める人物像となるわけです。
公務員は「高給取り」と思われがちですが、実は大きな勘違いです。公務員の給与は民間企業の平均給与に基づいて毎年法律で決められています。
イメージとしては、大手企業より少ないが、中小企業よりは高い、位置付けでしょう。その基準を安いと見るか、高いと見るかは個人の物差しとなります。実際に民間で働いていた時よりも給料が下がったということもあり得るのです。
公務員を目指す理由に、民間に比べ「福利厚生が充実している」ことも挙げられるでしょう。その代表的な1例として挙げられるのが、魅力的な休暇制度についてでしょう。
民間企業では、初年度6ヶ月以上過ぎないと年間10日の有給休暇が支給されませんが、公務員は初年度4月から年間20日間の有給休暇が支給されます。さらに、夏季休暇や介護休暇、ボランティア休暇、妻の出産、子供の看護といった民間では取れないような特別休暇があります。しかし、休暇は取りやすい環境かどうかは、部署によっても業務量によっても異なりますが、前述でも述べたように、業務に追われてしまい、なかなか休暇も取れないのが現状です。
「格安で公務員社宅が借りられる」ことも福利厚生の充実につながる理由として挙げられのではないでしょうか。確かに格安な公務員社宅はありますが、2011年度以降老朽化に伴い取り壊し・売却が進んでおり、最近は戸数自体も減っています。確かに家賃は格安ですが、役職・家庭状況によって住める社宅は限られており、ピンからキリまであります。社宅の多くは、築数十年で水回りが古臭く、エレベーター無しという物件ばかりです。(30年前に国家公務員社宅住んだことがありますが、その当時のサラリーマン家庭の自宅より社宅が古かったです。今も外壁以外はあの当時のままです・・)住宅設備には多少不便さはあるが、格安な社宅に住んでお金を貯めるか、もしくは住宅手当をもらって快適な住宅に住むか、こちらも一長一短ではあります。
結論から言いますと、いい人材であれば、学歴・職歴・転職回数など不問です。
公務員試験のほとんどは年齢制限のみです(社会人経験枠は、経験年数が必要となります)。公務員試験の受験年齢は20代前半とのイメージが強いと思いますが、実は、大学を中退したり、専門学校卒だったり、これまで数回公務員浪人のためフリーターだったり、20年民間企業で働き公務員へ転職したりと事情はそれぞれ異なる公務員が、公務員として活躍しています。
また最近では、幅広く優秀な人材を求めているため、試験方法も人物重視型に変化しております。
公務員に転職するには、公務員試験に合格しなくてはなりません。公務員試験には、大きく「一般枠」と「社会人枠」の2種類の試験から選べます。ここでは、この2つの試験種類について説明します。
「一般枠」とは、従来の公務員試験を指します。ほとんどの試験が30代前後の年齢制限があり、年齢条件さえ満たしていれば学歴問わず誰でも受験可能となります。例えば、専門学校卒でも、年齢さえ満たしていれば、大卒程度の公務員試験を受験することは可能です。つまり学歴区分は、試験の難易度レベルを表しているだけなのです。
「一般枠」は何と言っても採用人数の多さが魅力的です。そのため社会人枠に比べ、倍率は低いです。しかし、新卒者と同じ土俵で戦わなければならず、専門試験も課されるため、受験科目も「社会人枠」に比べ多く、膨大な勉強時間を確保しなければなりません。
「社会人枠」とは、民間企業などでの勤務経験のある社会人向けの中途採用試験を指します。ほとんどの試験が59歳までと幅広い年齢層が受験可能となります。民間企業での一定経験年数が求められていますが、契約社員や非常勤であっても一定の勤務時間数・勤務年数をクリアしていると受験できます。
近年、「社会人枠」での採用試験を実施する自治体も増えており、平成30年度では都道府県政令指定都市の85%以上が実施しております。筆記試験科目も「教養試験」のみとする自治体がほとんどで、膨大な勉強量を必要とする「専門科目試験」がないため、「一般枠」に比べ勉強の負担は軽くなります。その代わり面接回数が多く、プレゼンテーションや課題解決論述試験といった社会人経験を問われる試験があるため、現職での実務経験を公務員となりどのように活かすか、これまでどのようなスキルを身につけてきたのかを問われる傾向があります。
また、「一般枠」に比べ採用人数が少ないため、倍率は高く狭き門であることも現実です。自治体のホームページで受験資格や過去の倍率を見て、どこを受験すると有利なのか情報収集は必要不可欠でしょう。
社会人が受験できる
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社会人の公務員転職ルートは大きく2つ。
自身にとって合格の可能性がより高い採用枠に照準を合わせた受験対策が転職成功の鍵を握ります。
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執筆 濵﨑 あゆみ 国家資格キャリアコンサルタント、国家検定2級キャリアコンサルティング技能士、産業カウンセラー、EAPメンタルヘルスカウンセラー |