
これまで民間企業で働いていたものの、さまざまな理由で地方公務員を目指す方もいるでしょう。
公務員試験は年齢制限が緩和され、より幅広い年齢層の方が転職できるようになりました。
公務員は、安定した雇用環境や充実した福利厚生が魅力です。
この記事では、地方公務員への転職を考える方に知ってほしい情報を紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
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地方公務員に中途で転職できる?
地方公務員への転職は可能です。
頭の良い学生や若者しか転職できないと思っている方がいるかもしれませんが、学歴・職歴・転職回数などは不問のため、条件を満たせば誰にでもチャンスはあります。
公務員試験のほとんどは年齢制限のみです(社会人経験枠は、経験年数が必要となります)。
「公務員試験の受験年齢は20代前半」とのイメージを持っている方もいるかもしれません。
しかし実際には、大学を中退した人、専門学校卒の人、公務員浪人のためフリーターをしていた人もいます。
また、長年民間企業で働いてから公務員へ転職した人など、事情はそれぞれ異なります。
こうしたさまざまな背景を持つ公務員が、実際に活躍しています。
最近では、幅広く優秀な人材を求めているため、試験方法も人物重視型に変化しているのが特徴です。
社会人が地方公務員への転職を選ぶ背景とは?
働き方改革や終身雇用制度の変化により、民間企業での働き方に不安を感じる人も多くいます。
そうした中で、社会人が地方公務員への転職を選ぶ理由は、主に以下の2つです。
- 民間企業の不安定さ
- 年齢制限の緩和
安定した収入と職場環境を求める人にとって、地方公務員は魅力的な選択肢となっています。
ここでは、2つの理由を詳しく見ていきましょう。
民間企業の不安定さ
近年、大企業であっても業績悪化による大規模リストラや事業縮小が相次いでいます。
終身雇用制度が崩壊し、大手企業に入社したからといって定年まで安泰という時代ではなくなりました。
コロナ禍やデジタル化の進展、国際競争の激化により、民間企業での雇用の安定性に不安を感じる社会人が急増しています。
解雇リスクが低く安定した雇用を求める人にとって、地方公務員転職は魅力的な選択肢の一つとなっています。
年齢制限の緩和
従来の公務員試験は年齢制限が厳しく、20代での受験が一般的でした。
しかし、少子高齢化による人材不足と多様な経験を持つ人材の活用を目的として、多くの自治体で受験資格の年齢制限が大幅に緩和されています。
現在では40代、50代でも受験可能な自治体が増加しており、豊富な社会人経験や専門スキルを活かして公務員として新たなキャリアをスタートできる環境が整備されています。
転職のハードルが下がったことで、幅広い年代の人材が公務員を目指せるようになりました。
公務員に転職したいと考える理由・メリット
公務員への転職を検討する理由は人それぞれですが、以下のように安定性や働きやすさを求める声が多く聞かれます。
- 「残業なし」「楽な仕事」のイメージがある
- 福利厚生が充実している
ここでは、多くの人が公務員転職を考える主な理由を詳しく見ていきましょう。
「残業なし」「楽な仕事」のイメージがある
公務員への転職を考える理由として、「民間に比べ残業なく定時で帰れるのではないか」と考える人も少なくありません。
このようなイメージを持つのは理解できますが、現実は異なります。
確かに定時で帰宅できる部署もありますが、ほとんどの公務員が長時間残業・休日返上で国民・住民のために働いているのが現状です。
社会の多様化したニーズに応えるため、法律・制度が変化する中で住民への細やかな対応が求められています。
その一方で公務員の定数削減により、業務量は増加する一方で働く人数は減少しており、一人当たりの負担は大きくなっています。
また、日中は窓口対応に追われるため、デスクワークは終業後や休日に行うことも珍しくありません。
転職を検討する際は、このような現実も理解しておくことが重要です。
ただし、近年は奈良県や鳥取県のようにフレックスタイム制を導入する自治体が増えつつあり、地方公務員の働き方改革も着実に進められています。
福利厚生が充実している
公務員を目指す理由に、民間に比べ「福利厚生が充実している」ことも挙げられます。
その代表的な一例として挙げられるのが、魅力的な休暇制度です。
民間企業では、初年度6ヶ月以上過ぎないと年間10日の有給休暇が支給されませんが、公務員は初年度4月から年間20日間の有給休暇が支給されます。
さらに、以下のような特別休暇があります。
- 夏季休暇
- 介護休暇
- ボランティア休暇
- 妻の出産
- 子供の看護
公務員社宅や住宅手当制度も魅力的な福利厚生の一つです。
格安で利用できる公務員社宅は、家計の負担を軽くしてくれるでしょう。
ただし、役職・家庭状況によって住める社宅は限られており、2011年度以降老朽化に伴い取り壊し・売却が進み、戸数自体も減っています。
地方公務員の場合、自治体によって支給の有無は異なりますが、社宅に住まない場合は、家賃補助(住宅手当)を受け取るという選択もあります。

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地方公務員に転職する前に知っておきたい注意点
地方公務員への転職には多くのメリットがある一方で、転職前に理解しておくべき注意点もあります。理想と現実のギャップを埋めるために、以下の点をしっかりと把握しておきましょう。
- 給料は民間と比べて高いわけではない
- 年功序列や異動がストレスになることもある
- 「安定=楽」とは限らない
給料は民間と比べて高いわけではない
公務員は「高給取り」と思われがちですが、実は大きな勘違いです。
公務員の給与は民間企業の平均給与に基づいて毎年法律で決められています。
イメージとしては、大手企業より少ないが、中小企業よりは高い位置付けでしょう。
その基準を安いと見るか、高いと見るかは個人の物差しとなります。
実際に民間で働いていたときよりも給料が下がるということもあり得るのです。
特に外資系企業や成果主義の企業から転職する場合は、収入面での大幅な減少を覚悟する必要があります。

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年功序列や異動がストレスになることもある
地方公務員の組織は伝統的な年功序列制度が根強く残っており、年次や勤続年数が評価や昇進に大きく影響します。
また、定期的な人事ローテーションにより、専門性を深めたい分野があっても異動により別の部署に配属される可能性があります。
民間企業で専門性を活かしたキャリアを築いてきた人や、自由にキャリアパスを選択したい人にとっては、この制度がストレスとなるかもしれません。
成果よりも年功が重視される環境に馴染めない場合もあるでしょう。
「安定=楽」とは限らない
公務員は「安定した職業」というイメージがありますが、安定していることと業務がラクであることは別の話です。
現場では慢性的な人手不足に加え、住民からのクレーム対応や複雑な事務処理、法改正への対応など多岐にわたる業務に追われています。
また、税金で運営されている組織として、常に高い倫理観と責任感が求められるため、精神的な負担が大きくなることもあるでしょう。
災害対応や選挙業務など、緊急事態では休日返上での対応も求められます。
安定していても、決して負担が軽いとは限らないことを理解しておくことが大切です。
地方公務員に転職するために準備すべきこと
地方公務員への転職を成功させるためには、事前の準備が非常に重要です。
試験内容や制度は自治体によって大きく異なるため、以下のように計画的な準備を進めていきましょう。
- 自治体や職種の選定をしよう
- 試験制度・スケジュールを確認しよう
- 筆記・面接対策を始めよう
ここでは、地方公務員に転職するために準備すべきことを詳しく解説します。
自治体や職種の選定をしよう
まずは、受験する自治体と職種を決定することが重要です。
都道府県、政令指定都市、市町村など、それぞれ業務内容や給与体系、働く環境が大きく異なります。
また、事務職、技術職、専門職など職種によっても求められるスキルや試験内容が変わります。
自分の経験や希望する働き方に合った自治体・職種を選ぶとともに、複数の自治体を併願することでチャンスを広げることも可能です。
地元への貢献意欲や転勤の有無なども考慮して慎重に選択しましょう。

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試験制度・スケジュールを確認しよう
自治体によって試験制度は大きく異なるため、受験する自治体の詳細な試験制度を事前に調べることが不可欠です。
筆記試験の内容、面接の回数、論文試験の有無、集団討論の実施など、各試験要素を把握した上で対策を始める必要があります。
また、試験日程も自治体ごとに異なるため、受験予定の自治体すべての日程を確認し、効率的な対策スケジュールを立てることが重要です。
募集要項は必ず最新版を確認し、変更点にも注意を払いましょう。

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筆記・面接対策を始めよう
試験制度を確認した後は、その内容に合わせて具体的な対策を開始します。
教養試験、専門試験、論文試験など、それぞれの試験形式に応じた準備が必要です。
まずは受験する自治体の試験日を確認し、そこから逆算して学習計画を立てた上で筆記試験に向けた勉強を始めましょう。
自治体によっては過去問や例題をホームページで公開していることもあるので、積極的に活用して実際の試験形式に慣れることも大切です。
また、面接は独学で対策するのが難しいので、通信講座の模擬面接を活用して講師から直接フィードバックしてもらうのもおすすめの方法です。
スタディング公務員講座では、筆記試験対策はもちろんのこと、論文や面接など公務員試験対策を全面サポートするカリキュラムを提供しています。
一人で試験対策をするのが不安な方は、ぜひご活用ください。

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地方公務員に転職する場合の試験区分・受験資格
公務員に転職するには、公務員試験に合格しなくてはなりません。
公務員試験は、大きく分けて以下の2つです。
- 一般枠
- 社会人枠
ここでは、この2つの試験種類について説明します。
一般枠
「一般枠」とは、従来の大卒枠の公務員試験を指します。
ほとんどの試験が30代前後の年齢上限があり、年齢条件さえ満たしていれば学歴問わず誰でも受験可能です。
例えば、専門学校卒でも年齢さえ満たしていれば、大卒程度の公務員試験を受験できます。
つまり学歴区分は、試験の難易度レベルを表しているだけなのです。
「一般枠」は何と言っても採用人数の多さが魅力的です。
そのため社会人枠に比べ、倍率は低い傾向にあります。
しかし、新卒者と同じ土俵で戦わなければならず、専門試験まで課される試験が多いため、受験科目も「社会人枠」に比べ多く、膨大な勉強時間を確保しなければなりません。
社会人枠
「社会人枠」とは、民間企業などでの勤務経験のある社会人向けの中途採用試験を指します。
多くの自治体は、59歳までと幅広い年齢層の方が受験可能です。
民間企業での一定経験年数が求められていますが、契約社員や非常勤であっても一定の勤務時間数・勤務年数をクリアしていると受験できます。
近年「社会人枠」での採用試験を実施する自治体が増えており、全都道府県・政令市の80%以上が実施しています。
筆記試験科目も「教養試験」のみとする自治体がほとんどで、膨大な勉強量を必要とする「専門科目試験」がないため、「一般枠」に比べ勉強の負担は軽めです。
その代わり面接回数が多く、プレゼンテーションや職務試験論文といった社会人経験を問われる試験もあります。
現職での実務経験を公務員となりどのように活かすか、これまでどのようなスキルを身につけてきたのかを問われる傾向にあります。
また「一般枠」に比べ採用人数が少ないため、倍率は高く狭き門であることも現実です。
自治体のホームページで受験資格や過去の倍率を見て、どこを受験すると有利なのか情報収集は必要不可欠でしょう。

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地方公務員に転職した場合の給料・年収
地方公務員に社会人から転職する場合、これまでの実務経験年数に応じて初任給が決定されることが一般的です。
民間企業での経験が考慮され、新卒採用者よりも高い水準からスタートすることが多くなっています。
なお、地方公務員の平均年収は以下のとおりで、勤続年数や役職に応じて段階的に昇給していきます。
地方公務員の種類 | 平均年収 |
---|---|
都道府県職員 | 645万6,918円 |
政令指定都市職員 | 645万6,918円 |
市区町村職員 | 594万6,378円 |
また、地域手当や住居手当、扶養手当などの各種手当も充実しており、基本給以外の収入も期待できます。
ただし、民間企業と比較して劇的に高収入というわけではなく、安定した収入を重視する方に適した職業と言えるでしょう。
まとめ
地方公務員への転職について、解説しました。
- 学歴や職歴に関係なく、年齢制限内であれば誰でも挑戦できる
- 福利厚生の充実や安定した雇用環境が魅力的である
- 給料は必ずしも民間企業よりも高くなく、年功序列制度や業務の大変さもある
- 受験する場合は各自治体の試験制度を確認し、筆記・面接対策をする必要がある
- 公務員に転職する場合は、実務経験に応じた初任給設定となる
地方公務員への転職は決して簡単な道のりではありませんが、適切な準備と対策により実現できる可能性は十分にあります。
地方公務員への転職を本格的に検討されている方は、ぜひ「スタディング公務員講座」をご活用ください。
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