公務員と民間の離職率を比べると、公務員の離職率がかなり低いことが分かります。
地方公務員は1%前後、国家公務員の方が2%弱とほんの少し高くなっていますが、それでも民間の10%前後と比べると差は歴然です。
▼地方公務員の離職率
令和3年 | 令和2年 | 令和元年 | |
一般行政職 | 1.22% | 0.99% | 1.08% |
教育職 | 1.00% | 0.80% | 0.83% |
警察職 | 1.14% | 1.05% | 1.13% |
※離職率=在職者数÷退職者数×100%
▼地方公務員の離職率(令和3年)
全体 | 20代 | |
一般行政職 | 1.22% | 2.27% |
教育職 | 1.00% | 2.09% |
警察職 | 1.14% | 3.25% |
※離職率=在職者数÷退職者数×100%
▼地方公務員の離職率(一般行政職)
全体 | 20代 | |
令和3(2021)年 | 1.22% | 2.27% |
令和2(2020)年 | 0.99% | 1.88% |
令和元(2019)年 | 1.08% | 2.11% |
※離職率=在職者数÷退職者数×100%
地方公務員の離職率は近年微増傾向にありますが、それでも各職種で1%前後と極めて低い水準で推移しています。
民間では大卒の場合、就職後3年以内に3割がやめると言われますが、公務員の場合は20代に限っても2〜3%とその低さは際立っています。
これらの数字からは、一度公務員として働き始めると、長く安定して勤められることがうかがわれます。
▼国家公務員・行政職(I)の離職率
全体 | 20代 | |
令和4(2022)年度 | 2.03% | 2.84% |
令和3(2021)年度 | 1.81% | 2.65% |
令和2(2020)年度 | 1.64% | 2.24% |
※離職率=在職者数÷離職者数×100%
地方公務員に比べると若干上がりますが、それでも国家公務員の離職率も2%ほどで非常に低い数値となっています。
20代に関しても3%未満と飛び抜けて高い数字ではありません。
ただ増加傾向は続いていて、2020年度には、総合職の勤続10年未満の若手職員の退職者が7年前と比べて4割以上増えたというデータも出ているため、各省庁では働き方改革に力を入れています。
▼民間企業の離職率
2022年
(令和4年) |
2021年
(令和3年) |
2020年
(令和2年) |
|
一般労働者 | 11.9% | 11.1% | 10.7% |
一般労働者
(定年・契約期間満了を除く) |
ー | 9.1% | 8.8% |
パートタイマー | 23.1% | 21.3% | 23.3% |
パートタイマー
(定年・契約期間満了を除く) |
ー | 17.2% | 18.8% |
※離職率=在職者数÷退職者数×100%
▼民間企業の離職率
全体 | 全体 (定年・契約期間満了を除く) | パートタイマーを除く 一般労働者 | 一般労働者 (定年・契約期間満了を除く) | |
2022年 (令和4年) | 15.0% | ー | 11.9% | ー |
2021年 (令和3年) | 13.9% | 11.3% | 11.1% | 9.1% |
2020年 (令和2年) | 14.2% | 11.5% | 10.7% | 8.8% |
民間企業の離職率は、厚生労働省の雇用動向調査(令和4年)によると、一般労働者で11.9%、パートタイマーで23.1%、全体が15.0%でした。
定年退職や契約期間満了に伴う離職者を除くと少し下がりますが、一般労働者の離職率は毎年10%前後になります。
公務員の離職率1〜2%と比べると、民間では10%前後と離職者が多くなっています。
公務員の待遇は法律や条例で決まっているため、短期間に大幅な昇給が見込めないというデメリットはあるものの、組織内での待遇は統一されていて基本的に失業もなく安定しているという利点があります。
一方民間企業では、景気の影響を受けやすく、業績が低迷した場合は雇用の安定が脅かされますし、業績が良くても昇給などは経営者の判断によるため、待遇面での不安・不満が出やすいと言えます。
企業ごとに環境が異なるので、自社の業績が悪い時に好調だとか、業務内容が同じでも待遇が良いなど、同業他社との比較が容易いことも、転職を考えるきっかけに繋がっていそうです。
公務員の離職率が低い理由として、「福利厚生の充実」「給与の安定」などがあります。
有給休暇や育児・介護休暇の取得がしやすい点は、公務員の大きな魅力です。
とくに昨今は、働き方改革の推進、女性活躍推進法の制定などにより、福利厚生に関するさまざまな制度が整備され、ますます手厚くなっています。
民間企業の場合、有給休暇の取得権利は持っていても、そう簡単に行使できない現実があります。
それに対して公務員は有給休暇の取得がしやすく、新人・ベテラン問わず幅広い層で取得されている傾向です。
公務員は1年目から20日の有給休暇取得が可能で、新人でもとりやすくなっている点が大きいようです。
そのほかにも、医師の診断書があれば原則90日間の休暇取得が可能な病気休暇、夏期休暇や介護休暇、育児のための特別休暇など、さまざまな支援制度があります。
勤務年数に応じて段階的に昇給が約束されるところは、民間企業にはない大きなメリットです。
本来、公務員の給与は民間企業の平均賃金に合わせるような法律の立て付けになっているのですが、実際には公務員のほうが高い給与をもらえているようです。
大きなミスや不祥事でも起こさない限り、減給などは基本ありません。
まじめに職務をまっとうし、コツコツ勤続年数を増やしていけば、月給もボーナスも上昇が見込めます。
長く働けば働くほど、生涯賃金も多くなるのです。そのような待遇面の保証があるからこそ、簡単に離職する人も少ないといえるでしょう。
最後に、公務員を目指す人のよくある質問を2つ取り上げます。
公務員試験と民間の採用試験には共通点も多いので、併願が可能です。
難易度が高く対策に時間がかかる専門試験がある職種は難しいですが、最近は教養試験のみで受験できる試験が増えている上、民間採用テストで代表的なSPI3は公務員試験の勉強をしていれば大部分をカバーできます。
スケジュールとしては民間が先、公務員が後になるので、教養試験対策は確実に合格点を取るための計画をしっかり立てるのが重要です。
就職活動をする時に公務員と民間で迷う人、また、「公務員=安定」というイメージから、民間企業からの転職を考える人は多いかもしれません。
就職や転職を目指す上では、公務員と民間の違いをしっかり把握するのが大切です。
公務員 | 民間 | |
仕事内容 | 社会のため、非営利 | モノやサービスを提供、利益追求 |
採用試験 | 公務員試験
筆記試験+人物試験 など |
企業によって内容が異なる
採用テスト+複数回の面接 など |
待遇 | 失業がなく、手当・福利厚生が充実
給与が上がりにくい |
成果が昇給につながりやすい
不景気時にはリストラがある場合も |
この記事では、公務員の離職率について、民間の離職率とも比較しながら見てきました。
人間関係や業務内容が合わない、昇進・評価に不満があるなど、公務員・民間に関係なくどこでも起こりうる離職理由もあります。
ただ、給与や手当・福利厚生などの安定感・充実度は公務員の強みで、それが離職率の低さの大きな要因になっているようです。