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スタディング講師陣が解説!特別区対策

スタディング講師陣が解説!特別区対策

特別区職員とは、東京都の区の職員として区民のために働く公務員です。
採用の流れとしては、まず特別区人事委員会が実施する試験で合否が決まり、その後に希望区の試験を受けて配属が決まります。

各区が各々職員を必要としているため、毎年かなり多くの合格者を出します。
公務員試験の中では比較的合格をもらいやすいのが特徴です。

但し、人気の区に志望が殺到するため、ギリギリの合格だと希望者の少ない区でしか採用されません。
試験の出来によって境遇が左右されるので、合格さえすれば良い、と言う訳ではなく、上位合格をしなければならないのです。

特別区は人物重視、とりわけ熱意や能力などの中身の部分が大切で、旧来の筆記重視や外見だけの対策では上位合格はできません。
今回は、上位合格をするために必要な真髄を徹底的に講義していきます。

試験概要

特別区は様々な採用区分がありますが、ここでは最も受験者の多いⅠ類行政事務を念頭に解説をしていきます。
まず試験科目は以下のようになっています。

【試験科目】

試験内容解答時間
一次教養択一試験48題から40題選択解答
知能分野(28題必須)/知識分野(12題選択)
120分
専門択一試験憲法、行政法、民法(総則/物権)、民法(債権/親族/相続)、
ミクロ経済学、マクロ経済学、財政学、経営学、政治学、行政学、社会学(40題選択)
90分
論文試験2題中1題選択
1,000字以上1,500字程度
80分
二次個別面接試験

特別区の択一試験(教養+専門)の合格ラインは5割程度で、足切りラインも低くなっています。
これに対して、論文と面接試験の比重がとても高いのが特徴です。

ここから、目先の点数稼ぎ受験生ではなく、真に熱意・能力のある人物を求めていることがわかります。
実は、特別区の求める人物像は自明であったりします。

面接カードに記載されているのです。

後ほど詳しく説明しますが、簡単に言えば、

・特別区の仕事に強い熱意と志がある人
・物事を最後までやり遂げることができる人。
・独自のアイディアが出せる人。
 ※ここで言う「独自のアイディア」とは奇抜性ではなく、「自分の頭で考える」「主体的である」と言う意味です。
・チームに貢献できる人。


裏を返せば、

・合格して採用さえしてもらえれば(安定した収入さえ確保できれば)それで良い人は不要。
・途中で投げ出す人は不要。
・マニュアル人間やパクリ人間は不要。
・自分の安定のために組織を収入の道具としか見ていない人は不要。


と、適性の方向を見出すことができます。
つまり「合格しやすいから受験しよう」「点数さえ取れればいいんでしょ?」と言った浅はかな受験生は特別区には採用されません。

とりあえず択一の点数を上げ、適当に論証を暗記し、一次試験に合格したから、そこで初めて志望動機を考えるような短絡的な計画では、最後の面接で必ず不合格となります。
ところで、多くの人は一次試験で落ちてしまうよりも、一次試験だけでも合格できた方が嬉しく思うようです。

しかし、一次試験に合格すれば、当然、二次試験に向けて全力で対策をすることになります。
その間は時間が止まっている訳ではないため、企業の就職試験はどんどん終わっていきます。

二次試験に不合格になった時点から方向転換で新たに就活を始めた場合、他の就活生から大きく出遅れてしまうのです。
二次試験まで引っ張っておいて落ちるぐらいなら、一次試験で落ちた方が良い、いや、そもそも適性が無い人は公務員試験なんて受けない方が良い、となるのですが、それでは身も蓋もありませんね。

ここでは、もっとポジティブに考え、「確実に最終合格する人物とは」と言う観点から試験対策を構築していきます。
具体的には、特別区が求める人物像として、熱意や志からスタートし、面接、論文、そして択一と、核から表層へ逆に辿っていくことで、付け焼刃ではなく、特別区の採用で求められている真の職員像を形成します。

試験自体は択一→論文(択一と論文は同日)→面接→区面接と、表層→核と言う順番で課されますが、対策としては、やはり核をしっかり確立してから自信を持って表層部の対策に移るのが望ましいと言えます。
それでは、具体的な試験対策を始める前に、その大前提となる「熱意と志」から話を始めていきます。


大前提となる「東京特別区への熱意と志」

日本は地縁が強く、生まれ育った郷土にそのまま留まる人が多い特徴があります。
公務員試験の志望動機を見ていても、「この土地で生まれ育ったから」と言う表現に多く遭遇します。

※ 但し、「ここで生まれ育ったからここで採用しろ」と言う論理はあまりにも自己中心的であり、志望動機としてはあまり評価されません。寧ろ、生まれ育ったからこそ分かる具体的な課題・改善点を志望動機として構築しましょう。

一方で、新たな活路を求めて生まれ故郷から新天地へ移住する人もいます。
その新天地として代表されるのが東京です。

大学から上京した人、会社の異動で赴任した人など、多くの人が地方からも集まります。
つまり、東京は多様性がとても強い都市だと言えます。

その住民を支える特別区職員には、広い視野と柔軟な対応能力が求められます。
偏見があったり、頑固な頭でっかちは職員としては不適となります。

近年は公務員試験を合格点取りゲームのように勘違いをして捉えている受験生も多いようです。
あくまでも住民のために働く職員を採用するのが公務員試験であることを忘れてはいけません。

また、世界に名だたる人口や経済規模を誇る東京は、常に時代の先頭を走っています。
科学技術の進展だけでなく、少子高齢化や環境保護、脱炭素などの対応も世界をリードし、他国に手本を示さねばなりません。

他国の手本となり、世界を牽引する東京を支える職員は、まさに世界の未来を創造する大きな使命が課せられているのです。
よって、東京を愛し、発展と振興を心より願い、仕事に高き誇りを抱く人が特別区職員としては相応しいと言えます。


人物像を直接見極める「人物試験(面接)」

熱意と志を確立したら、今度は求められる能力が具現化されている面接の対策から先に見ていきましょう。

特別区と言っても、特別区全域で勤務する人はいないので、全域についてではなく、自分の希望する区を念頭におくことが大切です。
これも一種の引っ掛けであり、何となく受験した人は、漠然と抽象的な内容しか答えられず、熱意の浅さが露呈する仕組みになっています。

よって、区面接の対策を先に構築してください。
区面接であれば場所が特定されるため自ずと具体的な話を盛り込むことができるはずです。
区面接用で構築したものをベースに人事委員会の面接でも言うことができれば、確実に高い評価を得られます。

では、面接カードの項目を順に解説していきます。

【特別区 面接カード】※令和4年度版

(1)あなたが特別区でどのような仕事に挑戦したいか、あなたの強みと志望動機も含めて具体的に入力してください。

(2)あなたが一つのことをやり遂げた経験を挙げ、その中で最も困難だと感じたことと、それをどのように乗り越えたかを入力して下さい。

(3)目標達成に向けてチームで行った経験において、チームへの貢献につながったあなた独自のアイディアを、ご自身の役割とともに入力して下さい。

(1) あなたが特別区でどのような仕事に挑戦したいか、あなたの強みと志望動機も含めて具体的に入力してください。

メイン「どのような仕事に挑戦したいか」、サブ「あなたの強みと志望動機」と言う優先順位が提示されています。
この優劣に気が付くかどうかが一番のポイントとなります。

つまり、「このような仕事がしたい」と言う点につき、具体的に提示ができれば、それは熱意がある本物の志望だと判断できます。
これは特別区の現状を踏まえた上で、具体的であればあるほど評価されます。

そして、自分と全く接点のないことを挑戦したいとは思わないので、何かしら自分の強みとの関連性があるはずです。
それを付け加えていくことで、仕事と自分とのつながりを補強します。

重要なのは、自分中心で構築するのではなく、相手を中心に考える、と言う点です。
志望動機で、自分の主観的な感想だけを述べ自己完結してしまう人がいますが、あくまでも採用側は「これから良い仕事をしてくれるか」と言う視点で審査をしています。

「このような仕事がしたい」と言う未来像があり、その補強として強みや志望動機を加えて「区でしっかり仕事をする姿」の信憑性を高めていく訳です。

また、「住民のために仕事がしたい」「何でもやります」と言った中身の無い回答で、強みの自己PRばかりを強調する人は低く評価されます。
「自分の活躍が大切で、採用されてお金さえもらえればそれでいいですから。」と言う内心が見え見えです。

(2) あなたが一つのことをやり遂げた経験を挙げ、その中で最も困難だと感じたことと、それをどのように乗り越えたかを入力して下さい。


ここの前提は「一つのことを」「やり遂げた」です。
あれもこれもとPRしてしまう人は欲張りの表れですし、そう言った人に限って、一つ一つの達成度が低かったりします。

もちろん、複数の事象に対し、全てを完遂していれば問題ありませんが、特別区としては「何か一つで良いからきちんとやり遂げた経験のある人」を求めています。
中途半端な経験を並べるのは逆効果です。

後ほど、詳しく述べますが、この項目は面接カードの(1)、(3)も意識して回答する必要があります。
つまり、「やり遂げたこと」は、特別区の仕事につながる能力に関わるもの(1)であり、チームで行ったこと(3)が望ましいと言えます。

そして困難克服も、自分の心の内面のウジウジを言うのではなく、チームワークで仲間との関わりの中で(3)克服した経験を言うことになります。
同じエピソードでも異なるエピソードでも構いませんが、行動特性を特別区の求める像に一貫させることが重要です。

(3) 目標達成に向けてチームで行った経験において、チームへの貢献につながったあなた独自のアイディアを、ご自身の役割とともに入力して下さい。


近年は個人単独の仕事は少なく、チームで目標達成に向けて仕事をしていくことがほとんどです。
よって、特別区に限らず、どんな仕事もチームワークの協働力が必要不可欠です。

しかし、チームワークの協調性を「何も言わずにただ従うこと」と勘違いしている人も多いようです。
公務員試験では、過去に、チームワークを過度に意識して波風を立てない人を採用した結果、自分から全く仕事をしない窓際族のような人が増えてしまった黒歴史があります。

年配の人の中には、公務員と言うと「自分から仕事をしない窓際族の職業」などと偏見を持っている人もいます。
現在はこのような窓際族は一切採用されませんが、過去にそのような基準で採用してしまった時代があるのは事実です。

過去の反省を活かし、現在では積極的に仕事のできる人を採用しています。
それが顕著に表れているのが「あなた独自のアイディア」と言う部分です。

「独自のアイディア」と言うと、奇抜で革新的なものを想定してしまいますが、この場合は「自ら進んで主体的に行動した」と言い換えた方がわかりやすいかもしれません。
あえて誤解を招く言い方にしているのは、ここも引っ掛けで、奇抜な話をして逆に「チームワークの邪魔をした」エピソードになっている人を落とす意味合いが含まれているのでしょう。

・・・さて、ここまでは、書かれていることに答えるだけなので誰にでもできます。

従来は項目別に点数を付けて採点がされていたので、各々の項目だけに最善を尽くせば良かったのですが、現在の公務員試験の主流はコンピテンシー面接になっています。

コンピテンシー面接で大切なのは、各項目の回答志向を一貫させることです。
ここで、各質問を今一度俯瞰してみましょう。

1、特別区の仕事への志向。

2、困難を乗り切り、達成する。

3、独自アイディアでチームに貢献する。


と言った柱が見えてきます。
そして、1の質問にも2の質問にも3の質問にも、全て1〜3を盛り込んで構築することが大切なのです。

1の項目だけ、2の項目だけ、とブツブツに項目を切って見るのは、人間を、髪の毛、顔、内臓、脚・・・と部分だけで捉えるようなものです。
部分の集合と総合的な人物像は全く異なります。

昔の面接は「問題のある人を落とすための試験」だったので、人間をブツブツに切って項目で評価する「部分の集合」としての評価がされていました。
しかし、「部分の集合」で評価すると、どうしても減点法になりがちで、今の「優秀な人を合格させるための試験」としての面接には不適切です。

よって、近年は総合的に「求める人物像」との合致度を測る基準に変わっています。
今の面接で問われているのは「部分の集合」ではなく「総合的な人物像」なのです。

総合評価なので、特別区の求める素養を追求すれば自然と面接で高評価になります。
一方で、この評価基準では、小手先のテクニックや点数稼ぎでは不自然な言動となり、低評価となります。

まとめると、コンピテンシー面接で必要なのは、

・「一つの質問回答事項を具体的に描写する」縦の軸

・「他の回答事項と一貫性を持たせる」横の軸


縦の軸は、一つのエピソードを詳細に、例えば統計や日時など、数字をしっかり入れることで具体性を出します。
横の軸は、採用側が求める人物像を設定し、全ての回答をその人物像と絡めることで、信憑性を高めます。
この二点に尽きると言っても過言ではありません。

いかがでしょうか。
パッと見ただけだと単なる質問ですが、そこから抽象化し、共通項を見出せるかどうかで、回答のレベルが大きく変わります。

これこそが隠れた採点ポイントであり、その人物の能力によって大きく差がつく部分です。
また、この能力は単なる点数稼ぎしかできないレベルの人には、見えない世界です。

合格レベルの人と不合格になってしまう人との間には、単なる点数の差だけでなく、見えている世界そのものが異なります。
狭い視野で悪戦苦闘するのではなく、高い見地から判断できる実力を身に付けましょう。

それこそが世界をリードする「花の都・東京」特別区を担う職員として、必要とされる力なのです。

<面接試験で絶対に言ってはいけないこと>

面接で「就職試験など他の内定はもらっていますか?」と聞かれることがあります。
多くの受験生が「ここだけを受験しています」「他は考えていません」と答えた方が評価が上がると勘違いをしています。

極端な例を挙げれば、他のエントリーで全て落ちてしまい、馬鹿正直に「他は全て落ちてしまったので、ここで合格しないと後が無いのです。何でもするので合格させてください!」と言う受験生です。
恐らく、本人は「涙の懇願で面接官の心に響くはずだ」と思っているのでしょうが、他で不採用だったと言う事実こそがまさに何か欠陥がある証拠です。

他で落ちた欠陥人間を拾うほど特別区は落ちぶれてはいません。
志望者が誰もいないようなところなら、「じゃあ是非うちで働いてくれ」となるでしょうが、残念ながら特別区には多くの優秀な人が志望しています。

仮に他で不採用をもらっていたとしても、それは絶対に隠してください。
寧ろ、引く手数多で、ここで採用されても大手企業に行ってしまうかもしれない人の方が点数が高くなります。

面接官に限らず、誰もが貧乏くじを引きたくはないし、逃がした魚は大きく見えるものです。

<おまけ>3分プレゼンテーションの対策

ここで特別区恒例の3分プレゼンについて、組み立て方のコツをザっと簡単に説明します。

① 聞き手に期待しない

聞き手はあなたの話に関心がないことを前提に準備します。

② 冒頭に何を持ってくるか

冒頭は聞き手の興味を喚起します。 ※聞き手との接点を考え、共有できる情報を提示し、聞き手を惹き付けます。

③ 分量多めに準備

1分の量は400字(20×20作文用紙1枚)ですので、まずは400字×3分=1200字 で準備します。
そして、そこから1/3をカットします。つまり800字まで減らしていきます。

最初から800字で作るのではなく、1200字を800字にすることがポイントです。
「相手が聞きたい内容」以外は思い切ってカットするのです。

上手いプレゼンテーションのコツは、「余計な情報を入れない!」です。

④ 表現方法

その凝縮した内容を、時間をかけてゆっくりと真心を込めて語ります。

⑤ 雰囲気作りを訓練

「話す」より「間を取る」ことが大切です。たくさん喋ろうとするのは逆効果となります。十分な間を取って聞き手の注目を集めます。

⑥ 質問対応も含めてプレゼン

プレゼンテーション後、内容に関して凄まじい質問の嵐が待っています。気を抜かないようにしてください。


土台となる政策構築力を測る「論文試験」

近年は、時事的な問題が提起され、「特別区の職員としてどのように取り組むべきか」と言う問いのスタイルが定着しています。
評論家として論評する訳ではなく、「特別区の職員として」の論考や提案が求められている訳です。

つまり、論文試験と言う名称ですが、人物試験の面接に近い切り口が求められます。
そこで注目したいのが、面接のところで解説した、「独自のアイディア」と言う点です。

特別区の論文では、どこかの模範解答を盗用したパクリ答案ではなく、独自のアイディアが必要です。
但し、独自のアイディアと言っても、奇抜なことを求めている訳ではありません。

マニュアル暗記ではなく、自分の頭で考え、自分の力で理論を構築せよと言うことです。
残念ながら、面接カードにどのような人材を求めているのかヒントが隠されているのに、論文試験だけを見て「特別区に独自性は要らない」と誤解してパクリ答案を正当化してしまう受験生がいます。

各試験で全く異なったタイプの人を各々採用する形式であれば、その試験だけで必要な能力を判断しても良いかもしれません。
しかし、択一試験も論文試験も人物試験も同じ採用試験内で課されています。

まずは、これらの端々から、全体としてどのような職員を採用したいのかを理解し、それに沿った対策を構築しなければいけません。
巷のマニュアルを覚えて目先の点数稼ぎしかできない人の書いた答案はパクリ臭がプンプンするため、自分で考えることができないと言うことが一目瞭然でわかります。

この記事内でも何度も言っているように、問題に対して論点を張り付けるような短絡的なことではなく、もっと広い視野を持って、大局的な見地から論文も構成していく必要があります。
その大局的論文学習の第一歩として、まずは採用試験全体の構造から、個々の科目の方向性を見出す訓練から始めてみてはいかがでしょうか。


最低限の能力があるかを測る「教養択一試験」

教養の択一試験の科目には「一般知能科目」と「一般知識科目」がありますが、特別区では「一般知能科目」の配点がとても大きくなっています。
知識の暗記など、スマホで検索すればすぐに収集できるため、重要度は年々低下しています。

一方で、知能は暗記ではなく、与えられた条件からその場で対応する力が必要となります。
特別区は臨機応変に適切に行動できる柔軟性に富んだ人を求めていると言えます。

特別区に限らず、公務員試験の教養択一試験は大学受験のような難度の高いものではなく、小学校や中学校で学習する基礎的な範囲での出題です。
合格者の多くは特別な対策をしなくとも、過去の学校生活や受験勉強の中で培った学力で、十分に合格ラインまで達しています。

しかし、受験生の中には、苦手科目があり、なかなか合格ラインの得点が難しい人もいるかもしれません。
これらの人は何らかの対策を講じなければいけませんが、現時点で苦手を克服できていない事実にしっかりと向き合う必要があります。

これまでの人生で克服できなかった科目に同じように取り組んだとしても、公務員試験の段階で初めて克服できる確率はかなり低いと言えます。
恐らくは、れまでと同じように、苦手を克服できずに悩むことになるでしょう。

よって、まずは「何故自分はこれまで苦手を克服できなかったのか」を分析する必要があります。
択一試験は答えのある問題であり、答えがある以上、才能や能力はあまり関係がありません

つまり、苦手の原因は自身の能力ではなく、学習の仕方やこれまで指導を受けた先生に欠陥があるのです。
そこをまずは改良する必要があります。

容器にフタをしたまま、水を入れようと水道の蛇口をいくら捻っても、水圧で容器が傷むだけで水は一切貯まりません。
まずはフタを取ることが大切です。

但し、合格者の多くは無勉強でも点数が取れ、その水準の人が想定されています。
対策をしないと点数が取れない人はその分だけ劣勢に立たされていることをまずは肝に銘じてください。

また、教養と言うのは、自然と身についている素養のことを指します。
対策をしないと点数が取れない時点で、採用基準として想定されているレベルに達していないのです。

そのハンデを克服する一番の鍵はモチベーションにあります。
教養能力は劣っていても、志望への情熱が自分自身を変え、次第に採用基準が想定するレベルに自分を押し上げてくれます。

無理矢理、暗記で誤魔化し、択一は教養があるように得点したとしても、論文や人物試験で化けの皮が剥がれて無教養が露呈します。
二重にも三重にも試験を課しているところからも分かるように、特別区(※特別区に限らず公務員試験全般にも言えます)で求められているのは、真の適性です。

目先の得点稼ぎやテクニックによる欺きは逆効果です。
採用側が求める人物像に自分を合わせて行きましょう。


〈おわりに〉実際の公務員と試験業界とのギャップ

実際に特別区の職員と協働で業務を遂行する機会が多いのですが、彼らはとても頭の回転が早く、仕事も優秀で、大局観のある素晴らしい方ばかりです。
一方で、公務員試験業界では、目先の点数稼ぎが目立ち、思考停止のマニュアル暗記が横行しています。

私はこの、実際の公務員の崇高性と、受験業界の浅はかさのギャップに日々、頭を抱えています。
そして、なるべく合格者の水準に合わせ、実際の公務員が見ている世界を受験生にお届けしたいと指導をしています。

ただ、あまりにも実際の公務員と試験業界内とで、見えている見地や考え方に大きな隔たりを感じるのです。
受験生も指導者もピンキリであり、様々な分析があります。

対象や見地が違うので内容は異なって当たり前です。
同じ内容で出すのはそれこそパクリですので、違って当然なのです。

しかし、真に合格者の見地を教えてくれる内容が試験業界内に少ないことも事実です。
少しでも核心に迫る内容を届けようと、全力でこの記事も執筆しています。

ところで、かつて実際の公務員試験の採用を担っている方に、「きちんとした採用の方向性を打ち出してみたらどうですか?」と提案したことがあります。
すると、「いえ、今のままの方が優秀な人を判別しやすいんですよ。」と言う答えが返ってきました。

特別区は優秀な人が多く受験してくるため、基準に合わない人は落とせば良いだけの話なのだそうです。
合格者と不合格者の間には点数だけでなく、見えない壁が存在し、合格者にだけが見えている世界があります。

さて、その世界が見える地平に立てるか否か。
本当の合否はそこに存在するのです。