公務員の定年延長を早見表で解説 退職金やデメリットは?

従来は「60歳」だった公務員の定年は、段階的に引き上げられ、令和13年度(2031年度)に「65歳」となります。

この記事では「何年生まれだと、何歳で定年になるのか」を早見表で解説します。さらに、定年延長によって基本給、退職金、65歳までの働き方はどう変わるのかについても説明します。

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【早見表】公務員の定年延長はいつから?何年生まれから?

公務員の定年は段階的に引き上げられます。「何年生まれは何歳で定年か」を簡単に調べることができる早見表とともに解説します。



定年引き上げは令和5年度(2023年度)にスタートし、2年に1歳ずつのペースで引き上げられ、最終的には65歳になります。影響があるのは昭和38年度(1963年度)以降に生まれた人です。

段階的引き上げ期間中には、経過措置として今までの再任用制度と同様の仕組みである「暫定再任用制度」が設けられています。例えば定年が61歳の人の場合、定年後は65歳まで1年ごとの更新で再任用でフルタイム・短時間で働くことが可能です。

また、定年引き上げと同時に、いわゆる「役職定年制」も始まります。


公務員の定年引き上げは令和5年度(2023年度)にスタート

定年の引き上げは令和5年度(2023年度)にスタートし、まず60歳が61歳に引き上げられます。その後は段階的に2年に1歳ずつ引き上げられ、令和13年度(2031年度)に65歳になります。


▼公務員の定年引き上げスケジュール

年度 定年の年齢
令和5(2023) 61歳
令和7(2025) 62歳
令和9(2027) 63歳
令和11(2029) 64歳
令和13(2031) 65歳



生まれた年度で調べる 定年延長早見表

生まれた年度で定年の年齢と、定年を迎える年度が分かる、公務員の定年早見表を用意しました。


▼公務員の定年早見表

生まれた年度 定年の年齢 定年の年度
昭和37(1962) 60歳 令和4(2022)
昭和38(1963) 61歳 令和6(2024)
昭和39(1964) 62歳 令和8(2026)
昭和40(1965) 63歳 令和10(2028)
昭和41(1966) 64歳 令和12(2030)
昭和42(1967) 65歳 令和14(2032)

※「生まれた年度」の期間は4月2日〜翌年4月1日


定年引き上げが始まる令和5年度(2023年度)より前に60歳になった昭和37年度(1962年度)生まれの人は、60歳が定年のままです。翌昭和38年度(1963年度)に生まれた人から定年延長が始まります。


定年引き上げと同時に「役職定年制」もスタート

公務員の定年引き上げと同時に、管理監督職勤務上限年齢制、いわゆる役職定年制もスタートします。

管理監督職の職員は、60歳の誕生日から最初の4月1日までの間(異動期間)に、非管理監督職に降任します(人事院が定める特例により例外あり)。定年引き上げで年長者が60歳以降も一定のポストに留まった場合、若手や中堅層の昇進ペースが遅れて士気が低下する恐れがあるため、その対策として導入される制度です。



定年延長で基本給・退職金はどうなる?

定年延長で気になるのが、「基本給や退職金はどうなるのか?」という点ではないでしょうか。

  • 基本給:減りますが、再任用に比べると多くなります。
  • 退職金:60歳が定年の場合と変わらないようになっていますが、定年延長に伴って勤務年数が長くなると退職所得控除額が増えるため、手取りで考えると多くなります。

では、基本給と退職金について、さらに詳しく解説していきます。


基本給は「7割」になる 

職員の俸給月額(いわゆる基本給)は、60歳の誕生日を迎えた後の最初の4月1日から7割水準になります。


【画像引用】人事院給与局、内閣官房内閣人事局「国家公務員の60歳以降の働き方について(概要)令和5年4月」


【非管理監督職の例】

行政職(一)6級85号俸(本府省課長補佐級)

基本給:41万1,200円 → 7割水準:28万7,910円

また、60歳以降に役職定年制で降格した場合は、まず降格した段階で基本給が下がり、さらにそこから7割になってしまいますが、降格分に相当する額が支給される調整が加わります。よって、降格前の基本給の7割を受け取れます。

基本給が7割になると、連動して地域手当や期末・勤勉手当(ボーナス)なども7割に減りますが、住居手当や扶養手当など、そのままの手当もあります。


基本給が減っても退職金は減らない

公務員の退職手当の計算方法は「退職時の給料月額×支給率×調整率」です。

「60歳を過ぎて基本給が7割になると、定年延長後の退職金も減ってしまうのではないか」と心配になるかもしれませんが、基本給が下がっても退職金は減りません

減額前の基本給の最高額を考慮して退職手当の支給額を計算する「ピーク時特例」が適用されるからです。

簡単に説明すると、基本給が減る前と減った後の期間を別々に計算することで、60歳までの勤続年数が35年以上の人はマイナスの影響が出ないようになっています。


定年延長の退職金への影響について、次のような点もポイントです。

  • 60歳以降、定年前に退職しても、自己都合ではなく定年退職扱い
  • 60歳時点で勤続34年以下の人は、定年延長で勤続年数が増えて退職手当アップ
  • 定年延長で勤続年数が増えることで、退職所得控除額が増え、手取り額増加

退職金の支給時期は定年延長に伴い後ろ倒しになる

定年の引き上げに伴い注意したい点の1つに、退職金の支給時期が後ろ倒しになることが挙げられます。定年が60歳の場合は、その後再任用で働いても働かなくても、60歳の定年退職後に退職手当が支給されていました。

しかし定年が延長されると、退職手当が支給されるのは延長後の定年を迎えた後なので、最大で5年遅れます。

例えば子供の学費や住宅ローンの一括返済費用など、退職手当を受け取ることを見越して計算している場合は、支給時期が当初の見込みとは異なるので、資金計画に問題がないか見直しが必要です。

なお、公務員の退職金については下記記事で詳しく解説しています。

【あわせて読みたい】公務員の退職金はいくら?計算方法や定年延長の影響も解説



65歳まで公務員として働くには

65歳まで公務員として働くには、いくつかのパターンが存在します。


▼定年引き上げ期間中(定年が61歳〜64歳)

  • 定年まで働く→暫定再任用
  • 60歳以降定年前に退職→定年前再任用短時間勤務制度+暫定再任用

▼定年が65歳まで引き上げられた後

  • 定年まで働く
  • 60歳以降定年前に退職→定年前再任用短時間勤務制度


上記の説明に登場する「暫定再任用」「定年前再任用短時間勤務制」について解説します。


暫定再任用とは

暫定再任用制度は、今までの定年後の再任用制度と同様の仕組みです。過去の勤務実績等に基づく選考を経て採用され、1年を超えない範囲内で任期を定めて、フルタイムや短時間で働くことができます。定年の段階的な引き上げ期間中(令和5年度〜13年度)、65歳に到達する年度の末日まで更新が可能です。


具体例として、2024年7月1日に61歳の誕生日を迎える人の場合で説明しましょう。

令和6年(2024年)7月1日 61歳 61歳の誕生日
令和7年(2025年)3月31日 定年退職
令和7年(2025年)4月1日 再任用で勤務開始

(1年ごとに更新)

令和11年(2029年)3月31日 65歳 再任用が終了(最長の場合)


令和7年(2025年)3月31日に定年退職したのち、同年4月1日から暫定再任用で働くという選択肢があります。勤務実績が良好であれば1年を超えない範囲内で任期の更新が可能で、このケースでは最長で令和11年(2029年)3月31日まで働けます。

暫定再任用では、ボーナスにあたる期末・勤勉手当や通勤手当などは支給されますが、扶養手当や住居手当などは支給されません。再任用時は下位のポストになる人がほとんどで、月収は下がります。


定年前再任用短時間勤務制

定年前再任用短時間勤務制とは、60歳を迎える前に一度退職し、短時間のポストで再任用される制度です。勤務時間は週に15時間30分〜31時間の間で柔軟に割り振ります。暫定再任用が定年後の制度であるのに対し、定年前再任用は定年退職日相当日までが任期です。


【画像引用】人事院給与局、内閣官房内閣人事局「国家公務員の60歳以降の働き方について- 情報提供・意思確認制度に基づく情報提供パンフレット - 令和5年6月版」


具体例として、令和6年(2024年)7月1日に61歳の誕生日を迎え、令和7年(2025年)3月31日が定年退職日相当日である人の場合で説明しましょう。

令和6年(2024年)7月1日61歳61歳の誕生日
退職

定年前再任用で勤務開始

令和7年(2025年)3月31日61歳定年退職日相当日

定年前再任用が終了

令和7年(2025年)4月1日61歳再任用で勤務開始

(1年ごとに更新)

令和11年(2029年)3月31日65歳再任用が終了(最長の場合)

令和6年(2024年)7月1日以降に退職したあと、令和7年(2025年)3月31日まで定年前再任用で短時間勤務が可能です。さらに65歳まで暫定再任用で勤務可能なので、最長で令和11年(2029年)3月31日まで働けます。

退職手当は常勤職の退職時点で支給され、当面の間は自己都合ではなく定年退職扱いになります。また、暫定再任用と同様に、ボーナスにあたる期末・勤勉手当や通勤手当などは支給されますが、扶養手当や住居手当などは支給されません。



公務員の定年延長のメリット・デメリット

公務員の定年が延長されることについて、メリットとデメリットをそれぞれみていきましょう。


定年延長のメリット

▼安定して働き続けられる

定年が延長されると、収入は減るものの、60歳以降も基本的に同じ職場・同じポストで働くことが可能で、1年ごとの更新もありません。再任用で働く場合は「働きたい場所にポストがない」「フルタイムを希望しても短時間勤務でしか採用されない」といったケースもあるので、定年延長は安定して働ける期間が長くなる点が魅力と言えるでしょう。

▼基本給減額でも再任用より収入が多い

定年延長で手当の支給が続きます(一部減額あり)。再任用の場合は下位のポストで採用されることがほとんどで、かつ扶養手当など支給されない手当があることを考えると、定年延長で収入面にメリットがあります。

▼生涯賃金が増える

単純に働く期間が長くなることで、給与や退職金が増えて生涯賃金が増えます。また、掛け金を長く払うことで、受け取る年金額も増やせます。


定年延長のデメリット 

▼勤務形態が選択できない

暫定再任用はフルタイムと短時間勤務を選択できるのに対し、定年延長はあくまでフルタイムでの勤務が続くので、勤務時間を柔軟に選択することはできません。短時間勤務を希望する場合は、一度退職して定年前再任用短時間勤務制を選択するケースが多いでしょう。

▼昇進ペースが遅くなる?

若手や中堅職員の昇進ペースが遅くなるのを防ぐために導入された役職定年制では、管理監督職は60歳以降、非管理監督職に降格されます。ただ、本府省の場合は非管理監督職の最上位は6級(課長補佐級)で、再任用の場合に2級や3級(係長、主任級)で採用される割合が7割であることを考えると、定年延長で上のポストで働き続ける人が増えるといえ、昇格ペースが遅れる懸念が残ります。



【Q&A】公務員の働き方やお金に関するよくある質問

最後に、公務員の働き方やお金に関するよくある質問として、退職金・副業・投資の3点を取り上げます。


公務員の退職金は

公務員の退職金は、勤続年数1年から支給されます。

退職金の金額は「基本額(退職日の俸給月額 × 退職理由別・勤続期間別支給割合)+調整額」で計算され、勤続年数が長いほど、そして自己都合よりも定年退職の方が割合が高くなります。

定年退職時の退職金平均額は、国家公務員が2,106万円程度、地方公務員が2,124万円程度です。

【あわせて読みたい】公務員の退職金はいくら?計算方法や定年延長の影響も解説


公務員は副業できる?

公務員の副業は、自治体によっては解禁の動きもありますが、原則禁止されています。「国家公務員法」と「地方公務員法」を根拠に、公務員の副業は「世間の評価」「守秘義務」「職務専念」の観点から規制されています。

単発の講演・執筆活動など、一部副業として認められているものもありますが、継続的に発生する場合は職場への確認が必要です。

【あわせて読みたい】公務員でもできる副業とは?副業解禁の具体例も紹介


公務員が投資で資産形成する方法は?

公務員は副業は禁止ですが、投資で資産形成することは可能です。投資の種類としては、投資信託、株式投資、不動産投資、債権投資、iDeCo(個人型確定拠出年金)などがあります。

得られた利益が大きい場合は確定申告が必要になります。また、勤務時間は投資をしない、インサイダー取引に注意するなど、投資のルールを守ることが重要です。

【あわせて読みたい】公務員は投資で資産形成してOK!投資方法7選



まとめ

この記事では、令和5年度(2023年度)にスタートした公務員の定年延長について、収入がどうなるか、65歳までの働き方の変化などを解説しました。

  • 影響があるのは昭和38年度(1963年度)以降に生まれた人
  • 基本給は7割になるが、退職金は減らない
  • 再任用より安定して働けることなどがメリット

定年延長で60歳以降も安心して働けることで、公務員という仕事がさらに魅力的に映るかもしれませんね。公務員試験の対策は、スマホを使って好きな時間・好きな場所で進められる「スタディング 公務員講座」がおすすめです。講座は無料で体験できるので、ぜひチェックしてみてください。


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