行政書士とは?公務員が優遇される制度とは?
行政書士は、官公署に提出する書類や事実証明・権利義務などに関する書類の作成ができる国家資格です。
こうした書類の作成業務・手続代理業務・書類作成や手続に関する相談業務は、行政書士の独占業務として定められていて、資格を持たない人が行うことはできません。
行政書士は書類を作成する側ですが、公務員は官公署などでその書類を受理する側の仕事です。
そのため行政書士は公務員の仕事と関連性が高く、非常に相性のいい資格だと言えるでしょう。
公務員には「特任制度(優遇措置)」がある
公務員に対し特任制度が設けられている資格はいくつかありますが、中でも行政書士は公務員経験があることで大変有利になります。
というのも、最終学歴が「高校卒業」以上の公務員なら17年の行政事務経験があれば、試験を受けなくても行政書士登録が可能となるからです。
なお、最終学歴が「中学卒業」の場合は「20年」となります。
実際に、公務員を退職したあと行政書士として独立し、事務所を開く方も少なくありません。
公務員が行政書士になるには
上記のような特任制度もありますが、適用を受けるには長期間にわたる勤務経験が必要となります。
公務員として働きながら20〜30代のうちに行政書士の資格を取得したい場合は、一般的な行政書士志望者と同じように行政書士試験を受験することになります。
なお、行政書士資格が付随している資格を取得するという方法もあります。
例えば、弁護士、弁理士、公認会計士、税理士といった資格を取得すると、同時に行政書士の資格も取得が可能です。
ただし、これらの資格はいずれも行政書士試験よりも難易度が高いため、行政書士資格が最終目的であれば現実味は低いでしょう。
公務員が行政書士資格を取得するメリット
将来的に独立する予定がない人も、公務員として働きながら行政書士資格を取得すると次のようなメリットがあります。
▼法律知識が身につくことで公務員としての仕事の質が上がる
行政書士試験に合格するには、憲法や民法、行政法などといった法律の知識を身につける必要があります。
こうした法律の知識があれば、書類や申請を受理する際に書類が正しく作成されているか、法的に問題がないかを確認するのに役立ち、日々の業務の質が向上します。
▼転職や独立など、公務員以外のキャリアの可能性が開ける
行政書士の資格があると、一般企業や行政書士法人などに転職し、公務員以外のキャリアを目指すこともできます。
また、独立して開業をすることも可能となります。将来的なキャリアの可能性を増やしたい人には最適の資格だと言えるでしょう。
公務員が行政書士資格を取得する注意点
行政書士資格の取得に関連して、注意しておきたい点もあります。
▼公務員と行政書士の兼業はできない
公務員には兼業禁止規定があります。
そのため、公務員として働いている間は行政書士登録をしたり、副業として行政書士の仕事を行ったりすることはできません。
公務員を退職したあとに行政書士登録をして、初めて行政書士として働くことができるようになります。
▼行政書士登録には費用がかかる
行政書士として仕事をするには行政書士登録が必要となり、登録料がかかります。加えて、毎年の年会費も必要です。
金額は登録する都道府県行政書士会によって異なりますが、数十万円程度がかかります。
公務員になると優遇される難関資格
ここまでは公務員が行政書士を目指す際の優遇制度やメリットなどについてご紹介してきましたが、行政書士以外にも公務員が優遇される資格は存在します。1つずつ見ていきましょう。
司法書士
▼どんな資格?
司法書士は、くらしの法律家として地域社会に貢献できる法律専門職の国家資格です。
主な仕事は不動産や会社に関する登記手続、成年後見業務、裁判所などへ提出する書類の作成、日常生活における法律相談などがあります。
▼公務員は優遇される?
一部の公務員には、特認制度という試験免除制度が適用されます。
特認制度の対象は、裁判所事務官や裁判所書記官、法務事務官、検察事務官として通算10年以上、登記・供託・訴訟の事務やそれに準ずる法律的事務に従事した公務員です。
また、簡易裁判所判事・副検事として通算5年以上従事した公務員も対象になります。
特認制度の対象者のうち、口述試験などを経て司法書士業務を行うための能力や知識があると認められた人は、試験を受けなくても司法書士の資格を取得できます。
税理士
▼どんな資格?
税理士は、税に関する専門家としてさまざまな税務を行える国家資格です。
税務とは、収入や経費などをもとに個人や企業が納める税額を計算し、申請や手続きをすることです。
税務書類の作成、税務代理、税務相談の3つは、税理士だけが行える独占業務として定められています。
▼公務員は優遇される?
国税専門官などの業務経験がある公務員は、税理士試験で一部の科目が免除されます。
また、税務署の国税業務に23年以上携わった上で指定の研修を修了すれば、全科目が免除される場合もあります。
弁理士
▼どんな資格?
弁理士は、知的財産の専門家として特許出願の書類作成や申請代理を中心に活躍する国家資格です。
知的財産とは、小説や音楽・絵画などの著作物、企業のブランドロゴの商標など、「人間が知的活動によって生み出した、財産的価値を持つアイデアや創作物」です。
こうした知的財産に関する法律に沿って、権利に関するさまざまな手続きを行うのが弁理士の仕事です。
▼公務員は優遇される?
弁理士試験には短答式試験、論文式試験(必須科目、選択科目)があります。
特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事した公務員は、短答式試験の「工業所有権に関する法令」と「工業所有権に関する条約」の試験科目と、論文式試験(必須科目)が免除されます。
社会保険労務士(社労士)
▼どんな資格?
社労士は、企業における人事労務管理をサポートする国家資格です。
どんな小さな会社でも、従業員がいる以上は労働条件、服務規律、社会保険への加入など人事労務に関するルール作りや手続きが発生します。
社労士は、こうした人事・労務管理全般に関する問題点を指摘したり、改善策をアドバイスしたりします。
▼公務員は優遇される?
労働社会保険法令に関する施行事務に従事した期間が通算10年以上の公務員は、一部科目の受験が免除されます。
例えば、労働保険の保険料の徴収等に関する法律の施行事務に10年以上従事した経験がある公務員は、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」の科目免除を受けられます。
中小企業診断士(現在は優遇措置を廃止)
▼どんな資格?
中小企業診断士は、経営コンサルタントとして唯一の国家資格で、日本版のMBA(経営学修士)とも呼ばれています。
企業の経営状況をさまざまな角度から診断し、適切なアドバイスをするのが中小企業診断士の主な仕事です。
▼公務員は優遇される?
中小企業診断士になるには、一次試験と二次試験に合格して実務補習を受講するほか、一次試験に合格したあと中小企業診断士の養成課程を修了するという方法もあります。
かつて公務員は、養成課程を受講する前の一次試験が免除されていましたが、現在この優遇措置は廃止されています。
まとめ
今回は、公務員と行政書士資格の関係性やその他の優遇制度がある資格について解説しました。
- 行政書士は公務員経験が優遇される特任制度がある
- 公務員が行政書士資格を取得すると仕事の質が上がり、キャリアが広がるメリットがある
- 公務員が優遇される資格には、司法書士、税理士、弁理士、社労士もある
公務員が他の資格を取得すると、仕事に役立つだけでなく将来的なキャリアも広がります。
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