「判断推理」はどんな分野?
1.論理パズル問題が多いので、ゲーム感覚でとっつきやすい!
数的推理が数学そのもののような非常にハードルが高い分野だったのと打って変わって、判断推理はとっつきやすい分野です。判断推理から数的処理の勉強を始めた方は、かなりやりやすい科目だと感じるでしょう。こちらはイメージとしては「推理ゲームのような論理パズル問題」です。数学の内容がほとんど出てこないので、文系の受験生であっても取り組みやすい分野ですし、一方で、理系の受験生であっても苦手にする可能性のある分野でもありますね。
ただし、いくらとっつきやすいからといって、解きやすいかどうかはまた別の話だということに注意してください。数的推理はある程度慣れてくれば、点数を安定させやすい分野でした。しかし、判断推理はある程度慣れてきたとしても、点数を安定させるのにはかなり苦戦します。出題のバリエーションが豊富で、さまざまな解法の流れが考えられるのですね。したがって、解法パターンのチョイスを誤ると、なかなか正解にたどり着けない…ということになりかねません。
2.条件を整理するタイプの問題だが、そもそも解き方が決まっていないのが厄介…!
判断推理はいわゆる論理パズルになっていて、「問題文に挙げられた条件を全て満たす事実を、選択肢から探しなさい」という問題です。ですから、判断推理は基本的に解き方が決まっていません。極端なことをいえば、条件の把握さえできれば、頭の中で考えるだけで解ける可能性もゼロではないのです。もちろん、そんな簡単な問題は通常出てきませんし、紙も鉛筆も使わずに解くというのは明らかに無謀な話なのですが…ただ、それくらい「条件の把握が全て」といってよい分野なのですね。
ですから、判断推理の勉強をするにあたっては、条件の把握の仕方を身につける必要があります。数的推理と同様に、これまた典型パターンを押さえていく作業が必要になるわけです。
3.判断推理の代表的な出題テーマを把握しておこう!
では、判断推理にはどんな出題テーマがあるのか、簡単に紹介しておきましょう。以下の分類は私見によるものです。
それなりに細かく分けてみましたが、網羅できていない部分もあります。「その他」という分類があることからも、判断推理の分野にはさまざまなバリエーションの出題があることがわかると思います。数学の知識を使うテーマはほとんどないのですが、唯一、真正面から数学の内容になっているのが「集合・命題」です。高校の数学Ⅰで勉強する内容になりますね。ただ、高校数学の知識がなくても、問題を解くのに必要な知識・ルールさえ押さえればOKですから、数学として取り組む必要はないと思います。
どのテーマも、問題に条件が示されたうえで、それらの条件を全て満たす事実を選択肢から選ぶという出題形式になります。
4.判断推理もそれなりに出題数が多いので、ひととおり勉強する必要あり!
数的処理の中でも数的推理と同様に出題数が多いのが判断推理です。以下は教養択一試験(基礎能力試験)における出題数をまとめたものです。東京都Ⅰ類Bだけは出題数が少ないのですが、それ以外の試験種であれば6問程度は出題されます。それなりに対策をしておくことが必要ですね。
試験種によっては、定番の形が繰り返し出題されていて得点しやすいこともあります。そのような試験種であればなるべく点数を上げたいところですが、何より時間がかかりやすいのが判断推理の特徴です。時間がかかったうえに正解までたどり着けない…ということがあってはいけません。解答時間の短縮も考えたうえで対策する必要があります。
「判断推理」はどうやって対策していくのか?
1.判断推理は「典型の条件のまとめ方」を覚えて使いこなせるようにしよう!
判断推理の勉強の進め方を説明しましょう。判断推理は前述のとおり、原則として解き方が決まっていない分野ではありますが、だからといって一切準備をせずに臨んで点数が伸びるようなものではありません。制限時間内に解けるようにすることを考えると、解き方が決まっていなくても準備は必要です。
それでは対策として何をすべきかというと、やはり「解法パターンの準備」が求められます。判断推理は「条件を整理して、条件を全て満たすものを探す」問題ですから、条件のまとめ方の典型パターンを覚えてほしいのですね。解き方は決まっていなくても、よく出てくる条件のまとめ方は存在します。これはテーマごとにさまざまありますから、これを覚えて使えるようにしてください。
判断推理も他の分野と同様、出題テーマや解法パターンを覚えること、解法パターンを使えるように繰り返し練習していくことが大事です。このあたりの話は「『数的処理』の攻略法」の記事でも説明していますから、そちらも是非確認してください。
2.過去問を使って、実際に「勉強の進め方」を紹介しましょう!
実際に過去問を解きながら、判断推理で注意すべき点を解説していきましょう。数的推理と違って、「明確な根拠があって知識を使う」というよりも、「よく使われるパターンに落とし込んで検討していく」という心構えで検討したほうがよいでしょう。また、判断推理で特有の考え方も存在します。そのあたりの違いにも注意しながら対策していきましょう。例えば、以下の問題を叩き台にしてみます。
2019年度・特別区Ⅰ類 A~Fの6人が、あるレストランでいっしょにランチを食べた。メニューは焼肉定食か煮魚定食で、ライスとスープのお代わりが無料であった。今、次のア~カのことが分かっているとき、確実にいえるのはどれか。ただし、1人で両方の定食を食べた者はいなかった。 ア Aは焼肉定食を食べた。 イ Bはスープのみお代わりした。 ウ CとEは異なった種類の定食を食べた。 エ Eはライスをお代わりしなかった。 オ ライスをお代わりした者は3人、スープをお代わりした者は4人であった。 カ 煮魚定食を食べた者のうち、ライスとスープの両方をお代わりした者は3人であった。 1 Aはライスをお代わりした。 2 Dは焼肉定食を食べた。 3 Fはスープをお代わりしなかった。 4 焼肉定食を食べた者はライスをお代わりしなかった。 5 煮魚定食を食べた者はライスをお代わりした。(正解:4) |
判断推理の問題でも、まず問題文を読んだ際に考えて欲しいことは以下の3点です。
⑴ 本問の出題テーマは何か?⑵ その出題テーマにおける典型の解法パターンは何か?⑶ 典型の解法パターンに乗せて解くことができるか? |
これは数的処理全てにおいて同じことですね。どんな問題も同じ思考過程で解く意識を持つことです。
⑴ 何の出題テーマなのかを判断する
まずは問題文を読んだら、出題テーマを確認しましょう。特に判断推理においては、出題テーマの確認が非常に重要になります。他の分野であれば、出題テーマがわかりにくい問題というのはほとんどありません。テーマの判別に悩む可能性が高いのは、何より判断推理なのです。特に国家公務員試験を中心とした難易度の高い問題になると、複数のテーマにまたがった融合問題が出題されることもあります。テーマが定まらないと、そこから先の「条件のまとめ方」も出てきませんから、正しく判別できるようにしましょう。勉強初期の段階では、まずは基本問題を通じて、出題テーマごとにどのような問題があるのかを必ず確認してください。
本問は、A~Fの6人の「人物の集合」、焼肉定食と煮魚定食の「定食の集合」、さらにライスとスープの「お代わりの集合」の3つの集合が登場します。そして、問題文を読む限り、「誰がどの定食を食べてどれをお代わりしたか」という対応を求める問題になっていることがわかります。この段階で、本問は対応関係の問題、その中でも3集合の対応関係であることを読み取ってください。 |
⑵ 出題テーマに合わせて典型の解法パターンを想起する
次に、出題テーマごとに典型の解法パターンがあるので、これを想起します。判断推理の場合は「典型の条件のまとめ方」ですね。典型のまとめ方を覚えていない状態では、なかなか安定的に解けるようにはなりません。ある程度問題演習を繰り返せば、「この手の問題は、このまとめ方だな」というのがわかってくるようになります。反射的に思い浮かぶようになるくらいまで、勉強を進めてください。
3集合の対応関係の問題であることがわかったので、典型の解法パターンを想起します。教え方によっても異なると思いますが、私であれば、以下のポイントを紹介します。【3集合の対応関係における典型の解法パターン】① 対応関係は「○×対応表」にまとめて整理する。 ② 3集合の場合は、原則として人物を左端(横列)、他の集合を上端(縦列)に設定して、右に伸ばして表を作ると解きやすいことが多い。 ③ 「条件の制約が大きいところ」や「○×の個数や合計」に着目する。このあたりを想起できればよいでしょう。 |
⑶ 典型の解法パターンに乗せて解く
典型の解法パターンを思い浮かべたら、あとは解法パターンを使って問題を解いていきましょう。判断推理は特にこの⑶の重要性が大きいといえます。さまざまな出題形式があるため、解法パターンにあてはめやすい問題もあれば、あてはめにくい問題もあります。解法パターンにあてはめにくく、イマイチしっくりこない場合、もしかするとそもそも⑴の出題テーマの判別を間違えている可能性もあります。その際は再び⑴に戻って考えましょう。
では解法パターンに合わせて解いてみます。以下の流れで検討していけばよいでしょう。簡潔に解説しますので、まだ勉強が進んでいない方は、以下の内容は気にしなくて構いません。大事なのは、解法パターンに乗せる意識と、それが実際に使えるという意識を明確に持つことです。 【STEP1 ○×対応表を作成する】…解法パターン①②対応関係の問題ですから、まずは対応表を作りましょう。 以下のように、左側の横列にA~Fの人物を設定して、上端の縦列に定食とお代わりを設定しましょう。 これが書けたら、問題文の条件にしたがって○×を埋めていきます。 条件アによれば、「Aは焼肉定食を食べた」ので、Aの焼肉が○です。問題文冒頭より「1人で両方の定食を食べた者はいなかった」ので、Aの煮魚は×になります。 条件イによれば、「Bはスープのみお代わりした」ので、Bのスープが○、ライスが×です。 条件ウによれば、「CとEは異なった種類の定食を食べた」とあります。○×をすぐに埋めることはできませんが、CとEは定食の○×が逆に入ることはわかるので、表のそばにメモ書きをしておくとよいでしょう。以下のようにメモを入れておきます。 条件エによれば、「Eはライスをお代わりしなかった」ので、Eのライスが×です。スープをお代わりしたかどうかは不明ですから、スープのほうには○×を埋めないようにしましょう。 条件オによれば、「ライスをお代わりした者は3人、スープをお代わりした者は4人であった」とあるので、表のそばに数値を書いておきましょう。ライスは○が3個、スープは○が4個入るので、それぞれの縦列の下に「3」「4」と書いておきます。ひとまず、すぐに書き込みができそうなのはここまででしょうか。 【STEP2 条件からさらに埋められるところを探す】…解法パターン③ 問題は条件カですね。「煮魚定食を食べた者のうち、ライスとスープの両方をお代わりした者は3人であった」とあります。一見すると○×が特定できないような気がしますが、条件と数値をふまえて考えてみましょう。 ライスをお代わりできる可能性があるのは、まだライスに×が入っていないA、C、D、Fのいずれかです。また、Aだけは煮魚が×なので、Aだけは煮魚定食を食べていません。ということは、「煮魚定食を食べた者のうち、ライスとスープの両方をお代わりした者」に該当する可能性があるのは誰でしょうか。 煮魚定食を食べた者でライスがお代わりできる可能性があるのは、そもそもC、D、Fの3人しかあり得ないことになります。ですから、C、D、Fは煮魚が○、焼肉が×で、この3人がライスとスープの両方をお代わりするので、ライスもスープも○になります。あとは、ライスをお代わりした3人、スープをお代わりした4人がこれで確定しましたので、残りに×を入れます。また、CとEは異なる定食ですから、Eは焼肉が○で煮魚が×になります。【STEP3 選択肢から「確実にいえるもの」を探す】これで完成となります。おそらく「Bの定食はどうなったの?」と思われる方もいるでしょう。本問の条件だけでは、Bの定食は特定しません。しかし、確実にいえる選択肢を1個に絞れるのであれば、それで構わないのです。ここまで検討してきた目的は、表を完成させることではなく、正解の選択肢を1個選ぶことだからです。判断推理においては、常に選択肢を意識しながら検討するのが鉄則であることを押さえてくださいね。では、選択肢を確認してみましょう。1~5を確認すると、以下のようになります。 1 Aはライスをお代わりした。…×Aはライスが×ですから、選択肢1は明らかに誤りです。 2 Dは焼肉定食を食べた。…×Dは焼肉が×ですから、選択肢2は明らかに誤りです。 3 Fはスープをお代わりしなかった。…×Fはスープが○ですから、選択肢3は明らかに誤りです。 4 焼肉定食を食べた者はライスをお代わりしなかった。…○AとEは焼肉が○で、ライスは×です。また、Bは焼肉が○かどうかは不明ですが、仮に○だったとしてもライスは×です。ということは、焼肉が○の者は、必ずライスが×になります。選択肢4は確実にいえますから、正解は4です。 5 煮魚定食を食べた者はライスをお代わりした。…×C、D、Fは煮魚が○で、ライスは○です。この点では選択肢5は確実にいえそうに見えます。しかし、Bは煮魚が○かどうか不明ですから、仮に○だったとすると、煮魚が○なのにライスが×になってしまいます。ということは、煮魚定食を食べた者がライスもお代わりしたかどうかは、確実にはいえないことになります。したがって、選択肢5は確実にはいえません。 |
初めて判断推理の問題に触れた方は、「条件カで絞り込めることに気づくのは難しいのでは…」と思ったかもしれません。ただ、結局は慣れの問題になると思います。このような問題に多く触れていけば、似たような条件設定で絞り込める問題を多く目にすることになります。まずは典型の条件のまとめ方や、着目すべきポイントを身につけて、自力で使えるようになることを目標にしてください。
今回と似たような流れで解ける問題は、やはりいろんな本試験で出題されています。やや難易度の高い問題ですが、2つほど紹介しましょう。是非同じような流れで考えてみてください。
2014年度・裁判所一般職(大卒)A~Dの4人の大学生がいる。4人はP大生、Q大生、R大生、S大生(順不同)である。この4人にトランプを3枚ずつ配ったところ、それぞれ3種類のスート(マーク)のカードであった。また、人によってスートのパターンは異なっていた。次のア~オのことが分かっているとき、確実に言えるものはどれか。 ア CはS大生ではなく、スペードのカードを持っている。 イ P大生はダイヤとクラブのカードを持っている。 ウ Q大生はダイヤとクラブのカードの両方は持っていない。 エ AはP大生でもS大生でもない。 オ BとS大生の2人はスペードとダイヤのカードを持っている。 1 AはQ大生で、スペード、ハート、クラブのカードを持っている。 2 BはP大生で、スペード、ダイヤ、クラブのカードを持っている。 3 CはR大生で、スペード、ハート、クラブのカードを持っている。 4 DはS大生で、ハート、ダイヤ、クラブのカードを持っている。 5 AはR大生で、スペード、ダイヤ、クラブのカードを持っている。 (正解:2) |
2021年度・国家一般職(大卒)A~Eの5人は、放課後にそれぞれ習い事をしている。5人は、生け花教室、茶道教室、書道教室、そろばん教室、バレエ教室、ピアノ教室の六つの習い事のうち、Eは二つ、それ以外の人は三つの教室に通っている。次のことが分かっているとき、確実にいえることとして最も妥当なのはどれか。 ○ 生け花教室に通っているのは4人、茶道教室は3人、書道教室は1人である。 ○ AとCが共に通っている教室はない。 ○ BとDが共に通っている教室は一つ、AとBが共に通っている教室は二つである。 ○ BとEが共に通っている教室は一つ、AとEが共に通っている教室は二つである。 ○ Cは、バレエ教室には通っていない。 ○ Dは、そろばん教室に通っているが、ピアノ教室には通っていない。 1.Aは、生け花教室とそろばん教室に通っている。 2.Bは、茶道教室と書道教室に通っている。 3.Cは、そろばん教室とピアノ教室に通っている。 4.Dは、茶道教室とバレエ教室に通っている。 5.Eは、生け花教室とバレエ教室に通っている。 (正解:3) |
出題テーマでいうと、裁判所の問題は3集合対応、国家一般職の問題は2集合対応です。どちらも検討の流れは同様で、○×対応表を作ったうえで、条件の制約が大きいところや数値に着目する点がポイントになっています。聞き方としてはさまざまなバリエーションがあるのですが、やはり条件のまとめ方の典型を覚えて使いこなすことで、類題に対応できるようになります。
「判断推理」も、典型の「まとめ方」のストックを増やして練習!
判断推理も、基本的な思考回路の流れは他の分野と同様です。「出題テーマの判別→典型の解法パターンの想起→解法パターンに乗せる」という流れを繰り返して、ストックしていくことが有効です。ただ、数的推理と異なり、判断推理の場合は解法にさまざまな流れが考えられます。きっちりとした「解法パターン」というよりも、「条件のまとめ方のパターン」くらいに思っておいたほうがよいでしょう。臨機応変に対応しなければならない部分が多くなります。
判断推理はやや安定感に欠ける分野ではあるのですが、推理ゲームのようにとっつきやすい要素が多いので、取り組むにあたって心理的なハードルは下がると思います。問題演習を繰り返して出題形式に慣れていきましょう!