国家公務員の志望度が高いという受験生の方に向けて、国家公務員試験の概要を紹介しましょう。国家公務員の職種にもさまざまありますから、まずは目指す試験を確認したうえで、試験の概要を掴んでおきましょう。
国家公務員の種類
国家公務員とは、国家機関で働く公務員のことをいいます。さまざまな職種がありますが、三権分立の行政府、司法府、立法府それぞれに携わる国家公務員が存在します。代表例を挙げると以下のとおりですね。
行政府に携わる職員の代表格が省庁職員です。総合職と一般職に分かれており、総合職はいわゆる「キャリア官僚」と呼ばれます。一般職はブロックごとの採用になっており、出先機関での仕事なども選ぶことができます。その他、「専門職」と呼ばれる人たちもいます。
司法府に携わる職員の代表格が裁判所事務官です。こちらも総合職と一般職に分かれており、裁判運営に関わることになります。その他、家庭裁判所調査官として、少年事件に携わって社会復帰に向けた調査を行う仕事もあります。
立法府に携わる職員の代表格が衆議院・参議院事務局職員です。こちらも総合職と一般職に分かれ、立法活動の補佐を行う職員です。その他、国会図書館職員として資料整理や国会議員の立法活動をサポートして調査業務に携わる仕事などもあります。
POINT 採用人数が極端に少ない職種もあるので注意!
職種によって選考試験は異なりますが、採用人数に大きな差がありますので、その点も注意してください。例えば、行政府の職員は全国で採用しているものが多く、採用人数も多くなります。一方で立法府の職員は、国会議事堂など原則として東京のみでの採用となり、採用人数もかなり少なくなります。
なお、公務員の職種(種類)全般については、別の記事で詳しく紹介しています。国家公務員の特徴、地方公務員との違いなども説明していますので、そちらも是非参考にしてください!
国家公務員試験の概要(大卒・一般枠)
では、国家公務員試験の概要を紹介しましょう。国家公務員といってもそれぞれ選考が異なります。ここでは受験者の多い代表的な試験種である「大卒・一般枠」の中から、①国家総合職(大卒・春試験)、②国家一般職(大卒)、③国税専門官(大卒)、④裁判所一般職(大卒)の4つを説明していきます。
1.国家総合職(大卒・春試験)
⑴ 受験資格
原則として年齢要件のみです。2022年度の試験であれば「1992(平成4)年4月2日~2001(平成13)年4月1日生まれの者」となっています。試験の実施される年の4月1日に「21~30歳」と把握しておくとよいでしょう。
⑵ 試験日程
2022年度の試験日程は以下のとおりでした。
例年であれば、試験日程はほぼ変動しません。例えば、1次試験は例年4月第4日曜日に実施されています。しかし、2023年度は4月9日(日)、2024年度以降は3月中旬に前倒しで実施することがすでに発表されています。
参考:人事院(2023年以降の国家公務員総合職試験(春)の日程)
参考:JIJI.COM
参考:ReseMom
2023年度は例年よりも2週間程度前倒しになっていますので、これに合わせて他の試験種の試験日程も影響を受ける可能性があります。くれぐれも注意しておきましょう。
POINT 近年は選考日程を早める試験が増加傾向!
公務員試験は民間就活と比べると、遅い選考日程になっています。そのため、優秀な人材が早い時期に民間に流れてしまうこともふまえてか、公務員試験日程を早める試験種が増える傾向にあります。特に地方公務員試験では早期選考の日程を4月に設定するなどの自治体が多くなってきました。志望度の高い試験種については、くれぐれも情報収集を怠らないようにしましょう。
⑶ 1次試験の概要
1次試験は択一試験のみ、基礎能力試験と専門択一試験が実施されます。出題される科目は以下のとおりです。過去の出題例を挙げており、専門択一科目については法律区分を例に挙げています。
ちなみに、国家総合職(大卒・春試験)は、文系の区分であれば「法律区分」「経済区分」「政治・国際区分」の3つがあり、それぞれ採用する省庁や出題される科目が異なります。このあたりも事前に確認しておきましょう。
⑷ 2次試験の概要
2次試験は専門記述試験、政策論文試験、人物試験(個別面接)が実施されます。出題される科目は以下のとおりです。専門記述試験の科目については法律区分を例に挙げています。
⑸ 官庁訪問
国家総合職の試験では、最終合格のみならず、官庁訪問によって各省庁から内々定を得る必要があります。「官庁訪問開始日を含めた最初の3日間(第1クール)で異なる省庁を1日1つずつ訪問する」など、国家総合職では訪問のルールが細かく決まっています。選考の流れについては、事前に確認しておくとよいでしょう。
参考:人事院 採用情報
2.国家一般職(大卒)
⑴ 受験資格
原則として年齢要件のみです。2022年度の試験であれば「1992(平成4)年4月2日~2001(平成13)年4月1日生まれの者」となっています。試験の実施される年の4月1日に「21~30歳」と把握しておくとよいでしょう。
⑵ 試験日程
2022年度の試験日程は以下のとおりでした。
例年であれば、試験日程はほぼ変動しません。例えば、1次試験は例年6月第2日曜日に実施されています。しかし、前述のとおり、国家総合職は2023年度の試験日程を2週間前倒しすることが発表されています。試験日程に変更が生じる可能性がありますので、くれぐれも注意しましょう。
POINT 国家一般職は官庁訪問が1次試験合格発表後に実施される!
国家一般職の選考過程の大きな特徴は、官庁訪問が最終合格発表前に実施されるという点です。つまり、最終合格できるかどうかわからないまま、官庁訪問に行って省庁・機関から内々定をもらう必要があるということです。内々定をもらったとしても、最終合格できなければ採用されませんから、官庁訪問も2次試験も全力で挑む必要があります。なお、原則として2次試験実施期間中は、官庁訪問は休止期間となります。2次試験と官庁訪問がバッティングすることはありません。
⑶ 1次試験の概要
1次試験は択一試験のみ、基礎能力試験と専門試験、一般論文試験が実施されます。出題される科目は以下のとおりです。過去の出題例を挙げており、専門択一科目については行政区分を例に挙げています。なお、理系の区分では専門記述試験も課されますので注意してください。
⑷ 官庁訪問
国家一般職の試験では、最終合格のみならず、官庁訪問によって各省庁から内々定を得る必要があります。前述した国家総合職と異なり、官庁訪問の実施時期は1次試験合格発表の直後になります。また、官庁訪問のルールは国家総合職より緩く、省庁によって訪問回数や訪問のタイミングなども変わりますので、臨機応変に対応できるようにしましょう。
参考:人事院 採用情報
⑸ 2次試験の概要
2次試験は人物試験(個別面接)が実施されます。官庁訪問期間中に実施されますが、前述のとおり、2次試験を実施している期間は官庁訪問が休止となります。
国家総合職と同じく、ここで最終合格できないと、官庁訪問で内々定を得られたとしても努力が水の泡になってしまいます。油断せずに臨みましょう。
3.国税専門官(大卒)
⑴ 受験資格
原則として年齢要件のみです。2022年度の試験であれば「1992(平成4)年4月2日~2001(平成13)年4月1日生まれの者」となっています。試験の実施される年の4月1日に「21~30歳」と把握しておくとよいでしょう。
⑵ 試験日程
2022年度の試験日程は以下のとおりでした。
例年であれば、試験日程はほぼ変動しません。例えば、1次試験は例年6月第1日曜日に実施されています(財務専門官や労働基準監督官など、他の国家専門職試験と同一日程です)。しかし、前述のとおり、国家総合職は2023年度の試験日程を2週間前倒しすることが発表されています。試験日程に変更が生じる可能性がありますので、くれぐれも注意しましょう。
POINT 国税専門官は最終合格後の採用面談で内定が出る!
国税専門官の選考は一般的な公務員試験と同様に、最終合格後の採用面談において内定が出されることになります。受験生によっては、最終合格発表の前に電話連絡があり、「是非採用面談に来て欲しい」などとアプローチがかけられることもあるようです。
ただし、採用面談の場で、他に第1志望があることなど志望度が低いことが伝わると、内定保留になったり、採用漏れになったりするケースがあります。受け答えに注意が必要ですね…
⑶ 1次試験の概要
1次試験は基礎能力試験と専門択一試験、専門記述試験が実施されます。出題される科目は以下のとおりです。過去の出題例を挙げています。
⑷ 2次試験の概要
2次試験は人物試験(個別面接)が実施されます。国税専門官は特にストレス耐性などが要求される職種ですから、しっかり自己アピールができるように準備する必要があります。
4.裁判所一般職(大卒)
⑴ 受験資格
原則として年齢要件のみです。2022年度の試験であれば「平成4年4月2日から平成13年4月1日までに生まれた者」となっています。試験の実施される年の4月1日に「21~30歳」と把握しておくとよいでしょう。
⑵ 試験日程
2022年度の試験日程は以下のとおりでした。
例年であれば、試験日程はほぼ変動しません。例えば、1次試験は例年5月第2日曜日の前日の土曜日に実施されています。しかし、前述のとおり、国家総合職は2023年度の試験日程を2週間前倒しすることが発表されています。試験日程に変更が生じる可能性がありますので、くれぐれも注意しましょう。
POINT 裁判所一般職は最終合格後の採用面談が遅くなることがある!
裁判所一般職も他の公務員試験と同様に、最終合格後の採用面談において内定が出されることになります。ただし、最終合格の席次が上位の受験生から順に採用面談を行い、その後に配属される都道府県や裁判所などが決まります。席次が下位の受験生は、採用面談の連絡自体が遅くなり、年によっては採用漏れが出ることもあります。希望の場所で配属されるためにも、なるべく最終合格の順位を上げることを考えましょう。
⑶ 1次試験の概要
1次試験は基礎能力試験と専門択一試験、論文試験、専門記述試験が実施されます。論文以外の試験で出題される科目は以下のとおりです。過去の出題例を挙げています。
専門科目の出題がかなり限定されているので、専門科目の対策は比較的しやすいといえるでしょう。
⑷ 2次試験の概要
2次試験は人物試験(個別面接)が実施されます。裁判所の面接は時間が長いことが多く、受験生によっては40分以上かかることもあります。人物試験の配点割合も高いので、人物試験に重きを置いた試験ということができます。
国家公務員試験の概要(その他)
上記では「大卒・一般枠」を紹介してきました。しかし、国家公務員試験は大卒区分しかないわけではありません。高卒区分、院卒区分、経験者区分なども存在します。簡単に紹介しましょう。興味のある試験種があれば、ぜひ採用ホームページをチェックしてみてください。
1.高卒区分
高卒区分の試験も、あくまで高卒「レベル」の試験という意味であって、年齢要件さえ満たしていれば受験することが可能です。ただし、高卒区分の場合は年齢制限が厳しく、大学を卒業すると必然的に受験できなくなることが大半です。例えば、2022年度の国家一般職(高卒者)試験であれば「2022(令和4)年4月1日において高等学校又は中等教育学校を卒業した日の翌日から起算して2年を経過していない者」という要件になっています。
高卒区分の試験としては、国家一般職(高卒)、皇宮護衛官(高卒)、刑務官、入国警備官、税務職員、海上保安大学校学生などの採用試験があります。なお、国家一般職(高卒)は理系の受験生に向けた技術職もあり、「技術」「農業土木」「林業」などの区分があります。
2.院卒区分
院卒区分の試験は、学歴要件として院卒であることが要求されるのが通常です。例えば、2022年度の国家総合職(院卒者)試験であれば「1992(平成4)年4月2日以降生まれの者で次に掲げるもの」として、「1 大学院修士課程又は専門職大学院の課程を修了した者及び2023(令和5)年3月までに大学院修士課程又は専門職大学院の課程を修了する見込みの者」「2 人事院が1に掲げる者と同等の資格があると認める者」という要件が設定されています。
院卒区分の試験としては国家総合職(院卒)や国家総合職(院卒・法務区分)の採用試験があります。法務区分は司法試験合格者を対象にした試験です。
3.経験者区分
経験者区分の試験は、職務経験が要件として設定されることになります。経験年数については、試験種によって異なりますから、必ず事前に確認したうえで試験を目指すようにしてください。例えば、2022年度の国家公務員経験者採用試験(係長級(事務))であれば「2022(令和4)年4月1日において、大学等(短期大学を除く。)を卒業した日又は大学院の課程等を修了した日のうち最も古い日から起算して2年を経過した者」で、さらに「大学卒業後、民間企業、官公庁、国際機関等において、正社員・正職員として従事した職務経験が2022(令和4)年7月1日現在で通算2年以上となる者であって、これらの職務経験を通じて体得した効率的かつ機動的な業務遂行の手法その他の知識及び能力を有するもの」となっています。1次試験日には職歴書の提出も要求されています。
経験者区分の試験としては、国家公務員経験者採用試験(係長級(事務))、総務省経験者採用試験(係長級(技術))、外務省経験者採用試験(書記官級)、国税庁経験者採用試験(国税調査官級)などがあります。省庁ごとに試験を実施しているケースが多いですね。それぞれについて専門知識を持っていることが要求されます。
国家公務員を目指すなら、専門科目まで学習しよう!
国家公務員試験の代表例を紹介してきました。国家公務員の志望度が高い受験生は、少なくとも大卒程度の一般枠を受験するのであれば、専門科目の学習が事実上必須になっています。筆記対策にしっかり時間を割けるようにしてください。
また、多くの国家公務員試験では、基礎能力試験よりも専門択一試験のほうが配点割合を高く設定しているため、専門択一である程度の「逃げ切り」ができる試験になっているといえます。「人物試験に自信がない…」という方も、筆記試験でそれなりに得点できれば、最終合格をしやすい試験といえるでしょう。
なお、国家一般職については、専門試験が課されない国家総合職の「教養区分」のような試験種の新設も検討されています。
特に国家公務員試験は大きく改革が進むことが見込まれます。今後の情報にも注意しましょう。
なお、スタディングでは公務員の職種や試験の全体像について説明したガイダンスも配信しています。こちらも是非ご覧ください!