| 公務員は労働基準法の対象外!
国家公務員法付則16条では「労働組合法、労働関係調整法、労働基準法、船員法、最低賃金法、じん肺法、労働安全衛生法および船員災害防止活動の促進に関する法律ならびにこれらの法律に基づいて発せられる命令は、第二条の一般職に属する職員には、これを適用しない」と定めており、国家公務員が労働関連法の適用対象外となる法的根拠となっています。また、労働契約法22条1項でも、「この法律は、国家公務員および地方公務員については、適用しない」と規定しており、すべての公務員職員は同法の保護を受けることができません。
一般的な労働法について
労働者が不当な立場に立たされ、その権利が侵害されないよう国はさまざまな法律を規定して労働者の保護に努めています。
日本国憲法第28条では、労働者の基本的権利である「労働三権」が規定されております。しかし、公務員は公共性が高い職業であることから一定の制約が設けられています。
◉労働三権
団結権 ・・労働組合を作る権利
団体交渉権・・労働者が使用者と賃金や労働時間などの交渉をできる権利
団体行動権・・ストライキができる権利
<公務員の労働基本権>
区分 |
団結権 |
団体交渉権 |
団体行動権 |
|
国家公務員 |
国家公務員・非現業職 |
○ |
△ |
× |
国家公務員・現業職 自衛隊・ |
× |
× |
× |
|
地方公務員 |
地方公務員・非現業職 |
○ |
△ |
× |
地方公務員・現業職 警察・消防士など |
× |
× |
× |
公務員の団結権については、職員団体制度が認められています。(ただし、警察職員、消防職員は団結が禁止されている(地公法52⑤)
団体交渉権については、当局と交渉する権利はありますが、原則として団体協約を締結する権利がありません。
団体行動権(ストライキなど)は認められていません。
労働に関する法律はたくさんありますが、中でも代表的な法律を「労働三法」と呼んでいます。
・労働基準法
「労働基準法」は賃金や就業時間、解雇の条件など最低基準を定めた法律です。雇用主は、労働基準法にのっとり、就業規則を定める必要があります。同法を守らない労働契約は無効扱いとなり、場合によっては企業に罰則が科せられます。
・労働組合法
「労働組合法」は、労働者が雇用主と対等な立場で交渉できるようにすることを目的に、労働組合の設立や労働争議の条件に関して定められた法律です。労働者には組合を設立して賃金交渉する権利があり、企業による妨害は認められません。
ちなみに、公務員の労働争議は認められませんが、労働組合を立ち上げる権利は有します。代表的な例が、地方自治体職員を主体に結成される自治労です。
・労働関係調整法
「労働関係調整法」は、労働争議を予防または解決するための法律です。「あっせん」「調停」「仲裁」などの解決手段のための手続きは、行政機関である労働委員会が行い、調整役を務めます。
| 公務員の労働を規定する法律は?
労働関連法の適用外である公務員の働く権利は、どのようにして守られているのでしょうか? それを定めた法律が、国家公務員法ならびに地方公務員法です。
国家公務員法
国家公務員の採用試験や任免、給与、服務規程、退職、懲戒に関する規定を盛り込んだのが、国家公務員法です。かりに職員が俸給や給料、勤務条件などに不服がある場合、人事院もしくは内閣総理大臣などの名のもとに、適当な行政上の措置の実施を人事院に対して要求できるとしています(国家公務員法第86条「勤務条件に関する行政措置の要求」)。
また、このほかにも国家公務員の待遇や休業に関する法律・ルールとして、「国家公務員の育児休業等に関する法律」「国家公務員の留学費用の償還に関する法律」あるいは人事院規則などがあります。
地方公務員法
地方公務員の給与や勤務条件に関することは、地方公務員法第3章「職員に適用される基準」で定められています。そのなかの第4節「給与、勤務時間その他の勤務条件」の第24条6項で「職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める」としています。県庁や市役所などで働く職員の待遇面については、各地方自治体の条例、あるいは人事委員会で定められるのが決まりです。
| 公務員の懲戒処分規定はどうなっている?
公務員が不祥事を起こした場合の懲戒処分は、これも国家公務員法ならびに地方公務員法などにのっとり行われます。公務員の懲戒処分には、次の5つのパターンがあります。
- 免職・・・公務員の身分を失わせるもの。退職金や年金も減額または支給停止となります。
- 降任・・・今の職位をはく奪し、階級を下げる
- 停職・・・公務員という身分はそのままで、職務を与えない
- 減給・・・一定期間、給与を減額すること
- 戒告・・・行為の戒めを求めること
懲戒処分の事由は3つあり、地方公務員法第29条で定められています。その3つとは、「法律や条例に違反した場合」「職務法の義務に違反または職務を怠った場合」「全体の奉仕者たつにふさわしくない非行のあった場合」です。
公務員は一般的な労働法の対象外であるものの、労働規則に関しては国家公務員法や地方公務員法などの法律によって細かく規定されます。
(出典・参考:リンク)
人事院:おしえて!人事院(https://www.jinji.go.jp/oshiete/oshiete.html#Q13)
総務省:公務員の労働基本権(http://www.soumu.go.jp/main_content/000035137.pdf)
e-Gov:国家公務員法(https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000120)
e-Gov:地方公務員法(https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000261)