公務員のデメリットとは?
安定して長く働ける、というイメージの強い公務員ですが、当然デメリットもあります。良いイメージだけで志望先を選ぶと、入った後に苦労することになります。
公務員のデメリットとして、次のような点が挙げられます。
- 仕事の成果が給料に反映されにくい
- 民間よりもリモートワークが進んでいない
- 副業は原則禁止されている
- 法律や前例に沿うことが求められ、窮屈に感じられることもある
- 時には住民のクレームに対応する必要がある
1つずつ見ていきましょう。
仕事の成果が給料に反映されにくい
公務員の給料は、法律や条例でそれぞれ定められていて、職務レベルや習熟度に応じて給料の支給額が定められている俸給表や給料表が適用されます。
年功序列がまだ色濃く残っており、長く勤めれば安定して昇給が望めるのがメリットです。
一方、若い時に大きな成果を上げたとしてもどんどん級が上がっていくという状態にはなっておらず、給料に反映されにくい状態です。
よって特に若い世代にとっては、民間と比較して成果が給料に結びつきにくい=結果を出しても報われないことが仕事のやる気を削ぐ原因の1つになるといえます。
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民間よりもリモートワークが進んでいない
新型コロナウイルスの感染が広がった影響で、民間企業では感染防止策の1つとしてリモートワークが普及しました。
一方、総務省が発表した自治体のリモートワークの取り組み状況の調査結果によると、令和5年(2023年)現在、地方自治体の約4割でリモートワークが未導入でした。
都道府県と政令指定都市は全自治体で導入済みですが、市区町村では未導入の自治体がまだまだ残っています。
未導入の理由としては、対面が必須である窓口業務が多いこと、情報セキュリティーに関する不安、電子決裁への未対応などが上位です。
スモールスタートで少しずつ導入している自治体もありますが、民間には後れをとっています。
副業は原則禁止されている
公務員の副業は原則禁止されています。
これは、公務員には国や国民、自治体の住民のために働く奉仕者としての使命があるためで、営利目的で勤めたり、企業を経営することが法律で禁止されているためです。
最近では地元の特産物の収穫の手伝いなど、人手不足解消・地域活性化などの目的で副業を認める自治体も出てきていますが、認められていない副業を行うと懲戒処分を受けることに変わりはありません。
公務員でも問題なくできる副業は、家賃収入を得るための不動産投資、株式などの投資、講演や執筆活動、家業の手伝い(無報酬の場合)などに限られます。
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法律や前例に沿うことが求められ、窮屈に感じられることもある
公務員の仕事は、法律や前例に沿うことが求められます。
行政サービスはすべての国民・住民が平等に受けられるべきもので、人によって対応が異なるものであってはいけません。
そのため、公務員の仕事は中立かつ公平であることがとても重要で、人によって差が出ることがないように、どのような業務も基本的には法律や前例に従った対応が求められます。
きっちり決まっているということは、裏を返せば仕事に裁量がないということでもあります。
それぞれの事情を考慮して柔軟なサービスを行いたい人や効率化を追求したい人にとっては、仕事が窮屈に感じられるのがデメリットです。
時には住民のクレームに対応する必要がある
公務員は、部署によっては住民のクレームに対応する必要があり、職員が疲弊する原因になっています。
公務員は国民・住民のためにさまざまな仕事を行いますが、行政サービスは「あって当たり前」と思われるせいか、不満をぶつけられやすい面があります。
特に市役所の窓口など、毎日多くの住民と接する機会がある部署では、自然とクレームを受ける確率も高まります。
先ほどの項目にあった「人によって差が出ないように公平に」という公務員が心掛けている対応が、時に「柔軟性がない、融通がきかない」と不満の原因になってしまう場合もあるでしょう。
【あわせて読みたい】なぜ公務員は「つまらない」のか?やりがい・メリットを解説
女性公務員のデメリットとは?
ここからは公務員のうち、特に女性公務員が働くうえでのデメリットについて取り上げます。
働く場所を探す際、安定して働ける制度が整っているか、負担が重すぎないかなどは男女関係なく重要な項目ですが、特に妊娠・出産を含めた女性特有のライフイベントを考えると、長く働きたい女性にとっては気になるところです。
公務員はその点恵まれていると言えますが、デメリットがないわけではありません。
公務員は女性が働きやすい仕事
デメリットの解説の前に、「公務員は女性が働きやすい仕事である」という大前提をお伝えしておきましょう。
公務員自体、安定して働ける環境が整っていますが、女性が働くという視点で見ると次のような点がメリットです。
- 民間企業に比べて賃金の男女差が大きくない
- 国家公務員、地方公務員ともに女性比率向上の目標が掲げられている
- 長く働けるよう、子育てや介護など家庭との両立を支援する制度が充実している
そのうえで、しいて言えば次のようなデメリットもあります。
- 残業・休日出勤もある
- リモートワーク未導入の自治体も多い
- 災害対応などで突発的に忙しくなる可能性がある
1つずつ見ていきましょう。
残業・休日出勤もある
デメリットの1つめは、部署によっては残業や休日出勤が発生することです。
例えば、税関係の部署の確定申告の時期、保育関係の部署の新年度保育園入園申し込み時期など、繁忙期がある部署は、特定の時期に仕事量が増加して残業が避けられません。
また、マラソン大会やお祭りなど土日に行われる自治体主催のイベント等にかかわる部署では、休日出勤が発生しやすいでしょう。
短時間勤務制度や超過勤務の制限などの制度を利用している人もいますが、繁忙期に周りに業務のしわ寄せがいってしまうことに悩む人もいるようです。
リモートワーク未導入の自治体も多い
デメリットの2つ目は、前述のとおりリモートワーク未導入の自治体もまだまだ多いことです。
リモートワークでの在宅勤務は、育児・介護を抱える女性にとっては通勤時間が必要なくなることが大きなメリットであり、相性が良い働き方と言えます。
民間ではフルリモート、月1・週1出社という在宅中心の働き方の採用も増えています。
しかし前述のとおり、全国の自治体ではリモートワークの導入が進んでいないところも多く、リモートワーク自体は導入済みの自治体であっても、窓口業務・相談業務などではリモートワークを活用できないのが現状です。
よって担当部署・業務によってはリモートワークが一切できないパターンもあります。
災害対応などで突発的に忙しくなる可能性がある
大型台風、集中豪雨、地震などの災害が発生した時は、その対応のため突発的に忙しくなる可能性が高いです。
大きな災害が起きた場合、その規模に応じて召集がかかりますが、発生のタイミングによっては夜間や休日の召集になる場合も。
災害発生直後は、被害状況の確認、避難所の開設・運営、食料をはじめとした支援物資の受け入れなどの対応で多忙を極めるでしょう。
その後も通常業務をこなしながらの復旧対応、担当業務を超えた他部署の応援など、残業や休日出勤が続きます。
なお、女性にとって公務員が働きやすい理由や、女性におすすめの仕事については、こちらの記事で解説しています。
【あわせて読みたい】女性におすすめの公務員の種類は?なぜ女性が働きやすい?
公務員のメリットは?
この記事では公務員のデメリットをいくつも述べましたが、公務員にはメリットがたくさんあります。
例えば、民間企業の平均よりも年間休日日数が多い、福利厚生が充実している、給料が安定しているので生活設計がしやすい、といった点です。
また、ここまでに言及したデメリットは、別の視点から見るとメリットになる要素も持ち合わせています。
- 大きな成果を出しても給料に反映されにくい→きっちりと給料の体系が決まっているので、安定して昇給していく
- 法律や前例に沿う対応が求められ、大きな裁量がない→仕事の進め方のルールが決まっていて分かりやすい
- 窓口対応の部署などは、住民との距離が近い分クレームを受ける場合がある→感謝の言葉も直接届くので人の役に立つ実感が得られる
何より、公務員には公務員ならではのやりがいがあります。
職種によっては、予算や規模が非常に大きなプロジェクトに携わる機会があり、国や自治体を動かす大きな仕事ができます。
また、民間企業と違って利益の追求にとらわれずに仕事ができるため、災害復興や福祉関係などの社会課題の解決に向けて働けるのも、公務員ならではです。
公務員のメリットややりがいについては、こちらの記事で解説しています。
【あわせて読みたい】なぜ公務員は「つまらない」のか?やりがい・メリットを解説
【Q&A】公務員志望者からよくある質問
最後に、公務員志望者からよくある質問を3つ取り上げます。
公務員の「楽じゃない部署」とは?
「公務員は楽だ」とよく言われます。
ノルマなどがない・休みやすい・安定して昇給がある・倒産やリストラのリスクが低い、などの要因から、楽だというイメージをもたれやすいようです。
しかし、当然ながらそれはイメージの話であり実態は異なります。
どの自治体でも比較的忙しい傾向にあるのが、企画課(政策企画課)、財政課、保険・福祉関係の課、税関係の課などです。
対人業務や議会対応などが多く、仕事内容も多岐にわたっているため、繁忙期はもちろんのこと普段から忙しく残業時間も多くなりがちです。
【あわせて読みたい】なぜ「公務員は楽」と言われる?楽じゃない部署はどこ?
公務員の勤務時間・年間休日は?
公務員の勤務時間や年間休日は、法律や条例で定められています。
まず勤務時間ですが、国家公務員は週38時間45分と定められていて、1日の勤務時間は7時間45分です。
地方公務員はそれぞれの自治体の条例によりますが、多くは国家公務員と同じ勤務時間で、大体朝の8時から9時の間に始まり、17時から18時の間に終わるように設定されています。
残業時間も含めた月の実質稼働時間は167時間前後です。
次に公務員の年間休日は土日、祝日、年末年始、夏季休暇を合わせて125日程度です。
民間企業の平均115日と比べて10日ほど多いことになります。
民間の有給休暇に当たる年次休暇が20日付与されますが、民間企業では勤務後半年経過が条件になるのに対し、1年目の初めから付与されるのが特徴です。
【あわせて読みたい】公務員の年間休日は125日程度!有給・夏季休暇の日数は?
【あわせて読みたい】公務員の勤務時間は7時間45分 1日の流れ・残業・休日は?
公務員に向いているのはどんな人?
公務員には奉仕の精神、責任感、堅実さなどが求められますが、公務員にも種類がいろいろあるので、向いているタイプも異なります。
例を挙げるとすれば、次のようになります。
▼国家公務員
- 国を導く使命感がある人
- 国際的な業務で活躍したい人
- 大規模な仕事でのチームプレーが得意な人
▼都道府県・政令指定都市の職員
- 地域の発展に尽くす人
- 国と市町村の間での調整が得意な人
- 異分野・広範囲での異動に順応できる人
▼市町村職員
- ずっと同じ地域で働きたい人
- 住民対応など人と接するのが得意な人
- 地道な作業にコツコツ取り組む人
【あわせて読みたい】あなたはどっち?国家公務員・地方公務員に向いている人の特徴
まとめ
この記事では、安定していて働きやすいイメージのある公務員について、デメリットをご紹介しました。
- 民間に比べ仕事の成果が給料に反映されにくく、リモートワーク未導入の自治体も多い
- 法律や前例に沿った対応を求められる
- 部署によっては残業や休日出勤、住民のクレーム対応などもあり
- もちろんメリットもあり。休日や福利厚生の充実や、公務員ならではのやりがいがある
デメリットに関しては公務員全体に関わる要素と自治体や部署によっての差が大きい部分があるので、志望先がどうなっているかを確認してください。
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