「中小企業診断士」と「コンサル(経営コンサルタント)」は、仕事内容という点では違いはほとんどありません。
いずれも中小企業の経営状況をチェックして具体的な助言を行います。
資格の名称は「診断士」ですが、診断だけでなく業績改善のためのアイデアの提示や目標達成までのプランニングまで含めた取り組みが求められます。
中小企業診断士が行うコンサルティングでフォーカスするのは、企業経営における下記のような点です。
すべての経営課題を網羅して取り扱う人もいれば、ひとつの得意分野に絞って改革をサポートする人もいます。
いずれにしても、会社経営にコミットして現状より少しでも良い状態にすることが診断士の役割です。
中小企業診断士は、専門家としての高い知見を活かして会社の財務・人事・業務・組織風土を総点検し、問題があればその原因を特定します。
建設的で現場主義に基づくアイデアの提示を通して、業績拡大をバックアップしたり、改革に向けたヒントを与えたりすることが使命です。
これから中小企業診断士の資格を取得し、転職や独立でコンサルとして活躍することを目指す人は、実際に稼働している診断士の収入やコンサル料がどれくらいなのか、気になるのではないでしょうか。
中小企業診断協会が都道府県協会に所属する会員(中小企業診断士)を対象に行ったアンケート調査の結果を見てみましょう。
【参考】中小企業診断協会「『中小企業診断士活動状況アンケート調査』結果について」(令和3年5月発表)
この調査の回答者は、プロコン診断士(独立開業した診断士)が48.3%、企業内診断士が46.4%となっていて、収入・報酬に関する質問は「コンサルティング業務の合計日数が100日以上」の人を対象に集計したものです。
「コンサルティング業務の年間売上(または収入)」は下記のような結果となっています。
選択肢 | 構成比 |
300万円以内 | 14.3% |
301~400万円 | 8.8% |
401~500万円 | 10.0% |
501~800万円 | 21.4% |
801~1,000万円 | 11.4% |
1,001~1,500万円 | 15.4% |
1,501~2,000万円 | 6.7% |
2,001~2,500万円 | 4.3% |
2,501~3,000万円 | 2.8% |
3,001万円以上 | 4.8% |
1位の501~800万円は全体の21.4%、2位の1,001~1,500万円は全体の15.4%を占めています。
年間売上が1,001万円以上と答えた方は34.0%となり、3人に1人の割合でした。
次に、コンサル料に関する調査結果を紹介します。
同調査では「現在のコンサルティング報酬(平均)」について、次の2パターンに分けて集計しています。
※公的業務とは、国や地方自治体の行政機関、中小機構、商工会議所などの公的機関から委託されて行う業務。これと区別するために、中小企業から依頼を受けて行う業務は民間業務と呼ばれる。
業務内容 | 「公的業務がかなり高い」と回答した方 | 「民間業務がかなり高い」と回答した方 |
診断業務 | 3万7,700円/日 | 9万8,300円/日 |
経営支援業務 | 3万7,500円/日 | 11万2,500円/日 |
研究調査業務 | 5万3,600円/日 | 8万9,700円/日 |
講演・教育訓練業務 | 4万8,100円/日 | 11万9,000円/日 |
執筆業務 | 7,800円/400文字 | 6,400円/400文字 |
その他 | 2万9,500円/日 | 6万1,000円/日 |
執筆業務を除き、「民間業務がかなり高い」と回答した人は「公的業務がかなり高い」と回答した人よりも、コンサルティング料がかなり高額であることがわかります。
中小企業診断士の資格を取得した後、コンサルへ転職したい場合はどのような転職先があるのでしょうか。
また、中小企業診断士の資格はコンサルへの転職に役立つのでしょうか。
中小企業診断士の資格を活かしてコンサルの仕事ができる転職先には、次のようなものがあります。
中小企業診断士の就職・転職先として代表的なのは、コンサルティング会社や金融機関の経営支援部門でしょう。
このほか会計事務所・税理士事務所もクライアント企業の経営コンサルティング業務を担っているため、活躍の場があります。
コンサルへの転職の際に気になるのは、中小企業診断士の資格が選考においてどれくらい評価されるのかということではないでしょうか。
資格があれば、経営全般に対する一定の知識があることや、資格取得のために努力できることなどを伝える客観的な目安となります。
しかし、資格をどの程度重視するかは企業や採用担当者によって判断が分かれ、より重視されやすいのは実務経験でしょう。
転職において、中小企業診断士資格はプラスオン(上乗せ)の武器であると考えてください。
【あわせて読みたい】中小企業診断士は転職に有利?キャリアチェンジ体験談や転職先を紹介
収入・報酬の項目で触れた中小企業診断協会のアンケート調査では、独立に関する質問も行っています。
「中小企業診断士として独立している」と答えた方は47.8%、2〜10年以内に「独立したい」と回答した方は23.4%であり、独立志向の人とも相性がいい資格であることが伺えます。
では、コンサルとして独立するにはどのような準備が必要なのでしょうか。
中小企業診断士として独立する際、最初の課題となるのは仕事の獲得でしょう。
仕事を獲得するには人的ネットワークを構築することと「強み」を持つことが大切です。
▼人的ネットワークを構築すること
前出のアンケートで「コンサルティング業務の依頼を受けたきっかけ」を尋ねた質問を見てみると、回答で上位を占めたのは、このような項目でした。
この結果から、仕事の獲得には人的ネットワークが大きくかかわっていることがわかります。
日頃から関係機関や他の診断士との接点を積極的に持つようにしておくといいでしょう。
▼「強み」を持つこと
中小企業診断士試験では、経営について横断的な知識を身につけますが、実際に経営に携わる上では特定の業界や業務に関する豊富な経験や深い知識が貴重な武器となります。
そのような強みがあれば「私はこの分野に強いです」と自分をアピールしやすくなり、仕事の獲得につながりやすくなります。
また、強みを活かせる仕事では成果を出しやすく、その実績が次の仕事の獲得につながっていきます。
好循環が生まれて、安定的に受注できるようになるでしょう。
前出のアンケートでは、現役の中小企業診断士が考える「今後需要が多くなる(伸びる)と考えている分野」の調査も行われています。
独立を考える人にとって見逃せないトピックです。回答が多かったのはこのような分野でした。
自分の強みと上記のような将来性の見込める分野を組み合わせることができれば、独立後も仕事を獲得しやすいでしょう。
一方、アンケートでは「今後需要が少なくなる(減少する)と考えている分野」も調査され、下記のような分野に回答が集まりました。
現役の中小企業診断士の声を参考に、自分が特化する分野を検討してみてください。
ここからは、中小企業診断士のコンサル転職・独立に関連するよくある質問に回答します。
中小企業診断士としての副業には、下記のような仕事があります。
このような仕事は、中小企業診断士としてのスキルアップにもつながります。
中小企業診断士の資格を取得したあと、独立するための準備として上記のような副業に取り組む人もいるようです。
【あわせて読みたい】中小企業診断士のおすすめ副業5選!会社員の副業実例も紹介
ネットで「中小企業診断士」と検索すると「なくなる」「食えない」というキーワードが一緒に出てくることがあります。
診断士が「食えない」と言われる理由は、弁護士や公認会計士のような「独占業務(その資格の保有者にしかできない業務)」がないからです。
しかし、成功している診断士は数多くいます。「食える」「食えない」を決めるのは独占業務の有無ではなく、自分自身が資格をうまく活用できるかにかかっています。
コンサルティングのスキルは経験を積むほど高まりますし、自分の得意分野と組み合わせることで専門性を高めたり、他の診断士との違いを打ち出して集客に役立てたりできるでしょう。
【あわせて読みたい】中小企業診断士が「なくなる」「食えない」は誤解!大きく稼ぐ方法は?
中小企業診断士の合格に必要な勉強時間は1,000時間程度が目安です。
たとえば1年(約50週)でストレート合格を狙う場合、1週間当たり20時間の勉強が必要。
具体的には平日2時間を5日、休日5時間を2日、というイメージです。
【あわせて読みたい】中小企業診断士の勉強時間は1,000時間!1次・2次・科目別の時間は?
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この記事では、中小企業診断士のコンサルへの転職や独立についてまとめました。
この記事で紹介した中小企業診断士へのアンケート調査では、今後、診断士のコンサルティング需要が増加すると考えている人が約6割にのぼっています。
今後コンサルとして活躍したい人はぜひ資格取得を検討してみてください。
監修 市岡 久典
中小企業診断士 |
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