
銀行員が中小企業診断士を取得すれば、スキルを業務に活かせたり、出世につなげられたりします。
経営診断ができるようになる中小企業診断士の資格は、銀行での業務と相性がよいといえるでしょう。
本記事では、銀行員が中小企業診断士を取得するメリットに加え、試験の難易度や銀行員にとっての合格のしやすさを解説します。
中小企業診断士は銀行員など金融機関勤務者が数多く受験
中小企業診断士試験は、銀行員をはじめとする金融機関勤務者が数多く受験しています。
1次試験・2次試験ともに例年2,000人以上の金融機関勤務者が受験を申し込んでおり、全体の1割前後を占めています。
▼1次試験
年度 | 金融機関勤務者(※)の申込者数 | 総申込者数 |
---|---|---|
2019(令和元) | 2,300人 | 21,163人 |
2020(令和2) | 2,123人 | 20,169人 |
2021(令和3) | 2,645人 | 24,495人 |
2022(令和4) | 2,659人 | 24,778人 |
2023(令和5) | 2,565人 | 25,986人 |
2024(令和6) | 2,451人 | 25,317人 |
▼2次試験
年度 | 金融機関勤務者(※)の 申込者数 | 総申込者数 |
---|---|---|
2019(令和元) | 704人 | 6,161人 |
2020(令和2) | 808人 | 7,082人 |
2021(令和3) | 1,040人 | 9,190人 |
2022(令和4) | 1,042人 | 9,110人 |
2023(令和5) | 902人 | 8,601人 |
2024(令和6) | 916人 | 8,442人 |
※金融機関勤務者は、「政府系金融機関勤務者」と「政府系以外の金融機関勤務者」の合算
【参考】申込者・合格者にかかる統計資料(1次試験)、令和5年度 第1次試験に関する統計資料、申込者・合格者にかかる統計資料(2次試験)、令和5年度 第2次試験に関する統計資料
受験資格が定められていないことから幅広い業界・職種の方が受ける試験ですが、銀行員を含む金融機関勤務者が小さくない割合を占めることがわかります。
銀行員が中小企業診断士を取得するメリットとは
銀行員が中小企業診断士を取得すると、次のような4つのメリットがあります。
- 業務に活かせる機会が多い
- 出世につながりやすい
- 転職活動でのアピールに使える
- キャリアの幅が広がる
1つずつ解説します。
業務に活かせる機会が多い
銀行員が中小企業診断士を取得すれば、そのスキルや知識を業務に活かせます。
特に法人営業の業務では、中小企業診断士の持つ企業診断スキルや課題解決のためのアドバイス能力を強みにできるでしょう。
法人営業は顧客である企業の財務状況を分析し、融資を実行したり経営面のサポートをしたりする業務です。
中小企業診断士のスキルがあれば企業の経営状況をより正確に診断できるようになり、実情に合った融資の実行やサービスの提案が可能になるでしょう。
中小企業診断士は経営に関する幅広い知識・情報を持っているため、事業拡大のための投資や海外進出、M&Aといった企業のさまざまな経営課題に対してアドバイスができます。
法人営業を担当する銀行員が中小企業診断士を取得すれば、顧客とのやりとりにおいて知識を活用できる機会が多いでしょう。
出世につながりやすい
社内評価が高まることで出世につながりやすくなるのもメリットです。
経営に関する幅広い知識があれば、「将来的に管理職を任せられる人材」として評価が高まるはずです。
また、中小企業診断士であることを名刺に記載すれば、取引先など社外からも信頼されやすくなります。
社内外から高く評価されることで、出世にもポジティブな影響をもたらすでしょう。
転職活動でのアピールに使える
銀行員が中小企業診断士の資格を保有していれば、転職する際のアピールにも使えます。
ほかの銀行に転職する場合、すでに銀行員としての実務経験があるため、すぐに活躍が可能な即戦力とみなされるでしょう。
そこに中小企業診断士の資格が加わることで、経営知識やコンサルティング・マネジメントのスキルがあることの証明となり、採用担当者からさらに高い評価を得られるはずです。
また、銀行だけでなくコンサルティング会社に転職できる可能性もあります。
中小企業診断士の資格があれば、転職先の選択肢が増えるでしょう。

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キャリアの幅が広がる
銀行員が中小企業診断士の資格を持っていれば、経営コンサルタントへの転向や独立などキャリアの幅が広がります。
中小企業診断士の専門知識と銀行員の実績を掛け合わせれば、財務に強い経営コンサルタントとして活躍できるでしょう。
また、将来的には中小企業診断士として独立することも可能です。
銀行員としてのキャリアを活かし、融資をはじめとする金融サービスに詳しい中小企業診断士としてアピールすれば、ほかのコンサルタントとの差別化も図れるでしょう。
中小企業診断士の難易度は?銀行員は合格しやすい?
ここからは、中小企業診断士試験の難易度や、銀行員にとっての合格のしやすさについて解説します。
1次試験・2次試験の合格率
中小企業診断士の資格試験は1次試験(筆記)と2次試験(筆記と口述)で構成されており、直近の合格率は以下の通りとなっています。
▼中小企業診断士試験の合格率
年度 | 1次合格率(A) | 2次合格率(B) | 一発合格率(A×B) |
---|---|---|---|
令和元(2019) | 30.2% | 18.3% | 5.5% |
令和2(2020) | 42.5% | 18.4% | 7.8% |
令和3(2021) | 36.4% | 18.3% | 6.6% |
令和4(2022) | 28.9% | 18.7% | 5.4% |
令和5(2023) | 29.6% | 18.9% | 5.6% |
令和6(2024) | 27.5% | 18.7% | 5.1% |
【参考】中小企業診断士試験 申込者数・合格率等の推移、令和5年度 第1次試験に関する統計資料、令和5年度 第2次試験に関する統計資料
1次試験の合格率が25%程度、2次試験の合格率が18%前後となっており、最終的な合格率は5%前後です。
知名度や評価が高いぶん、取得の難易度も高い試験だといえます。
必要な勉強時間の目安
中小企業診断士試験の合格に必要な勉強時間の目安は、1,000時間とされています。
例えば、1年で合格を目指す場合は1週間に20時間程度の学習が必要です。
1日あたりの勉強時間が長くなるため、仕事との両立は簡単ではありません。
しかし、スキマ時間を活用するなど効率的に学習を進めることで、働きながらでも資格取得を狙えるでしょう。
また、後述する通り銀行員として実務で培った知識を活かせる場合はアドバンテージがあるため、勉強時間も短縮できる可能性があります。
試験科目と自身の知識を照らし合わせ、効率的に対策できる箇所がないか確認してみてください。
具体的な学習計画を立てるうえで、仕事との両立が難しく勉強時間を確保できない場合は、1週間あたりの勉強時間を10時間に設定し、2年で合格するスケジュールを立ててみましょう。
中小企業診断士試験には科目合格制度があり、仮に1年目の1次試験が不合格となっても、合格基準点を満たした科目があれば翌年・翌々年の受験で該当科目の免除が受けられます。
科目合格制度の利用も考慮したうえで、ムリのない学習計画を立ててみてください。

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科目によっては銀行員の知識を活かせる
中小企業診断士1次試験の科目は以下の通りであり、特に「財務・会計」では銀行員として業務で培った知識を活かせる可能性が高いでしょう。
- 経済学・経済政策
- 財務・会計
- 企業経営理論
- 運営管理
- 経営法務
- 経営情報システム
- 中小企業経営・中小企業政策
また、2次試験でも「中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅳ」で財務・会計に関する内容が例年出題されています。
会計や簿記の基礎知識が身についていれば、「財務・会計」の対策にかかる時間が少なく済み、ほかの受験者を一歩リードした状態で学習を進められるでしょう。
まとめ
本記事では、銀行員が中小企業診断士を取得するメリットや試験の難易度、合格のしやすさを解説しました。
記事のポイントをおさらいしましょう。
- 中小企業診断士試験の受験者のうち、金融機関勤務者は1割前後を占めている
- 銀行員が中小企業診断士を取得すれば、資格や知識を業務・キャリアに活かせる
- 中小企業診断士試験は1次試験と2次試験で構成され、最終的な合格率は5%前後
- 銀行員として培った知識は、「財務・会計」の科目で活かせる可能性が高い
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