中小企業診断士は、経営コンサルティングを主な業務とする専門家です。経営コンサルタントとしての知識とスキルを認定する唯一の国家資格でありながら、税理士や社会保険労務士のように、独占業務があるわけではありません。この点を見て、中小企業診断士の資格バリューに疑いを持つ意見も少なからず聞かれます。
確かに弁護士や司法書士、税理士や社会保険労務士など他の士業は、その資格がなければタッチできない独占業務があり、その要素が専門家としての評価を高めていると言ってもよいでしょう。しかし、独占業務の有無が資格の将来性を決めるすべてかと言えば、そうでもありません。取得した資格のメリットをどう生かし、今後のキャリアアップに役立てるかは、本人次第とも言えるからです。中小企業診断士に独占業務はないものの、その資格が持つ特性・メリットを引き出す努力をすれば、足りない部分を補うだけの効果も期待できるのです。
企業経営に精通する中小企業診断士は、さまざまな業務とアドバイスを通して、組織運営や再生をサポートします。マーケティングや財務分析、事業計画書の作成、労務対策など、コンサルティングできる分野は多岐にわたります。これらの業務は、専門知識を習得した中小企業診断士だからこそできるという一面も否定できません。それと同時に、それぞれにおいて専門度の高い実務とアドバイスが期待できるからこそ、経営者も安心してサポートを任せられるのです。
中小企業診断士と言う名称の通り、メインの顧客は中小企業の経営者となります。国内で活躍する企業と言えば、大手自動車メーカーや電機メーカー、通信大手、あるいはメガバンクといった大きな規模の企業・組織に注目が集まりがちですが、それらの大企業は全体のわずか0.3%に過ぎません。日本で活躍する企業のほとんどは、中小・零細企業に属します。
経済産業省や総務省などの公的データによると、日本で活動する企業は421万社。そのうち大企業と呼ばれる大きな組織は1.2万社で、その他の419.8万社はすべて中小企業です。つまり、日本の経済は中小規模のメーカーやサービス業、流通業などによって支えられているという実態があります。
そんな日本の中小企業は、「生産力の低下」「人手不足」「雇用環境の悪化」「起業後間もない廃業」など、多くの課題を抱えます。グローバル化や国際競争の激化など、その環境はますます厳しくなっていくことが予想されるでしょう。そんな中において、経営コンサルタントが果たせる役割は小さくありません。
日本企業の99%以上を中小零細が占める経済構造。また起業して間もない小規模事業者の多くが5年以内に廃業を迎えているという厳しい現状。これらの問題に処方箋を与えてくれるのが、中小企業診断士と呼ばれる専門家たちです。明確な独占業務を持たないだけに、プロとして独自のアイデアでフィールドワークを広げていく取り組みが重要となります。
独占業務を持たないことのメリットは、形式や枠内にとらわれず、アプローチも自由にできるところにあります。上記でご紹介したコンサルタント業務の他、セミナー開催や講演活動、本の執筆、あるいは社員研修の講師など、専門知識を生かしてアグレッシブに活動する診断士は少なくありません。
監修 市岡 久典
中小企業診断士 |
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