
中小企業診断士とMBAは、どちらも経営に関する知識を証明できるものです。
しかし、取得の流れや必要な費用は大きく異なるため、どちらを目指すべきか悩む方も多いでしょう。
本記事では、中小企業診断士とMBAの違いやどちらを取るべきか、ダブルライセンスの価値などをまとめて解説します。
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中小企業診断士とMBA
経営やビジネスに関するスキルを客観的に証明できるものとして、中小企業診断士とMBAはどちらも人気があります。
ここではそれぞれの概要を見ていきましょう。
中小企業診断士とは
中小企業診断士は、経営コンサルタントとして唯一の国家資格です。
資格を取得することで、企業の経営全体を幅広く診断し、課題解決に向けたアドバイスをする能力が身につきます。
多くの企業は、直面する事業課題に対して客観的なアドバイスができる外部人材を求めています。
そのため、中小企業診断士はさまざまな業界で活躍が期待される資格だといえるでしょう。
企業内でのキャリアアップを目指す方や経営コンサルタントとして働きたい方、マネジメント業務に従事したい方にとって、特に取得するメリットの大きい資格です。
中小企業診断士の学習を通じて得た企業経営に関する知見は、営業コンサルティングやマーケティング、IT、新規事業開発など、あらゆるビジネスシーンで役立ちます。
そのため、コンサルティング会社に限らずさまざまな企業・ポジションで活用できる資格だといえます。
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MBAとは
MBAは「Master of Business Administration」の略で、経営学修士という学位です。
MBAは、ビジネススクール(経営学大学院)を修了することで取得できます。
経営に関する知識を体系的に習得するという観点から、経営戦略やマーケティング、人的資源管理、アカウンティング、ファイナンス、オペレーション管理、ビジネス法、経済学などを学びます。
ただし、ビジネススクールによってカリキュラムや難易度などが異なる点には注意が必要です。
経営の近代化を目的として、1900年代はじめにアメリカの大学でビジネススクールが誕生しました。
欧米では、多くの大学や教育機関にMBA課程が設けられています。
有名なところでは、アメリカのハーバード・ビジネススクールやペンシルベニア大学ウォートンスクール、イギリスのロンドン・ビジネススクールなどがあります。
欧米では「MBAを取得していると採用に有利になる」「取得していないと経営幹部への昇進の対象とならない」とされるなど、MBAは企業の採用や昇進と密接に結びついているのです。
日本でも、複数の大学や教育機関が社会人向けの経営学修士課程、いわゆるMBAコースを開講しています。
しかし、国際認証機関に認証されているビジネススクールはまだわずかです。
中小企業診断士とMBAの違い
中小企業診断士は日本の国家資格ですが、MBAは資格ではなく、ビジネススクールで経営学を修めた人に与えられる学位です。
そのため単純な比較は難しいのですが、ここでは学習内容や取得方法、費用、難易度などの観点から比べてみましょう。
学習内容の違い
中小企業診断士の1次試験科目は、企業経営理論、財務・会計、運営管理、経営情報システム、経済学・経済政策、経営法務、中小企業経営・政策の7つです。
MBAの学習内容はビジネススクールによって異なりますが、一般的には経営戦略やマーケティング、人的資源管理、アカウンティング、ファイナンス、オペレーション管理、ビジネス法、経済学などです。
このように、中小企業診断士とMBAが対象とする学習内容には共通している部分が多くあります。
なお、中小企業診断士の2次試験では中小企業の診断および助言に関する実務の事例について問われ、MBAではケーススタディやケースメソッドと言われる事例を通した学習が行われます。

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取得方法の違い
中小企業診断士として登録を受けるには、試験の合格と実務補習の受講が必要です。
具体的には、7科目のマークシート方式による1次試験に合格したあと、2次試験として4科目の記述式による筆記試験と口述試験にそれぞれ合格する必要があります。
そして2次試験の合格後、3年以内に実務補習を15日以上受けるか、診断実務に15日以上従事することで中小企業診断士としての登録が可能となります。
いずれにしても、まずは1次試験の突破がカギを握るといえるでしょう。
上記のような基本的な流れのほか、中小企業診断士の1次試験合格後に中小企業診断士養成課程を併設しているMBA大学院に進学し、MBAを取得しながら2次試験と実務補習の免除を受けるという方法もあります。
ただし、後述する通り費用や時間がかかるため、慎重に検討するのがよいでしょう。
一方、MBAは資格ではなく学位です。
そのため、「海外のビジネススクールに留学する」「国内のビジネススクールに通う」といった取得方法になります。
費用の違い
中小企業診断士の資格取得にかかる費用は、勉強の進め方によって異なります。
独学や通信講座なら、数万円程度の費用が想定されるでしょう。
予備校などのスクールに通う場合は、20万~30万円程度が相場となっています。
独学なら費用を抑えられますが、要領よく学習を進める必要があるため、自身に合った勉強法かどうかよく検討しましょう。

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一方、MBA取得にかかる費用は期間や通うスクールによって異なりますが、国内で取得する場合は200万~500万円、海外に留学する場合は1,000万円以上になるでしょう。
MBAは学位取得のために学校に通う必要があり、費用としても高額になることが想定されます。
難易度の違い
中小企業診断士試験の最終的な合格率は、平成30年度(2018年度)から令和4年度まで4.4〜7.8%で推移しています。
出題科目は多岐にわたり、合格までに必要な勉強時間の目安は1,000時間程度とされています。
1日あたりに割ける学習時間にもよりますが、忙しい社会人が合格を目指すなら1~2年程度の学習期間が必要になるでしょう。

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一方で、MBAの難易度は入学するビジネススクールによって異なります。
入るビジネススクールにこだわらず、学位の取得だけを考えるならMBAのほうが簡単といえるかもしれません。
中小企業診断士とMBAはどっちを取るべき?
ここでは、中小企業診断士とMBAのどちらを取るべきなのか、それぞれがどのような人におすすめなのかについて解説していきます。
中小企業診断士がおすすめな人
中小企業診断士の取得は、以下のような人におすすめだといえます。
- さまざまな企業に経営のアドバイスがしたい人
- 企業内でのキャリアアップにつなげたい人
- 公的業務に従事したい人
- 資格を活用して独立したい人
- 自分のペースで学習を進めたい人
中小企業診断士は経営に関する幅広い知識が身につく資格です。
現在働いている勤務先でのキャリアアップはもちろん、コンサルティング業務や公的業務、独立といった多様な働き方が可能になるでしょう。
勉強方法にもよりますが、MBAのようにスクールに通うことなく、働きながら自分のペースで学習を進められる点もメリットだといえます。

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MBAがおすすめな人
一方MBAの取得は、以下のような人におすすめです。
- グローバルに活躍したい人
- 大企業の経営分析やコンサルティングに携わりたい人
- お金や時間をかける余裕がある人
MBAは世界的に認知されている学位であるため、グローバルな活躍を目指す人におすすめです。
活躍の幅をグローバルに、より広げていきたいとお考えの方はMBAがよいでしょう。
ただし、ビジネススクールに通って学位を取得するには時間と費用がかかるため、仕事と両立できるのかなど慎重に検討する必要があります。
中小企業診断士とMBAのダブルライセンスは意味ある?
中小企業診断士とMBAはどちらも経営に関する資格・学位であるため、「両方取得すればよりメリットが大きいのでは?」と考える人もいるかもしれません。
たしかにメリットもありますが、学習内容に重複する部分が多いため、業務を行ううえではどちらかを取得しておけば十分ともいえます。
メリットがある場面としては、営業などの際に両方取得済みであることで第一印象がよくなったり信頼性が増したりする可能性はあります。
まずは現在の自分にとって必要なほうを取得したあと、必要性を感じたタイミングでダブルライセンスを検討するのがよいといえるでしょう。
なお、中小企業診断士の資格名には「中小企業」と付いていますが、業務は中小企業に係るものに限りません。
大企業のコンサルティングも可能で、活躍の幅は多岐にわたります。
中小企業診断士の養成課程とMBAを同時に修了できる?2次試験も免除になる?
中小企業診断士試験では、1次試験の合格後に2次試験と実務補習を受けるのが一般的な流れです。
しかし、中小企業診断士養成課程を併設しているMBA大学院に進学することで、2次試験や実務補習の免除を受けながらMBAを取得することが可能です。
中小企業診断士とMBAのダブルライセンスを希望する方は検討してみるとよいでしょう。
ただし、学費はもちろん講義参加のために多くの時間がかかるため、働きながら修了するのは簡単ではありません。
メリットとデメリットを整理したうえで検討すべきだといえます。
まとめ
本記事では、中小企業診断士とMBAの違いやどちらを取得すべきかについて解説しました。
ポイントをまとめると、以下の通りです。
- 中小企業診断士は国家資格であり、MBAは学位
- どちらも経営全般に関する幅広い知識が身につく
- 中小企業診断士の取得にかかる費用の相場は数万~30万円程度、MBAは国内取得でも200~500万円程度
- 中小企業診断士は試験の合格と実務補習の受講、MBAはスクール課程の修了が必要
- 理想とする働き方やかけられる時間・費用などの観点で検討するのがおすすめ
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