
中小企業診断士の資格を取得したら、働き方は大きく2つあります。
企業内で働くか、独立して働くかの2つです。
企業内診断士は安定した収入と仕事内容が魅力ですが「年収や出世につながるのか」「資格取得を生かせるのか」が気になるという声もあります。
そこで、独立診断士と比較しながら、企業内診断士のリアルな声をご紹介します。
企業内診断士とは?独立との違いはどこにある?
企業内診断士とは、所属している企業内で働く中小企業診断士資格保有者を指す言葉です。
中小企業診断士というと経営コンサルタントとして独立している人をイメージするかもしれませんが、実は資格取得者の企業内診断士と独立診断士の数はほぼ拮抗しています。
そこで、企業内診断士の定義や独立診断士との違いについて解説します。
- 企業内診断士の定義
- 独立診断士との違い
- 企業内診断士が注目される背景
企業内診断士の定義
企業内診断士とは、特定の企業に雇用されている中小企業診断士です。
所属している企業内での仕事がメインで、中小企業診断士としてのスキルを直接的に生かせる業務を担うケースもある一方で、間接的には関連するものの有資格者でなくてもできる業務もあります。
企業に所属しているため、収入や雇用は安定しているのが一般的です。
代わりに、就業規則で副業が禁止されていることもあるため、自由度が低いともいえます。
独立診断士との違い
独立診断士とは、特定の企業に所属せず各企業と業務委託契約を結んで仕事を得ている個人事業主の中小企業診断士です。
独立診断士は企業内診断士よりも働き方の自由度が高く、うまくいけば高収入を得ることもできます。
一方で、収入や仕事量は本人の営業力によるところも多く、不安定になる可能性もあります。
また、開業するためには資金がかかるのも、企業内診断士との大きな違いです。
企業内診断士が注目される背景
一般社団法人 中小企業診断協会(現・日本中小企業診断士協会連合会)が令和3年度に実施した「中小企業診断士活動状況アンケート調査」によると、資格取得者のうち約46%が企業内診断士でした。
企業内診断士は、自社の強みや製品についての知識を持ちながら、経営戦略やマーケティング、財務分析を行える貴重な存在です。
新規事業開発や新入社員研修、補助金の申請など、さまざまな業務に中小企業診断士としての知識やスキルは生かせます。
このため、有資格者は企業内で重宝される存在になり得るでしょう。
また、近年働き方改革が叫ばれ、フレックス勤務やリモートワーク、副業などを認める企業も増えています。
2022年に経団連が実施した「副業・兼業に関するアンケート」では、5,000人以上の社員がいる企業のうち83.9%が副業や兼業を認めているという結果になりました。
こういったなかで、本業で会社員をしながら副業で中小企業診断士として活躍するという働き方も可能になりつつあります。
安定的な収入や社会保険などを手にしながら活躍の場を広げられるので、企業内診断士は注目されています。
参考:一般社団法人中小企業診断協会(現・日本中小企業診断士協会連合会)「『令和3年度 中小企業診断士活動状況アンケート調査』結果について」
参考:一般社団法人 日本経済団体連合会「副業・兼業に関するアンケート調査結果」
企業内診断士の年収とキャリアへの影響
企業内診断士として働き続けようと考えたとき、収入やキャリアへの影響が気になる方も多いでしょう。
ここでは、企業内診断士の平均年収や昇進、キャリア形成への影響を解説します。
- 企業内診断士の平均的な年収
- 資格取得で昇進できる?
- 企業内診断士の求人はある?
企業内診断士の平均的な年収
中小企業診断士の平均年収は500万円~800万円といわれています。
中小企業診断士の働き方は企業内診断士、独立診断士、副業診断士とさまざまで、働き方によって収入は大きく異なります。
このため、企業内診断士が具体的な平均年収は把握しづらいのが実情です。
また、企業内診断士は中小企業診断士資格を全面的に生かした働き方ができているわけではありません。
資格を取得したから得られた収入なのかどうかがわかりにくいのが事実です。
ただし、企業によっては月5,000円~3万円程度の資格手当が支給されます。
このため、企業内診断士は資格を持っていないときよりも6万円~36万円の年収アップが見込めると言えます。
資格取得で昇進できる?
中小企業診断士試験に合格し有資格者になったということは、ビジネスに必要な一通りの知識を持っていることの証明になります。
とくに経営企画や管理職は経営コンサルタントとしてのスキルが役立つ業務です
資格を生かして経営企画や管理職に異動・昇進することもできるでしょう。
また、資格取得で勉強した内容は役員になる昇進試験に生かせることもあります。
中小企業診断士資格を取得すれば必ず昇進につながるというわけではありませんが、資格取得は企業内の仕事に役立つはずです。
企業内診断士の求人はある?
「企業内診断士」という名称での求人はあまりないが、コンサルタント・経営企画・事業開発・経営支援などのポジションで中小企業診断士を求めている企業は多くあります。
また、資格保有が条件になっているわけではないものの、「歓迎・優遇」に中小企業診断士が含まれていることもあります。
このように、中小企業診断士資格は転職活動においてもプラスになる武器として作用するでしょう。
企業内診断士の社内評価とリアルな声
ここからは実際に企業内診断士として働く中小企業診断士のリアルな声を、ポジティブなものとネガティブなものに分けてご紹介します。
ポジティブな声
企業診断士に関するポジティブな評判や声には次のようなものがあります。
「中小企業診断士に合格したと社内で公言したことにより、希望の部署に異動することになった」
「これまでの実績や経験に中小企業診断士という付加価値が加わったことで、社内の平均よりもずっと若いにもかかわらず管理職ポストに昇進できた」
「社内の違う部門の人ともコミュニケーションを取れるようになった」
「内部にいる中小企業診断士だからこそ、経営者にも現場事情を踏まえた厳しい提言を経営者にできたと思う」
「中小企業診断士資格を取得したことを会社に伝えたら副業が認められるようになった」
「資格手当が付いて月収が3万円アップした」
ネガティブな声
企業内診断士に関するネガティブな評判や声には次のようなものがあります。
「企業内診断士でいる限り、年収が上がる可能性は低いと思う」
「副業で中小企業診断士の活動をする場合は、深夜や休日も働き続けることになった」
「企業内診断士だと更新に必要な実務ポイント(※)を取得するのが大変。資格の維持にも労力がかかる」
※実務ポイントとは、中小企業診断士資格更新に一定数必要なポイントのことです。
そもそも中小企業診断士は5年ごとに資格更新が必要で、その際に「専門知識補充要件」と「実務要件」をそれぞれ満たしていることが条件になります。
実務ポイントは実際に中小企業支援などの実務を行った証明として与えられますが、本業が忙しい企業内診断士は外部で実務を積んだり実務補習に参加したりする時間が限られるため苦労する傾向にあります。
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企業内における中小企業診断士資格の生かし方
企業内で中小企業診断士資格を生かすためには、自ら資格取得したことを周囲に伝え、積極的に自分のやりたい仕事をアピールするとよいでしょう。
こういった動きによって、社内研修や新入社員研修の講師に抜擢されたり、経営企画部やマーケティング部など希望の部署に異動したりできることがあります。
直接中小企業診断士の知識を生かせる部門に異動できない場合は、副業をしながらスキルアップをするのもおすすめです。
ただし、その場合でも本業で手抜きをするのはよくありません。
本業にも真摯な姿勢で取り組みしっかり成果を出すことで、社外での中小企業診断士活動も認めてもらいやすくなるでしょう。
企業内診断士を目指す人へのアドバイス
企業内診断士を目指す人へのアドバイスをご紹介します。
中小企業診断士資格を取得したばかりの人は、ぜひ参考にしてください。
- 副業の可否や就業規則を確認しよう
- 独立診断士とどちらが向いているか知っておこう
- まずは資格取得が大事!働きながら中小企業診断士に合格する方法
副業の可否や就業規則を確認しよう
企業内診断士を目指すなら、まずは副業ができるかどうかを就業規則で確認しましょう。
副業ができれば、収入アップや将来的な独立への礎になります。
また、本業で直接中小企業診断士のスキルを生かせない場合でも、副業で中小企業の経営コンサルティングに携わることができるかもしれません。
社内では得られない貴重な経験や人脈に恵まれて、本業の仕事にもよい効果をもたらすこともあります。
副業ができる企業は増えていますが企業差が大きいため、企業内診断士として会社員を続けるなら必ず確認しておきましょう。
独立診断士とどちらが向いているか知っておこう
社会人が中小企業診断士を目指すとき、まずは現在所属している企業で働き続けて、いずれ独立も視野に入れようと考える人も多いでしょう。
独立診断士は働き方の自由度が高く高収入を得られる可能性もありますが、収入が不安定だったり自分で営業をしなければならなかったりとリスクが大きいのも事実です。
このため、資格取得後いきなり独立はやめておいたほうが無難でしょう。
企業内中小企業診断士として、会社員と独立とのどちらが自分に向いているのかを自己分析して、ゆっくり将来のことを決めていくことをおすすめします。
まずは資格取得が大事!働きながら中小企業診断士に合格する方法
企業内診断士を目指すなら、まずは中小企業診断士試験に合格することが大切です。
中小企業診断士は年度にもよりますが、最終合格率が5~10%という難関資格です。
1次試験は7科目、2次試験の筆記は4科目あり、幅広い知識が求められます。
働きながら合格を目指すなら、やみくもに勉強をするのではなく、学習戦略を立てて効率よく勉強をする必要があります。
また、忙しい毎日のなかでスキマ時間を無駄にせず勉強時間に充てることが重要です。
スタディングの中小企業診断士講座は、忙しい社会人向けの通信教材です。
過去問を徹底的に分析し、合格するための必要な知識に絞ったカリキュラムを提供しています。
スマートフォンがあればどこでも学習できるので、通勤や昼休みなどのスキマ時間に気軽に勉強ができます。
働きながら中小企業診断士の合格を目指す人は、ぜひスタディング中小企業診断士講座をお試しください。
まとめ
企業内診断士は中小企業診断士の資格を持ちながら会社員として働く人を指します。
企業内診断士は安定した立場と収入が保証されていますが、その分働き方の自由度は低く、場合によっては中小企業診断士の知識やスキルを直接生かせない業務を担うこともあります。
しかし、資格取得を社内で積極的にアピールすることで、希望の部署に異動できたり副業が認められたりすることもあるかもしれません。
将来的に独立することを検討している人も、まずは企業内診断士として働きながら自分に向いている働き方を模索するのがおすすめです。
中小企業診断士資格を活用して副業が叶った場合も、本業をおろそかにせず社内で成果を出すことで、より副業をしやすい環境になるでしょう。
