中小企業診断士試験から登録までの流れ
試験に合格しても、すぐに中小企業診断士を名乗って仕事ができるわけではありません。この時点では「中小企業診断士試験合格者」であり、まだ中小企業診断士ではないためです。
試験に合格後、登録へのルートとして最も一般的なのは、上の図にあるとおり実務補習へ進むルートです。実務補習ではなく実務従事を選択することも可能です。
また、中小企業診断士になるには中小企業診断士養成課程に進むというルートもあり、この場合は2次試験と、実務補習あるいは実務従事が免除となります。
では、実務補習と実務従事、そして養成課程とはどういったものか、解説していきましょう。
実務補習
中小企業診断士として登録するには、2次試験に合格した後、3年以内に次の要件のいずれかを満たす必要があります。
- 実務補習を15日以上受ける
- 診断実務に15日以上従事する(実務従事)
このうち、合格者の多くは実務補習を受けるというルートに進みます。
実務補習は、中小企業診断士が行う経営コンサルティングの実務の経験を積むために、実際の中小企業を対象に経営コンサルティングのグループワークを行うものです。
グループは通常5名程度で、指導員としてベテランの中小企業診断士がつきます。
1社あたり5日の日程で、3社で合計15日という要件を満たすのが一般的です。
【あわせて読みたい】中小企業診断士の実務補習は働きながら受講可!日程・内容・免除などを解説
実務従事
前述のとおり、合格者の多くは実務補習で要件を満たしますが、経営の診断助言業務、あるいは経営に関する窓口相談業務を行う実務従事でも登録に必要な要件を満たせます。
例えばコンサルティング会社で働いていて中小企業診断士試験に合格した場合、本業が実務従事に該当する場合があります。
実務補習の受講には費用と時間がかかりますが、本業が実務従事に該当する場合は、補習の費用や時間がかからなくなることがメリットです。
【あわせて読みたい】中小企業診断士の実務従事とは?登録・更新の要件を満たす業務を解説
養成課程
ここまでに述べた実務補習・実務従事は、2次試験に合格した人が進むステップでしたが、中小企業診断士になるには、1次試験合格後に中小企業診断士養成課程へ進むというルートもあります。
この場合、2次試験や実務補習・実務従事というステップを踏む必要はなく、養成課程を修了するとそのまま登録へ進むことが可能です(修了後3年以内)。
【画像引用】中小企業庁「中小企業診断士制度の概要」
養成課程のメリットは、合格率が20%弱で難関の2次試験を回避できることや、演習と実習で実践的に学べることです。
全日制だけでなく夜間や週末に受講できるコースもあるため、仕事との両立も可能です。
ただし、期間が半年〜2年間と長く、内容もただ講義を聞いていればいいというものではありません。費用の相場も150〜300万円と高額です。
2次試験や実務補習などを受けなくてもいいとはいえ、「中小企業診断士への近道」ではない点を理解しておきましょう。
【あわせて読みたい】中小企業診断士の養成課程一覧!働きながら夜間・土日の通学で資格取得へ
新規登録申請
実務補習・実務従事、養成課程などによって要件を満たしたら、新規登録のための申請を行います。
中小企業庁のサイトから申請書や証明書をダウンロードして、必要事項を記入します。必要書類は次のとおりです。
▼実務補習・実務従事を修了した人
- 中小企業診断士登録申請書
- 中小企業診断士2次試験合格証書
- 実務補習修了証書または実務従事の実績証明書
- 住民票の写し
▼養成課程を修了した人
- 中小企業診断士登録申請書
- 養成課程あるいは登録養成課程の修了証明書
- 住民票の写し
登録の官報公示
前述の書類を揃えて中小企業庁に提出し、適格であると確認されるのを待ちます。
申請が受理されると、登録された日の翌々月に氏名と登録番号が官報にて公示されます。
この時点で登録は完了となり、中小企業診断士を名乗ることができます。
登録証の交付
登録が官報で公示されるのとほぼ同じタイミングで、中小企業診断士登録証が交付されます。
自宅住所宛に簡易書留郵便で届きます。つまり、申請が受理されてから翌々月頃に登録証が届くという形になります。
登録日と登録証交付の日付にズレがありますが、資格の有効期間は登録日からカウントされ5年間となっています。
【参考】中小企業庁「 中小企業診断士関連情報」>「申請・届出の手引き」
中小企業診断士に登録しないとどうなる?
ここまで登録までの流れを解説してきましたが、冒頭で述べたとおり、中小企業診断士の試験に合格しても登録は義務ではありません。「登録しない」という選択も可能です。
登録しないとどうなるのか、知っておきたいポイントをまとめました。
- 登録しない場合も経営コンサルはできる
- 登録にかかる費用・時間が浮く
- 「中小企業診断士」を名乗れない
- 診断士協会に入れない
- 合格後3年を超えると登録できない
登録しない場合も経営コンサルはできる
例えば、税理士、社労士、行政書士などの資格にはそれぞれ独占業務があり、試験に合格しても登録をしていない人は独占業務を行うことができません。
しかし中小企業診断士には独占業務がありません。このため、登録せずに経営コンサルティング業務を行っても何の問題もないのです。
「中小企業診断士」と名乗ることはできませんが、業務そのものは可能となっています。
登録にかかる費用・時間が浮く
一般的に受講する人が多い実務補習には費用も時間もかかりますが、登録しない場合はこれらが浮くことになります。
「中小企業診断士」を名乗れない
登録しないことの最大のデメリットは中小企業診断士を名乗ることができない点です。
せっかく難関試験に合格しても、履歴書、名刺、Webサイトなどに肩書として記載することができません。
中小企業診断士という資格を活用して経営コンサルティングなどの業務を行いたいと考えているのであれば、登録する必要があります。
診断士の協会に入れない
登録しない場合、資格保有者の団体に入会できない点もデメリットです。
中小企業診断士には「中小企業診断協会」という団体があり、都道府県ごとに地域の協会が設立されています。
協会に入会すると、さまざまな研修や講習を受けることができ、スキルアップや情報収集に役立ち、人脈も築きやすくなるでしょう。
また、協会は実務従事の機会を提供する役割も担っていて、本業でコンサルティングに従事していない人にとっては資格維持の際に役立ちます。
いずれも中小企業診断士として長く活躍する上で欠かせない点であり、協会に入らない場合は自力で対応しなければなりません。
合格後3年を超えると登録できない
2次試験に合格後、登録するかどうかは任意ですが、登録の権利があるのは2次試験合格から「3年以内」の期間限定です。
3年を超えても登録しなかった場合、登録の権利を得るには試験を受け直すことになるため注意が必要です。
中小企業診断士の登録費用
中小企業診断士の登録について、費用についても解説しておきましょう。
かかる費用は、要件を満たす方法によって異なります。
最も一般的な実務補習を受ける場合、15日コースで約18万円が必要です。
その後の登録に関しては、費用は発生しません。
中小企業診断士の登録更新
先程も少し触れましたが、中小企業診断士の登録は有効期間が登録日から5年と定められています。
その後も登録を継続したい場合は更新の手続きが必要です。
更新する場合、(1)専門知識補充要件と(2)実務要件の両方を満たす必要があります。
一般的に(1)は理論政策更新(理論政策)研修を修了すること、(2)は実務従事を行うことで満たすケースが多いようです。
登録更新の手続きの方法、研修の内容、かかる費用についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
【あわせて読みたい】中小企業診断士の更新は5年に1回!要件・研修・維持費用は?
まとめ
今回は中小企業診断士の登録に関して解説しました。ポイントをまとめます。
- 中小企業診断士の登録は任意
- 登録には実務補習あるいは実務従事が必要
- 登録しなくても企業コンサルティングなどの業務を行うことはできる
- 登録しなければ中小企業診断士を名乗ることができない
中小企業診断士の登録を行うには、まずは試験を突破する必要があります。
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