インターネットで「中小企業診断士」と検索すると、「なくなる」「食えない」といったキーワードが表示されることがあります。驚いた方も少なくないでしょう。しかし実際は診断士の資格がなくなる予定はありませんし、大きく稼いでいる診断士も珍しくありません。
この記事では、「なくなる」「食えない」という意見がある理由や、大きく稼ぐ方法について解説します。
中小企業診断士は「なくなる」「食えない」のか?
中小企業診断士は中小企業庁が所管する資格で、同庁からは中小企業診断士の資格制度がなくなる予定は一切示されていません。
また、中小企業診断士の収入については、中小企業診断協会が都道府県協会に所属する会員に行ったアンケートが参考になります。
アンケートでは「コンサルティング業務の年間売上(または年収)」について質問しており、年間売上が 1,001万円以上と答えた人は3人に1人の割合(34.0%)でした。
(調査対象者はコンサルティング業務日数の合計が「100日以上」と回答した方)
【参考】一般社団法人 中小企業診断協会「中小企業診断士活動状況アンケート調査」の結果(令和3年5月)
【あわせて読みたい】中小企業診断士の収入・年収はどれくらい?
このような事実がある一方で、なぜ中小企業診断士に対して「なくなる」「食えない」という意見があるのでしょうか?
理由は次の2つと考えられます。
- 独占業務がないから
- 資格は「取る」だけでは意味がないから
独占業務がないから
理由の1つは、中小企業診断士には独占業務がないからです。
取り扱える業務という点では、診断士の資格を持たない一般的な経営コンサルタントと同じ立ち位置です。
独占業務がないことで、独立して集客する際や就職・転職活動において、資格が依頼・採用に有利に働いても「決め手」にはなりづらいという場面はあるかもしれません。
このため、「せっかく資格を取得してもうまみがない」と資格の将来性に疑問を持ち、「なくなる」という意見につながっているのではないでしょうか。
独占業務がない中小企業診断士が仕事を獲得して収入を得るには、自ら行動して営業活動をおこなったり、紹介や協力をしてもらえるように人脈を広げたりする必要があります。
資格を取得すれば協会に所属することができるので、情報収集、人脈づくり、スキルアップの機会を多く得られます。
資格は「取るだけ」では意味がないから
もうひとつの理由は、資格は「取るだけ」では意味がないからです。
どの資格にも共通することですが「取得するだけで今後の集客・収入は安泰」という資格はありません。
中小企業診断士が「食える」か「食えない」かも、本人がいかに資格を活用できるかにかかっています。
では、中小企業診断士の資格を活用するには、どうすればいいのでしょうか?
まず、何のために取るのかを明確にしましょう。目的意識が不明確では資格を取得しても迷走し、「食えない」ことになりかねません。
中小企業診断士を取得すると、経営に関する総合的・体系的な知識が身に付き、経営者に的確な提言をおこなえるようになります。
たとえば、個人の成功・失敗体験や独学での知識といった偏った情報だけをよりどころとしない、客観的な分析・アドバイスができるように資格を取る、といったように目的意識が明確であれば、実力が身につきやすいでしょう。
実力がつけば、当然キャリアや収入にプラスとなります。
そして、「独占業務がないから」の項目でも述べたとおり、仕事を獲得するには営業活動が不可欠です。
資格取得を通じてコンサルティングスキルを身につけていても、手助けを求める人に知られていなければ宝の持ち腐れとなります。
中小企業診断士として活躍できる場面をいかに自分から作っていくかが、「食える」「食えない」を分けるのです。
中小企業診断士は「組み合わせ」で大きく稼げる!
前出のアンケート結果を見ると、中小企業診断士が1,000万円以上を稼ぐこともそう珍しくないことがわかります。
「資格を取得して大きく稼ぎたい」と考えている場合、ただスキルを高めるだけでなく「組み合わせ」の考え方が重要です。
- 得意分野・他の資格と組み合わせる
- さまざまな業務を組み合わせる
得意分野・他の資格と組み合わせる
どんなビジネスでも、他の事業者との差別化が重要です。
中小企業診断士は「自分の得意分野(専門分野)」や「他の資格」と組み合わせることで自分だけの強みを作れます。
とくに独立して活躍していくためには、1つ以上の得意分野があることが望ましいといわれています。
たとえば、営業支援が強みの方は、中小企業診断士の資格を組み合わせて、営業支援やマーケティングのコンサルタントとして活躍できます。
また、人材管理・採用支援が強みの方は、人材活用コンサルタントとして力を発揮できるでしょう。
その際、たとえば人事であれば、社労士資格のように専業の資格と組み合わせることも有効です。
近年ニーズが高まっているのは「IT×中小企業診断士」という組み合わせです。
中小企業でもDX推進の波が押し寄せており、IT導入の助言ができる中小企業診断士が重宝される傾向があります。
スタディング 中小企業診断士講座を利用して合格した方の中にも「ITに強い中小企業診断士」として活躍の幅を広げている方もいらっしゃいます。
さまざまな業務を組み合わせる
中小企業診断士の仕事は、コンサルタント業だけではありません。
セミナー講師業、執筆業、商工会議所・各種中小企業施策に関する公的な業務などを組み合わせて収入を得ている方も大勢います。
自分に合った業務の組み合わせを見つけていくことも、収入アップの大事な要素です。
また、さまざまな業務にチャレンジする中で、強みとなる得意分野が見つかったり、情報収集や人脈づくりにプラスに働いたりして、大きく稼げる将来につながっていくことも十分ありえます。
まとめ
今回は、中小企業診断士に対する「なくなる」「食えない」という誤解について解説しました。
- 中小企業診断士の資格がなくなる予定はない
- 誤解の背景には、独占業務がないことや「資格=安泰」という誤った認識がある
- 稼ぐには営業活動や資格を活用する意識が必要
- 大きく稼ぐには「組み合わせ」が重要
中小企業診断士は、日本版MBA(経営学修士)とも呼ばれる人気資格です。難易度は低くありませんが、社会人が働きながら取得することは十分可能です。ぜひ挑戦してみてください。
NEXT 中小企業診断士の収入・年収はどれくらい? |
PREV 診断士とMBAの違いは何? |