中小企業診断士試験の属性データを見てみると、受験者は男性が圧倒的に多いことが分かります。2017年度中小企業診断士試験における男女の申込者数と合格者数を見てみましょう。
<1次試験>
男性 | 女性 | |
申込者数 | 18,259名 | 1,859名 |
合格者数 | 2,899名 | 207名 |
<2次試験>
男性 | 女性 | |
申込者数 | 4,174名 | 279名 |
合格者数 | 766名 | 62名 |
女性の2次試験合格者、つまり女性中小企業診断士の誕生は、全体の6.3%に過ぎません。実際に中小企業診断士として働く女性の割合は低い傾向で、この業界は「男性社会」とも言われます。
今は女性が積極的に社会進出する時代とも言われ、女性弁護士や女性起業家も増えています。そのため、今後は女性の有資格者が増えたとしてもおかしくはないでしょう。
ただ、中小企業診断士とよく比較される社会保険労務士の受験者層を見てみると、男女比率が6:4程度に割れるなど、女性にも人気が高いことがうかがえます。中小企業診断士と社会保険労務士の違いは、独占業務の有無。後者には、労働社会保険諸法令に基づく書類作成業務や提出手続代行、コンサルティング業務の独占が認められています。独占業務に魅力を感じて資格取得を目指す方も多いため、この違いが女性の間で人気の差を生んでいるのかもしれません。
数は少ないものの、着実に実績を残している女性の有資格者も存在します。活躍する女性診断士に見られる傾向は、豊な経験を通して自分なりの得意分野を持っていることです。
経営コンサルティングと一口に言っても、製造業のコンサルタントもあれば流通業の経営相談もあり、さまざまです。この世界で生きる中小企業診断士は、これまでの業務経験や知識に応じて、得意分野を持っていることが多いという特徴があります。
百貨店・デパートなどで商品販売の仕事に長く携わっていた女性が、中小企業診断士の資格を取得したとしましょう。販売現場での体験や、販売管理のためのノウハウを身に付けた女性中小企業診断士の実務スキルは、小売業での販売戦略プランの作成に生かされるはずです。クライアントも、販売実務や商品管理の経験に乏しい男性診断士より、経験豊富な女性の有資格者に仕事を頼みたいと思うでしょう。大切なのは性別ではなく、中小企業診断士としての経験値や得意分野であると言えるのです。
他にも、女性特有のサービスや、女性コンサルタントが相談を受けやすい業種はたくさんあります。
これらの業種で働いてきた経験を持つ女性診断士であれば、男性に先んじて経営コンサルティングの相談を受けたとしても不思議ではありません。
「女性の数は少ないから、中小企業診断士は女性に向かない」とは言い切れません。中小企業診断士個人が持つ得意分野を生かせれば、男女関係なく活躍できるのが経営コンサルティングの世界です。
特にサービス業などは女性に特化した商品を提供している企業も少なくありません。そうした女性をターゲットとするマーケットでは、女性目線の経営コンサルティングが欠かせないでしょう。女性の視点を第一に成長戦略を描く企業も多いことを考えると、現状は女性診断士が圧倒的に不足しているとも言えるのです。
男性が不得意とする分野を女性がカバーしていく。そんな男女共同で企業の課題を解決していく環境の形成こそ、日本経済にとってプラスと言えるのではないでしょうか。
監修 市岡 久典
中小企業診断士 |
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