
中小企業診断士とITスキルにはどのような相乗効果があるのでしょうか。
IT技術の進歩や企業によるDXの推進によって経営コンサルタントに高度なIT知識が求められるなか、IT系資格とのダブルライセンスの価値も高まっています。
本記事では、中小企業診断士とITスキルの相性や、中小企業診断士とIT系資格のダブルライセンスの価値について解説します。
中小企業診断士の取得を検討している方、資格取得後のキャリアに悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
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中小企業診断士とITスキルは相性がいい?
ここでは、中小企業診断士とITスキルの関係性や相性について、以下のポイントで解説します。
- 診断士試験の合格にはITの知識が必須である
- 診断士1次試験の科目免除を受けられる場合がある
- 掛け合わせることでITコンサルタントとして活躍できる
- IT系の資格を持つ診断士は多い
- エンジニアが診断士を取得すればキャリアアップにつながりやすい
診断士試験の合格にはITの知識が必須である
まず、中小企業診断士試験に合格するにはIT知識の習得が不可欠です。
1次試験の科目に「経営情報システム」があり、IT知識が問われるからです。
「令和5年度中小企業診断士 第1次試験案内・申込書」によると、経営情報システムの内容は「情報通信技術に関する基礎的知識」と「経営情報管理」という2つの分野に分かれています。
「情報通信技術に関する基礎的知識」では、以下の項目が挙げられています。
- 情報処理の基礎技術
- 情報処理の形態と関連技術
- データベースとファイル
- 通信ネットワーク
- システム性能
- その他情報通信技術に関する基礎的知識に関する事項
「経営情報管理」では、以下の項目が挙げられています。
- 経営戦略と情報システム
- 情報システムの開発
- 情報システムの運用管理
- 情報システムの評価
- 外部情報システム資源の活用
- 情報システムと意思決定
- その他経営情報管理に関する事項
IT技術の進歩や企業のDX推進が進む昨今、経営戦略の策定や課題解決にはIT技術の活用が欠かせません。
試験の合格はもちろん、経営コンサルティングの実務においてもIT知識は重要な役割を占めるといえます。
診断士1次試験の科目免除を受けられる場合がある
中小企業診断士の試験には科目免除制度があり、特定の資格を持っていると1次試験の一部科目が免除されます。
「令和5年度中小企業診断士 第1次試験案内・申込書」によると、1次試験科目の「経営情報システム」が免除されるのは以下の方です。
- 技術士(情報工学部門登録者に限る)、情報工学部門に係る技術士となる資格を有する者
- 次の区分の情報処理技術者試験合格者(ITストラテジスト、システムアーキテクト、応用情報技術者、システムアナリスト、アプリケーションエンジニア、システム監査、プロジェクトマネージャ、ソフトウェア開発、第1種、情報処理システム監査、特種)
「経営情報システム」以外の試験科目も、それぞれの対象資格を保有していれば免除が受けられます。
また、中小企業診断士試験では科目合格による免除制度も設けられています。

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掛け合わせることでITコンサルタントとして活躍できる
中小企業診断士の仕事はITスキルと相性がよく、掛け合わせることでITコンサルタントとして活躍できます。
ITコンサルタントは、その名の通りIT領域において企業の経営課題の解決策を提案し、改善に導く仕事です。
企業のIT責任者や経営層から内部のIT事情をヒアリングしたうえで、経営状況や方針を踏まえて解決策を提案する力が求められます。
中小企業診断士が行なう経営コンサルティングにおいて、近年では技術の高度化によってIT領域抜きで事業改革の提案を行なうのは難しくなっています。
ITの専門家として知識・スキルを磨けば、時代に即したアドバイス・サポートが可能になり、コンサルタントとしての人材価値が高まるでしょう。

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IT系の資格を持つ診断士は多い
中小企業診断協会の「中小企業診断士活動状況アンケート調査」結果(令和3年5月)を見ると、IT系の資格を持つ中小企業診断士は多いことがわかります。
回答者のうち、情報処理技術者の資格を持つ方が17.6%、ITコーディネータの資格を持つ方が7.7%でした。
情報処理技術者は1位のファイナンシャルプランナーに次ぐ2位となっており、ITコーディネータとあわせれば全体の25.3%にのぼります。
資格取得の経緯までは明らかにされていませんが、中小企業診断士の仕事とIT系資格の関係性は深いといえそうです。
エンジニアが診断士を取得すればキャリアアップにつながりやすい
中小企業診断士の資格をエンジニアが取得すれば、キャリアアップにつながる可能性があります。
ここでは、中小企業診断士を取得したエンジニアのキャリアとして以下4つのパターンを見ていきましょう。
- 社内でのステップアップ
- ITコンサルタントへの転身
- 将来的なCIOやCTOへの抜擢
- 診断士としての転職・独立
社内でのステップアップ
エンジニアが中小企業診断士を取得すれば、現在の勤め先でのステップアップにつながる可能性があります。
中小企業診断士としての経営に関する知識や分析スキルを身につければ、企業の経営状況をより深く理解できます。
その結果、経営課題を踏まえた業務システムの開発提案などが可能となり、人材としての価値・評価が高まるでしょう。
また、中小企業診断士は難関資格であるため取得したこと自体が評価につながる場合もあります。
ITコンサルタントへの転身
中小企業診断士の資格を取得すれば、エンジニアからITコンサルタントへの転身も可能です。
中小企業診断士は経営コンサルタントとしての活躍が期待される国家資格であり、合格すれば企業の経営分析や成長戦略の策定に必要な知識を備えていると評価されます。
もとから持っているITという専門性に加え、経営全般に関するコンサルティング能力が備われば、さまざまな企業の課題解決をサポートできるでしょう。
将来的なCIOやCTOへの抜擢
中小企業診断士の取得により、将来的にCIO(最高情報責任者)やCTO(最高技術責任者)に抜擢される可能性もあります。
経営者の視点を備えたエンジニアであれば、経営に対する影響力がより大きい仕事を任せたいと考えるのは自然な流れです。
ほかのエンジニアとの大きな差別化につながるでしょう。
診断士としての転職・独立
中小企業診断士を取得すれば、資格を活かした転職や独立ができる可能性もあります。
多数のエンジニアがいるなか、経営全般に精通している人材となれば転職市場で高い評価を受けられるでしょう。
また、コンサルタントとしての実務経験を積み、人脈を形成できれば、将来的な独立も視野に入ります。
ITという強みがあることで特定の企業・担当者に対する大きなアピールとなり、仕事の獲得につながりやすくなります。

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中小企業診断士とIT系資格(ITパスポート・ITストラテジストなど)のダブルライセンスは意味がある?
ここまで、中小企業診断士とITスキルの関連性について見てきました。
では、ITパスポートやITストラテジストなどIT系資格と中小企業診断士のダブルライセンスには意味があるのでしょうか。
まずITパスポートについては、先に取得することで中小企業診断士試験の対策がしやすくなるでしょう。
ITパスポートはすべてのビジネスパーソンを対象としたITの基礎知識が問われる試験です。
ITパスポートの知識を身につけたあとであれば、中小企業診断士試験の科目である「経営情報システム」の勉強もスムーズに開始できるはずです。
ただし、内容が基礎的であるためダブルライセンスとしての相乗効果はあまり大きくないでしょう。
一方、ITストラテジストとのダブルライセンスであれば転職やキャリアアップに有効だといえます。
ITストラテジストは企業の経営戦略に基づき、ITを活用した基本戦略の策定・提案・推進などを担います。
中小企業診断士の必須科目としてのIT知識だけでなく、さらに高い専門性を有しているという印象を与え、転職の成功や経営コンサルタントとしての仕事の獲得につながりやすくなるでしょう。
また、一部のIT系資格は中小企業診断士1次試験の科目免除につながります。
具体的には、ITストラテジストや応用情報技術者など一部区分の情報処理技術者試験合格者は、「経営情報システム」が科目免除となっています。
先に取得しておけば、中小企業診断士の試験対策において負担軽減につながるでしょう。

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中小企業診断士試験の難易度は?
中小企業診断士は難易度の高い試験で、合格に必要な勉強時間は1,000時間が目安といわれています。
1次試験と2次試験で構成されており、全体の合格率は5%前後と高くありません。
学習開始から1年で合格を目指す場合、1日3時間の勉強を継続する必要があります。
仕事と両立させながら1日3時間の勉強時間を確保するには、スキマ時間などを活用して計画的・効率的に学習を進めることが大切です。

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まとめ
本記事では、中小企業診断士とITスキルの相性や、中小企業診断士とIT系資格のダブルライセンスの価値について解説しました。
ポイントをまとめると、以下の通りです。
- 中小企業診断士試験の合格にIT系の知識は必須である
- IT系の特定資格を保有していると中小企業診断士の一部科目免除を受けられる
- IT知識を持つ中小企業診断士は「ITコンサルタント」として活躍できる
- エンジニアが中小企業診断士を取得すれば、ステップアップにつながる可能性がある
- IT系資格のなかでも、ITストラテジストと中小企業診断士のダブルライセンスは有効
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