
経営に関する高度な知識とスキルを証明する「中小企業診断士」と「MBA」は、社会人のキャリアアップに役立つ資格です。
中小企業診断士とMBAのダブルライセンスは、市場価値を高め、キャリアの可能性を広げます。
1次試験に合格し、養成課程付きMBAを修了すれば、両方の資格を取得できます。
一方で、取得にかかる手間や費用を考えると、万人におすすめできるものではありません。
本記事では、それぞれの資格の概要をおさらいした上で、ダブルライセンスのメリットや取得方法、注意点をご紹介します。
中小企業診断士とMBAの概要と難易度ついておさらい
中小企業診断士とMBAは、いずれも経営に関する高度な知識やスキルを証明する資格・学位です。
それぞれの資格・学位ごとに性質や難易度は大きく異なるため、ダブルライセンスを目指す前に、特徴を理解しておきましょう。
中小企業診断士 | MBA | |
---|---|---|
概要 | 中小企業の経営課題を診断し、改善策を提案する専門家 | 経営学の大学院修士課程を修了することで得られる学位 |
難易度 | 1次試験が約27.5%、2次試験は約18.7% | 倍率が5倍を超える学校もあれば、1倍の学校もあるため一概には言えない |
キャリアパス | 独立開業、経営企画部門やコンサルティング部門への転職 | コンサルティングファーム、金融機関、大手企業の経営企画部門 |
中小企業診断士:国家資格としての権威性が手に入る
中小企業診断士は、中小企業の経営課題を診断し、改善策を提案する専門家です。国家資格であり、権威性と信頼性が高く評価されています。
<中小企業診断士> 中小企業の経営者等からの依頼に応じて、企業の経営内容を診断し、改善方法を提案して支援する仕事。 |
【出典】厚生労働省「中小企業診断士」
中小企業診断士試験は難関であり、幅広い知識と論述能力が求められます。令和6年度の統計資料によると、1次試験の合格率は約27.5%、2次試験は約18.7%です。
合格に必要な勉強時間は1,000時間以上とも言われており、効率的な学習計画と継続的な努力が不可欠です。

中小企業診断士合格に必要な勉強時間は1,000時間!1次・2…
中小企業診断士の合格に必要な勉強時間は「1,000時間」が目安とされています。つまり、1日に2時間の勉強時間が確保できたとして、1年以上の学習が必要です。1…
中小企業診断士の合格に必要な勉強時間は「1,000時間」が目…
診断士の具体的な業務内容は、経営コンサルティング、経営戦略の策定、事業計画の立案、補助金・助成金の申請支援など、多岐にわたります。
また、中小企業診断士の資格は、独立開業だけでなく、企業内でのキャリアアップにも有利です。
特に、経営企画部門やコンサルティング部門など、専門知識を活かせる部署での活躍が期待されます。

中小企業診断士の仕事内容とは?取得の難易度や年収、向いている…
中小企業診断士は、中小企業の経営課題を診断し、改善に向けた助言を行う専門家です。仕事内容は、経営コンサルティングをはじめ、経営診断書や改善計画書の作成など多…
中小企業診断士は、中小企業の経営課題を診断し、改善に向けた助…
MBAとは:濃密な学習と人脈形成ができる
MBA(経営学修士)は、経営学の大学院修士課程を修了することで授与される学位です。
MBAでは、高度な経営知識に加えて、リーダーシップや戦略的思考力も身につきます。また、スクール内での人脈形成も大きな特徴の一つです。
MBAの難易度は、国内外のプログラムや大学院によって異なります。倍率が5倍を超える学校もあれば、ほぼ競争のない学校もあり、一概に比較することはできません。
MBAプログラムでは、ケーススタディやグループワークを通じて、実践的なスキルを磨けます。
特に、実際のビジネスシーンを想定したケーススタディでは、企業の経営課題を議論し、解決策を導き出す力が養われます。
キャリアパスは多岐にわたり、コンサルティングファーム、金融機関、大手企業の経営企画部門など、さまざまな分野での活躍が期待できるでしょう。
一方で、数百万円ともいわれる費用やビジネススクール・大学院での学位取得に要する期間を考えると、簡単におすすめできるものではありません。
働きながら実務にプラスアルファとなる資格を取りたいのであれば、中小企業診断士の取得を優先すべきだといえるでしょう。
中小企業診断士とMBAのダブルライセンスのメリット
中小企業診断士とMBAのダブルライセンスを取得することで得られるメリットは数多くあります。ここからは、代表的な3つのメリットをご紹介します。
▼中小企業診断士とMBAのダブルライセンスのメリット
- 高いレベルの会社経営に関する全体的な知識・スキルが身に付く
- 独立、キャリアアップ、キャリアチェンジのハードルが下がる
- 労働市場における市場価値が上がる
高いレベルの会社経営に関する全体的な知識・スキルが身に付く
ダブルライセンスを取得することで、中小企業診断士としての中小企業に対する深い理解と、MBAで得られるグローバルな視点や高度な経営戦略の知識を身につけることができます。
中小企業診断士の学習では、企業の現場に密着した経営改善の知識に加え、具体的な事例に基づく実践的なスキルが養われます。
一方、MBAプログラムでは、ケーススタディやグループワークを通じて、戦略立案、マーケティング、財務分析など、経営全般にわたる高度な知識を体系的に習得できます。
2つの資格の知識とスキルを組み合わせることで、理論と実践の両面から企業経営を深く理解し、より的確な判断を下せるようになるでしょう。
独立、キャリアアップ、キャリアチェンジのハードルが下がる
ダブルライセンスを取得することで、キャリアの選択肢が大きく広がります。
独立開業、企業内でのキャリアアップ、新たな分野へのキャリアチェンジなど、さまざまな可能性が開けるでしょう。
例えば、中小企業診断士として独立開業を目指す場合、MBAで培った高度な経営知識や幅広い人脈が強力な武器となります。
企業内でキャリアアップを目指す際には、経営企画部門やコンサルティング部門など、専門性を活かせる部署への異動や昇進に有利に働くことが期待できます。
さらに、異業種へのキャリアチェンジを検討する際にも、ダブルライセンスは大きなアピールポイントとなります。
経営に関する高度な専門性と幅広い知識を備えた人材として、さまざまな企業から求められるはずです。

中小企業診断士の資格は役に立つ!役に立たないといわれる2つの…
中小企業診断士の資格に興味があるものの、具体的にどう役に立つのかわからない方もいるでしょう。メリットを理解することで、資格取得に向けたモチベーションも高まり…
中小企業診断士の資格に興味があるものの、具体的にどう役に立つ…
労働市場における市場価値が上がる
労働市場において、ダブルライセンスは非常に高く評価されます。
企業は、高度な経営知識と実践的なスキルを兼ね備えた人材を常に求めており、ダブルライセンスはまさにそのニーズに応える存在です。
特に近年、企業はグローバルな視点と高度な経営知識を持つ人材を重視する傾向にあります。
中小企業診断士とMBAのダブルライセンスは、こうした市場のニーズに応えることができる、非常に市場価値の高い資格です。
例えば、コンサルティングファームや金融機関では、高度な経営知識と分析能力を備えた人材が求められています。
また、大手企業の経営企画部門や海外事業部門でも、グローバルな視点と経営戦略の知識を持つ人材が求められています。
【中小企業診断士とMBA】ダブルライセンスを狙ううえでの注意点
中小企業診断士とMBAのダブルライセンスは、経営知識と実践力の両面を強化できる魅力的な組み合わせです。
しかし、両者を同時に目指すには、学習時間や費用の負担が大きく、計画的なスケジューリングが求められます。
中小企業診断士の合格には約1,000時間の勉強が必要とされ、MBAも講義や課題、プロジェクトワークなどで多くの時間を要します。
費用面でもMBAは高額な学費がかかるため、経済的な負担も軽視できません。
また、双方の資格で得られる経営の知識は重複する部分が多い点も押さえておく必要があります。
まだどちらの資格も取得していないなら、まずは国家資格としての信頼性が高く、実務にも直結しやすい中小企業診断士の取得を優先するのが現実的です。
診断士資格を取得したうえで、その知識や経験を活かしながらMBAに進むことで、より効果的にキャリアアップを図ることができます。
将来的に経営分野での専門性を高めたい方は、中小企業診断士を出発点とするルートを検討してみてください。
中小企業診断士とMBAのどちらかを持っている人がダブルライセンスを狙うメリット
ここからは、すでに中小企業診断士とMBAのどちらかを持っている人がダブルライセンスを狙うメリットをご紹介します。
▼MBAホルダーが中小企業診断士を取得するメリット
- 学んだ知識を1次試験に活かせる
- 2次試験の論述対策でMBAの経験が活きる
▼中小企業診断士合格者がMBAを取得するメリット
- 中小企業診断士1次試験合格者は、MBA修了で2次試験が免除される
- MBA入学後の活動に中小企業診断士の知識が役立つ
- MBAで専門分野の高度な知識を習得可能である
- 人的ネットワークが構築できる
MBAホルダーが中小企業診断士を取得するメリット
まず、MBAを取得した人が中小企業診断士を取得するメリットをご紹介します。
学んだ知識を1次試験に活かせる
MBAで学んだ経営知識は、中小企業診断士の1次試験で出題される内容と密接に関連しています。
特に、経営戦略、財務会計、マーケティングなどの分野では、MBAの学習経験が試験対策に直結するでしょう。
MBAでは、ケーススタディやグループワークを通じて、実践的な問題解決能力を養います。
こうした経験は、1次試験で求められる事例分析などに活かせます。
また、MBAで培った幅広い知識があれば、単に試験に合格するだけでなく、本質を理解した深みのある解答ができるようになるでしょう。
2次試験の論述対策でMBAの経験が活きる
中小企業診断士の2次試験では、与えられた事例をもとに企業の課題を分析し、具体的な改善策を提案する論述問題が出題されます。
この試験において、MBAで培った知識と経験は大きな強みとなるでしょう。
MBAでは、戦略立案、組織運営、マーケティングなど、多岐にわたる分野の知識を習得します。
これにより、2次試験の事例課題を的確に把握し、適切な解決策を導き出す力が身につきます。
また、MBAのカリキュラムでは、ケーススタディを通じて、実際のビジネスシーンで直面する課題の解決策を検討する訓練を行います。
この経験は、2次試験で求められる実践的な問題解決能力の向上に大いに役立ちます。
中小企業診断士合格者がMBAを取得するメリット
次に、中小企業診断士合格者がMBAを取得するメリットをご紹介します。
中小企業診断士1次試験合格者は、MBA修了で2次試験が免除される
中小企業診断士の1次試験に合格している場合、中小企業診断士養成課程が併設されたMBAを修了することで、2次試験が免除されます。
この制度を活用すれば、2次試験対策にかかる時間と労力を大幅に削減できます。
また、MBAで得られる実践的な知識とスキルは、中小企業診断士としての実務にも大いに役立つでしょう。
MBA入学後の活動に中小企業診断士の知識が役立つ
MBAの授業では、ケーススタディやグループワークが行われます。
中小企業診断士の学習で得た知識は、MBAの授業でも非常に役に立ちます。
例えば、企業の財務分析やマーケティング戦略の立案などの分野では、中小企業診断士の知識が、MBAの授業で求められる分析力や提案力の向上に活かせます。
また、中小企業診断士の資格を持つことで、グループワークにおいてリーダーシップを発揮しやすくなり、他の学生から信頼を得る上でも有利に働くでしょう。
MBAで得た知識と中小企業診断士の知識を組み合わせることで、提案力と実践的な問題解決能力を養うことができます。
MBAで専門分野の高度な知識を習得可能である
MBAでは、経営戦略、マーケティング、ファイナンスなど、幅広い分野の専門知識を体系的に深く学べます。
中小企業診断士の学習で得た知識を基盤とし、MBAでさらに専門性を高めることで、ビジネスにおける具体的な専門領域のプロを目指せるでしょう。
例えば、ファイナンスに特化したMBAプログラムを選択すれば、企業の財務戦略やM&Aに関する高度な知識を習得できます。
また、マーケティングに強みを持つMBAプログラムでは、デジタルマーケティングやブランド戦略の最先端の知識を学ぶことができます。
MBAで得た専門知識は、中小企業診断士としてのコンサルティング業務においても、より高度な提案をするうえでも役立ちます。
人的ネットワークが構築できる
MBAは、多様なバックグラウンドを持つ学生や教員が集う場です。
授業やグループワーク、課外活動を通じて、幅広い人的ネットワークを築くことができます。
MBAで培った人脈は、将来のキャリアにおいて貴重な財産です。
同じ目標を持つ仲間と交流することで、お互いに刺激を受けながら成長できます。
また、さまざまな業界で活躍する卒業生とのつながりは、新しい就職の機会になったり、ビジネスチャンスに繋がったりすることもあります。
中小企業診断士としての活動においても、MBAで築いた人脈は大きな強みになります。
クライアント獲得や案件紹介、共同プロジェクトの立ち上げなど、実務面で直接役立つだけでなく、多様な専門性を持つ仲間との協業により、より価値の高いコンサルティングを提供できるようになるでしょう。
中小企業診断士とMBAのダブルライセンスを最短で狙う方法
中小企業診断士とMBAのダブルライセンスを最短で狙う方法として、以下3つのSTEPをご紹介します。
- 【STEP1】中小企業診断士の1次試験を突破する
- 【STEP2】2次試験が免除される養成課程のある大学院に入学する
- 【STEP3】中小企業診断士とMBAの両方を取得する
【STEP1】中小企業診断士の1次試験を突破する
ダブルライセンス取得のファーストステップは、中小企業診断士の1次試験の突破です。
1次試験では、以下の7科目出題されます。
- 経済学・経済政策
- 財務・会計
- 企業経営理論
- 運営管理(オペレーション・マネジメント)
- 経営法務
- 経営情報システム
- 中小企業経営・中小企業政策
合格するには、各科目の出題範囲を把握し、効率的に学習を進めることが大切です。
また、過去問を繰り返し解くことで、出題傾向を把握し、一次試験合格を目指しましょう。
1次試験対策としては、オンライン講座や予備校を利用することも一つの方法です。
講座や予備校では、わからないことをすぐに質問できたり、試験のポイントを詳しく解説してもらえたりするので、独学よりも効率的に学習を進めることができます。
各科目の専門家から直接指導を受けることで、合格への近道となるでしょう。

中小企業診断士1次試験合格者に新名称!1次試験合格のメリット…
中小企業庁より、中小企業診断士1次試験の合格者および、科目別の合格者に向けて新たな名称を適用することが令和3年4月20日に発表されました。新しい名称が適用さ…
中小企業庁より、中小企業診断士1次試験の合格者および、科目別…
【STEP2】2次試験が免除される養成課程のある大学院に入学する
中小企業診断士の1次試験合格者は、中小企業診断士養成課程が併設されたMBAを修了することで、2次試験が免除されます。この制度を活用すれば、試験対策にかかる時間と労力を大幅に削減できます。
MBAのプログラム内容や期間は大学院ごとに異なるため、事前に情報を収集し、自身のキャリアプランに合ったプログラムを選択することが重要です。
また、MBAでは高度な経営知識の習得に加え、人的ネットワークの構築も期待できます。
多様なバックグラウンドを持つ学生や教員との交流は、将来のキャリアにおいて貴重な財産となるでしょう。

中小企業診断士試験の免除制度を解説!資格保有・対象科目は?
中小企業診断士の1次試験には、所定の資格を保有している人や科目合格した人に対して、一部の科目を免除する制度があります。また、2次試験や資格の登録に必要な実務…
中小企業診断士の1次試験には、所定の資格を保有している人や科…
【STEP3】中小企業診断士とMBAの両方を取得する
中小企業診断士養成課程が併設されたMBAを修了することで、中小企業診断士とMBAの両方の資格を取得できます。
ダブルライセンスの取得により、専門知識を深めると同時に、キャリアの選択肢を大きく広げることが可能です。
ダブルライセンスを活かせば、中小企業診断士としてのコンサルティング業務にとどまらず、企業の経営企画や事業開発など、より幅広い分野で活躍できます。
また、MBAで得た知識とスキルは、グローバルなビジネスシーンでも価値があります。
国際的な視点と専門的なコンサルティング能力を兼ね備えた人材として、多様な場面で力を発揮できるでしょう。
まとめ:中小企業診断士とMBAのダブルライセンスを狙うには
中小企業診断士とMBAのダブルライセンスのメリット、ダブルライセンスを狙う方法、注意点をご紹介しました。
中小企業診断士とMBA、双方の資格は、現代のビジネスシーンにおいて高い評価を得ています。
中小企業診断士は「経営コンサルタントとしての唯一の国家資格」、MBAは「グローバルに通用するビジネス資格」として知られており、どちらもキャリアアップに有効な資格であるといえます。
ダブルライセンスを目指すことで専門知識を深め、市場価値を高めながらキャリアの可能性を広げていきましょう。
ただし、中小企業診断士とMBAのダブルライセンス取得には多くの費用・時間を要します。
実務に役立つ経営の資格を取得したいのであれば、まずは費用・時間の面で比較的取得しやすい中小企業診断士への挑戦から始めるのがよいでしょう。
経営コンサルタントとして唯一の国家資格であるため、中小企業診断士だけでも第三者からの評価は十分高まります。
中小企業診断士の資格取得を目指す方は、スタディングの中小企業診断士講座がおすすめです。
スタディングの講座は従来の資格講座と異なり、スキマ時間を有効活用できる学習システムを提供しています。
徹底的な過去問分析により、合格に直結する知識だけを厳選したカリキュラムとなっているため、時間のない方でも効率よく学習を進められます。
中小企業診断士試験の対策をお考えの方は、まずスタディングの無料体験から始めてみてはいかがでしょうか。