中小企業診断士とUSCPAはどっちを取るべき?
中小企業診断士とUSCPA(米国公認会計士)について、ここでは以下のポイントで比較します。
- 仕事内容
- 就職・転職先
- 目安年収
- 試験内容
- 取得にかかる費用
- 取得難易度
- 取得までのプロセス
仕事内容を比較
中小企業診断士とUSCPAの仕事内容を比較してみましょう。
国家資格である中小企業診断士は、企業の課題を抽出して具体的な改善策を提案することが主な役割です。
日本版のMBA(経営学修士)ともいわれ、経営戦略の立案や財務分析といった幅広い領域でアドバイスを行い、企業経営を支援します。
企業経営の専門知識だけでなく、実情に即したアドバイスができる提案力やコミュニケーションスキルも求められる仕事です。
関連記事:中小企業診断士とは?取るべき人や取得メリット、試験のポイントなどを解説
一方、USCPA(U.S. Certified Public Accountant:米国公認会計士)は米国各州が認定する公認会計士の資格で、その名の通り会計関連の業務を担います。
世界でも知名度の高い資格であり、英語での実務や米国の法に基づいた会計業務ができるため、グローバルな活躍ができる資格といえるでしょう。
経営全般に関する幅広い知識をもとにコンサルティングをするのが中小企業診断士、会計領域に特化しつつグローバルに活躍できるのがUSCPAだといえます。
就職・転職先を比較
続いて、中小企業診断士とUSCPAの就職・転職先を比較してみましょう。
中小企業診断士 | USCPA | |
主な就職・転職先 | ・コンサルティング会社
・一般企業 ・会計事務所 ・中小企業診断士事務所 ・公的機関 ・金融機関 |
・監査法人
・税理士法人 ・会計事務所 ・外資系企業 ・コンサルティング会社 ・金融機関 |
中小企業診断士の代表的な就職・転職先はコンサルティング会社です。
一般企業や、商工会議所といった公的機関などに転職するケースもあり、いずれの職場でも資格を活かした企業の支援活動が主な役割となるでしょう。
一方、USCPAの代表的な就職・転職先は監査法人や会計事務所です。
外資系企業やコンサルティング会社などで活躍するケースもあります。
目安年収を比較
次に、中小企業診断士とUSCPAの目安年収を比較してみます。
中小企業診断協会が公表している「中小企業診断士活動状況アンケート調査(令和3年5月)」によると、中小企業診断士の「年間売上または年収」は501〜800万円以内がもっとも多いという結果でした。
年収だけでなく年間売上も含めた収入額ですが、コンサルティング業務は大きな経費を要しない傾向にあるため、年収の目安として参考にできるでしょう。
一方、USCPAの目安年収は400〜800万円程度といわれています。
企業規模や就く役職によって変動しますが、おおむね中小企業診断士と同水準といえるかもしれません。
なお、中小企業診断士とUSCPAはいずれもニーズのある資格であり、仕事次第で年収1,000万円以上の高収入を得られる可能性は十分にあります。
関連記事:中小企業診断士の現実的な年収は?より高い年収を目指すための方法も紹介
試験内容を比較
次に、中小企業診断士とUSCPAの試験内容を比較してみましょう。
中小企業診断士 | USCPA | |
受験資格 | なし | 出願する州ごとに条件が異なる |
試験頻度 | 年1回 | 随時受験可能 |
試験科目 | 【1次試験】
経済学・経済政策 財務・会計 企業経営理論 運営管理 経営法務 経営情報システム 中小企業経営・政策 【2次試験】 組織 マーケティング・流通 生産・技術 財務・会計 |
【必須科目】
FAR(財務会計) AUD(監査と諸手続き) REG(諸法規と税法) 【選択科目】 BAR(ビジネスの分析・報告) ISC(情報のシステム・統制) TCP(税法遵守・税務計画) |
中小企業診断士は年1回の試験である一方、USCPAは随時受験が可能です。
中小企業診断士の出題範囲は幅広く、経営に関連する分野を網羅的に学習する必要があります。
一方、USCPAは財務会計・監査・税法といった分野に特化した試験であり、すべて英語で出題されるのが特徴です。
取得にかかる費用を比較
中小企業診断士とUSCPAの取得にかかる費用の目安について、比較してみましょう。
中小企業診断士 | USCPA | ||
受験料 | 1次試験:1万4,500円
2次試験:1万7,800円 |
35万円~45万円
※為替レート・州で異なる |
|
学習代 | 独学 | 3万~5万円 | 30万~45万円 |
講座やスクール | 6万~30万円 | 33万~62万円 |
中小企業診断士は比較的受験料が安く、独学で受験する場合はテキスト購入費用として3万〜5万円ほどしかかかりません。
講座やスクールを利用する場合でも、オンライン講座などであれば6万円~、スクールに通う場合は30万円程度と考えておくとよいでしょう。
一方、USCPAは受験料と学習代を合わせると100万円を超える費用がかかり、独学でもテキストが高額になるため、それほど費用は抑えられません。
資格の取得にかかる費用は、中小企業診断士よりもUSCPAのほうが高額だといえるでしょう。
取得難易度を比較
中小企業診断士とUSCPAの取得難易度について、合格率と勉強時間の観点から比較してみましょう。
中小企業診断士 | USCPA | |
合格率 | 1次試験:23.5~42.5%
2次試験:18.3~18.9% |
科目別:30~40% |
勉強時間 | 1,000時間 | 1,000~1,500時間 |
中小企業診断士は1次試験が23.5~42.5%、2次試験が18.3~18.9%で推移しており、両者を合わせた最終的な合格率は5%前後となっています。
関連記事:中小企業診断士の難易度は?受験生の苦労は「勉強時間の確保」
一方、USCPAの科目別合格率は30〜40%程度といわれています。
数字だけ見ると高く見えますが、科目別の数字であることから最終的な合格率は低いことが想定されます。
勉強時間の目安で見ると、中小企業診断士が1,000時間、USCPAが1,000~1,500時間です。
会計領域に特化はしているものの、専門性の高さや英語力が必要であることから、より多くの対策が必要だと考えられます。
取得までのプロセスを比較
中小企業診断士とUSCPAの取得プロセスを比較してみましょう。
一般的な中小企業診断士取得までのプロセスは、以下の通りです。
- 1次試験に合格する
- 2次試験(筆記)に合格する
- 2次試験(口述)に合格する
- 実務補習を受ける
- 中小企業診断士に登録する
中小企業診断士は年齢や学歴といった受験資格が設定されておらず、誰でも受験可能です。
試験は1次・2次に分かれており、2次試験(口述)の合格後に実務補修を受ければ中小企業診断士としての登録が可能になります。
なお、2次試験と実務補習を受ける代わりに、中小企業診断士養成課程に進んで登録するルートもあります。
関連記事:中小企業診断士の登録申請の流れ・費用は?登録しないとどうなる?
次に、USCPAの一般的な取得プロセスを見てみましょう。
- 出願州の受験資格を満たす
- 4科目の試験に合格する
- ライセンス取得に必要な実務要件を満たす
- ライセンスを申請する
- ライセンスを取得する
USCPAを受験するには、出願州における学位や単位の要件を満たす必要があります。
選択科目を含む4科目に合格したあと、実務要件を満たしたうえでライセンスを申請するといった流れです。
中小企業診断士とUSCPAはそれぞれどんな人におすすめ?
ここまでご紹介してきた違いを踏まえ、中小企業診断士とUSCPAがそれぞれどんな人におすすめなのか見てみましょう。
中小企業診断士がおすすめな人
中小企業診断士がおすすめなのは、企業の経営状況を多角的に分析し、さまざまな側面から企業支援を行いたいと考えている人です。
中小企業診断士になれば、企業が直面する課題への解決策や経営戦略の立案、組織改善の提案といった具体的なサポートが提供でき、企業の成長に貢献できます。
キャリアとしては、経営知識を身につけてコンサルティング会社に就職・転職したい人や、独立開業を視野に入れている人におすすめです。
USCPAに比べると取得にかかる費用が小さいことも、中小企業診断士を選ぶメリットの一つといえるでしょう。
関連記事:中小企業診断士のメリット・デメリットは?働きながら勉強するコツも解説
USCPAがおすすめな人
USCPAがおすすめなのは、会計・財務分野に特化したスキルを身につけたい人や、グローバルに活躍したいと考えている人です。
USCPAを取得すれば、グローバル企業や外資系企業、海外企業をクライアントに持つ監査法人などに就職・転職できる可能性が高まります。
また、米国会計のスペシャリストとして外資系企業などに就職・転職し、高い年収を得られる可能性もあるでしょう。
USCPAの資格取得にかかる費用は小さくないものの、会計に強いグローバル人材として活躍したい人にメリットの大きい資格です。
中小企業診断士とUSCPAのダブルライセンスはどう?
最後に、中小企業診断士とUSCPAのダブルライセンスについて、メリットや取得の順番を見てみましょう。
ダブルライセンスのメリットは?
ダブルライセンスとは、2つの資格を掛け合わせて相乗効果を生み出すことを指します。
中小企業診断士とUSCPAのダブルライセンスは簡単ではありませんが、実現できれば以下のようなメリットが得られます。
- 英語・会計に強いコンサルタントになれる
- 日米のビジネスに精通した人材になれる
英語・会計に強いコンサルタントになれる
中小企業診断士とUSCPAのダブルライセンスであれば、英語力と会計の専門知識を兼ね備えたコンサルタントとして活躍できます。
グローバルに事業を行う企業のコンサルティングが可能となり、クライアントの幅が広がるでしょう。
英語力と高度な会計知識は経営コンサルタントのなかでも差別化ポイントとなり、独立開業する際にも大きな強みになるはずです。
日米のビジネスに精通した人材になれる
中小企業診断士とUSCPAの資格をもっていれば、日米両方のビジネスに精通している人材とみなされます。
中小企業診断士の資格取得を通じて日本企業の実態や商習慣を理解でき、USCPAでは米国の会計基準や税務を学べます。
日米のビジネスに関する知識を習得できるため、活躍の幅が大きく広がるでしょう。
どっちを先に取るべき?
中小企業診断士とUSCPAのダブルライセンスを考える場合、どちらを先に取るべきか悩む方もいるでしょう。
ここでは、以下2つの考え方をご紹介します。
- 中小企業診断士から取得するのがスムーズ
- 英語や会計のスキルを早く習得したい場合はUSCPAを優先
中小企業診断士から取得するのがスムーズ
ダブルライセンスを目指すなら、基本的には中小企業診断士から取得するのがスムーズです。
中小企業診断士の試験範囲は幅広く、その一部がUSCPAの試験範囲と重複しています。
中小企業診断士としての知識はUSCPAの学習にも役立つため、先に中小企業診断士の資格を取っておくことでUSCPAの対策を効率的に進められるでしょう。
また、中小企業診断士の取得を通じて経営全般の知識を身につけたあとにUSCPAで会計の専門性を高めるといった流れのほうが、体系的で効率的な学習といえます。
受験費用や必要な勉強時間を比べても、中小企業診断士のほうがUSCPAよりも少ない傾向にあるため、特にこだわりがなければ中小企業診断士から取得するほうがスムーズだと考えられます。
英語や会計のスキルを早く習得したい場合はUSCPAを優先
ただし、英語力や会計知識を早く習得したい場合は、USCPAの取得を優先するのがおすすめです。
USCPAは米国の公認会計士資格であり、英語と会計知識について深く学べます。
USCPAに合格すれば会計に強いグローバル人材として高く評価されるため、そのような働き方を望んでいる場合は得られるメリットが大きいでしょう。
そのあとで中小企業診断士を取得すれば、会計以外の経営に関する知識が備わり、より幅広く活躍できるようになるはずです。
まとめ
本記事では、中小企業診断士とUSCPAの違いやダブルライセンスのメリットをご紹介しました。
記事のポイントをおさらいしましょう。
- 中小企業診断士は経営全般に関する知識を身につけ、企業経営をサポートする
- USCPAは米国基準での会計・税務に関する知識を身につけ、監査業務などを行う
- 費用や勉強時間の観点では、USCPAのほうが少しハードルが高いと考えられる
- 経営コンサルタントとして活躍したいなら中小企業診断士、会計に強いグローバル人材として活躍したいならUSCPAがおすすめ
- ダブルライセンスにすることで、日米のビジネスに精通した、英語と会計に強いコンサルタントとして高く評価される
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