中小企業診断士の科目合格を徹底解説!何年有効?科目合格率は?

中小企業診断士の科目合格を徹底解説!何年有効?科目合格率は?

中小企業診断士試験には「科目合格」という制度があり、得点基準を満たした科目は翌年と翌々年に免除申請が可能です。

戦略的に活用すれば、1次試験の負担を軽減しながら合格に近づくことができます。

一方で、有効期限という注意点もあるため、メリット・デメリットを踏まえて学習計画を立てる必要があります。

そこで、科目合格の仕組みや有効期間、実際の活用パターン、最新の科目別合格率などを詳しく解説します。

中小企業診断士試験の科目合格とは?

中小企業診断士試験の1次試験には科目合格の制度があります。

科目合格の場合、翌年度翌々年度に1次試験を受験する際、事前に申請しておけば該当科目の受験が免除されます。

科目合格の合格基準

中小企業診断士試験の1次試験における科目合格の合格基準は、満点の60%以上(60点以上)となっています。

前提となる1次試験の合格基準は下記のとおりで、この2つを同時に満たせなかった場合、1次試験は不合格となります。

(1)総点数の60%以上(420点以上)であること
(2)1科目でも満点の40%未満(40点未満)のないこと

しかし「(1)は満たせなかったものの、個別の科目では満点の60%以上(60点以上)取れているものもある」場合、その科目は「科目合格」となります。

※厳密には、上記を基準とし、「試験委員会が相当と認めた得点比率」となっています。

科目合格の具体例

科目合格について具体例で見てみましょう。1次試験は次の7科目で実施されます。

中小企業診断士試験1次試験

日程試験科目配点実施時間
1日目A.経済学・経済政策100点09:50~10:50(60分)
B.財務・会計100点11:30~12:30(60分)
C.企業経営理論100点13:30~15:00(90分)
D.運営管理100点15:40~17:10(90分)
2日目E.経営法務100点09:50~10:50(60分)
F.経営情報システム100点11:30~12:30(60分)
G.中小企業経営・政策100点13:30~15:00(90分)

ある受験者が、下記の得点だったとします。

科目特典合格基準
A.経済学・経済政策40点×
B.財務・会計40点×
C.企業経営理論70点科目合格
D.運営管理30点×
E.経営法務60点科目合格
F.経営情報システム80点科目合格
G.中小企業経営・政策70点科目合格
合計390点×

1次試験の合格基準と照らし合わせてみると、「(1)総点数の60%以上(420点以上)」は満たせていません。つまり1次試験は不合格です。

しかし科目C、E、F、Gはいずれも「満点の60%以上(60点以上)」を取れているため、科目合格となります。

これらの科目は、翌年度翌々年度に1次試験を再受験する場合、事前に申請しておけば当該科目が免除されます。

科目合格による免除時の合格基準

では、翌年度に科目合格による免除を利用して1次試験に再チャレンジした場合、合格基準はどうなるのでしょうか?

結論から述べると、免除されていない科目で(1)と(2)を満たせば1次試験合格となります

先ほどの受験者のケースで考えてみると、科目C、E、F、G(4科目)は科目合格のため免除されます。

受験するのは科目A、B、Dで、これら3科目について(1)総点数が60%以上(180点以上)であり、(2)1科目も満点の40%未満(40点未満)がない場合、1次試験合格となります。

1次試験の科目別合格率

令和6年度(2024年度)の中小企業診断士試験1次試験の科目別合格率は下記のとおりです。

科目科目受験者数(A)科目合格者数(B)科目合格率(B/A)
A.経済学・経済政策17,3832,48714.3%
B.財務・会計17,1082,58415.1%
C.企業経営理論16,7736,69639.9%
D.運営管理17,4174,66326.8%
E.経営法務14,9761,98113.2%
F.経営情報システム16,6992,60315.6%
G.中小企業経営・政策16,1758995.6%

【参考】一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会「令和6年度 中小企業診断士第1次試験に関する統計資料」

令和4年度(2022年度)から令和6年度(2024年度)までの科目別合格率一覧は下記のとおりです。

科目令和3(2021)令和4(2022)令和5(2023)令和6(2024)
A.経済学・経済政策21.0%10.5%13.1%14.3%
B.財務・会計19.6%13.3%14.2%15.1%
C.企業経営理論20.0%17.3%19.9%39.9%
D.運営管理18.4%16.1%8.7%26.8%
E.経営法務12.8%26.9%25.5%13.2%
F.経営情報システム10.6%18.5%11.5%15.6%
G.中小企業経営・政策7.0%10.9%20.5%5.6%

このように、科目ごとの合格率は年度によって変動しています。

科目合格は履歴書・名刺に名称を記載できる

中小企業診断士試験で科目合格をしても、1次試験・2次試験に合格しなければ中小企業診断士と名乗ることはできません。

しかし、中小企業診断士試験で科目合格をするということは、その科目において知識を習得していることを意味します。

この事実を対外的に示すために、履歴書や名刺などに合格した科目の名称を記載可能です。

具体的には以下のように記載します。

  • 第一次試験全科目合格者 :◯◯年度中小企業診断修得者
  • 第一次試験一部科目合格者:◯◯年度中小企業支援科目合格者(科目名)

ただし、履歴書や名刺に書けるのは、科目合格の期限までとなるため注意が必要です。

【参考】中小企業庁「中小企業診断士 第一次試験合格者(科目合格者含む)の皆さまへ」

科目合格の有効期間は何年?

ここまでにも述べたとおり、科目合格は翌年度翌々年度の中小企業診断士試験において免除となります(事前の申請が必要)。

科目合格を活用しながら1次試験に合格するパターンを具体的に見てみましょう。

科目合格活用のよくあるケース

科目合格を活用して2〜3年で1次試験に合格するというのは、よくあるケースです。

下記のようなイメージです(それぞれの年の合格科目数は人によって異なる)。

1年目7科目を受験
→3科目に合格
2年目【1年目に合格した3科目を免除】+【4科目を受験】
→2科目に合格
3年目【1〜2年目に合格した5科目を免除】+【2科目を受験】
→ 2科目に合格し、1次試験合格!

科目合格による免除は他資格等保有による科目免除と併用可

科目の免除は、所定の資格を保有している場合も受けることができます(他資格等保有による科目免除。詳しくは記事後半で解説します)。

たとえば下記のように、科目合格と併用して受験することも可能です。

1年目【1科目を他資格等保有で免除】+【6科目を受験】
→2科目に合格
2年目【1科目を他資格等保有で免除】+【1年目に合格した2科目を免除】+【4科目を受験】
→2科目に合格
3年目【1科目を他資格等保有で免除】+【1〜2年目に合格した4科目を免除】+【2科目を受験】
→ 2科目に合格し、1次試験合格!

科目合格による免除が認められるパターン、認められないパターンについては、試験実施機関が下記ページで具体例を挙げて解説しています。

【参考】日本中小企業診断士協会連合会「第1次試験科目合格パターン例

科目合格にデメリットもある?科目合格を戦略的に活用する方法とは?

科目合格を利用すれば、1年あたりの受験科目を減らすことができ、受験科目に集中して時間を使うことが可能になります。

ただし、科目合格にはデメリットもあるので注意が必要です。

科目合格のデメリットと、デメリットに影響されずに戦略的に科目合格を活用する方法を解説します。

科目合格制度のデメリット

科目合格制度のデメリットは、2年の有効期限があることです。

せっかく合格した科目があっても、有効期限内にすべての科目で合格しなければ2次試験に進めません。

反対に、科目合格の有効期限が2年あることで、モチベーションの維持が難しかったり試験制度や改訂の影響を受けたりする可能性もあります。

また、各科目の難易度には毎年ある程度のバラつきがあり、免除を受けない科目の難易度がたまたま高い年にあたってしまう可能性もゼロではありません。

しかも、苦手科目だけがなかなか合格できずに残るケースもあるでしょう。

このように、科目合格による免除で受験科目が少なくなるとリスクも生じてきます。

あえて免除を受けない方が合格しやすいケースもあるのです。

戦略的に科目合格を活用する方法

科目合格制度を生かすなら、最終的にどのように合格するのかについて戦略を立てることが大切です。

たとえば、1年目は自分の得意分野に加えて、合格率が高めで対策しやすい科目を中心に受験します。

具体的にいうと、企業経営理論や経営法務は比較的合格率が高い科目なので1年目に合格しておくと、2年目の負担が軽減できるでしょう。

2年目は残りの科目に加えて、2次試験の対策を行います。

なるべく1年目に多くの科目で合格しておけば、2年目は余裕を持って試験に臨めるでしょう。

他資格等保有による科目免除

先ほども少し触れましたが、科目免除は過去の科目合格のみでなく、公認会計士や税理士といった他資格を有していることによって受けることができます。

資格によって複数の科目で科目免除を受けることができるため対策がしやすくなります。

他の資格を持っている方は、中小企業診断士の科目免除の対象になっていないかを確認することをおすすめします。

1次試験の科目の勉強の順番

科目合格による免除を利用するかどうかにかかわらず、すべての受験生が知っておきたいのが1次試験の科目の勉強の順番です。

1次試験は、科目ごとに2次試験(記述式)との関連度が異なります。

2次試験対策で苦労せず、もっとも効率的に最終合格を掴み取るには、2次試験との関連度が高い科目を優先して勉強するのがベストです。

1次試験の勉強順・勉強時間・科目別難易度を一覧表にまとめました。

勉強順科目勉強時間(目安)難易度
1企業経営理論150時間普~難
2財務・会計180時間
3運営管理150時間
4経営情報システム80時間普~難
5経済学・経済政策100時間
6経営法務80時間易~普
7中小企業経営・政策60時間易~普

※各科目の勉強時間は、一般的に中小企業診断士の合格に必要な勉強時間とされる「1,000時間」を総勉強時間とする場合の目安です。
※難易度はあくまで傾向や目安です。学習状況、ご経験によって個人差が生じやすく、試験年度によっても変化します。

勉強の順番で早めに取り掛かるべきものは、特に関連度が高い「企業経営理論」「財務・会計」「運営管理」です。

その他の科目の勉強順や科目別攻略法はこちらの記事で解説しています。

スタディングを利用して中小企業診断士合格した人の声

【実例】S.Dさん 2024年合格

・受験勉強で工夫されたこと
1次試験は練習問題と過去問セレクトを繰り返し解きました。解説を見てから応用もきくように心がけました。

・モチベーションの保ち方
先に計画を立てて、期限までに学習を終えるように心がけました。なるべく早く過去問演習に入った方が、解けるようになる感覚を持てるので良いと思います。

・スタディングの活用方法
動画を2倍速で聞くと集中もできておすすめです。

※一部抜粋

出典:スタディング「動画を2倍速で聞くと集中もできておすすめです。」

【実例】tyさん 2023年合格

▪️受験勉強で工夫したこと
一次試験に向けてはスタディングのみを実施しました。トータル350時間程度の学習量でした。昨年二月から開始し、早く2周回すことを目標に五月までに予定通り進捗しました。六月からは中だるみしましたが、記憶が曖昧な点はノートに書き出して記憶の定着を図りました。
二次試験はスタディングに加え、インターネット動画、ブログを参考にして、事例4対策で市販の問題集を実施しました。

▪️スタディングの活用方法
基本的な使い方は推奨されているとおり、動画を高速で見て、問題集でアウトプットしました。また用意されているテキストを繰り返し読んで理解する、覚えることを実施しました。

※一部抜粋

出典:スタディング「基本的な使い方は推奨されているとおり、動画を高速で見て、問題集でアウトプットしました。

まとめ

中小企業診断士の試験には科目合格という制度があり、うまく活用できれば戦略的に合格を目指すことができます。それでは今回のポイントをおさらいします。

  • 中小企業診断士の1次試験には科目合格制度がある
  • 科目合格すれば翌年と翌々年の1次試験で科目免除が可能
  • 科目免除にはデメリットもあるため、戦略的な活用が求められる

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