TOEIC®は大学受験に活用できる?実際の状況は?レベルや注意点など徹底解説

TOEIC®は大学受験に活用できる英語試験です。

しかし「大学受験では使えない」という声もあり、「本当に活用できるの?」「どのような活用方法があるの?」などと、疑問に思う人もいるでしょう。

この記事では、TOEIC®を大学受験で活用する方法や実際の活用状況、そして「使えない」と言われる理由について解説します。

大学受験後の活用シーンや活用の際の注意点も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

TOEIC®は大学受験に活用できる!

TOEIC®を入学試験で活用している大学は一定数あります。

IIBCが全国の国公私立大学788校を対象に行った調査(2022年度)によると、活用校は332校あることがわかりました。

TOEIC®テストの種類別の活用校数は、以下のとおりです。

TOEIC® L&R(Listening & Reading)236校
TOEIC® L&R+S&W(Speaking & Writing)250校

【参考】IIBC「TOEIC® Program 大学入学試験における活用状況【2022年度】」

大学によって要件は異なりますが、TOEIC®を「英語力を測るテスト」として大学受験で活用できることは確かだと言えます。

TOEIC®を大学受験で活用する4つの方法

TOEIC®を大学受験で活用するには、おもに以下4つの方法があります。

  • 出願資格
  • 試験免除
  • 判定優遇・合否参考
  • 得点換算・加点

それぞれ解説します。

出願資格

TOEIC®のスコアは、大学受験の出願資格として活用できる場合があります。

出願資格とは、出願するために必要な条件です。

出願資格としてTOEIC®スコアが求められている場合、そのスコアを満たしていなければ出願することはできません。

国公立や私立問わず、出願資格としてTOEIC®スコアの基準を設けている大学はたくさんあります。

ただし、大学や学部によって対象となるテストの種類や基準スコアが異なります。

具体的には「TOEIC® L&R のスコアが350点」「TOEIC® L&RとTOEIC®S&Wの合計スコアが1,150点」のように、条件が定められています。

試験免除

大学が提示する指定基準以上のTOEIC®スコアを保有していると、英語試験が免除になるケースもあります。

英語から日本語への翻訳を行う実技試験や英語の小論文が行われている場合は、それらの試験が免除となるケースもあるようです。

試験が免除になれば、英語試験の対策に費やす時間をほかの科目に充てられます。

総合的な学力向上につながり、受験合格の可能性も高められるでしょう。

判定優遇・合否参考

TOEIC®スコアを保有していることで、出願書類の評価で判定が優遇されたり、合否の参考にされたりするケースもあります。

具体的には、スコアに応じて英語試験の得点を満点とみなしたり、TOEIC®のスコアを総合評価に反映したりする場合があるようです。

ほかに、志願者が募集人員を超えた場合に、TOEIC®スコアを持っていることが有利に働く場合もあります。

得点換算・加点

TOEIC®スコアに応じて、英語試験の得点に換算、または加点されることもあります。

一部の大学では、「みなし得点」という方式が採用されています。

みなし得点とは、保有するスコアをあらかじめ設定した点数として換算する方法です。

みなし得点と実際に行う英語試験の成績とをあわせて、総合的に評価するといったように活用されています。

本番の英語試験で実力を発揮できなかった場合でも、TOEIC®スコアによって一定の得点が担保されるのです。

大学受験におけるTOEIC®活用状況

大学受験におけるTOEIC®活用状況をみていきましょう。

具体的な活用状況を、国立・公立大学と私立大学に分けて紹介します。

なお、ここで紹介する内容は2022年4月時点の情報です。

情報は変更される場合もあるため、出願前に最新の情報を確認してください。

国立・公立大学

以下は、国立・公立大学の受験におけるTOEIC®活用状況の一例です。

大学学部・学科入試名活用方法基準スコア
北海道大学工学部【総合型】フロンティア入試TypeⅠ学部出願資格L&R 550
横浜市立大学医学部【学校推薦型】特別公募制(県外高校)加点[〈第一次選考〉英語資格の得点/3.0点]L&R 600

【参考】IIBC「2022 TOEIC® Program 大学入学試験における活用状況」

北海道大学の工学部では、【総合型】フロンティア入試TypeⅠ学部の出願資格において、TOEIC®スコアが活用されています。

TOEIC®L&Rで550点以上を保有していれば、出願資格を得られます。

550点未満の場合は出願資格を満たしていないため、出願することはできません。

また、横浜市立大学の医学部では、【学校推薦型】特別公募制(県外高校)の第一次選考において、TOEIC®スコアが加点の対象になります。

TOEIC®L&Rで600点以上を保有している場合、試験の評価に3.0点が加算されます。

私立大学

以下は、私立大学の受験におけるTOEIC®活用状況の一例です。

大学学部・学科【試験形態】入試名活用方法基準スコア
京都ノートルダム女子大学現代人間学部【学校推薦型】学校推薦Ⅰ期試験免除、得点換算L&R+S&W 790(L&R 550〜、S&W 240〜)
西南学院大学外国語学部【一般】英語4技能利用型加点[<個別>総合点/30点]L&R+S&W 1,095(L&R 785<L 375、R 325>、S&W 310<S 160、W 140>)

【参考】IIBC「2022 TOEIC® Program 大学入学試験における活用状況」

京都ノートルダム女子大学の現代人間学部では、L&RとS&Wの合計スコア790点以上、かつL&R550点以上・S&W240点以上を満たすと英語試験が免除されます。

また、西南学院大学の外国語学部では、L&RとS&Wの合計スコア、もしくはS&Wのスコアが基準以上なら試験で加点されます。

ただし、単にスコアを満たしていれば良いわけではなく、各技能のスコアも細かく設定されているので、詳細を確認することが必要です。

TOEIC®が大学受験に使えないと言われるのはなぜ?2つの理由

さまざまな優遇措置があるにもかかわらず、TOEIC®は大学受験に使えないと言われることがあります。

その理由は、おもに以下の2つです。

  • TOEIC®スコアが必須ではない大学もあるから
  • TOEIC® S&Wのスコアが必要な場合もあるから

ひとつずつ見ていきましょう。

TOEIC®スコアが必須ではない大学もあるから

まず、TOEIC®スコアが必須ではない大学もあることが理由として挙げられます。

学校教育において英語力が求められているものの、すべての大学受験でTOEIC®スコアが活用されているわけではありません。

入学試験において、TOEIC®スコアに優遇措置を設けていない大学があるのも事実です。

そのため、いくら高いスコアを取得していても、TOEIC®が評価に反映されない大学を受験する場合は「TOEIC®が大学受験に使えない」と言われてしまいます。

TOEIC® S&Wのスコアが必要な場合もあるから

TOEIC® S&Wのスコアが必要な場合があることも、TOEIC®が大学受験に使えないと言われる理由のひとつです。

大学受験でのTOEIC®活用状況からもわかるように、L&Rのスコアに加え、S&Wのスコアも求める大学があります。

つまり、L&Rスコアだけでは「大学受験で使えない」場合もあるということです。

TOEIC®と言えば、一般的にL&Rを指すことが多いものの、大学受験時は英語4技能すべての能力を要件としている大学があることに留意しましょう。

大学受験で活用できるTOEIC®のレベルは?

大学受験で活用できるTOEIC®レベルは、大学によって大きく異なります。

基準とされるスコアは、400点〜800点台までとさまざまです。

TOEIC®400点台は、簡単な日常生活会話であれば可能であるレベルとされます。

いっぽう、800点台はノンネイティブとして十分なコミュニケーションがはかれるレベルです。

400点台でもある程度の英語力はありますが、大学受験ではより高いスコアのほうが有利に働きやすいです。

大学受験でTOEIC®を活用したい場合は、志望大学の募集要項を参考に、目標スコアを設定しましょう。

TOEIC®と英検、大学受験で有利なのはどっち?

TOEIC®と英検(実用英語技能検定)、大学受験においてどちらが有利なのかは、一概に言えません。

なぜなら、それぞれ試験の目的や形式が異なるからです。

英検は、日本英語検定協会が実施する日本発の英語試験です。

おもに日常生活における「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能を測定し、合否で判定されます。

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いっぽうTOEIC®は、アメリカの非営利団体「ETS」が運営する世界共通のテストです。

日常生活やビジネス場面における実際のコミュニケーションを意識した問題が出題され、合否ではなくスコアで評価されます。

TOEIC®と英検は、どちらも大学受験における英語の外部検定試験として、評価の対象となる場合があります。

目指す大学の具体的な要件を確認し、より有効となる試験を選ぶことが重要です。

TOEIC®は大学受験後にも使える!3つのシーン

TOEIC®の活用範囲は幅広く、大学受験後もさまざまなシーンで使えます。

大学受験後のおもな活用シーンは以下の3つです。

  • 大学での単位認定
  • 大学院入試
  • 就職活動

どのように活用できるのかを、シーン別にみていきましょう。

大学での単位認定

TOEIC®は大学での単位認定に活用されることがあります。

IIBCが全国776校に行った調査(2022年度)によると、344校の大学がTOEIC®を単位認定に活用していることがわかりました。

大学によって基準スコアや認定科目、単位数は異なりますが、「470点で1単位」「700点で2単位」のような形で認定されることが一般的です。

スコアによって、8〜16単位と認定単位数が増える大学もあります。

TOEIC®スコアを保有していれば、入学後も効率的な単位取得が目指せるでしょう。

大学院入試

TOEIC®は一部の大学院入試でも活用されています。

IIBCの調査(2022年度)では、研究科を含む746校中275校が、大学院入試にTOEIC®を活用していると回答しています。

活用シーンは、英語試験の免除や出願要件、合否判定の基準などさまざまです。

たとえば、岩手大学大学院獣医学研究科(共同獣医学専攻)ではTOEIC®L&R800点で英語試験が免除されます。

また、金沢大学大学院医薬保健学総合研究科(医科学専攻)ではTOEIC®L&R380点が出願要件の一部になっています。

このようにTOEIC®のスコアは、大学院へ進学する際にも役立つ可能性があるのです。

就職活動

TOEIC®のスコアを保有していると、就職活動を有利に進められる場合があります。

IIBCがTOEIC®Program活用中の企業・団体を対象に調査した結果によると、採用時にTOEIC® Programのスコアを「要件・参考としている」、もしくは「新たに要件・参考とする可能性がある」と回答した企業は55.4%と、全体の約半数に上っています。

就職活動でTOEIC®のスコアをアピールするには、600点以上のスコア取得を目標にしましょう。

企業が社員に求める英語力は、TOEIC®のスコアで言うと500点〜600点台です。

600点以上あれば、英語力をアピールできるだけでなく、ほかの就活生と差をつけられると考えられます。

大学生がTOEIC®何点を目指すべきかについては、以下の記事で解説しています。

TOEIC®を、大学受験だけでなく就職活動にも生かしたいと考える人は、ぜひ参考にしてください。

TOEIC®を大学受験で活用する際の注意点3選

TOEIC®は大学受験で広く活用されているものの、活用する際にはいくつか注意点もあります。
おもな注意点は、以下の3つです。

  • IPテスト不可の場合がある
  • 大学によってスコアの提出方法が異なる
  • スコアに有効期限を設けている大学がある

注意点を踏まえたうえで、志望大学の募集要項を確認してください。

IPテスト不可の場合がある

TOEIC®には、公開テストと団体特別受験制度(IPテスト)の2つの受験方法があります。

公開テストとは、個人が申し込み、IIBCが指定する試験会場・日時で受験するテストです。

いっぽう、IPテストは、大学や企業などの各団体が試験会場・日時を指定して行うテストであり、オンラインでの受験もできます。

IPテストで取得したスコアや評価は、公開テストと同等と判断されることが一般的です。

しかし、募集要項に「IPテストは不可」と記載している大学もあります。

IPテスト不可と指定されている場合、いくらIPテストで高いスコアを保有していても、要件を満たさないため注意しましょう。

大学によってスコアの提出方法が異なる

大学によって、TOEIC®スコアの提出方法が異なることにも注意しましょう。

TOEIC®の認定証には、公式認定証・デジタル公式認定証の2種類があります。

公式認定証の原本が必要なのか、デジタル公式認定証を印刷したもので良いのかなど、出願時に提出方法を必ず確認してください。

TOEIC®申込サイトでは、「公開テストスコア確認サービス」も提供しています。

TOEIC®申込サイトを通して大学や企業へスコアを提出できるサービスです。

公開テストスコア確認サービスを利用できるかどうかも、大学によって異なります。

事前に確認しておきましょう。

スコアに有効期限を設けている大学がある

TOEIC®スコアに有効期限を設けている大学があります。

証明書を提出する際は、受験した日にちが有効期限内であるのかを必ず確認しましょう。

なお、TOEIC®公式サイトでは、スコアの有効期限を2年以内と設定しています。

スコアは受験時の英語力を評価したものであり、時間の経過とともに変わる可能性があるからです。

大学受験にかかわらず、第三者にスコアを提出する必要がある場合は、定期的に試験を受けることをおすすめします。

TOEIC®スコアの有効期限については、以下の記事でも解説していますので、あわせて確認してください。

2024年度の大学受験でもTOEIC®活用実績あり!

2024年度の大学受験でも多くの大学でTOEIC®スコアが活用されており、2025年度以降もこの傾向は続くと考えられます。

ただし、活用方法や要件は、年度ごとに変更となる可能性があります。

大学受験でTOEIC®の活用を検討している人は、志望する大学の募集要項やWebサイトなどを確認しておきましょう。

TOEIC®で大学受験を有利に進めよう!

今回は、大学受験時のTOEIC®活用方法や実際の活用状況、活用時の注意点などについてお伝えしました。
以下おさらいです。

  • TOEIC®スコアは大学入試で活用可能
  • 出願資格や試験免除など、活用方法は大学によって異なる
  • TOEIC®スコアが大学入試において評価されない大学や、L&Rに加えてS&Wスコアも必要な大学があるため、「大学受験に使えない」と言われる場合もある
  • 大学受験において、TOEIC®と英検のどちらが有利かは一概に言えない
  • TOEIC®のスコアは、単位認定や大学院入試、就職活動など、大学受験後の活用シーンも幅広い
  • IPテストの可否や提出方法、スコアの有効期限は事前に確認しよう
  • TOEIC®のスコアは、2025年以降も大学入試に活用されることが見込まれる

TOEIC®のスコアは大学入試で役に立つことがあります。

受験予定の大学がTOEIC®スコアによる優遇措置を設けていないか、確認してみてください。

TOEIC®を積極的に活用し、大学受験を有利に進めましょう。