TOEICに向けてどんな英文法の勉強が必要?
今回は、TOEICのスコアアップに必要な英文法の勉強法についてまとめています。
文法の重要性
「文法は重要だ」という話を聞いたこともある人は多いと思います。一方で、「文法はそれほど重要ではない」という話を聞いたことある人も少なくないでしょう。一見すると対極にある意見ですよね。
「文法は重要だ」という意見を深掘りしていくと、「文法を知ることで正確に英文を理解することができるだけでなく、正確に話したり書いたりすることができる。だから文法は重要なんだ」ということです。
「文法は重要ではない」という意見を深掘りしていくと、「文法にこだわってばかりいるから、英語を使えるようにならない。とにかく話す練習や書く練習をすべきだ」ということが多いでしょう。それぞれの意見の後半だけを見てみると、「文法を身につけることで使えるようにする」「文法にこだわらず、使えるようにする」というように、実は「使えるようにする」という目標は同じだったのです。
TOEICの学習における文法の重要性は2つあります。1つは、文法の知識を問う問題が出ること。そして、もう1つは、文法を理解することによって、英語の語順のまま英文を処理することができるようになることです。
TOEIC頻出文法問題
文法の知識が直接問われるのは、Part 5(短文穴埋め問題)とPart 6(長文穴埋め問題)です。特にPart 5で出題される文法問題には傾向があります。Part 5の30問は、語彙問題と文法問題が約半分ずつ出題されます。15問程度の文法問題のうち、必ず出題される問題は以下のものです。
品詞(6~8問程度)
代名詞(2問程度)
動詞の形(2~3問程度)
接続詞&前置詞(2~3問程度)
出題される文法問題のバランスを見ると、品詞問題が最も多いことがわかります。品詞問題とは名詞・動詞・形容詞・副詞の使い方が問われるもので、日本語で言うと「美しい花」や「美しく歩く」、「景色の美しさ」のように、語順によって単語の形が変わるものを正しく理解できているかどうかを確認するものです。つまり、TOEICの文法問題では、語順の知識が最も重要視されているのです。
効果的な文法学習法
多くの学習者が文法を苦手としています。学校で勉強した「現在完了形」や「分詞構文」、「関係代名詞」や「先行詞」などの文法用語で混乱してしまったという方も少なくないでしょう。学校で学んだことを繰り返そうと考えると、あまり気乗りしないという方もいらっしゃると思います。
安心してください。同じように学習しなくても文法は学べます。文法学習において取り入れるべきことが2つあります。そもそも文法とは、読んで字のごとく「文の法則」です。法則とはパターンのことですから、文法とは文を構成する際のパターンのことだと思ってください。実は、人間はパターンがあるものを身につけるのは得意なのです。下の横1列に並んでいる3パターンの数字を見て、□に入る数字を考えてみてください。
2 4 □ 8 10
1 □ 9 13 17
4 □ 5 2 9
最初の2つは難しくなかったでしょう。それぞれ、6と5です。1つめは数字が2ずつ増えていき、2つめは数字が4ずつ増えています。言い換えるとパターンがあります。
しかし、3つめはパターンがありません。□に入るものを見つけようと、「3を引いて・・・」「7を足して・・・」というパターンを見つけようとしたのではないでしょうか。私たちはそこにパターンがないかどうか探したくなる生き物なのです。だからこそ、文を構成するパターンがある文法は、簡単とは言いませんが、学びやすいと言うことができます。
つまり、文法学習において必要なことの1つめは、文法タイプごとに学習することです。品詞を学習する際には、名詞だけ、動詞だけ、形容詞だけ、副詞だけ、のようにまずは1つのものを集中的に学習します。その後、ランダムに取り組みながら、確実に対応できるようにしていきます。
そして、2つめが音声を活用することです。これは単語学習においてもオススメしましたが、音声を活用することでリズムのまま思い出すことができるのです。すでに音声を通して身についている文法力を確認してみましょう。
ここで、以下の文法問題5問を素早く解いてみてください。
【問題】
1. I bought a ——- flower yesterday.
(A) beauty
(B) beautiful
(C) beautifully
2. Please speak ——- because I would like to take notes.
(A) slowly
(B) slow
(C) slowness
3. We had ——- chicken for lunch today.
(A) fry
(B) frying
(C) fried
4. Please let ——- know about the plan.
(A) I
(B) my
(C) me
5. ——- you have any questions, please send me an e-mail.
(A) If
(B) And
(C) By
正解は以下の通りです。正解の理由も説明していますが、おそらく文法を考えることなく選べるものが多かったのではないでしょうか。
【解説】
1. (B) beautiful
品詞の問題です。名詞flowerの性質を説明する形容詞beautifulが正解です。
英文:I bought a beautiful flower yesterday.
日本語訳:私は昨日美しい花を買った。
2. (A) slowly
品詞問題です。動詞speakに対して、「どのように」を示す副詞slowlyが正解です。
英文:Please speak slowly because I would like to take notes.
日本語訳:メモを取りたいので、ゆっくり話してください。
3. (C) fried
名詞chickenに対して説明を加えるものが問われています。chickenはfry(揚げる)という動作を受けるため、分詞fried(揚げられた)が正解です。
英文:We had fried chicken for lunch today.
日本語訳:私たちはランチにフライドチキンを食べた。
4. (C) me
代名詞の問題です。動詞letの目的語は、目的格のmeが適切です。
英文:Please let me know about the plan.
日本語訳:その計画について私に教えてください。
5. (A) If
文をカンマで区切り、後ろの文へと続くため接続詞が入ります。「質問がある」と「メールを送ってください」をつなぐのは、「もし~ならば」を意味するIfが適切です。
英文:If you have any questions, please send me an e-mail.
日本語訳:もし質問がありましたら、私にメールを送ってください。
じっくり文法を考えることなくスムーズに正解を選べた場合、それは簡単だから選べたのではなく、正解となる表現がすでに脳内に音声化された状態で入っているからです。beautiful flower、speak slowly、fried chicken、let me know、If you have any questions という表現が音声のまま脳内に入っていれば、形容詞や接続詞などという文法の知識を持ち出さなくても正解を選ぶことができるのです。
これも文法力であり、まさに「ネイティブの感覚」に近いものだと言えます。ほかにも、delicious food や eat lunch quickly、in front of the station など、頭の中で音声化されているものについては、文法力へと転換されているのです。
このように、効果的な文法学習における2つのポイントは、「パターンごとに学習すること」と「音声を活用すること」です。
問題に間違えても文法力を身につける方法
文法学習を進めていくうえで、問題に正解できることは大切ですが、知識を増やす際には間違えた問題にこそ意識を向けてください。
なぜなら、間違えたということは、「理解のズレ」が生じていることを示しています。そのズレを修正することが、文法力へとつながります。間違えた場合の学習としてオススメなのが、正解を入れた状態で、英文を音読することです。正しいものに繰り返し触れていくことが正確な理解につながりますし、正しいものを大量に頭に入れることによって、間違えているものを見た時に違和感が出るようになります。
たとえば、日本語で「遅れそうだったため、私は速い歩いた」という文を読むとしましょう。違和感があるために、すぐに正しく直すことができるでしょう。その場合、品詞の知識ではなく、音の感覚を活用することで直せるはずです。
ぜひ正解を入れた文を音読することで、この「音の感覚」で文法を身につけてください。文法問題に解けるようになるだけでなく、リスニングやリーディングにも応用できる力となります。
TOEICスコアアップ直結の文法問題解法
文法が苦手な方は、出題数や出題率の高いものから学習することで、スコアに反映させることができます。ここからは、TOEICに出題される問題タイプの中でも頻度の高いものの解法をご紹介します。
また、リーディングセクションは時間制限が厳しいため、素早く正確に解くことが求められます。問題タイプを特定するには、最初に選択肢を見るとよいでしょう。
1.品詞問題
すでに述べたように、TOEICの文法問題の半分を占めるのが品詞問題です。品詞問題とは、名詞・動詞・形容詞・副詞の活用が問われ、語順がポイントとなります。以下の問題を解いてみてください。
【問題】
1. CDA Technology is well-known for the ——- of a state-of-the-art printer.
(A) invent
(B) invention
(C) inventively
(D) inventive
2. The sharp increase in sales is a result of our ——- campaign.
(A) promote
(B) promotionally
(C) promotional
(D) promotes
3. The book includes a wide variety of methods to conduct research ——-.
(A) effective
(B) effectively
(C) effect
(D) effected
【解説】
1. (B) invention
(A) invent、(B) invention、(C) inventively、(D) inventiveと、語尾が異なる単語が並んでいます。
このように、語尾が異なるものは品詞の働きが問われており、語順がポイントとなります。
空所直前が冠詞the、空所直後が前置詞ofです。前置詞は細かい情報を追加する際に使われるため、ofの前で意味が切れていると考えられます。
すると、theの後ろに付く品詞が求められていると判断できます。theに付くのは名詞です。選択肢の中で名詞はinvention(発明)です。語尾に-tionが付くものの多くは名詞です。
なお、語尾に-lyがつくものの多くは副詞で、副詞から-lyを削除したものが形容詞です。よって、inventively(発明的に)が副詞、inventive(発明の)が形容詞です。なお、inventは「発明する」という意味の動詞です。
英文:CDA Technology is well-known for the invention of a state-of-the-art printer.
日本語訳:CDAテクノロジーは、最新のプリンターの発明でよく知られている。
2. (C) promotional
語尾が異なる単語が並んでいるため、品詞の問題です。our ——- campaignの語順がポイントとなります。
代名詞ourはその後ろに名詞を取りますが、campaignが名詞のため、この名詞を説明するものが求められます。
beautiful flower(美しい花)やdelicious food(おいしい食べ物)のように、名詞を説明するものは形容詞です。
正解は(C) promotional(販売促進の)です。
英文:The sharp increase in sales is a result of our promotional campaign.
日本語訳:売上の急な増加は、販売促進キャンペーンの結果である。
3. (B) effectively
語尾が異なる単語が並んでいるため、品詞問題ですね。
だんだんと品詞問題の特徴がつかめてきたでしょうか。3番は空所前後だけの語順を見ただけでは解けません。その場合は、しっかりと文の意味を理解することが大切です。
主語と動詞は「その本には含まれている」、続く目的語が「様々な方法が」とあります。方法の目的が不定詞以降の「リサーチを行うための」です。動詞conductに対して「どのように行うのか」を表すための副詞(B) effectively(効果的に)が正解です。
英文:The book includes a wide variety of methods to conduct research effectively.
日本語訳:その本には、リサーチを効果的に行うための様々な方法が含まれている。
ちなみに、名詞と形容詞のルールはシンプルですが、副詞は置かれる位置が複数あるため、品詞問題の中では難易度が高めです。もし品詞問題で悩んだら、副詞が正解かもしれません。
POINT
名詞によくある語尾は、以下のものです。
-tion:completion(完成)、donation(寄付)、promotion(促進、宣伝)
-ment:agreement(同意)、development(開発)、requirement(必要条件)
-ance:importance(重要性)、assistance(支援)、distance(距離)
-ence:difference(違い)、convenience(便利)、absence(欠席)
TOEICで出題されやすい名詞に関わる語順については、以下のようなものもあります。
冠詞の後ろ:make a [reservation](予約を取る)、meet the [requirement](必要条件を満たす)
形容詞の後ろ:an effective [approach](効果的なアプローチ)、 a convenient [location](便利な場所)
形容詞によくある語尾は、以下のものです。
-ive:positive(ポジティブな)、impressive(印象的な)、intensive(短期集中の)
-ful:successful(成功して)、helpful(役に立つ)、skillful(熟練した)
-ous:famous(有名な)、various(様々な)、curious(好奇心のある)
-able/ible:valuable(価値のある)、reasonable(手ごろな)、possible(可能な)
-ic:specific(特定の)、economic(経済の)、basic(基本的な)
-al:confidential(機密の)、special(特別な)、final(最後の)
TOEICで出題されやすい形容詞に関わる語順については、以下のようなものもあります。
名詞の前:give [valuable] advice(価値のあるアドバイスをする)、receive [positive] reviews(ポジティブな評価を受ける)
副詞の後ろ:highly [effective](非常に効果的な)、 widely [available](幅広く手に入る)
副詞のほとんどの語尾は-lyです。
-ly:officially(公式に)、significantly(著しく)、properly(適切に)
TOEICで出題されやすい副詞に関わる語順については、以下のようなものもあります。
形容詞の前:[extremely] important(非常に重要な)、[completely] different(完全に異なる)
動詞の前後:increase [significantly](著しく増加する)、 be [officially] announced(公式に発表される)
動詞+目的語の後ろ:solve the problem [immediately](すぐに問題を解決する)、reply to an e-mail [quickly](素早くメールに返信する)
2.代名詞問題
代名詞に関する問題は、品詞問題のように語順がポイントとなるものと、代名詞が指すものを理解する必要があるものの2種類があります。
まずは、以下の2問に取り組んでみてください。
【問題】
1. Visitors to the museum are required to present ——- tickets to the staff at the entrance.
(A) them
(B) their
(C) they
(D) themselves
2. Ms. Roberts is planning to leave JDS Technologies, and start ——- own company next year.
(A) our
(B) her
(C) their
(D) its
【解説】
1. (B) their
選択肢を見ると、they関係の単語で活用が異なるものが並んでいます。これは語順がポイントとなるタイプの問題です。
空所前後を見ると、present ——- ticketsと「チケットを提示する」というフレーズの間に空所があります。つまり、「誰の」を指すものが入るため、正解は(B) their です。
このように、代名詞の使い方が問われている場合は、空所に入る代名詞の形を特定することで正解を導くことができます。
(A)のthemは目的語として使われるため、ask themやfor themのように動詞や前置詞の後ろに付きます。(C) theyは主語として使われ、(D) themselvesはNew employees introduced themselves.(新入社員は自己紹介をした)のように主語の人物と目的語の人物が同じ場合に使われます。
英文:Visitors to the museum are required to present their tickets to the staff at the entrance.
日本語訳:美術館への訪問者は、入口でスタッフにチケットを提示することが求められます。
2. (B) her。
選択肢には所有格(~の)の代名詞が並んでおり、「誰を指すか」の意味がポイントです。本文を読むと、「Ms. RobertsがJDSテクノロジーズという会社を辞めることを計画している」とあります。
さらに、and start ——- own company(自分の会社を始める)とあります。代名詞はMs. Robertsを指すため、正解は(B) her。
なお、Ms. Robertsとsがついていますが、複数形というわけではありません。日本人の「三井さん」が複数形でないのと同じですね。
英文:Ms. Roberts is planning to leave JDS Technologies, and start her own company next year.
日本語訳:ロバーツさんはJDSテクノロジーズを辞めて、来年自分の会社を始める計画をしている。
3.動詞の形問題
動詞の形に関する問題は、適切な動詞の使い方が問われています。意味を理解するだけでなく、正しい活用法を理解することが求められます。まずは、以下の問題を解いてみましょう。
【問題】
1. The board of directors ——- to open a new branch in Asia a few weeks ago.
(A) decides
(B) has decided
(C) decided
(D) will decide
2.The problem with the system ——- by the support team.
(A) was solved
(B) have been solved
(C) solved
(D) solving
【解説】
1. (C) decided
選択肢を見るとdecideの活用が問われているのがわかります。
(A) 現在形、(B) 現在完了形、(C) 過去形、(D) 未来ですから、時制がポイントになりそうだと判断できますね。文の最後にa few weeks agoという過去のある時点を指す表現があるため、正解は過去形の(C) decidedです。
このように、時制に関する問題は、時制を表すキーワードがあることが多いため、しっかりと特定することで素早く正確に解くことができます。
英文:The board of directors decided to open a new branch in Asia a few weeks ago.
日本語訳:取締役会は数週間前に、アジアに新しい支社を開くことを決めた。
2. (A) was solved
選択肢を見ると、時制のほか、能動態と受動態の活用も見られます。
本文を読むと、主語がThe problem(問題)ですから、主語がsolveという動作を受けるため、受動態が適切です。単数形の主語problemに対応する受動態(A) was solvedが正解です。(B)も受動態ですが、have been solvedのため、主語が複数形である必要があります。
英文:The problem with the system was solved by the support team.
日本語訳:システムの問題はサポートチームによって解決された。
4.接続詞&前置詞問題
接続詞&前置詞に関する問題では、文と文をつないだり、語句と文をつないだりする際に使われる表現が問われます。接続詞と前置詞の正確な理解のほか、内容の理解度が問われる問題です。まずは問題を解いてみましょう。
【問題】
1. ——- the seminar is free of charge, you have to sign up for it in advance.
(A) Although
(B) Because of
(C) Despite
(D) Until
2. You are not allowed to leave your seat ——- the performance.
(A) while
(B) because
(C) unless
(D) during
【解説】
1. (A) Although
選択肢は、接続詞や前置詞を中心に構成されています。本文を見ると、空所から始まりカンマで切れ、その後に文が続いています。この文構造が接続詞&前置詞問題の基本です。
カンマまでを読むと、「セミナーは無料である」という文です。文をつなぐことができるのは接続詞のため、 (A) Although(~にもかかわらず、~だけれど)または(D) Until(~までずっと)が候補です。カンマの後ろを読むと「事前に申し込まなくてはならない」とあります。「セミナーは無料である」と「事前に申し込まなくてはならない」を意味的につなぐのは、(A) Althoughです。
なお、前置詞は後ろに語句のみを続けることができ、文を続けることはできません。なお、(B)と(C)は前置詞で、それぞれBecause of(~なので)、(C) Despite(~にもかかわらず)です。
英文:Although the seminar is free of charge, you have to sign up for it in advance.
日本語訳:セミナーは無料ではあるが、事前に申し込まなくてはならない。
2. (D) during
選択肢を見ると、接続詞と前置詞が並んでいます。空所の位置は、1番と異なり文中にあります。空所の後ろを見ると、文ではなくthe performanceという語句があるため、空所には前置詞が入ると判断できます。選択肢で前置詞は(D) during(~の間)のみです。
その他の選択肢は全て接続詞で、(A) while(~の間、~の一方)、(B) because(~なので)、(C) unless(~でない限り)という意味です。
英文:You are not allowed to leave your seat during the performance.
日本語訳:パフォーマンスの間は座席を離れることは禁止されています。
まとめ
TOEICスコアアップに必要な文法についてご紹介してきました。文法問題としてはPart 5とPart 6にしか出題されず、ほとんどはPart 5で出題傾向も決まっています。スコア直結という意味では、出題率の高い文法項目から学習するのが効率的です。しかし、すべての英文には文法が関わってくるため、英文の正しい理解や読解スピードを高めるためには、その他の文法も学習することが効果的です。