中小企業診断士の仕事には、中小企業と契約してコンサルティングを行う民間業務のほかに、行政機関などの公的機関から委託されて行う「公的業務」もあります。
この記事では、中小企業診断士の公的業務について解説します。
公的業務に携わっている診断士の割合
中小企業診断協会が、平成23年1月に会員の中小企業診断士を対象に実施したアンケート結果として「公的業務の占める割合」が公表されています。まずはこのデータを見てみましょう。
回答数 | 構成比(%) | |
---|---|---|
公的業務がかなり高い |
371 |
30.9 |
公的業務がやや高い |
105 |
8.8 |
半々程度 |
84 |
7.0 |
民間業務がやや高い |
80 |
6.7 |
民間業務がかなり高い |
522 |
43.5 |
わからない |
15 |
1.3 |
無回答 |
23 |
1.9 |
合計 |
1,200 |
100.0 |
回答数の母数は、アンケートに答えた人の中で、「経営コンサルタント業務(副業等含む)を行っている」人数です。この結果を見てみますと、「民間業務がかなり高い」「民間業務がやや高い」を合わせると50.2%となり、「公的業務がかなり高い」「公的業務がやや高い」を合わせると39.7%となります。4割ほどの中小企業診断士は「公的業務」に多く携わっていることになります。
ここで、「民間業務」とは、コンサルタント(個人もしくは法人)が中小企業と契約してコンサルティング業務を提供するものです。よく「民民(みんみん)で契約する」などと言われます。「民間業務以外に、診断士のコンサルティング業務に他に何があるのか?」と思われるかもしれませんが、中小企業診断士の4割ほどはコンサルティング業務として「公的業務」を行っています。それでは、この「公的業務」とは一体何でしょうか?
公的業務とは?
公的業務とは、国や地方自治体の行政機関、中小企業基盤整備機構、都道府県等中小企業支援センター、商工会議所・商工会などの公的機関から委託されて業務を行うものです。業務の内容は、「窓口相談」や「専門家派遣」が多いでしょう。
上記の公的機関には、中小企業の経営者や起業家向けに相談窓口が設けられています。「窓口相談」は、このような相談窓口で経営相談員として相談にあたる業務です。週に1日や2日というように定期的に公的機関に出社(出社という表現は適切ではないかもしれませんが)して、窓口に座って相談に対処します。窓口には経営に関するさまざまな種類の相談が寄せられます。たとえば、集客や営業、マーケティングに関する相談、資金繰りや財務面の相談、人事面の悩み、IT・システムの活用、業務のオペレーションに関すること、法律に関わる内容など。そのため、中小企業診断士として広くいろいろな問題に対処することが求められます。一次試験で学習する科目の知識を活用して相談にあたります。
また、いろいろな問題が関係していて、背景や経緯をヒアリングしながら、課題を明確にして助言を行います。まさしく二次試験のように与件文を読み込んで解答するようなやり取りを、実際の経営者を目の前にして行っていきます。
ちなみに、独立する中小企業診断士にとって、公的機関の経営相談員の業務を受託できれば、週に何日の仕事が確定して一定の収入を確保できます。そのため、独立しようとする診断士には「まずは公的業務を取った方がいい」と言われることもあります。
「窓口相談」は、中小企業の経営者が窓口に訪れて相談をするものですが、「専門家派遣」は、中小企業診断士などの専門家が企業を訪問して支援を行うものです。上記の公的機関には、専門家を派遣する制度を設けているところが多く、それぞれの制度によって、「3回まで無料で派遣します」など、回数や費用負担が定められています。
「専門家派遣」の業務では、中小企業診断士は、公的機関に専門家として登録を行って、案件があれば、申し込んだ中小企業を訪問して支援を行います。こちらも「専門家派遣」と同様に、さまざまな問題が寄せられます。基本的には、あるテーマで相談があった場合、そのテーマに詳しい専門家に依頼が来ます。ただし、あるテーマで支援に行っていても、他のテーマに話が及ぶこともあります。そのため、「窓口相談」と同様に、一次試験で学ぶ幅広い知識や二次試験で取り組む応用力が求められます。
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