法律の専門家である弁護士は、民事・刑事問わずあらゆる法的トラブルの処理に対応します。法律相談や交渉・訴訟代理などが主な仕事です。
「離婚したいけど夫が承諾してくれない」「残業代を払ってくれない会社を相手に返還訴訟を起こしたい」「ネットで誹謗中傷に遭い、ブランドイメージを傷つけられた。名誉を回復したい」など、社会にはさまざまなトラブルや争いごとがあります。法治国家である日本では、法的手続きにのっとり、和解や裁判の場といった場を提供することで、穏便な解決を図ります。争う両者の間に入って解決へと導く務めは、法律のスペシャリストである弁護士だからこそ可能です。
弁護士の活動の本質は「社会貢献」や「弱者保護」にあるといえるかもしれません。「法律の知識を生かして困っている市民の手助けをしたい」「労働問題の解決を通して、日本の労務環境を改善したい」「経済苦・借金苦で悩む人々に対し、救済の道があることを教えたい」など、弱い立場に立たされた人々を助けたい思いで弁護士を目指す受験生も少なくありません。
このように社会貢献ができ、困っている人から感謝されることは、弁護士の魅力として挙げられます。
弁護士は一度取得すれば一生使える資格であり、資格を更新するための手続きや試験はありません。また、受験資格に年齢制限もありません。そのため、いつからでも、いつまででも弁護士にチャレンジできます。
弁護士の魅力のひとつに高収入を狙えることが挙げられます。日弁連が全会員向けに実施しているアンケート結果から、収入の分布がわかります。
【弁護士の収入】
参考:日弁連 2018 /【特集2】近年の弁護士の実勢について(弁護士実勢調査と事件動向調査を元に) より作成
収入 | 回答者数 | 割合 |
500万円未満 | 302人 | 11% |
500~750万円未満 | 415人 | 15% |
750~1000万円未満 | 289人 | 11% |
1000~1500万円未満 | 438人 | 16% |
1500~2000万円未満 | 267人 | 10% |
2000~3000万円未満 | 347人 | 13% |
3000~5000万円未満 | 295人 | 11% |
5000~7500万円未満 | 136人 | 5% |
7500万円以上 | 95人 | 4% |
無回答 | 102人 | 4% |
弁護士になるまでのステップは、「予備試験合格」または「法科大学院終了」→「司法試験」→「司法修習」→「司法修習生考試(通称:二回試験)」→「法曹資格取得」→「弁護士登録」です。予備試験に受験資格はなく、誰でもどんな学歴でも何歳でも受験できます。弁護士を目指す道は、法科大学院生・これから進学予定の大学生はもちろん、社会人にも開かれています。
まずは司法試験を受験するための資格を得る必要があります。司法試験の受験資格を得るには、「司法試験予備試験」に合格するか、もしくは法科大学院を修了します。現在仕事をしている社会人の方の多くは、予備試験を受けるステップに進みます。
予備試験は全部で3回の試験があり、短答式試験→論文式試験→口述試験という流れで進みます。各試験で合格すると、次の試験の受験資格を得られ、口述試験に合格することで最終合格で、司法試験の受験資格を得ることができます。
司法試験は、法三曹(弁護士・判事・検察官)を輩出するための国家試験です。弁護士資格を取得するには、司法試験に合格しなければなりません。
司法試験は毎年5月に実施されます。日程は「論文試験3日間・短答式試験1日」です。
参考:2022年司法試験の合格者数・合格率(法科大学院修了者、予備試験合格者の比較)
予備試験合格者 | 法科大学院出身者 | |
受験者数 | 405人 | 2,677人 |
受験者占有率 | 13.14% | 86.86% |
短答合格者数 | 404人 | 2,090人 |
短答合格率 | 99.75% | 78.07% |
総合合格者数 | 395人 | 1,008人 |
総合合格率 | 97.53% | 37.65% |
総合合格占有率 | 28.15% | 71.85% |
司法試験合格後は、法律実務を学ぶ司法修習へと進みます。実務スキルとともに高い職業意識や倫理観を約1年間通して学ぶ内容で、法律のプロを養成するための本格的なカリキュラムです。
8か月の分野別実務修習、2か月の選択型実務修習、2か月の集合修習で構成されています。第一線で活躍する弁護士や裁判官の直接指導もあり、受講生たちは裁判現場の雰囲気を感じながら法律実務を学びます。
司法修習のカリキュラムを修了した後に受験するのが、司法修習生考試(通称:二回試験)です。これに合格することで、弁護士・判事・検察官の資格を取得できます。
弁護士会に登録後、弁護士としての活動が認められます。まず、入会先地域の弁護士会を経て、日本弁護士連合会(日弁連)に登録請求。その後、各弁護士会および日弁連による資格審査会の議決を経て、登録の可否が判断されます。登録を認められて、晴れて弁護士としての活動をスタートできます。
なお以下の項目に該当する人は、弁護士会に登録できません。
参考:日本弁護士連合会 弁護士の資格・登録(外部サイト)
このように、弁護士になるためには予備試験ルートも法科大学院ルートも、何度も試験を突破する必要があります。
しかし、司法試験は社会で働いた経験のない学生でも知識を積めば合格できるように、これまでの経験は全く関係ありません。予備試験に受験資格はありませんから、全くの異分野からでも挑戦が可能な資格です。忙しい社会人ができるだけ短期間で合格するための3つのポイントを紹介します。
予備試験ルート、法科大学院ルート、司法試験対策等、試験制度自体が複雑で、自分にあう進路を探したり悩んだりして勉強をスタートするのが遅くなる方もいます。
しかし、短期合格者に多く見られる傾向は、とにかく予備試験対策を始めるということです。
なぜなら、出題科目数、試験形式、難易度の点で
予備試験 > 司法試験 > 法科大学院入試(既修者)
という関係があるので、予備試験対策をスタートすれば、その後のいかなる進路を選んだとしても、有利になることはあっても不利になることはなく、早く勉強を始めた分、最終ゴールの司法試験合格の時期も早まるからです。
短期合格者の方は、法律基本7科目の対策に集中します。なぜならば、最終ゴールの司法試験まで含めて、最も多く重なる試験科目が法律基本7科目であり、配点割合も高く、試験対策のコストパフォーマンスが高いからです。
【表:法科大学院既修者入試、予備試験、司法試験のそれぞれの法律科目】
勉強を始める前から、法律実務基礎科目や口述試験の対策を気にされる方もいますが、実務基礎科目は基本7科目の応用という側面が強く、まずは予備試験の短答式試験が突破できる実力をしっかり身につけることに集中し、その目標をクリアできてから短期集中型の対策講座等で一気に詰めていくのが効率的です。口述試験対策も論文式試験を突破できてからでも十分間に合います。
一般教養科目は、対策のやりようがほとんどないので、試験直前期に市販の過去問集で直近3年分を見ておけば十分でしょう。
短期合格者は、試験対策の効果が高いものは何かを考え、選択と集中で順番に目標をクリアしていきます。
短期合格者の学習に多く共通するのは、いち早く問題演習に入ることです。予備試験、司法試験は、試験範囲の知識さえ暗記できれば合格できるような単純な試験ではありません。予備試験、司法試験で最も難しいのは、問題を解くこと、答案を書くことです。
したがって、いち早く問題演習を行い、知識以外の問題を解く、答案を書くためのスキル・ノウハウの習得を早く始めることが、早く合格する秘訣です。そのためには、知識のインプット学習はできる限り短期間に終わらせることが必要です。
また、学習単位を細かく区切り復習を何度も行うことで知識の定着を効果的に行っています。
短期で合格する方は、知識が十分に身についていなくても、問題演習中心の学習に早く移行します。そして、問題を解きながら、何が問われ、解けるために必要な知識は何で、知識の応用で解くにはどう考えればよいかを確認しながら、同時に知識のインプットを行っています。
さらに、スキマ時間をとことん活用し1日の学習時間を最大化しています。
そして、最後まで勉強を継続することで、合格の可能性を最大化しています。
弁護士になるには、司法試験と二回試験に合格し、弁護士会に登録する必要があります。その時点ではじめて、法律の専門家としての活動が認められるのです。重要かつ高度な職務を担うため、その道のりは平坦ではありません。超難関の司法試験に合格後、ハードな実務研修を経て、その資格が与えられます。だからこそ、大きなやりがいのある仕事に取り組む資格を得ることができます。弁護士になるための勉強で得た知識もすべて自分の糧となります。
他の方がよく読まれている関連記事を紹介!