【講師解説】司法試験「憲法」の特徴と勉強方法

司法試験において「憲法」は難易度が高いとされる科目です。「短答で点数が伸びない」「論文をどう書けばわからない」と悩む受験生も少なくありません。

この記事では憲法について、スタディング司法試験・予備試験講座の講師が出題の特徴や勉強方法を解説します。

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司法試験の「憲法」とは?

こちらは司法試験の流れをまとめた図です。

司法試験の憲法は、論文式試験(1日目)と短答式試験(4日目)に出題される科目です。

短答式試験の憲法

試験時間は50分、問題数20問程度、配点50点、合格の最低ライン20点とされています。

なお、先に実施される民法は試験時間1時間15分、問題数36問程度となっているため、それと比べると試験時間も問題数も少なくなっています。刑法の試験時間や問題数、最低ラインは憲法と同じです。

短答式試験の憲法は20問を50分で解かなければならないため、1問あたりにかけられる平均時間は2.5分程度となります。

論文式試験の憲法

試験時間2時間、問題数1問、配点100点とされています。

なお論文式試験の試験時間、問題数、配点は、選択科目を除いてすべて同じです。

憲法・行政法の公法系試験は、選択科目と同じ日にお昼休みを挟んで実施されます。そのため最初に実施された選択科目試験の出来の影響を受けやすく、受験者の中には実力が出し切れなかったという人も少なくありません。

【短答】司法試験の憲法の勉強方法

ここからは、スタディング司法試験・予備試験講座の講師も務める弁護士の漆原照大氏が解説します。​​まず、司法試験の【短答式試験】の憲法の勉強法です。

解説

弁護士 漆原照大
漆原法律事務所 代表弁護士/スタディング司法試験・予備試験講座 講師

埼玉県庁で働きながら弁護士を目指し、2020年に司法試験に合格。自身の受験経験から、忙しい社会人が合格するには「完璧な答案」よりも「現実的な合格答案」を書く必要性に気づき、受験生に知識とテクニックを伝えるため講座開発に参画。「スタディング 司法試験・予備試験講座」2025年版より「論文対策講座・予備試験実践編」の一部を担当。

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憲法・短答の出題の特徴は?

短答式試験の憲法は、総論、人権分野、統治分野からまんべんなく出題されます。

出題形式はかなり特徴があり、択一式問題ではあるものの、8択式の解答方法や正誤判断問題で構成されています。このため他の科目と異なり、いわゆる消去法によって正解肢を導くことができません。より正確な知識と理解が求められているのです。

このような出題形式ゆえに、憲法の点数が安定しないと悩む受験生が多くいらっしゃいます。

憲法・短答で問われる力は?

総論及び人権分野

正誤問題は、判例の文言や要旨、学説の対立などを正確に押さえていなければ正解できない問題が多いです。判例知識を中心により深く正確な理解が求められます。当該判例がどうしてそのような見解になるのか、結論だけでなく考慮要素や理由付けまで理解しておく必要があります。

統治分野

判例知識だけでなく、条文の知識も求められます。統治分野は、論文であまり出題されないことから対策が疎かになりがちですが、人権分野に比べて基礎的な問題が多く比較的点数もとりやすいです。合格点をとるためには統治分野の対策が必須といえます。

その他

各分野を通して存在する見解問題(ある見解が別のある見解の批判となっているかどうかを問う問題)は、単なる知識だけでなく国語力・論理的思考能力も求められます。

総じて、憲法に関しては確実な知識・理解をもとに、確実に正解できる問題で点数を取っていくという意識が重要になってきます。

憲法・短答の勉強方法は?

基本的な対策

過去問を繰り返し解くという学習が基本となります。

憲法は、同一論点の問題が比較的出題されやすい傾向にあります。過去問演習は、頻出分野を確認したり再度の出題への備えたりできるだけでなく、典型的なひっかけ肢の特徴も把握できるのでとても重要です。

過去問演習を積み重ね、間違い肢の「違和感」を感じ取れるよう、繰り返し演習を行いましょう。

また、過去問を解く際には極力時間を計るようにしましょう。憲法は民法や刑法に比べて余裕があるとは思いますが、慣れないうちは自分が一問あたりどの程度の時間をかけて問題を解いているのか、客観的に把握しておく必要があります。

人権分野

日頃から判例や学説を意識した学習をするように心がけましょう。

例えば、判例が違憲審査基準を定立している際は、どのような事情を考慮して当該違憲審査基準を定立しているのかということまで押さえておく必要があります。

特に考慮要素の部分は、ひっかけの選択肢を作りやすいということもあり狙われやすいです。

「判例と同じ違憲審査基準を使っているから正解肢だ」と安易に考えず、「判例はここまで言及しているのか」という視点で常に考えることを心がけてください。

総論・統治分野

人権分野と同じく、判例や学説を意識した学習をしましょう。

特に統治分野においては、正確な条文知識も要求されます。日頃から条文に目を通しながら学習することが望ましいといえます。

条文知識の問題は正誤の判断が比較的容易ですので、ぜひ得点源にしましょう。

【論文】司法試験の憲法

続いて、司法試験の【論文式試験】の憲法の勉強法についても、スタディング講師で弁護士の漆原氏が解説します。

憲法・論文の出題の特徴は?

論文式試験の憲法は、身近な社会問題などをテーマに策定された架空の法律案や条例案について、法律家の立場で憲法上の問題点や法令の合憲性を検討する問題が出題される傾向があります。

出題形式は、主張、反論及び私見を述べさせる主張反論形式や、憲法上の問題点について意見を述べるといった意見書(リーガルオピニオン)形式が主流です。

直近の試験では、令和6年は意見書形式が採用されていますが、前年の令和5年は主張反論形式が採用されています。今後、どちらの形式が出題されやすいということは言い切れません。

もっとも、いずれの形式であっても論じ方に大きな差はありません。落ち着いて対処できるよう、双方の形式に慣れておくことが重要です。

憲法・論文で問われる力は?

短答式試験と同じく判例の基本的理解を前提に、論理的思考能力や事案分析能力が問われます。

短答式と大きく異なるのは、判例を知っているだけでは対応できないということです。参考判例の理解を踏まえ、自身の見解にどのような形で参考判例を用いるのかということが極めて重要になってきます。

また、出題形式の如何に関わらず、自身の見解と対立する見解について言及することが必須となってくるので、より物事を多角的に捉える視点というものも大切になってきます。

論文の勉強を始めて間もない方が陥りやすいのは、妥当な見解(裁判所の見解)しか思い浮かばないということです。

私自身、憲法の論文を勉強して間もない間は妥当だと思われる1つの見解しか頭に浮かばず、適切な反論というものが構成できないという事態に陥っていました。

最高裁の判例であっても、完璧な理屈というものではなく、常に反論できる部分が潜在的にあります。日頃の判例学習において、判例の不完全な部分を意識して適切な反論が構成できるように備えておくことが重要です。

憲法・論文の勉強方法は?

形式面について

憲法の答案は他の科目と異なり特殊な部分はありますが、法的三段論法に則って論述することが求められます。

また、一部の人権分野においては三段階審査(保護範囲・制約・正当化の三段階で審査する審査方法)において審査するということもあります。

いずれにしても、違憲審査基準の定立、定立した違憲審査基準への当てはめという過程は変わりないので、ご自身の答案が常に法的三段論法(あるいは三段階審査)の形式に沿って記載されているものかどうかチェックをしましょう。

論文に慣れてくると憲法特有の「答案の型」が掴めてくるので、型の習得を目指していきましょう。

型が安定してくるとあらゆる問題に対応できるようになるので、点数も安定しやすくなります。

内容面について

短答式試験同様に判例への深い理解が求められてきます。日頃の判例学習で、どういった事実関係、考慮要素の下、どのような判断基準(違憲審査基準)を用いているのかを意識しましょう。

短答式の勉強と論文式の勉強は判例学習という点でかなりリンクしますので、短答式の勉強をしている際にも常に論文式を意識すると良いと思います。

そして、自身の見解(あるいは一方の立場の見解)として使える知識に仕上げておきましょう。

また、可能であれば、当該判例の争点なども押さえておくことをおすすめします。

論文試験では先にも述べたとおり、自身の見解に対立する見解についても言及する必要があります。

このような見解に関する論述は現場で考えるということもありますが、判例が存在している分野においては明確な争点として顕在化していることもあります。

判例の争点を把握しておくことで、反論に直接使えるということもありますので、ぜひ事案の概要や判旨だけでなく、争点(当事者の主張)も確認してみてください。

司法試験・予備試験の勉強法について、こちらの記事でも詳しく解説しています。

【Q&A】司法試験に関するよくある質問

最後に、司法試験に関するよくある質問にお答えします。

司法試験の勉強時間は?

司法試験や予備試験は、「何年勉強すれば、何時間勉強すれば誰でも必ず合格できる」という試験ではありません。

勉強を始める前の法律に関する知識量も、人によって大きく異なるでしょう。そのうえで目安を示すなら、次の表のとおりです。

予備試験司法試験(本試験)合計
一般的な勉強法6,000〜8,000時間1,800〜2,000時間7,800〜1万時間
短期合格者の勉強法3,000〜5,000時間1,500時間4,500〜5,600時間

司法試験合格率の高い法科大学院は?

令和6年(2024年)司法試験法科大学院別合格率ランキングは、次のとおりです。

順位法科大学院名受験者数合格者数合格率
1予備試験合格者475人441人92.8%
2慶應義塾大法科大学院246人146人59.4%
3愛知大法科大学院9人5人55.6%
4京都大法科大学院217人107人49.3%
5一橋大法科大学院123人60人48.8%
6東京大法科大学院255人121人47.5%
7中央大法科大学院181人83人45.9%
8早稲田大法科大学院330人139人42.1%
9大阪大法科大学院177人72人40.7%
10神戸大法科大学院136人51人37.5%
11同志社大法科大学院111人41人36.9%
12九州大法科大学院107人37人34.6%
13名古屋大法科大学院103人32人31.1%
14南山大法科大学院18人5人27.8%
15上智大法科大学院44人12人27.3%
15専修大法科大学院33人9人27.3%
17広島大法科大学院34人9人26.5%
18北海道大法科大学院65人17人26.2%
19大阪公立大法科大学院36人9人25.0%
19金沢大法科大学院16人4人25.0%
21関西学院大法科大学院41人10人24.4%
22筑波大法科大学院60人14人23.3%
23東北大法科大学院95人21人22.1%
24立命館大法科大学院132人29人22.0%
25明治大法科大学院115人25人21.7%
26関西大法科大学院70人15人21.4%
27千葉大法科大学院52人11人21.2%
28岡山大法科大学院25人5人20.0%
28近畿大法科大学院5人1人20.0%
30日本大法科大学院100人19人19.0%
31創価大法科大学院34人6人17.7%
32福岡大法科大学院23人4人17.4%
33琉球大法科大学院29人5人17.2%
34横浜国立大法科大学院13人2人15.4%
35桐蔭横浜大法科大学院8人1人12.5%
36法政大法科大学院58人7人12.1%
37学習院大法科大学院36人4人11.1%
38東京都立大法科大学院92人10人10.9%
39駒澤大法科大学院32人2人6.3%
40甲南大法科大学院18人1人5.6%
41青山学院大法科大学院5人0人0.0%
41成蹊大法科大学院9人0人0.0%
41西南学院大法科大学院21人0人0.0%
41大東文化大法科大学院11人0人0.0%
41北海学園大法科大学院12人0人0.0%
41名城大法科大学院0人0人0.0%
41立教大法科大学院0人0人0.0%

【参考】法務省「令和6年司法試験法科大学院等別合格者数等」

法科大学院別の「合格者数」ランキングや、予備試験の大学別ランキングについて、詳しくはこちらの記事で解説しています。

司法試験の「採点実感」の活用方法とは?

司法試験の採点実感とは、司法試験委員がその年の試験問題の出題趣旨、採点にあたってどのような点を重視しているか、高い評価を与える例などをコメントしたものです。

採点実感冒頭の採点方針を読めば、その年の試験でどんな能力が求められているのか、どのような答案がどう評価されるのかといった採点の全体的な方針を掴めます。

また、司法試験の答案は「優秀」「良好」「一応の水準」「不良」の4段階で評価がされており、いわゆる合格答案は「一応の水準」以上です。

採点実感に目を通し、「一応の水準」がどれくらいのレベルかを把握しておきましょう。

詳しくはこちらの記事で解説しています。

まとめ

司法試験・予備試験の短期合格を目指す方には、スタディング 司法試験・予備試験講座がおすすめです。忙しくて時間がない方でも学習できるように研究して開発されたオンライン講座です。

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